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ドラゴン移民で国を乗っ取り?

人は余裕があると困った人を助けたいと思う。
しかしその親切心を利用して悪い事をしようとする輩もいる。
だから親切心や理想だけで物事を決めてはいけない。
何をするにも十分注意する必要があるのだ。

俺たちはワサモンの町を出て、『ユルセイ』の町へと向かっていた。
集めた情報によるとユルセイは、自然が豊かでゆっくりとできる場所のようだ。
それはそれで楽しみでもあるが、ただ最近の道中は、俺たちには多少物足りないかもしれない。
環奈は戦う為に旅をしているようなもんだし、陽菜だって人間に変化できるようになってからはその|気《ケ》がある。
エルもイフリートの衣装を手に入れた事で戦いたくてウズウズしているし、金魚も俺がやったアイテムを試したいようだ。
それに陽菜と金魚は玉手箱によって魔力強化もされているみたいだからな。
変わらないのは洋裁くらいか。
確かに蘇生する前『ナイフのままでもいい』といったけどさ、ここまでずっとナイフでいるとか思ってなかったよ。
ナイフって、鞘に収まっていると気持ちいいのかねぇ。
人間が布団から出てこられないような感じなのかもしれない。
もう少し出てきてみんなと話でもしながら旅をすればいいのになって思うけれど、引きこもりも割と楽しい事を知っている俺だから、結局声もかけず放置していた。
そうやって無駄な事も考えながら、のんびりとした旅が続いた。
大山祇領内は本当に魔物もおらず良い所なんだなぁ。
尤も、こうやって町と町の間で整備されたエリアは、何処の国でもそれなりに魔物は少ないんだけどね。
さて昼食の時間がやってきた。
俺はこういった食事時間にメールをチェックするようにしている。
左手や異次元収納にずっと住民カードを収めていると、気が付いたらメールが来ていたりするからね。
急ぎなら大聖や資幣、或いはセバスチャン経由で話が来るんだけど、そうでない場合は気を使ってメールで伝えてくるヤツもいた。
メールを確認すると、一通送られてきていた。
差出人は七魅だった。
珍しいな。
話があるならいつも近くにいるだろうセバスチャンに言えば済むはずだ。
メールで話がしたいという事だろうか。
俺は内容を確認した。
『助けてほしいのだ。炎龍王国最大のピンチなのだ。二人で話がしたいのだ』
これだけではよく分からないが、とりあえず今日明日にも国が崩壊するような事はないだろう。
ただ、人間よりも遥かに頭がいいドラゴンが助けを求めてくるわけだから、よっぽどの事があったとも考えられる。
戦闘力も高いのだから、大抵の事はなんとかできるはずなのだ。
「これは政治がらみかなぁ」
「どうかしたんですか?」
「ああ。なんでも炎龍王国のピンチらしい。七魅が二人で話がしたいと言ってきた」
「ふむ。どうせ他国のヤツから何か話を持ち掛けられたんじゃろうのぅ」
俺も環奈と同意見だ。
人間以外の国を認める理由はまさにそこなわけで、それが無ければ国として認める訳がないのだ。
そろそろ動きだしたか。
「俺は飯を食ったら一旦家族の家に戻る。霧島を置いていくから、みんなは好きな事をしていてくれ。南にそこそこいい魔物が出るという森があるって話だから、狩りをしていてもいいぞ」
「そうかのぅ?じゃあわしはそこで遊んでるかのぅ」
「親分!うちもご一緒するピヨ」
「じゃあわたくしもこの衣装の効果を確かめに行きますか」
「戦闘ですか?怖いけど置いていかないでほしいんだよ」
「それじゃそういう事でよろしく頼む」
