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一寸の人にも膨大な魂!

バッテンダガヤの町に到着したのは、太陽が天辺にある時間だった。
この町は東雲家の王都ではあるが、思ったほど大きな町には見えなかった。
と言うか、何処か物悲しく寂れているようにも見えた。
「なんかちょっと暗い感じのする町だな」
町に入って、俺は素直な感想を述べた。
するとリンがその辺りの事情を説明してくれた。
「東雲家はあまり評判が良くないのよね。此花家とはそれなりに良好な関係だから、うちとしてはあまり口出しはしたくないんだけど、ハッキリ言えば統治能力の無い王族よ」
リンからは『どうにかしたいんだけどね』という気持ちが伝わってきた。
とは言っても、おそらく別の国の王族が口出しして良い問題でもない。
それこそ戦争して民を開放するくらいの気持ちが必要になるだろう。
俺なら片手間でそれくらいは可能だが、正直そこまでしてやる気は起きなかった。
いや、俺がやったら逆に町が消し炭になるか。
仮に上手くできたとしても、そこから世界のバランスが崩れて逆に酷い事にもなりかねないしね。
下手に部外者が介入して無茶苦茶になった歴史のなんと多い事か。
それはずっと未来にまで続く。
それに俺は別にこの世界をどうこうしようなんて思っていない。
正直面倒だ。
ただ俺が楽しく暮らせればいいのだ。
そんなわけでこの話はここで終わらせる事にした。
「とりあえずギルドだな。そこで飯でも食って、早速新たなパーティーメンバーの募集をするのだ!」
「策也殿はブレんのぉ。わしは好きじゃぞぃ?」
環奈ちゃんの顔で云われると少し照れてしまう自分が悔しい。
中身爺さんだからな。
それにそもそも人間でもないからな。
「それでまたおんぶしてくれておっぱい揉ませてくれる女性を希望するの?そんな人今度こそ来るわけないわよ」
リンの言う通り、確かにそんな女が草子以外にいるとは思えない。
草子はあくまで予言に従っただけだからな。
「流石にな。とにかく若くて可愛い正真正銘女の子であればそれでいいよ」
「とは言っても、策也さんの言うような人は冒険者の一パーセントにも満たないでしょうけれどね」
「普通に応募者はこない可能性の方が高いわね。仕方ないから、今度は私の名前で応募かけて上げるわよ。私の名前なら一人くらいは応募があるわよ。きっと」
なんかリンの言い方はむかつくが、確かに俺の名前だと下心のみと思われてしまうかもしれない。
いやその通り下心のみなんだけど、流石に警戒されるだろう。
でも誘うのが同じ女の子、しかも隣の国の第三王女ともなれば、お近づきになりたい女もいるはずだ。
そんな女、俺は好きにはなれないと思うけれど、それはともかくとりあえず今はパーティーを華やかにする為にも、リンに任せる事にした。
「よろしくな」
俺はそう言って、環奈と草子を引き連れて飲み屋の方の席へと向かった。
霧島は一応リンに変な虫が寄ってこないように付き添わせ、不動は町を散策させておいた。
あんな道着姿のおっさんが町を散策とか、不審以外の何物でもないとは感じていたが、面白いので気づかないフリをした。

さてパーティー募集を掲示した後、しばらく俺達は4人で食事を楽しんだ。
変な男が話しかけてこないよう霧島は立たせてある。
見た目良い男ではあるけれど、眼光鋭い|強面《コワモテ》とも言えるので、当然話しかけてくる男などいるはずも無かった。
「すみません。少々よろしいでしょうか?」
話しかけてくるヤローがいやがりましたよ。
くそっ!
こんな事なら不動も立たせておくべきだったか。
そしたらちょっとむさ苦しくなりすぎか。
「えっと、何かありましたか?」
あれ?
リンが普通に会話をしている?
どういう事だ?
男が話しかけてきたら相手を憐みの目で見るリンが、どうしてこの男に対してだけは普通に話すのだろうか。
見ると割と良い男だ。
顔か?
やっぱり顔なのか?
