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此花策也の強さの秘密

歴史から俺が学んだ事。
その中に『賢人の知恵』というものがある。
昔の賢人たちはコレを使ってピンチを乗り越えてきたのだそうだ。
俺も今まさにコレを必要としていた。
「もうほとんどの本を見てきたのよね。一体どうするのよ。民は不安だらけなのよ」
リンは一人でイライラしているようだった。
民に二十万円分の政府紙幣を配ったとしても、不安や不満の声が完全に収まる訳ではない。
リンはしっかりと民の意見を聞く王族だから、民が苦しんでいると弱いのだ。
もちろん対応は毅然とやっているのだろうが、裏ではこうして俺に当たり散らす。
明日か明後日には武田の隠し本も見られる予定だし、俺はなんとかなると信じているんだけどな。
でも今はとりあえずこのリンをなんとかしないと面倒くさい。
此処は賢人にならって対応してみるか。
「俺は聞いてないぞ?」
「民の声は私が聞いてるのよ」
「急に言われても‥‥」
「急じゃないわよ!ここんところ毎日言ってるじゃない!」
「それは順序が違う」
「意味が分からないわ」
「俺は傷ついたよ」
「あんたじゃなくて私が傷ついているのよ!」
「誠意が見えない」
「なんの事よ?」
「そんな事も分からないのか!」
「分かる訳ないわよ!」
おい賢人たちよ。
お前たちの言う通りやってみたが、逆に火に油を注いだみたいだぞ?
こりゃ早いうちになんとかしないと、リンの頭がリアルに爆発するかもしれない。

そんなわけで次の日、俺は朝早くから上杉領から少し武田領内に入った辺りを見て回った。
するとすぐに見つかりましたよ戦場が。
しかし眠いなぁ。
こんな朝っぱらから戦争なんてするなよな。
時差を考えると俺の住むマイホームの場所よりも一時間も朝が早いじゃないか。
朝の一時間ってのが最も大切なんだよな。
ここでしっかり睡眠がとれれば一日快適なんだよ。
尤も、俺の回復力は半端ないから、眠いのはあくまで感情的なものなんだけどね。
つまり別に眠くないけど、眠い気分って事。
俺は上空からいつものように地上を見下ろしていた。
「やってるやってる。うわっ!あいつらマジ強いわ。確かに人類最強って言うだけあるな」
ヒューマン全てに言える事だけれど、強さには限界があるとされている。
人は何処まで強くなっても神にはなれない。
それは勇者にも言える事で、そこには大きな壁があるのだと。
俺の邪眼による計測で言えば、その壁はレベル二百九十九から三百になる所にある。
だからヒューマンはどれだけ強くなってもレベル三百にはなれないのだ。
俺や汽車は何故かそれを超えているが、その理由は分かっていない。
おそらく碓氷の所で強化されたか、ホムンクルスというのが俺の予想だ。
本当の所は知らないけれどね。
しかし眼下で戦う二人の内の一人は、そのラインを上回っているようだ。
「見た目で判断したら駄目だけど、強い方が上杉賢神で、守り一辺倒なのが『|武田神幻《タケダジンゲン》』だろうな」
この世界は何故かイメージ通りな所も多いからな。
さて、ちょっくら戦いを止めて来るか。
俺は一気に地上へと下りて、賢神と神幻の間に割って入った。
「はいはい!ちょっと戦闘はやめてもらえないか?」
俺は両者が振り下ろした刀を両手で受け止めて動きを封じた。
「何奴?」
「わしの刀を受け止めるじゃと?」
両者はすぐに後ろへ跳んで間合いを取った。
「俺は此花策也だ。訳あってあんたたちの戦いを止めにきた。何のために戦争をしているのか知らないけれど、そろそろ辞めたらどうだ?」
第三の目を使わなくても分かる。
こいつらはマジで人間だ。
人類最強は嘘じゃない。
本当に勇者よりも強くなれる人間がいたのか。
「此花策也だったか。皆の者!戦闘をやめい!」
賢神は戦う兵士に声を掛けながら刀を鞘に納めた。
少し女性っぽい声だな。
転生前の世界では女性として描かれる事もあったけれど、この世界でも案外そうだったりしてな。
「こいつか賢神?お前の言っていた奴は?こっちも戦闘をやめるぞ!」
神幻も同じく刀を鞘に納めた。
どうやら普通に話ができそうだな。
というかむしろやけにアッサリとしていないか?
