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2013年11月4日【月】19時44分48秒
【(*´∇`*)】川柳と短歌を始めました。
2013年11月4日【月】19時43分21秒
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西への旅は終わり‥‥

人は生きる為に行動する。
それは本能だ。
そしてより良く生きようとする。
否定する事はできないが、正直この状況では素直に認めたくはなかった。
「少しずつですが、近衛や遠江から此花に人が入ってきているようです」
総司からの報告は、俺には嫌な予感しかしなかった。
この世界の人たちはとにかく帰属意識が低いので、問題があればすぐに住まいを変える。
全員がそうという訳ではないが、転生前の世界と比べれば明らかに多い。
現在この世界で今まで通りの食事ができる国は限られてきている。
多少でも食べられない物があると納得できないという者は、こうして移動を開始していた。
「まあ数は少ないから、受け入れても今はなんとかなるだろう。ただ今後増えると色々と問題は出てくるんだろうな」
「治安はなんとかなるでしょうが、国内の食料が少しずつ削られて行けば民も不満に思うでしょう。数が多くなれば住まいの問題も出てきます」
総司の言う通りだ。
そして国力のバランスも崩れていく事になる。
何処かの国が強くなったり弱くなったりすれば、当然争いが起こる可能性も出てくる。
近衛はずっと九頭竜と敵対してきた。
今近衛から人がいなくなって国力が落ちれば、九頭竜が黙って見過ごすとも思えない。
武力による領土変更に対してはミケコが抑止力になる可能性もあるけれど、大国に何処までそれが通じるのだろうか。
或いは領土変更なく屈服させてしまえば、属国や保護国にする事だってできるのだ。
かと言ってほとんど民の移動に制限がないこの世界で、国境封鎖とか無理だよね。
「とにかく現状から少しずつ回復させていくしかないだろう。とりあえず一ヶ月の辛抱だ。リン、魔界での農作物増産はどんな感じだ?」
「堕天使部隊に作業を手伝ってもらっていい感じに進められているわ。疫病は収束したし、堕天使部隊の中にこの病原体に対応できる人もいるから、国内分の薬作りはもう不要だしね」
国内は薬が無くてももう対応できる。
他国の分はまだ作る必要はあるけれど、風邪に使用する程度の量だからもう問題はないと言っていいだろう。
エルフ王国スバルと、此花のナンデスカに製造工場があるから、それだけでもう十分のはずだ。
しかしこういう病原体ってのは、完全に無くなる事はないんだよな。
ヒーラーが治癒できるようになるまでは、薬は少量とは言え作り続ける必要がある。
有栖川旧神は全く酷い事をしてくれたもんだよ。
「千えるの方はどうだ?」
「それがですね。愛洲は備蓄があったから何とかなってるんですが、四十八願の状況がますます悪化しているようなんです」
「金も貸して買えるようにはなったはずだが?」
「それはそうなんですが、それでも不満に思う者がいるのでしょうか。盗賊が村や畑を襲う事件が増えてきているようなんです」
「盗賊ねぇ‥‥」
流石に国内問題にまではこちらも介入できないぞ。
でもあそこの国は貧しい者が集まってきた国でもある。
ある意味世界の問題を一手に引き受けて来た訳だ。
そんな国を見捨てて良いのだろうか。
何かがあればこうなる事くらい予想はできたよな。
「仕方ない。夏芽に連絡して、盗賊退治に助けが必要なら人を貸すと伝えておいてくれ」
「分かりました。でも良いんですか?おそらく今後世界中で同じ事が起こる気がしますが」
「まともな王国なら一ヶ月くらいなんとかするだろ。四十八願は少し違う国だからな」
とにかく一ヶ月。
いや既に一週間近く準備は進めてきているから後三週間の辛抱だよ。
「それともう一件気になる事があります」
嫌な予感しかしねぇぞ。
「何かな?」
「行商人の話ですが、黒い大きな影が四十八願領内で発見されたそうです」
「黒い影?」
「はい。その影は空に広がり、東に向かったとか」
「場所は?」
「サカシーの町の南西辺りだそうです」
あの辺りも魔物が出た記憶があるな。
「魔物かな?」