俺がそんな事を考えていると、二人の話は進んでいった。
「先ほど依頼されたパーティーメンバー募集の話ですが」
「もしかして希望する人が見つかったんですか?」
なんだギルドの人だったのか。
それならそうと最初に言ってくれ。
「って、もう希望者が現れたの?」
俺は少し嬉しさを隠せなかった。
どんな女の子だろうなぁ。
うちのメンバー見た目は十分可愛いのに、中身が伴ってないのばっかりだからなぁ。
できれば見た目これくらいのレベルはキープしてほしい所だ。
「えっとおそらくそうだと思うのですが、少し話がしたいという事で、ギルドの応接室でお待ちいただいているのです」
ふむ。
つまり俺たちがどういうパーティーなのか、少し話をして確かめてから決めたいという事だろうか。
慎重な子なのか、或いは照れ屋なのかもしれない。
「うむ。話をしよう。その子をつれてきてくれたまへ」
俺は少しテンションが上がっているようで、言葉遣いが変になっていた。
人生最大のイベントは可愛い女の子との出会いなのだ。
少々浮かれるくらい良いよね。
「分かりました。こちらの席に連れてくればよろしいのですね?」
「霧島あっちの椅子を此処に持ってきたまへ」
俺は頷いてからそう言って、霧島に隣の席で空いている椅子を俺の横に持ってこさせた。
霧島も俺だから一々命令する必要なんて無いんだけど、一応人前では別人として扱っていた。
ギルドの男は一旦奥へと姿を消した。
「一体どんな子だろうね」
「このパーティーに入ろうっていうんだから、少々変わり者じゃないかな?」
「ま、まあ否定はできないが、リンの名前で募集したんだから、流石に要望とかけ離れた奴は来ないだろ」
「わしはケツを触らせてくれれば八割方オッケーじゃ」
いや流石に八割はないだろ。
それじゃ歳いったばばあも含まれかねないぞ?
俺たちはなんだかんだ言いながら心躍らせて来るのを待った。
するとやってきたのは‥‥
「おいおい、話が違うくねぇか?」
「そ、そうね‥‥」
「わしはギリギリ空振りするところじゃ」
目の前に現れたのは、歳は六十前後に見える、少しポッチャリした御婆さんにも近い女だった。
「話を聞いていただけるという事で、本当にありがとうございます麟堂様」
女はそう言って草子に挨拶していた。
「僕じゃないです。麟堂はそっちの子ですが‥‥」
まあ間違えるよね。
どう見ても草子の方が姫で、リンはアマゾネスだもんなぁ。
そこまでではないけど。
「すみません失礼しました。あなたの方が美しい女性だったもので」
おい!
全然フォローになってないぞ。
リンも少しどうしていいか困っているぞ?
怒っているって事はなさそうだけどな。
自覚はしているという事か。
「気にしないでください。それで、話をしたいという事ですが、どういった話でしょうか?どう見てもこちらが希望する方には見えないのですが‥‥」
リンの云う通りだった。
これでは即不採用だぞ。
「いえ、私は代理と言いますか、単刀直入に言いますと、パーティーに入れて上げてほしい子がいるのです。その子なら間違いなく希望通りだと確信しております」
どういう事だろうか。
本人ではなく、代理でこのおばさん?
となると本人の意志とは違う可能性だってあるんじゃなかろうか。
「希望通りの子なのは分かった。でもその子の意志はどうなんだ?このパーティーに入りたいと言っているのか?」
いくら条件通りでも、本人が嫌がるのに無理にパーティーに入れるわけにもいかない。
そもそもこんな条件で入りたいと思うヤツなんているのだろうか。
こちらは若い女三人と子供が一人という、決してまともなパーティーとは思えない構成だ。
その上更に若い女性をパーティーに加えようとしているのだから、いかがわしい集まりと思われる可能性だってある。
今更自分で言うのもなんだけど、こんなパーティーに入りたい女性冒険者なんている方がおかしかった。
「本人の意思はまだ確認しておりません。ただ、おそらくは大丈夫です。麟堂様の人柄や武勇伝は私の耳にも届いていますから。ですからお願いがあってまいりました」
「お願い?ですか?」
「はい。此花麟堂様と言えば、とても民を大切にする王女様と聞いております。そして少し前に黒死鳥を退けたという話も入ってきました。そんな麟堂様なら、もしかしたらあの子を助けられるのではないかと、そう思ったのです」
つまりどういう事だ?