「そうだ。だから言っただろう。戦っていたらその内来ると」
「まさか本当に来るとは思わなかったぞ」
この二人、一体何を言っているんだ?
俺が来る事が分かっていたのだろうか。
「どういう事だ?俺が来ると分かっていたように聞こえたが?」
「別に来るのがお主だったと分かっていた訳ではない。ただ、我らよりも強い奴を探していてな」
「そうじゃ。そしたら賢神の奴が戦っていたらその内現れるとかぬかしおっての。気が付いたら数十年戦っておったわい」
クッソ意味が分からない二人だなおい。
「どうして強い奴を探していたんだ?つかそんな理由で戦ってたの?」
驚きを通り越して呆れる理由だ。
「そう慌てるな。ちゃんと説明してやる」
「そうじゃ。わしらはあるダンジョンを攻略して生還できる奴を探しておったのじゃ」
「ダンジョン攻略?」
「そうだな。とにかく私たちはそのダンジョンを攻略して最奥にある何かを持ち帰って来られる者を探していた」
「それができる者を見つけるのがわしらの使命なのじゃ」
よく分からないな。
そんなに難しいダンジョンなのだろうか。
「えっと、つまりだ。俺がそのダンジョンを攻略してその何かを持ち帰ってくれば戦争は辞めるって事でオッケーなのか?」
「そうだな」
「その通りじゃわい」
ふむ、シンプルな答えに行きついたぞ。。
となるとそのダンジョンはこの二人でも攻略できないって事だよな。
何か凄い魔物が出てくるのか、それとも別の何かがあるのか。
「そのダンジョンは一人でクリアしなくちゃならないのか?」
「別にそんな決まりは無かったよな?」
「そうじゃな。最奥にある何かを持ち帰ってこられるのなら何でもいいぞ」
ん~‥‥こいつらでも攻略できないダンジョンに、下手に誰かを連れて行くのも足手まといになる可能性がある。
みゆきなら問題無いと思うが、万一を考えるとやはり俺一人で行くのが良いだろう。
菜乃と妃子は一心同体少女隊だから生贄として連れて行くか。
『私は死にたくないのです!』
『そうだそうだ横暴なのね!』
こいつらマジで俺と一心同体化してるよな。
思った事まで読まれてるし。
でも俺は、お前たちなら一緒に来てくれると信じているぞ!
『‥‥』
「分かった。俺はお前らの戦いを止めて欲しいと言われてきたわけで、それで辞めてくれるのならそのダンジョンから何か知らないけど持って帰ってこよう」
これでいいのかな?
今の俺なら神でも出てこない限りは死にはしないだろうし、ダンジョン攻略に問題はないのだが‥‥。
梅影姉妹は知らんけど。
なんとなく梅影姉妹が泣きそうになっている気がしたので、『ちゃんと助けてやるから』と心で念じておいた。
「よし、話が早くて助かるぞ」
「それでそのダンジョンってのは何処にあるんだ?」
「そこじゃな」
神幻が指さしたそこはたたの大きな岩山に見えた。
多分入り口は向こう側にあるんだよね?
でもこれじゃなんだか凄く急勾配なダンジョンに見えるな。
つかこんな近くにあったとは。
「せやー!」
突然賢神が刀を抜いてその大きな岩山に斬りかかった。
えっ?洞窟の入り口壊しちゃうの?
