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策也の夢見る未来

戦争は、終わった後が、大変だ。
どうやって終わらせ、その後どうするのかが大切である。
後に問題が残る事の方が多い。
いや、問題が残らない戦争なんてないのかもしれない。
歴史は刻まれ、憎しみも受け継がれていくのだから。

武尊との戦いの後、俺は一人山へと向かった。
目的はカブトムシを捕まえる為だ。
作業はかなり難航したが、妖凛に食べられないようになんとか四匹確保した。
カブトムシはガゼボに隠して、俺はマイホームへと戻った。
そして家族六人でクリスマスパーティーをした。
この世界にクリスマスなんてないんだけどね。
ノリだよノリ。
パーティーが終わった後、俺は気になっていた事をみゆきに尋ねた。
「俺の異次元収納にあの『バット』を入れたのはみゆきだよな?」
あの『なんでもできちゃう謎のバット』が無かったら、被害無しなんて結果にはならなかっただろう。
「バット?ん~‥‥。記憶には無いよ?」
みゆきじゃないのかな?
だとしたら大量のアイテムを貰った時か、或いはゴミの中に紛れていたのかな。
まあ『最高の選択』で『なんでもできちゃう謎のバット』が出て来た訳で、今更どうでもいいんだけどさ。
気にしたら負けだし、これ以上俺は考えるのをやめた。
その夜、子供たちが眠ったのを確認してから、吊るしてある靴下にカブトムシを入れておいた。
喜んでくれるだろうか。
期待していた次の日の朝は地獄だった。
靴下に入れておいたカブトムシが出てきた事で、それをゴキブリと間違えた六華が辺り構わず攻撃したのだ。
六華の魔法はグングン強くなっており、部屋は火の海になっていた。
とはいえこの程度で死ぬような軟な人間は此処にはいない。
みゆきの結界も効いているし、カブトムシも蘇生され、何事もなかったかのように元通りとなった。

次の日の朝には、武尊を倒した後の最初の四阿会議が行われた。
「まずは現状の説明から始めるわよ」
「リン、頼む」
「伊集院は早々に独立を宣言したわ。どうして九頭竜武尊の傘下に入ったのかは説明がないわね。実質五分くらいしか傘下に入っていた時間は無かったようよ」
伊集院がどうして武尊の傘下に入ったのかは気になる。
想像は付くけどさ。
だけど聞いたところで『伊集院を守る為には最善だった』とか『九頭竜武尊には逆らうべきではないと判断した』とか言うだけだな。
「オッケー!それはとりあえずどうでもいいだろう」
「どう考えても九頭竜武尊に味方したように思われますが、それでも?」
「千えるの言う通りだよ。アレは伊集院が武尊に味方した。それだけ分かっていれば十分って事さ」
「その通りですね」
そして少なくともまだ敵という訳でもない。
本当に武尊には勝てないと判断した可能性も十分にある。
「他はどうなっている?」
「元碓氷領だけど、碓氷の王族はあの発表の前から既に殺されていたらしいわ。殺した武尊の手の者も逃走していて、此花で統治する事になりそうね」
発表は代理人か、或いは王に変化した誰かによってなされたものかな。
いずれにしても統治者が誰もいなくなるのは問題だし、リンの言う通り此花で統治するしかないだろう。
「だったら戦士ファームってのは廃止させるぞ。資料は全部最重要機密資料として上位能力者に回収させてくれ」
「了解したわ。それで有栖川だけど、前回同様有栖川に任せて大丈夫かしら?」
戦争に勝ったのは俺たち此花だ。
だから領土をどうするのか、決定権は俺たちにある。
「よし、兎束に任せよう!」
「えー!まさかの展開なんだよ!全米もビックリなんだよ」
「有栖川が上で兎束が下だったから国がおかしくなった。有栖川には商売に専念してもらって、兎束には民の為の統治をしてもらう」
尤も、有栖川が納得して受け入れるとは思えないけどさ。