「可能性はあるでしょうね」
「とりあえずミケコに調べさせておくよ」
「分かりました」
「と言う訳だゆかり。アルカディアに伝えておいてくれ」
「了解であります」
火山の噴火から始まって、疫病、移民問題、盗賊、謎の影、次から次へと今年は厄年だな。
疫病は人為的なものだったけどさ。
「他には何もないか?」
俺はみんなを見回した。
「だったら今日の四阿会議はお開きだ」
「おつかれ」
「お疲れ様ー!」
「お疲れ様です」
各々席を立って自分の持ち場へと去って行った。
さて今日だが、ようやく色々とやってきた事も落ち着いてきた。
転移の指輪は主要な者には行き渡ったし、暗黒界の温泉にも順次連れて行っている。
町の防御結界も国内はカバーできたし、竜宮洞窟も問題なく運用を開始した。
疫病や食料の問題はリンたちに任せて問題はない。
となると俺がやるべきはやはり防衛だ。
クトゥルフは邪神のトップ。
今はおとなしい旧神だけれど、この先もずっとおとなしいとは限らない。
いずれどこかで戦わなければならない事がくるかもしれない。
その時俺は勝てるだろうか。
仲間の力は必要ないだろうか。
そう考えたら、みんなにも俺自身も更に強くなる必要があるように感じる。
ならばやるべき事は自ずと見えてくる。
「賢神、七魅、兎白、これから魔界に悪魔狩りに行くが、お前たちも来るか?」
「悪魔狩りだと!もちろん行くに決まっているじゃないか!そういうのを待っていたんだぞ!」
「悪魔とか怖いのだ。でも策也がいるなら一緒に行くのだ」
「兎白は怖くなんかないですよ。神ですから。そして神は悪魔を倒すのが仕事なのです。当然行く‥‥と言いたい所ですが、今日は用事を思い出しました。望海の相手をする必要があるのです」
人間言い訳する時は口数が増えるよな。
神らしいけどさ。
でも今回は兎白は連れて行かない方がいいか。
兎白が殺られるとは思わないけれど、戦力にはならなさそうだし。
「分かった。仕方ないな。じゃあ賢神と七魅、行くぞ!」
「あっ‥‥」
ちょっと寂しそうな兎白の顔を残して、俺たちは魔界へと瞬間移動した。
ついてきたかったのかな?
まあでも今回はこの方がいいだろう。
此処で神クラスの魔石を手に入れて、兎白も強くできたら活躍できるようになるさ。
「ここは‥‥前に来た事があったな」
「ああ。これを使った場所だ」
俺は異次元収納から、悪魔召喚用のクリスタルを取り出した。
これで召喚できるだけ召喚すれば、魔界の悪魔も根こそぎ狩れるというもの。
今日は徹底的に悪魔を狩るのだ。
「じゃあ召喚するぞ」
「任せておけ!どんな奴でも倒してやる!」
「あわわわわ‥‥可愛いのが出てきてほしいのだ」
俺は悪魔を召喚しまくった。
しかし俺たちにはどれも敵にはなり得なかった。
賢神も七魅も、そして妃乃も簡単に相手を戦闘不能にし、そして最後は妖凛が美味しくいただきましたとさ。
「ん~‥‥結構な敵を食ったけど、妖凛はもうあまり強くなってないか」
(コクコク)
ただ色々な能力は手に入れられているな。
魔力は上がらなくても能力で強さは変わる。
心配は食らった者の意識が与える影響だけど、妖凛に限ってはそれはなさそうだった。
元々ニョグタは食らう者だし。
ちなみに倒した悪魔は、ベヒモス、ベルゼブブ、アザゼル、ザマエル、アザエル、マハザエルの六体。
悪魔と言うだけあってみんな好戦的だったけれど、召喚を繰り返すたびに出てくる者は弱くなっていった。
「魔石は欲しいけれど、これよりも弱い悪魔だと戦力にならないし、この辺りで終わりにするか」
「私はどうしてしまったんだろう。強い相手だと思うのだが、自分が強すぎてつまらないぞ!」
賢神ほど強くなったら、対等に戦える敵なんてそうそういないよ。
「あたしはだいぶ普通に戦えるようになってきたのだ」
普通にね‥‥。
この辺り一帯焼け野原になってるんだけどな。
七魅もアホみたいに強くなったから、本当に普通に戦ったら町がいくつも消滅しかねない。
とにかくまずは手加減する事を覚えてくれ。
「悪魔をこれほど簡単に倒せるなんて楽しすぎるのさ!ざまあごらんあそばせなのさ!ははははは~!」
妃乃が悪い顔になってる。
シャドウデーモンって悪魔崩れの弱者って感じらしいから、逆に倒せるのが嬉しいのは分かるけどさ。
じゃあみんな帰るぞ!