みんなでしばし金魚の作った料理を食べた後、俺だけは家族の家へと戻るのだった。

家族の家へは、セカラシカの拠点を経由して戻って来た。
そして王都炎龍の城へと移動する。
こちらは午後八時頃だから、おそらく七魅は城の部屋で休んでいるだろう。
俺は千里眼で確認した後、七魅の部屋を訪れた。
「どうした七魅?来てやったぞ?」
俺はドアをノックしながら声をかけてみた。
するとゆっくりとドアが開かれ、中には半泣きの七魅の顔が見えた。
「うー‥‥策也助けてほしいのだ。あたしはどうしたらいいのだ?」
七魅はいつもこんな感じだけど、今回は思ったよりも結構凹んでいるように思えた。
「とりあえず入るぞ」
俺は返事を待たずに部屋に入ると、中にあった椅子に腰かけた。
俺が部屋に入ると、七魅はドアを閉めとぼとぼと後に続いた。
七魅がベッドに腰かけるのを待ってから俺は聞いた。
「で、どうしたんだ?セバスチャンからの情報だと、町の人口も順調に増えて、全く問題は無いと聞いているんだが?」
「確かに町は良い感じなのだ。人口も増えてるのだ。でも増えちゃいけない奴らもいたのだ‥‥」
「増えちゃいけないヤツ?」
悪い奴らでも入ってきたのだろうか。
しかしそれならこの地にはセバスチャンに預けた忍者部隊もいるわけで、簡単に制圧できるはずなのだ。
「うん。他の里からフレイムドラゴンが‥‥それも百人を超える数がここに移住してきたのだ」
「仲間が増えて良かったんじゃないのか?」
「違うのだ。フレイムドラゴンは里ごとにしっかりと縄張りがあるのだ。同じ仲間でもあるけど、里を巡っての対立は時々あるのだ」
なるほどなぁ。
これはアレだな。
移民による国の乗っ取りみたいなものか。
転生前の世界でも似たような事は歴史上あった。
結局その土地その国ってのは権力者のモノじゃなくて、住んでいる人のモノなんだ。
だから移民を送り込んでその土地を乗っ取る事ができる。
移民難民をなかなか受け入れられないのはその為だ。
治安の悪化は力で解決できたけど、そっちは力だけでは難しいという事か。
「それでその移住してきたフレイムドラゴンたちはなんて言って来てるんだ?」
「人数が多い方から王は決めるべきじゃないかと言ってきたのだ。そんなのは認められないって言ったら、向こうもあたしが王なんて認められないって言うのだ」
かといって今更追い出すわけにもいかない。
一度受け入れてしまうと取り返しのつかないのが移民なんだよな。
「それで認められるには何かあるのか?」
「決闘なのだ。ボス同士の決闘で、勝った方が里の長となるのだ」
「つまり今、相手は七魅に決闘を申し込んできているのか?」
「そういう事なのだ。どうしたらいいのだ?あたしじゃあいつに勝てないのだ」
「ん?どうして勝てないんだ?やってみないと分からないだろ?七魅だってフレイムドラゴンとしてはかなり上位だと思うが?」
七魅はダークドラゴンに襲われた時逃げ回っていたが、別に完全に負けていたようには見えなかった。
洋裁には流石に勝てなかっただろうが、それ以外には能力的には勝っていたと思う。
ダークドラゴンの方が基礎値が高いのだから、七魅は十分立派な能力を持っていると言えるはずなんだよな。
同じフレイムドラゴン相手なら、勝てる可能性の方が高いと言えるだろう。
「駄目なのだ。相手は能力の高い人間に使役されているのだ。魔物が人間に使役される場合、人間の能力によって強くも弱くもなるのだ。相手はかなり強い人間に使役されていてパワーアップしてるのだ」
そんな事もあるのか。
となるともしも七魅が負ければ、この王国は人間の支配下に入るのと同じじゃないか?