出て行くなら出て行くで問題ない。
というか既に出てる訳だしね。
「仰天展開なんだよ!金魚は叔父さんたちに知らせてくるんだよ!」
「元東郷領は別な!後はそっちで勝手に発表してもいいって言っておいてくれ」
「分かったんだよー」
金魚は慌てて転移ルームへと走っていった。
「それで、もしも有栖川が何か言って来たら、元東郷領の島をくれてやる事にしよう」
力を失くした有栖川にはこれくらいで丁度いいさ。
「小鳥遊はそのまままた独立国となるみたいね」
「あの国はあまり放置はしたくないけど、まあ仕方ないか」
魔法以外の能力の向上は、此花領内の学校では行い始めている。
小鳥遊の能力に対応できる人間が増えていけば、いずれ問題は無くなるだろう。
「後の対応はリンに任せた。他は何か急ぎの案件はあるか?」
俺は一同を見回した。
特に何もなさそうだった。
まあぶっちゃけ戦いの後だし、そちらにリソース奪われていた訳だから、後始末やら日頃の仕事が多く残っているのだろう。
早めに解散して通常業務をするべきだな。
「じゃあ今日は解散。夕方の四阿会議は、何か問題がある者だけが集まるようにしよう。やる事多そうだからな」
「了解よ」
「分かりました」
「私も愛洲の方が少し忙しくて、多分休ませてもらいます」
「問題ない。無理させて悪いな千える」
「いえ、むしろ感謝していますよ。やりがいある仕事が貰えて」
「そう言ってもらえると助かる」
「では」
俺は皆に軽く手を振った。
さて次は、皇の親父さんに聞かないとな。
武尊が神だったのかどうか。
きっと神を倒したら何かあるんだよね?
よく分からないけれど、神を倒せばみゆきやみたまも皇領へ行く事が出来るらしい。
この世界の悪い神を俺が倒せば、この世界の秩序は全て俺の思うがままとなるとか。
それがどういうものなのかよく分からないけれど、それでとにかく皇の在り方も変えられるようだ。
つまり女性が生まれたら神で、捨てなくちゃならないなんてルールも失くす事ができる。
或いは皇が三種の神器を守るとか、不老不死から記憶を奪っての再教育の流れなんかも好きに変更できるようになるとか。
再教育の流れは、今では不老不死にする必要はなくなっているけれどね。
ポイントは皇での再教育だ。
これはこの世界の摂理の一部として機能しているらしいんだよね。
俺はマイホームに戻ると、俺専用の魔法通信端末で大化にメールを出した。
『神の事について聞きたい』とね。
するとすぐに返事が返ってきた。
『明日、皇国に来られよ。現地時間十時に黒死鳥王国世界会議本部待合室にて待つ』
こっちの都合は聞かずに明日とかいきなりだな。
時差は四時間くらいだから、朝の六時か。
明日の朝会議はリンに任せる事にしょう。
俺は『了解』とだけ返事を返しておいた。

次の日の早朝、俺は黒死鳥王国世界会議本部の待合室に来ていた。
そこへ大化自らがやってきた。
「策也くん、早いね」
『早いね』じゃねぇよ。
来るの遅いよ。
もう二十分も過ぎてるじゃねぇか。
「お・は・よ・う」
「ああおはよう」
嫌味で行っても通じないか。
どうせなら『おそよう』って言った方が分かりやすかったか。
でもこっちが話を聞かせてもらう訳だし、流石にみゆきの父ちゃんにそれは言えんよね。
「で、話を聞かせてくれるんだよな?」
「それだが、ちょっとついてきてくれないか」
ふむ、どうやらここで話す訳ではなさそうだ。
待合室を盗聴されているなんて事は無いとは思うが、誰かに聞かれても問題があるのかもな。
それに『皇国に来られよ』って言ってたし。
「了解」
俺は立ち上がって大化の後をついていった。
待合室を出てから本部内を歩き、皇専用の区域へと入っていく。
更に歩いて最奥まで行くと、ドアを開けて中へと入っていった。
「転移ルームか」
「そうだ。ここから皇の都へと移動する」
都だと?
それっていわゆる首都だよな?