一瞬にして岩山は崩れ去った。
「ちょっ!っと‥‥ああ‥‥」
入り口はこの岩山の向こうだったのね。
なんかおかしいと思ったわ。
「では私たちは此処でお茶でもしながら待っているから、軽くダンジョンを攻略してきてくれたまえ」
「戦わないでいるのもなんか変な感じじゃのお」
さっきまで殺し合いをしていた二人とは思えないくらい、リラックスムードでお茶を飲み始めていた。
手を抜いて戦っていた訳じゃないよな?
不思議な二人だよ。
それはとりあえず今はどうでもいいんだ。
とにかく俺はダンジョンを攻略しないと。
今まで結構色々なダンジョンを回ったけれど、やっぱり異世界と言えばダンジョン攻略だしワクワクしてくる。
最速で攻略してやるぜ!
俺は高速で入り口から入っていった。
真っ暗なのでライトは付けておく。
中は特に何かがあるわけでもなく、ただの洞窟みたいだ。
魔物の気配も今の所はない。
犬獣人の広範囲索敵をしてみるか。
二キロ圏内何もいないよな。
俺はとにかく洞窟の中を進んでいった。
一本道で特に迷う事もなく、ただ洞窟の中を進むのみ。
正直飽きてくる。
さっさと出てくるなら出てこいよ。
『策也タマ危険なのです!』
『凄くヤバい感じがするのね。怖すぎるのね』
俺は何も感じないが、魔物の本能で何かを感じたのだろうか。
本能ってのは理屈でどうにかなるものではないが、否定したがる人が多いんだよな。
こうやって感じない人はね。
理性でなんとでもなると思っている人もいるが、それはあくまで自分だけだと認識してほしいものだよ。
俺は当然二人の本能を信じる。
瞬時にその場で立ち止まって警戒した。
「コントンジョノイコ‥‥」
突然巨大な力が襲ってきた。
俺は素早くそれを回避する。
猫獣人の反射神経と、ウェンディゴの高速移動の能力が無ければ、俺は消滅していたかもしれない。
なんだこのヤバい攻撃は。
俺は邪眼で確認した。
『|混沌除ノ異子《コントンジョノイコ》』だと!?
知らんな‥‥
見た目はただのゾンビに見えるが、これは暗黒神の仲間か闇の神のようだ。
この俺ですら一瞬で葬り去られる可能性がある敵か。
「コントンジョノイコ‥‥」
またきた!
俺はギリギリて敵の攻撃を回避する。
ヤバいヤバい。
とりあえずバクゥビームで攻撃してみた。
直撃を食らっても混沌除ノ異子は全くの無傷のようだった。
こりゃ強すぎる。
魔力的には俺と同格だが、倒す術が思いつかない。
地上ならアレが使えるけれどダンジョン内だしな。
「魔力ドレイン結界!」
やったか?
直ぐに影の中に逃げた?
『菜乃、妃子、直ぐに逃げろ!』
『もう逃げてるのね』
『こいつの相手は策也タマしか無理なのです』
とりあえず無事のようだな。
混沌除ノ異子は影から出てきた。
「ターンアンデット!」
試してみたけどまるで効かないな。
影に逃げられる以上『|最強神天照降臨《カワイイハセイギ》』とか『微レ存』とか、結界を使う魔法は通用しない。
バクゥの目で一瞬くらいは止められるだろうが、それでできる事と言ったらたかが知れている。
王の命令やジャージーデビルの鳴き声だって似たようなものだろう。
「コントンジョノイコ‥‥」
危な過ぎる。
思考が複数無ければ完全に殺られているぞ。
しかも思考速度が三倍でこれだ。
こんな奴が人間界にいるとか、信じられない。
これほどチートな攻撃能力を持った奴、倒す方法なんてあるのか?