尤も今も俺のコントロール下にあるようなものだけど、俺は無理強いはしないし、七魅たちの要望は無視しない。
でも使役されているヤツが王になれば、それは完全に人間が支配する国という事だ。
ドラゴンの国であるはずが、人間に乗っ取られていては意味がない。
さてどう対処するべきか。
「その戦い、代理は立てられないのか?いやボス同士の戦いの前に、『まずは俺の部下を倒したら俺が相手になってやる』、みたいな事は無理なのか?」
「策也が代わりに戦ってくれるのだ?」
えらい期待の目で言ってくれるな。
でも‥‥。
「流石に人間はマズいだろ?できれば国を持っていない種族が好ましいが‥‥」
「能力の高い人間に使役されているドラゴンと対等に戦える魔物なんて、伝説の魔獣くらいしかいないのだ」
「そうなるよな‥‥っているじゃん!代わりに戦ってもらう事はオッケーなんだな?」
「そんなに強い魔獣がいるなら構わないけど、本当に勝てるのだ?」
「まあほぼ間違いなく勝てると思うぞ。とりあえず霧島に今確認を取ってもらっている‥‥オッケーだってさ」
「それは一体誰なのだ?」
「環奈だよ」
こうして炎龍王国の王の座をかけた戦いは、環奈が代わりに戦う事となった。

決闘の日まで俺たちは、ユルセイの町でのんびりと過ごした。
そしてとうとう決闘の日がやってきた。
決闘の場は炎龍王国よりも西の越えられない山の上だ。
魔素の濃い場所での戦いなので観戦するのも命がけだが、うちのパーティーメンバーは割と大丈夫だった。
金魚は幽霊になれば平気だし、エルは魔力レベルの高いエルフなので耐えられる。
洋裁もナイフ状態でいれば、空中都市バルスよりも魔素の薄い此処なら耐えられるし、陽菜もジョウビタキモードなら行けた。
「ははは!なんだお前。黒死鳥如きがドラゴンに勝てるとでも思っているのか?まあいいがな。でもそっちが部下を戦わせるのなら、こっちもまずは一人、別のヤツに戦わせるぞ」
「お、おう。構わないのだ。でも侮っていたら痛い目をみるのだ!」
「ふぉっふぉっふぉっ、言いよるわぃ。でも強さは言葉じゃなく力で示すもんじゃ」
「なんだと!?おいお前!あんな奴ボコボコにやっつけてしまえ」
ああ、ドラゴンも人間と変わらないんだなぁ。
いくら知能指数が高くても、バカはバカかもしれない。
誰に使役されているのかは知らないけれど、バカだから使役されたのかもなぁ。
まあ使役したのが誰なのか、個人を特定はできないけれど、おそらく九頭竜の関係者だろう。
九頭竜の領土内には最初三ヶ所のドラゴン王国ができていたが、それらのドラゴンも全部使役されているのではないだろうか。
国の情報は最近見ないけど、今はもっと増えているのかな。
戦いを見届けるのは、俺たちと両陣営のドラゴン合計百三十体ほど。
最初の戦いは完全に力の差があるから、勝負は一瞬で終わるな。
環奈は黒死鳥の姿に戻っていて、大きさも相手のドラゴンより一回り大きい。
負ける要素は何もなかった。
戦いが始まったら環奈は空へと上がった。
相手のドラゴンは追いながら炎のブレスで攻撃する。
環奈はその攻撃を全てかわすと、オウムビーム一発で相手のドラゴンを倒した。
「ほう。あの攻撃で死ななかったんじゃのぅ。どれ、とどめを刺すかのぅ」
「待て待て!勝負はもうついている!くそう。相手が黒死鳥だと思って油断したのか?!お前たち、回復してやってくれ!」
相手のボスドラゴンが戦いを止め、部下に回復を支持していた。
「なんじゃつまらんのぉ」
環奈め。
しかし強くなったなぁ。
今の相手ドラゴンも使役されているから結構強かった。
ダークドラゴンだった洋裁くらいのレベルにはあったぞ。
それなのにアッサリオウムビームを撃てるとか、ジジィなのに成長しすぎだろ。
「俺は油断せんぞ。黒死鳥ごとき、万に一つも負ける要素がない」
普通ならそうかもな。
でも相手は環奈。
「のぅ、あ奴は殺してもええんかのぅ?」
「構わないぞ。死んだら魔界へ連れてって蘇生すればいいからな」