確か名前は帝都『スメラギ』だったはず。
俺は大化の後をついて行った。
次の瞬間別の転移ルームへと移ってきた。
「ついてきてくれ」
「ああ」
俺は一応邪眼で場所を確認する。
皇国本土の東海岸にある町、此処は帝都スメラギがあるとされる場所だ。
やはりそうか。
更に俺は大化についてゆく。
するとかなりの魔力を持った男が通路を守っているようだった。
「ご苦労」
大化の言葉に、男は一礼した。
なんだかかなり重要区域に移動しているようだった。
通路を進み最奥までくると、そこにあるドアを開け大化は部屋へと入ってゆく。
俺も後に続いた。
そこは又転移ルームだった。
「ここからもう一度移動するぞ」
「厳重だな」
「この先が都だ。外部には公開していない町がある。知ってる者は知っているがな」
「あれ?ここが帝都スメラギだよな?都は別なのか?」
「来れば分かる」
大化はそう言って転移ゲートに入っていった。
俺も後を追った。
転移した先は、やはり転移ルームだった。
大化は扉を無造作に開けてそのまま部屋を出る。
扉の向こうは外のようだ。
外の光が差し込んでくる道を、俺は逆行していった。
「町だな‥‥」
「そうだ。ここが都だな」
俺は邪眼で確認した。
皇国本土の東にある小さな島にある町のようだ。
位置関係から、おそらくここは比丘尼王国と繋がる町なのだろう。
比丘尼王国で人魚の肉を食べた者は、きっとこの町に来て皇に再教育される。
俺もおそらくここで十年過ごしたのだろう。
そう思うとなんとなく見覚えがあるように思えてきた。
町の真ん中には大きな塔のようなものがあり、その天辺には魔石を集めて作られた大きな魔石のようなものが付いていた。
あれは‥‥ヴァンパイアの魔石の集合体?
「なるほど、皇も俺たちと同じように、世界と繋げる事ができるアクセスポイントを持っていたのか」
「ああアレか。皇との通信は全部あの塔を経由する。だから情報が九頭竜に盗まれる事はない。いや、無かったというべきか」
もう九頭竜の魔法通信事業は、すべてアルカディアの方に併合したからな。
当然情報を盗むなんて事はやっていない。
やろうと思えばできるけどね。
塔を見ていると、何か既視感を覚える。
でも思い出したりはしなかった。
「あの城までゆくぞ」
「分かった」
城か。
最近は城から屋敷に建て替える流れがあって、城が残っている所は少ないんだよな。
でもなんだろうか。
此処は城じゃないと駄目な気がする。
俺は大化の後をただついて歩いていった。
城の入り口までやってきた。
そこには『竜宮城』と書かれていた。
「竜宮城だと?つまり俺は此処に来た事があるって事か」
「そのようだな。私は知らないが弥栄やみことは策也を見た事があったと言っておった」
「マジで?!」
おいおいなんだよ。
二人とも俺の事を知っていたのか。
「そうそう、みゆきも一度策也くんの事を見ているはずだと言っていたな」
「みゆきも俺の事を知っていたの?」
「いや、一度見た事はあるだろうって話だ。ここは捨てられる女児を三歳ごろまで育てる城でもあるからな。でも流石に記憶にはないだろう」
みゆきが俺を見た事があった?
そう言えば最初に会った時、俺にマスクを取れって言ってきたよな。
そして顔を確認して、俺と共に生きていく事を決めた。
あの時の表情は、きっと覚えていたに違いない。
「ははっ‥‥」
なんだろう。
何となく嬉しい気持ちになった。
城へ入ると、既視感は強くなった。
いや、見た事があるはずなのだから、既視感と言うのは少し違うかもしれない。
確かに俺は此処にいたんだよ。
ここで誰かが毎日俺に何かを教えてくれていたんだ。
「此処だ」
「此処?」
俺たちは部屋のドアの前まで来ていた。
なんとなくどこかで見た事のあるようなドアだ。
ああ、きっと俺はこの部屋で十年暮らしていたのだろう。
大化はドアを開けた。
部屋には机とベッド、そして椅子がいくつか置かれているだけだった。
大化は中に入ると、椅子の一つに腰かけた。
「此処で話そう」
「ああ」
俺は部屋に入ると、体が覚えているのか自然にドアを閉めた。
そして流れでベッドに腰かけた。
「分かっているみたいだな。ここは策也くんが暮らしていた部屋、らしい」
らしい、ね。
大化は俺の事を知らなかった。
「さて何から話そうかな」