そのパーティーに入れて上げてほしい女の子は、何か苦境に立たされている。
だからパーティーに入れて助けてあげて欲しいと。
何か難解なクエストにでも挑戦しているのだろうか。
「困っている人がいるのなら助けてあげたいけど、黒死鳥を退けたのはこっちの子供なんだよね。私にできる事なら手を貸してあげたいけど、決定権はこの子供、策也にあるから‥‥」
リンはそう言いながら俺の方を見た。
「ふぅ」
女の子を助けるってのは、男としてはやるべき事だと思う。
ただなんとなく虫が良すぎる話にも感じるんだよね。
でもこのまま無視する訳にもいかないし‥‥
「とりあえず話を全て聞いてからだな。本人にも考えを聞いてみないとだし」
「会ってくださるのですか。黒死鳥を退けた麟堂様なら、おそらく会っていただければ状況を分かっていただけると思います。もう頼れるのは麟堂様だけなのです」
「私には無理かもしれないけど‥‥」
リンは困った顔をしているが、困っている人がいるのなら助けてあげたいと思っているように感じた。
それにこのおばさんの必死さは、何か伝わるものがあった。
自分の為じゃない。
本当にその子の事を心配してこうして話しに来たのだろう。
無下に扱う事はできないと思った。

そんなわけで俺たちは、そのおばさんについてギルドから出た。
おばさんについて美少女三人と子供、その後ろで霧島は睨みをきかせていた。
さて、一体どこに連れていかれるのやら。
不動では既にこの町のほとんどを散策していた。
正直あまり良い町には見えない。
王都なのに王都のイメージとは程遠い町だった。
「なあリン。東雲って結構なランキングだったと記憶しているが?この町はなんでこんななんだ?」
俺はなんとなく訊ねた。
東雲家と言えば、若干此花家よりもランクの低い王家ではあるが、それでもかなり上位の王家だ。
この世界の王家には、誰がどういう風にランク付けしているのかは分からないけれどランクが存在する。
住民カードの個人情報の所にその順位が記されている。
ちなみに此花家は八番目で割と高い。
東雲家は本で見た限りだと十二位だったと記憶している。
皇家と王家は合わせて三十四あり、その内の十二位だからそれなりのものなのだ。
でも順位相応の国にはどうしても見えなかった。
「東雲の王様はね、みんなで貧しくなろうって言ってるのよ。そうすれば敵も作らないし国を脅かされる事はないって」
またどっかのバカが言いそうな事をいうものだ。
仮にそれで国が守られたとしても、国民は幸せなのかね。
「そうだとしても、それなら十二位という評価は高すぎるんじゃないか?俺はゴーレムで色々な町を見て回っているが、此処より活気の無い王都なんて見た事ないぞ?」
既に十を超える王都は見ているが、何処も王都にふさわしいと思えるくらいには活気があった。
でもそれらの国々のほとんどが、東雲よりもランクが下なのである。
どう考えてもランクに問題があるように感じた。
「東雲家はね、分家が頑張っちゃってるのよね。南に島があるんだけど、そっちの東雲はそれはもういい所らしいのよ」
なるほどそういう事か。
この世界は王家の数が決められている。
皇国である皇家を除けば三十三の王家だ。
これより増える事はない。
大きな下克上が起こらないようにしているのか、このルールは絶対だ。
そこで新たに国を興したい者たちは、現在の王家の家名を持って新たに建国する事になる。
もちろん本家は一つだけだし、ダイヤモンドカードを持てるのも本家だけであるけれど、事実上国は三十三よりも多くなっている。
確か此花家も中央大陸以外で、いくつかの島に国を建てていた。
本国とはなんの関係もない統治をしつつも、その国力は此花家の力として考えられているわけか。
もちろん分家と仲の良い国もあれば悪い国もあり、それでちゃんとしたランクが出せているのかは疑問だけれど、分家統治の国を複数持つ国は少ないので、大きくも外れてはいないのだろうな。
そんな話をしている間にも、俺たちは益々活気の無い町の奥深くへと歩いていった。
「確かこっちには児童養護施設のような所があったな」
俺が何となくそうつぶやくと、前を歩いていたおばさんが返事を返してきた。
「はい。その孤児院にその子はおります」
「そちらで働いておられるのですね」
「はい」
リンの問いに対して、おばさんは返事をした。
しかしその返事はどっちなのだろうか。
話の流れ的には、その助けてほしい女性が働いているのかと聞いたように思えるが、返事はどうも違う気がした。