魔界には転移した事が無いけど、多分行けるだろうからな。
環奈とフレイムドラゴンのボスとの戦いが始まった。
まず環奈は空へと上がった。
黒死鳥がドラゴンに勝てる唯一のフィールドが空だからだ。
しかしボスドラゴンはそれを追わず、山の上から炎のブレスで攻撃をする。
環奈の誘いには乗ってこない。
「流石にボスだな。戦い慣れているといった所か」
「感心している場合じゃないのだ。倒してくれないとあたしじゃ勝てないのだ」
「まあ大丈夫だろう。環奈は余裕みたいだしな」
前に戦ったヤマタノオロチの吐く炎は、射程距離こそ短かったが数が多かった。
だからかわすのに割と苦労していたけれど、一発だけのドラゴン相手なら十分魔力を練る時間が作れるだろう。
オウムビームではおそらく仕留めるのは難しいから、狙っているのは絶円だな。
殺しても良いかと聞いてきたのはその為だ。
空中で炎のブレスを鮮やかにかわし続ける環奈の魔力が、徐々に大きくなっているのが分かる。
相手もおそらく気が付いていて警戒はしているだろうが、射程距離に入ればほぼかわす事が不可能な攻撃だ。
攻撃なんてしてないで、相手の魔力に合わせて防御力でも高めておいた方が良いかもしれないぞ。
環奈が勝負に出た。
ブレスをかわして急降下する。
降下中に人間の姿へと変化し、居合斬りの体勢のままボスドラゴンへと向かっていった。
これは流石に決まったか‥‥いやっ!?
「絶‥‥!」
アレは幻影魔法だ。
幻影魔法はマスタークラス以上なら簡単に見抜く事ができるだろうが、常に警戒していないと僅かな間は騙される。
そしてこの戦いの中で、そのわずかな時間は勝敗を左右する可能性があった。
ギリギリの所で幻影を見抜いた環奈だったが、少し攻撃動作に入っていた分魔力が暴走した。
自分の練った魔力が噴き出すのを自分で止めわけで、当然そこには魔力を必要とする。
自分のパンチを自分でガードするようなもの。
ノーダメージとはいかない。
「馬鹿が!ひっかかったな」
「こりゃちと苦しいのぉ」
しかし環奈にそれほど追い詰められた様子はない。
一つの攻撃が失敗し、少しダメージを与えられたくらいのものか。
本当はそれ以上かもしれないが、苦しい戦いをしてきた環奈にとって、この程度は大したピンチでもないのだろう。
環奈は再び黒死鳥となって空へと上がった。
そして今度はすぐに急降下し再びボスドラゴンへと向かう。
俺は幻影魔法に注意して戦いを見ていた。
ん?また幻影魔法か。
ボスドラゴンは自らの幻影を残して左手に移動した。
今度は落ちて来た所をブレスで狙っている。
でも、その環奈も幻影なんだよな。
環奈は既に人の姿へと変化し、ブレスを吐こうとするボスドラゴンの前へと出ていた。
口を開けたボスドラゴンは、正に驚きで|惚《ほう》けたまま硬直していた。
「絶円じゃ‥‥」
ボスドラゴンがブレスを吐く前に首を切断していた。
終わってみれば環奈の楽勝だったように見えるが、結構危なかったな。
最初の絶円が静止できていなかったら、勝負は分からなかっただろう。
そう考えると紙一重の勝利だった。
でもまあ、そうなっていたとしても、おそらく環奈は勝っただろうけどな。
「七魅国王側の勝利だな」
「ありがとうなのだ!助かったのだ!環奈は流石なのだ!」
「くっそぉ‥‥まさかボスが負けるなんて‥‥」
「しかも完全に死んでいる‥‥」
「ボスー!」
やっぱりボスが死んだら仲間は悲しむんだな。
いくら人間にいいように使われていたとしても、こいつらにとっては仲間という事か。
「お前ら。ボスは蘇生してやるから安心しろ」
「何をたわけた事を‥‥俺たちドラゴンを蘇生なんてできるわけがないだろうが‥‥」
ドラゴンも知らないのか。
「魔界なら蘇生できるぞ?今から俺がこいつの魂と、ついでに魔石と体も持って魔界に転移する。そして蘇生したら戻ってくるから待ってろ!」
俺はそう言いながら、異次元から仁徳霧島ゴーレムを取り出し、妖精霧島を憑依させた。