俺はただ大化が話し出すのを待った。
少ししてから大化はゆっくりと話し始めた。
「今から二十六年ほど前になるのかな。策也くんが此処に来たのは‥‥」
六歳の頃、碓氷から逃げて大山祇領リグルの町へ行った。
そこで岩永姫に会って、俺は不老不死になったんだ。
そこから亀浦の島へと渡り、ザラタンに乗って比丘尼へと渡る。
そこで人魚の肉を食べさせられ、俺はこの竜宮城へ来たんだ。
そこから十年、俺は担当の婆さんに色々教えてもらったらしい。
この世界の基本的な知識、そしていい人間になるように道徳の勉強。
更に魔法なんかも教わったようだ。
俺はとても頭が良くて、あらゆるものをドンドン覚えていったらしい。
今の俺とはえらい違いだな。
いや、魔法記憶をその頃から使っていたら、それによるものだったのかもしれない。
それで称号は賢者となったのだろう。
ここにきて九年が過ぎた頃、俺はこの城の中でみゆきとニアミスしたらしい。
その時俺は婆さんに尋ねたそうだ。
『あの子は誰なのか』と。
婆さんは答えた。
「あの子はもうすぐ捨てられ、死んで天国に行く子だよ」
みゆきが三歳になった頃の話だった。
俺の記憶は、人に関してはすぐに消えて無くなる。
だから婆さんも話したのだろうと大化は言っていた。
しかし何故かその事だけは消えなかったのだそうだ。
そして十年、もうすぐ竜宮城から出る少し前、俺は女の子を助けるにはどうしたらいいか尋ねたそうだ。
そこで教えてもらったのが試練の洞窟。
十年経って竜宮城を出られる事になった俺は、竜宮城の地下にある試練の洞窟へとそのまま挑戦したのだ。
その攻略はとても難しく、その頃の俺では二年の歳月が必要だった。
それでもなんとか攻略し、最後に会ったのが木花咲耶姫。
俺は『みゆきを助けたい思い』を叶えるのに必要なアイテムを貰った。
それがクラーケンの腕輪だった訳だな。
その後俺は嵐の海に飛ばされたそうだが、そこから先はもう追えなかったようだ。
気が付いたら此花領内東にある、何もない場所で寝ていたって事だろうね。
更にその試練の洞窟での二年間の記憶も無くなっていた。
当然今もハッキリとは思い出せない。
これで一応、俺がどんな風に生きてきたのかはだいたい分かったな。
空白なのは試練の洞窟を出て海に投げ出されてから、俺が目が覚めるまでの間だけか。
咄嗟に瞬間移動魔法を使ったって辺りが真相だとは思うけどさ。
それ以外に考えられないよね。
「それで、どうしてそんな話を今更教えてくれる気になったんだ?」
「もうすぐ策也くんが神になるかもしれないからな。その時は嫌でも全ての記憶を取り戻す事になるだろう。なんせ神だから」
心の準備でもしておけって話かな。
まあ記憶がいきなり戻ったら、人格まで変わる可能性もあるかもしれない。
でもあらかじめ知っておくだけでも、ギャップは押さえられる可能性がある。
そんな風に考えでもしたのかねぇ。
「つまり俺が倒したKAMI、九頭竜武尊は俺が倒すべき悪い神じゃないんだな?」
「まだ記憶が戻っていないのが何よりの証明だ」
それを確認する為にもここに連れてきたと。
「でもそれだけの話で呼んだんじゃないよな?」
何となくそう思った。
「そうだ。策也くんが本当に次の神になっていいのか、最後の確認だけしておこうと思ってな」
「ふーん。テストみたいなもんか?」
「いや、本音を言うと我々が心の準備をする為だよ」
今までやってきた事が、俺が神になる事で大きく変わるかもしれない。
変化はストレスに繋がる訳で、上手く行かない事も多々ある。
あらかじめどう変化するのか分かっていれば、多少気持ちも楽という事か。
「で、確認とは?」
「策也くんはこの世界をどんな世界にしたいと思っている?」
どんな世界か。
「そりゃ、全ての民が心穏やかに暮らせる世界だな」
「具体的にどうするのかは決まっているのか?」
そんなのはもう決まっていた。
「俺が転生者だってのは知ってるよな?」
「ああ」
「生まれ変わる前暮らしていた日本って国は、とても国民が穏やかな国だったんだ。そんな素晴らしい国にしたいと俺は思っている」
「ほう。この世界とはずいぶん違うのか?」
「まあ似てる所の方が多いかもしれないな。ただ、決定的に違う所がある。そこだけは変えたいと思っている」
「それはなんだ?」