ほどなくして孤児院に到着した。
町のはずれの開けた所に、ポツンと一軒だけ建物があった。
建物は古く、決して良い生活ができるようには見えなかった。
ただ、外で遊ぶ子供たちには笑顔があった。
この国のこの町のこの場所にあっても、此処は良い所なのだろうと感じた。
「だが‥‥」
この町に入ってからずっと感じている物悲しい感じ。
それはこの町の雰囲気のせいかと思っていたが、この孤児院の中から特に強く感じる。
千里眼でも見通せない建物内。
この孤児院は何かがおかしいと感じていた。
建物に入る時、おばさんは子供たちから『院長』と呼ばれ慕われているのが分かった。
この院長の願いなら、これから会う女性をパーティーに入れて助けてあげたいと思えた。
施設内に入ると、外から見る以上にボロだった。
何となく新しい施設を建ててやりたいと思った。
案内されたのは、建物の地下だった。
そこだけは新しく作られた場所のようで、何か特別な感じがする場所だった。
「この部屋にいます」
院長に連れてこられたのは、地下にある唯一の部屋へと通じるドアの前のようだった。
「この部屋、なんか凄いドアで作られているわね」
「明らかにこの建物では異質の部屋です」
「強力な魔力を感じるのぉ」
「ああ。流石に此処までくれば分かったが、このドアと部屋はおそらく魔力を抑える為のものだ。中からとんでもない魔力を感じるぜ」
千里眼は利かないが、洩れる魔力を肌で感じる。
この部屋は、悪臭を抑える為の芳香剤的な役割を果たしていると言えるかもしれない。
中の魔力を感じさせない為に、別の弱くも強烈な魔力で分からないようになっている。
悪臭という例えば少し違う。
この膨大な魔力は、俺の魔力とは異質で清らかな魔力だ。
そしておそらくだけど、俺よりも大きな魔力。
もしもこれから会う女性が持っている魔力だとしたら、俺は最強ではなかったと言えるかもしれない。
「こいつはなんかすげぇな‥‥」
暑くもないのに、俺の頬には汗が伝った。
院長がドアノブに手をかけた。
俺は少し緊張していた。
他のメンバーではかろうじて環奈だけが気づいているようだが、それでも俺ほど緊張しているようには見えなかった。
一体どんなヤツがいるというのだろうか。
院長によってドアは開け放たれた。
強烈な魔力がドアから噴き出すように感じた。
「うほ。こりゃ心地いい魔力じゃのぅ」
これが心地いい魔力だと?
魔力の質は確かにそんな感じだが、勢いが凄い。
やはりこの魔力の凄さを全て感じているのは俺だけのようだ。
ハッキリ言って、俺の魔力よりも大きい。
「俺にはちぃとばかしチートな魔力に感じるがな」
「みなさん早く部屋に入ってください。私にはよくわからないのですが、ドアをあまり長く開けないように云われておりますので」
院長の云うのももっともだ。
この魔力がずっと外に漏れ続けたら、流石にこれに気が付く者もでてくるだろう。
説明は端折るが、大きな魔力ってのは出し続けて良い事はあまりない。
俺だって普段は魔力をコントロールして人並に抑えているのだ。
環奈だってそうだ。
自分の魔力が大きくなればなるほど魔力を抑える術を身に着け自然と抑えるようになる。
しかしこの魔力がその女性のものだとして、どうして魔力を抑えないんだ?
皆が部屋に入ると、ドアは速やかに院長によって閉められた。
部屋の中には、奥に一つドアがあるのと、それ以外は真ん中にテーブルとイスが置かれているだけだった。
人の姿はなかった。
ただテーブルの上から魔力はずっと感じられた。
「可愛い人形だ!」
「そうだな。しかし‥‥人の姿が見当たりませんが」
「魔力はその人形からじゃのぉ」
人形だと?
俺の身長だとテーブルの上が見えないので、軽く浮上して確認した。
人形‥‥じゃない。
「人形ではありません。その子が今回会っていただきたかった若くて可愛い子です。年齢は六歳です」
「えぇ!」
「院長先生こんにちは。今日はお客様が多いんだねー」
人形が喋っているように見えるが、そこにいるのは確かに人間だった。
背丈は三センチほどだろうか。
とにかく六歳にしては、六歳じゃなくても小さすぎるが、確かに若くて可愛い女の子だった。
「ちぃとばかし小さくねぇか?俺よりも超絶小さい子だとは予想してなかったわ」
「こちらが皆さんに会っていただきたかった『みゆき』ちゃんです」
「はい。みゆきです。みゆちゃんって呼ばれてます」
「おっ、おう」
なんだこの可愛さは?