こうしてとりえず六つの神クラスの魔石と魂をゲットしたのだった。

俺たちは一旦ガゼボに戻って、夕飯前のティータイムを過ごしていた。
ずっと働きづめだと体が持たないのだ。
いや、体は持つけど気持ちがね。
王様は辛いよ。
「ではなぞなぞたーいむ!なのね」
「いきなりだなおい」
妃子が突然ナゾナゾタイムを宣言した訳だが、マッタリしていた俺たちにとっては割と面白そうに感じた。
「よし!何でもくるがいいぞ!」
「あたしはあまり得意じゃないのだ。でも分かった時は嬉しいのだ」
「妃子のナゾナゾは微妙だから気を付けるのです」
(コクコク)
気を付けるって何をだよ。
「では第一門!じゃじゃじゃん!この世界は焼肉定食ですね?では、魔界はどうでしょう?なのね」
いや、一体何を言っているのか全く分からないぞ?
焼肉定食じゃなくて、弱肉強食なのか?
いやむしろ魔界の方が弱肉強食なんじゃないのか?
「難しいな。もしかしたらこれは騎士団試験よりも難しいのではないか?」
「当然なのね」
いやいやいや、本当にそんなんでいいのか?
まともに考える事自体おかしんじゃね?
「多分だけど、餃子カレーうどん定食なのだ!」
「惜しい!でも違うのね」
えっ?惜しいの?
なんで七魅はそんなのが分かるんだ?
「どうせ妃子の事だから、答えはウンコ味のガムなのです」
「全然違うのね。それは精霊界の答えなのね」
えー!?
精霊界ってウンコ味のガムだったのか?!
人間界でマジ良かったわ。
「妖凛は分かるのね?」
(プルプルプル)
そうだよな。
分からないよな。
妖凛だけは普通で良かった。
「おお!妖凛正解なのね!正解はミノタウロスの焼きトウモロコシなのね」
(パァ!)
妖凛正解していたのか!?
しかもメッチャ嬉しそうだし。
なんだよ。
どういう事なんだ?
分からないのは俺だけなのか?
もしかして転生者には分からない何か特別な言葉でも含まれているのだろうか。
「はい、策也タマをからかうのはこれくらいにするのね」
「ははははは。策也の驚いた顔が笑えたぞ」
「策也も騙される事があるのだ」
「いつも騙されているのです」
(コクコク)
「おまえらー!」
結局俺たちのマッタリティータイムは、バトルロイヤルなプロレス大会へと変わるのだった。

そうしてみんなと戯れた後、芝生で寝ていたらテレパシー通信が入ってきた。
『兄上様、四十八願領の黒い影の正体が分かりました』
『お、ミケコか。それでなんだったんだ?魔物か?』
『ご安心ください。魔物ではありませんでした』
『そうか。それは良かった』
ヤバい魔物だったら、何かトンデモない事が起こる可能性もあったしな。
『それで結局なんだったんだ?』
『虫の群れでした。しかも食べられそうです。食料危機には丁度良かったかもしれません』
『えっ?食べられそうな虫って‥‥バッタとかイナゴか?』
『はい。イナゴです』
これはマズいぞ。
イナゴは収穫前の穀物を食い荒らす最悪な害虫だ。
主食さえなんとかなれば最悪は回避できると思っていたが、これは最悪へと進んでいるのかもしれない。
間違いなく戦争に繋がる‥‥。
『それでミケコ。イナゴはその後どうなった?』
『食料として多少確保しましたが、ほとんどは西の大陸を北か東に移動していきました』
九頭竜領と伊集院領か。
俺が助けてやる義理はないが、とにかく早く処理しないと中央大陸に渡ってくる可能性もあるぞ。
いや、もう既に他に渡っている可能性もある。
『ミケコ、映像は撮ってあるか?』
『もちろんです。必要なら汽車からガゼボの端末に送りますが?』
『大至急頼む。それとこれからは此花領内に入ってこないように見張りを付けてもらえるか?』
『入ってくるとマズいのですか?』
『ああ。稲や小麦を食い散らかすからな』
『分かりました。我が領内への侵入を全力で阻止します』
『頼んだ』
リンにも連絡だ。
『駈斗、リンに伝えてくれ。四十八願領でイナゴの大群が確認された。北、或いは東に移動している。国内への侵入を阻止するようミケコと連携するように』
『イナゴですか。承りました』
『よろしく』
これは早急に世界に伝える必要があるな。
俺はガゼボへと移動した。
「ゆかり!もうすぐ汽車から映像が送られてくるはずだ。来たら‥‥」
そこまで言った所でゆかりの端末がメールの着信を知らせていた。