決定的に違う事と言えば、そりゃ王様が統治する王制って事だよな。
でもそれ自体が問題なんじゃない。
「日本では、統治の仕方が二種類あると考えられていたんだ。一つは『ウシハク』、もう一つは『シラス』だ。ウシハクは国や民を支配し統治するやり方。この世界は基本これだな。でも俺がやりたいのはシラスだ。シラスは統治者が世界を知り、方法や情報を民に教え知らせて民の自主性に任せるやり方って事になる。統治はするけれど支配はしない」
「少し分かり辛いな。どう違うのだ?」
「そうだな。具体的に言うと、ウシハクは権威と権力を同じ者が持っている。でもシラスは権威と権力を別の者が持つんだ。そうする事で、権力者と権力を監視する権威者ができる。権力者の腐敗を防ぐために、ただ民の事を宝物として扱う権威の存在を世界に置く」
転生前の世界では、天皇こそが権威の存在だった。
天皇は民を|大御宝《おおみたから》として扱い、その民が幸せに暮らせるよう権力を振るう者を任命し監視する。
この体制が素晴らしいのは、日本という国が最も長く続いてきた事で証明できるだろう。
「その権威の存在を策也くん、君が神としてやろうというのかね?」
そんな面倒な事はしたくないよな。
「いや、俺は神として権威の存在を監視するだけの存在になろうと思っているよ。権威の存在は世界の天皇として皇に任せようと思っている」
「なんだと?!つまり皇のトップが、世界を統治する事になるのか?」
「少し違うな。皇は『君臨すれども統治せず』なんだ。そして皇が各町を統治する者を任命する。その者たちが『統治すれども支配せず』で統治を行う」
「では我々が全ての町の王を任命するという事か」
「そうだが、王の候補はその町の民が選んだ中から選んでもらう事になるから、誰でもって訳じゃないぞ。それに王ではなく宰相って感じだな。民が選んだ代表の中から、宰相や大臣を選んで統治させるんだ」
選挙とか民主主義とか言っても難しいだろうけれど、統治者は民の責任で選べるようにしたい。
自分たちの町が駄目な町になっても、その責任は自分たちにもあると思ってもらいたいからな。
「なんだか難しそうだが、悪くはない気がするな」
「俺も自信なんてないけどさ、多分俺が考え得る最高はこれだと思うんだよ」
日本で言えば、総理大臣他内閣人事は天皇陛下に権限があるって感じになるのかな。
そしてそれを世界全てで行う事になる。
「分かった。策也くんのビジョンは共有できそうだ。頑張って神になってくれ」
「もちろんだよ。みゆきとずっと生きていきたいからな」
「そうか‥‥。ではもう一つ伝えておきたい事がある。神になったら、もしかしたら後悔する事になるかもしれない。正直私にも何が起こるか分からないんだけどな」
後悔ねぇ。
本当は何が起こるか、大化は知っているように感じる。
だけどみゆきとずっと一緒に生きていけるのなら、後悔なんてする訳がないさ。
「オッケーオッケー!大丈夫だろ。それと言い忘れていたけど、皇の女児を捨てるってしきたりは失くさせるつもりだ。俺が神になれば、神として生まれてくる事も変えられるのか?」
「それは分からないが、多分大丈夫だろう」
「ならば産まれてくる女児は普通の子にする。神は生まれではなく行いで誕生するようにしたい。ただ皇の継承は男系継承を続けるぞ。能力の継承もあるからな」
「了解した」
神になるかどうかは、やはり行いで決めるべきだよな。
神として生まれて来たから神ではなく、神となれるような行いをしたから神になるって方が納得できる。
血統を重視すべき所と、行いを重視すべき所は分けて考えるべきだと思うよ。
「じゃあ俺は、もう聞きたい事も聞いたし帰るとするよ」
「そうだな。次に皇に来る時は、みゆきと一緒に来てくれ」
「ああ。じゃあな!」
俺はそう言いながら立ち上がり、瞬間移動魔法で部屋を後にした。
さて色々と先の事を話したけれど、俺が本当に神になれるのかはまだ分からない。
悪い神様をやっつけなきゃ駄目だからな。
そしてその手がかりもまだ何もないのだ。
全く面倒だよ。
俺はそんな事を考えながら、一人ガゼボで穏やかなひと時を過ごすのだった。
【<┃】 【┃┃】 【┃>】
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