「魔界は初めてだからな。霧島を残しておく。みんなは此処で待っていてくれ」
「魔界か。わしも行ってみたいのぉ」
「安全そうなら連れてってやるさ」
俺はそう言って、魔界へと転移魔法を使った。
転移は問題なくできた。
到着した先は、オーガの里夕暮の近くにあった魔界の扉から入ってすぐの場所。
もちろん今は魔界の扉は存在しないが、間違いなくそこは魔界だった。
「少し魔素が濃いな」
あの日確認した時よりも魔素は濃く感じた。
正直あまりこの場所にはいたくない。
なんというか、別に酔うってほどじゃないけどバスに乗っているとなんとなく気分が悪い、そんな感じだった。
こりゃさっさと蘇生して帰るか。
でも一応俺は確認しておきたい事があった。
魔石が無くても蘇生が可能なのかという事だ。
俺は魔石を異次元に収納したまま、体と魂だけで蘇生を試みてみた。
一応精霊魔術と治癒魔術の蘇生も試してみたが、蘇生は不可能だった。
続いて神の加護による蘇生だ。
体は素材としてそのまま使えるので、おそらくはそのまま蘇生できるはずだと思っていた。
しかし魔法を発動すると、死体を素材にして、別の体を構築して蘇生が始まった。
「マジかよ。蘇生と言うよりは生まれ変わりに近いかもな」
蘇生はすぐに終わった。
元のボスドラゴンの体は消失し、新しいボスドラゴンが誕生した。
目を開けゆっくりと首を上げた。
その姿に少し俺は違和感を覚えた。
何かが違う。
これはどういう事だ?
こいつ額にあるはずの魔石がないぞ?
「あれ?ここは‥‥俺、負けたんだな。いやぁ~まいったまいった。というかなんで生きている?」
「いや、俺が魔界に連れてきて蘇生したんだが‥‥お前なんで魔石がないんだ?」
これは驚きの発見だった。
魔物の蘇生が魔界でできるというのは早乙女の本に書かれてあったので、ある程度確信を持っていた。
しかしまさか魔石が無くなるとは思っていなかった。
「そう言えば魔石が無いね?ああ、蘇生してくれたんだ。ありがとう」
「どういたしまして」
つかなんだこいつ。
さっきと別人、じゃなくて別ドラゴンみたいじゃないか。
魔石が無くなったからか?
やはり魔石には人間に対する憎悪みたいなものを植え付ける効果があるのか?
「魔石が無くなったからか、九頭竜との契約も解除されたみたいだな。うは!俺は自由になったんだ!」
そして思った通り九頭竜に使役されていたのか。
つか魔石があるから使役されていた?
人間に対する憎悪の植え付け、或いは使役。
それって魔石によってコントロールされていると考える事もできる気がする。
単なる俺の憶測にすぎないが、大きくはハズレていないだろう。
俺はもう一つ確かめる為に、偶々襲い掛かってきた魔界の魔物、フレイムベアーを妖糸で斬って捨てた。
そして今度は、魔石をそこに残したままで魂を蘇生してみた。
すると魔石は元に戻らず、再び魔石の無い魔獣が誕生した。
そのフレイムベアーは、特に俺に襲い掛かってくる事もなくその場から去って行った。
「何をしているの?魔界ってなんだか薄暗くて怖いんだよね。人間界に戻らないのかい?」
「そうだな‥‥」
魔界での蘇生は、別に魔石は必要ない。
そりゃそうか。
人間の魂をこちらで蘇生すれば魔物になるわけで、魔石が必要となれば蘇生できないからな。
そしておそらく、魔石には魔物をコントロールする何か効果がある。
フレイムベアーも人間を襲わなくなって何処かへ去って行った。
つまり魔石の無い魔物は動物に近いんだろう。
色々と面白いなこの世界。
なんだかRPGゲームをしているって感じだぜ!
「よし!とりあえず戻るぞ。転移!‥‥」
あれ?転移できないんですが?
「どうしたの?もしかして人間界に帰れないとか?」
あれ?マジで?
「うおー!人間界に帰れねぇー!」
俺は魔界で吠えるのだった。
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