「来たか?」
「えっと‥‥違いますね。四十八願の夏芽からです」
「夏芽か。で、内容は?」
「できるだけ早くに合って話がしたいそうです。四十八願の女王が直接みたいですね」
全くこんな時に。
いやこんな時だからなのだろうな。
「分かった。今から行くと伝えておいてくれ。王都コジョヤカの屋敷でいいんだよな?」
「場所は指定されていませんが、今は王都にいるはずです」
「よし。では行ってくる。後の事は大帝が此処に来るから指示に従ってくれ」
「了解であります」
俺は瞬間移動魔法で四十八願の王都であるコジョヤカの上空へと飛んだ。
えっと、屋敷はあそこか。
チンタラ柵門から入ってられないな。
俺は屋敷の敷地内へと下りて影に入った。
千里眼と邪眼で居場所を確認する。
夏芽ならすぐに分かるのだ。
俺は夏芽のいる部屋へと移動すると、影から出て声をかけた。
「きたぞ夏芽。会って話ってなんだ?」
「おお!驚きました。今返事が来て返そうとしている所だったんですよ」
「悪いな。ちょっと急ぎの用もあってな。手短に済ませたいと思ったから飛んできたんだ」
「そうでしたか。それは申し訳ないです。ではその椅子に座って待っていてください。できるだけ早く女王様と話ができるようにしますから」
「ああ」
待ってる時間が惜しいが、大帝がとりあえずガゼボに行けたからもういいか。
後は任せよう。
しかしなんの話かね。
女王自らとか、軽い話ではないだろう。
気になるな。
しかしこうやって待っている時間って長く感じるよ。
まだ一分も経っていない。
暇だしちょっと夕凪に妄想の仕方でも教わるか。
『夕凪、今何している?』
『えっ?あ‥‥策也?何かあった?』
『いやちょっと暇だったから、妄想の仕方でも教わろうかと思ってな』
『本当に?策也がとうとう同士になったんだね‥‥はぁ‥‥』
ん?どうしたんだ?
『夕凪?自分の世界に入ったのか?』
『はぁ‥‥』
もしかしてコレが噂に聞く夕凪の必殺技『デリュージョンワールド』なのか?
何者をも寄せ付けない無敵の防御結界!
一説にはクトゥルフの攻撃すらアッサリ跳ね返すとか。
『おーい!』
『はぁ‥‥』
駄目だなこりゃ。
|何人《ナンピト》たりとも、私の世界は壊させない。
気分よく妄想しているみたいだし、此処はそっとしておこう。
俺は静かにテレパシー通信を終えた。
そんな事をしていたら、ようやく夏芽が戻ってきた。
「お待たせしました。では女王様の元へ案内します」
「おう」
いよいよ話ね。
いい話だったらいいなぁ。
そんな訳で案内されたのは、食事がテーブルに並べられた部屋だった。
この食料危機でもこれだけ余裕があるのか?
もう四十八願は乗り越えられたのだろうか。
「どうも。初めましてかな?此花策也だ」
「これはわざわざありがとうございます。わたくし四十八願の女王宮音と申します」
「よろしく」
俺は執事と思われる者に案内されるまま席についた。
「お急ぎと聞いておりますが、食事の時間くらいはございますか?用意させてしまったもので」
「用は今別の者がやってるから多少の時間はかまわないけれど、部外者にコレだけの食事を出して平気なのか?」
「と申しますと?」
「国内食料が不足していると思うんだけど?」
「それは此花王がお金を貸してくださったので大丈夫です。それにお客様ですからできる限りのおもてなしはさせてください」
どうも庶民感覚だと理解できないな。
まあ王族の感覚なんてこんなものかとも思うけれど、やっぱり俺にはついていけない。
「こんなに沢山あるけど、残したらどうなる?」
「それは廃棄処分する事になるかと‥‥」
宮陽の婆ちゃんならこんな時どうするか分からないけれど、少なくともこの女王はかなりヤバい気がする。
「だったら遠慮なく食べるけど、話があるなら早めにしてもらえると助かる」
俺はとりあえず適当に食べ始めた。
かなり美味いな。
最近こんな美味い物、此花の人間なら誰も食べて無いんじゃないだろうか。
食材も美味しい所を選んで使っているようにも感じる。
「分かりました。では率直に申しますと‥‥お願いを聞いていただきたいのです」
「お願い?まあ一応親戚関係だし、個人的にできる事ならできる限り聞くけど」
うわっ、これマジで美味い。
こんなの出せるなら四十八願は余裕なのか?