あれ?もしかしたら行けるかもな。
「びえぇーん!止まれ!」
俺はジャージーデビルの鳴き声と王の命令を使って一瞬動きを止める。
更にバクゥの目で一瞬でも時が止まれば、高速移動で背後に回り、肩を叩く事くらいはできるのだ。
「なんだ、簡単じゃないか!くらえ!コントンジョノイコ!」
俺は混沌除ノ異子をコントンジョノイコで捉えた。
ゾンビみたいな体は一瞬の内にダンジョン内から消滅した。
最強の攻撃をコピーしてしまえば、倒せない敵も倒せてしまうってね。
しかしこの能力はマズいだろ。
魂も残らず消滅してるぞ。
もしかしたら別のどこかに飛ばす能力にも感じるが、少なくとも俺の知る世界に飛ばされたのではなさそうだ。
可能性があるとしたら、宇宙の果てか、ブラックホールか、天界か暗黒界か‥‥
そう簡単に使えない能力だけど、どうにもならない時には最終手段としては使えそうだな。
『菜乃、妃子、戻って来ていいぞ』
『策也タマ、倒したのです?』
『倒したぞ』
『流石策也タマなのね。信じていたのね』
『ああ、だから戻ってきていいぞ?』
『私たち今、ダンジョンの外まで逃げてきたのね』
『そうなのです。だからここで待ってるのです』
全く信じられてねぇー!
でもそれくらいの方がいいか。
最悪俺も逃げるしかなかったからな。
とはいえこんなのが続けて出てくるダンジョンだったらヤバいぞ?
流石人類最強たちが攻略を任せるだけの事はあるな。
そう思って気を引き締め直したが、この後すぐにダンジョンの最奥へと到着した。
そこには一つだけ宝箱が置かれていた。
俺は邪眼でトラップなど確認してからそれを開けた。
割と大きめの宝箱だったが、中にはぽつんと指輪が一つ入っているだけだった。
それはどこかで見た事のある形をしていた。
「ああ、闇の神を召喚する指輪に似ているんだ」
俺は邪眼で確認した。
『転移の指輪』という事が分かった。
正直俺の邪眼でもハッキリと分からない所をみると、行く先はおそらく暗黒界か。
もしかしたらこれで双方向の行き来が可能になるのかもしれない。
まずはちゃんと調べてからじゃなきゃ流石に使えないよな。
深淵の闇を作り出す能力で行くのは多分行けると思うのだ。
魔界の深淵の闇はおそらく暗黒界に繋がっているのだから。
だた帰ってこられる保証がないから行けないんだけどさ。
この指輪を使っても戻ってこられる保証はないから行く事はできない。
でも一応この指輪の構造だけは解析しておこう。
これと同じ事ができれば、もしかしたら暗黒界との転移が可能になるかもしれないからな。
解析には三十分ほどかかったみたいだ。
集中すると時間を忘れるよね。
ハンドレッドコアな俺の思考でもこれだけかかるのだから、普通の人には解析は不可能なレベルだな。
「さて帰るか」
瞬間移動魔法が使えたので帰るのは一瞬だった。
戻ると菜乃と妃子が賢神と神幻と共に楽しくお茶を飲んでいた。
なんだろうこの気持ち。
別にいいんだよ。
そういいんだ。
だけどなんだか無性にプロレスがしたくなるんだよね。
俺は一人ずつ何も言わずにジャーマンスープレックスの餌食にした。
「いきなりなにするのね」
「いや、なんとなくプロレス技をかけてほしそうにしていたから」
「してないのです」
「そっか。それは悪かったな。それでアイテム、取ってきたぞ」
俺は手に入れた指輪を賢神に投げた。
「このダンジョンを攻略できたか。流石だな。私でも恐怖で足が前に進まなかった。中には何かいただろう?」
「ああ。混沌除ノ異子っていうふざけた名前の闇の神らしき者がいたよ。俺でも逃げようかと考えるくらいにヤバかった」
「そんなにヤバい奴がのお。それで倒したんじゃろな?」
「多分な。少なくとももうこの洞窟には出ない‥‥と思うぞ」
この世界から消滅はしたが、また戻ってこないとも限らないんだよな。
「とにかく、これで私たちの戦いも終わりだな」
賢神はそう言ってかぶっていた烏帽子頭巾を取った。
長い黒髪が風に|靡《ナビ》いた。
俺は賢神の顔を見て驚いた。
女だったのは何となく感じていたが、今の俺に少し似ていて本能的に思ったのだ。
多分今の自分と近しい人間であると。
「似ていると思ったか?」
「ああ。もしかして俺たちは血縁関係があるのか?」
「それは間違いないと思うぞ。なんせ人間でそこまで強くなるには、上杉女系の血が流れていないと無理だからな」
「えっ?それって俺は息子って事か?」
「違うな。私は子を産んだ事がない。おそらくだが私の姉の子だろう。私とそこそこ似ているからな」
そうか、俺はこの人の姉の子なのか。
何故かそう確信できるんだよな。
似てるのもあるけどさ、なんとなく波長が合うというか本能というか。
「ただお主、私の子かもしれないと思ったって事は、母親を知らないのか?」
「ああ。六歳よりも前の記憶が無くてな。それ以降は両親はいなかった」
「そっか。姉さんは此花のと結婚していたのかな」
「いや、俺の父親はどうやら織田家らしいぞ」
「織田だと!?あの虚けの家系か!いやあり得ない。というわけで、姉さんの子じゃなさそうだ」
えー‥‥
でも多分この人の姉が俺の母親だと思う。
どうして織田の人間と結婚したのか、そんな事は知らないけどさ。
この後俺は神幻も含めて色々と話をした。
なんというか神幻は父親のようで、賢神は母親のようであったから喋っていたかったのだ。
そんなわけで気が付いたら日は暮れていた。

「ヤバいヤバい遅刻遅刻~」
一瞬自分は、ジャムをたっぷり塗ったトーストを咥えているのではないかと錯覚した。
何にしても俺は、急いで図書館に顔を出した。
既に松姫は帰った後のようだった。
また明日か。
俺は手の中にある指輪を異次元収納へとしまった。
賢神と別れる時、ダンジョンで取ってきた指輪を渡されたのだ。
『これはお主が持っていないと意味がないのだ』
俺が持っていると意味があるのかねぇ。
「此花王、ありがとうございました。戦いは止められたのですね。お父さんから聞いて戻ってきました」
「ああ。ちょっとお父さんたちと話してたら遅くなっちゃったよ」
戻って来てくれたのか。
「そうですか。それでどうしますか?今から見に行きますか?」
「当然。せっかく松姫が戻ってきてくれたんだしね」
これはありがたい。
さっさと確認して、駄目なら次の手を考えないと駄目だしね。
それに一日待つのってなんか落ちつかないし。
きっとリンも五月蠅いだろうからさ。
「では行きましょう。隠し本は我が屋敷の中にあるんです」
「えっ?そうなの?」
この図書館にあるのなら、あわよくばエロ本の確認もしようと思ってたんだけどな。
いや嘘だけど。
『それも嘘なのね』
『確認する気満々だったのです』
こいつらまた勝手に俺の心を読みやがって。
とにかく俺は、案内されるまま松姫に付いて行った。
連れてこられた屋敷は、微妙にサイズが大きいように感じた。
神幻って体が大きいからな。
それに合わせてあるんだろう。
「こちらの部屋です。好きに見ていただいて構いません。ですがお父さんに見つかるとどうなるか分かりませんから、できれば明日の夕方頃までにしていただけると助かります」
「分かった。なんとかなるだろう」
菜乃と妃子も今日は徹夜かな。
なんて思っていたのだけれど、隠し本はそんなに多くは無かった。
たった一万冊程度か。
日付が変わる頃までには全部目を通せるな。
俺は予定通り全部に目を通した。
そしてとうとう見つけた、新たな航路を築く方法を。
「かなり端折ったのです」
「端折ったのね。私たちの頑張りはちゃんと説明してほしかったのね」
「五月蠅いな。説明している時に話しかけてくるなよ」
全く、ドンドン少女隊は常識外れになっていくようだ。
とにかくこれでリンの愚痴を聞く必要はなくなりそうだな。
俺はお礼の手紙をその場に残し、マイホームへと戻るのだった。
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