「今の倍ほどお金と人員を貸していただきたいのです。それと穀物も分けていただけたらと」
「どうして?結構な額貸したしこちらも人員をかなり割いていると聞いているぞ?」
「食べる物が足りなくて、九頭竜領から移民が大勢来ているのです。四十八願は人々を助ける国ですから放ってはおけません。ですから助けていただきたいのです」
ああ‥‥この人は駄目だな。
いや、俺が助けすぎたで甘えになってしまったのかもしれない。
一国の王には向いていないよ。
特に今のような覇権争いが存在する世界では、この人のように優しい女性では無理があり過ぎる。
これも危機回避の予言能力で決めた事なのだろうか。
予言に頼り、安全保障を完全に他国に頼るとかパシニャンじゃないんだからさ。
パシニャンってのは国防を大国に頼る某国の指導者ね。
※名前が可愛いからちょっと出してみました。
安全保障である国防、治安、食料確保、これらの意識が大きく欠落した人なのだろう。
仮に俺が今回できる限り助けたとしても、この国はもう長くは持たないな。
「お断りするよ」
「ええっ!」
「策也さん!どうしてですか?」
「夏芽も少し変わったか?昔の夏芽なら自分たちでなんとかしようとしたはずだぞ?」
「それは‥‥」
そりゃ目の前に助けを求める人がいたら助けてやりたいと思うよ。
でもその前に、一国を預かる君主ならまずは自国民を優先して助けないと。
自国民も助けられない人が他を助けようとするから共倒れになる。
転生前の日本を思いだすな。
外国に金をばら撒き、外国人に対して生活保護を支払い、なのに自国民に対しては増税の嵐。
社会保障費ばかりがかさみ、防衛や治安維持の事はまるでなっていなかった。
食料自給率も低空飛行が続くばかり。
自分たちで国を守ろうとする意思に欠け、全てアメリカに頼る。
そういう国はやがて亡ぶ。
「今自分たちで乗り越えられないなら、もう王様は辞めた方がいいよ。どうせ近いうちに国は亡ぶから、どこかに吸収してもらった方がいい」
「予言では‥‥此花王に相談しないと国が亡ぶと‥‥」
「どちらにしても亡ぶという事ですか」
予言か。
一番良い手を示すのではなく、あくまでそれが叶う簡単な方法を示すという事かな。
そしていずれはどうにもならなくなって、予言はされなくなる。
「国が亡ばなければ良いなら、此花領内に小さな領地を与えてもいいぞ。それで四十八願王国は守られるだろ?」
「ああ‥‥そういう事なのですね‥‥」
「つまりもう四十八願が存在し続ける為にはそれしかないと。わたくしも、今のやり方はマズイと思っていました。でも宮音女王の国も見てみたかったのです」
お人よしが作るお人よし国家か。
別に嫌いじゃないけどな。
ただ俺は嫌と言うほどそういう国を見て来た。
その国は衰退の一途をたどっていたんだ。
残念ながらそれだけで国は維持できないんだよ。
「分かりました。此花王の提案、受け入れたいと思います。ただ、四十八願領は全て此花で統治していただけないでしょうか?」
「えっ?この広い領地を全て?」
「はい。誰かに領土を譲るにしても、できるだけ民が納得できる人じゃないと駄目だと思うのです。此花王は昔から助けてくださったと聞いています。民も納得できると思うのです」
おいおいおいあり得ないだろう。
此花の領地が一気に倍に広がる事になるぞ。
そんなに食料確保できるのか?
三週間すればある程度はカバーできるか。
三週間どうやって乗り切る?
「本当にそれでいいのか?」
「はい。わたくしにはこの国の民を守る方法が思いつきません。後を継いではみたものの、危機回避の予言でしか何もできませんでした。最後だけは自分の意思でそう決めたいのです」
「分かった。でもこれからはこんな豪華な食事は滅多に食べられないぞ?」
「はい‥‥」
こうして俺は、四十八願の全領土を此花帝国で引き受ける事になった。
突然決まった事に四十八願側の一部が反対もしたが、心を鬼にして全員ナンデスカの町へと強制移動させ納得させた。
元四十八願領内の統治は、夏芽に任せる事にした。
もちろん此花領内となったので出来る限り支援はするが、破綻国家として生活保護は廃止させた。
国家なんてものはそこまで出しゃばるものではないよ。
セーフティーネットは、宗教団体や慈善活動団体に任せる。
『俺の』ウニ十字結社もあるからね。
寝食は最低限提供してくれるだろう。
それ以上は寄付を募り、困った人を『助けたい人が助けられる』仕組みを構築する事にした。
これで四十八願の、『西へ行けば夢が叶う、助けてもらえる』という話は幕を閉じるのだった。
【<┃】 【┃┃】 【┃>】
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