魔力の膨大さを忘れるくらい、殺人クラスに可愛いぞ?
しかも黒髪ロングに巫女服に似た衣装とか、全世界が悶絶するぞ?
みんな時間が止まったように呆然とこの小さな女の子を見ている。
この俺ですらフリーズしそうになるくらい可愛すぎてたまらない。
なんだか知らないけれどこの子を助ける?
絶対助けるだろ?
冷静に考えたら、こんな魔力を持ったヤツは始末できる時に始末しておくべき対象なのかもしれない。
将来俺を脅かす存在がいるとしたらこういう奴だ。
でも違うだろ。
この子の為なら死ねるくらい、俺は既に魅了されていた。
「なんでこんなに小さいんだ?」
俺は必死に冷静を装って院長に訊ねた。
「はい。色々調べた結果分かったのですが、魔力があまりに膨大すぎて、この子の体では支えきれないようなのです。その魔力はこの子自身の体を小さくし、おそらくですがやがては小さくなりすぎて体は消滅してなくなるのではないかと考えられます」
「この大きさを見るに、もう何年も持ちそうにないのぅ」
そういう話か。
人間ってのは、魂と肉体に分けられる。
魔力というのは、主に魂に宿る。
しかし魔力は肉体にも必要だ。
魂にある魔力を支えられるだけの魔力を肉体が持っていないとやがて崩壊する。
エアゴーレムに魂を宿す場合は、魂の魔力でその体を支える事で存在する事ができる。
その代わり魔法がほとんど使えないって事になるわけだが。
人間の場合も同様で、肉体が持たないなら魂にある魔力でそれを支える事になる。
しかし魔力が大きくなればなるほどコントロールは難しくなる。
おそらくだが、小さい頃はそれなりにコントロールできていたが、成長と共に魔力が膨大になり過ぎてコントロールが利かなくなったのだろう。
即ち‥‥
「なんとかする為には、本人に魔力をコントロールできるようになってもらうしかない」
「できるようになるの?」
「この魔力だとなかなか難しいんじゃなかろうかのぅ」
環奈の云う通り、此処までできていないものを急にできるようには難しいだろうな。
「なあ?何時からみゆきは小さくなったんだ?」
「分かりません。この施設の前に捨てられていた時は既に三歳でしたが、その時には小さくなり始めているようでした」
「酷い‥‥こんなかわいい子を捨てるなんて」
「小さくなり始めたから捨てたって所か」
俺たちの話を聞くみゆきは、それでもニコニコとしていた。
本人の前で話す内容でもないと思って気になったが、もうこの話は知っているのだろう。
「その時添えられていた手紙がこちらです」
院長はリンにそれを渡し、それをリンから受け取った。
なんだこの院長?
もしかして俺はリンのオプションか何かだと思っているのか?
まあいい。
とりあえず手紙だ。
手紙を要約すると、名前がみゆきである事。
誕生日と年齢という最低限の個人情報。
そしてこの部屋を作る為に東雲に相談するよう書かれてあった。
捨てた方もこうなる事が分かっていたようだった。
となると、これはもう助けられないという事だ。
この部屋は、ここでひっそりと死んでいく事を前提に作られている。
しかし、助ける方法はある。
今生きているのなら、俺の不老不死の魔法でこの子の時間を止めてしまえばいい。
その中で魔力をコントロールする術を覚えれば、何時かは普通に生きられるようになるだろう。
ただ、俺としてはこんなに可愛い子だ。
今すぐ実物大に戻して抱きしめたい。
いや、それはちょっと危ないおじさんみたいだから、せめて手を繋いで歩きたい。
「俺の魔力でも、この魔力を抑えるとなるとほぼ全力を出さないと無理だろう。流石にそれは続けられない。ドレイン魔法をかけ続ければとも思うが、その分俺が魔法を使い続けないといけなくなるだろうな」
「それでも、とりあえず死なせない方法ってのはあるんですね」
「そういえば、東雲様が紹介してくださった魔法使いの方が言っておられました。魔力を吸収する呪いの指輪が無数にあれば、もしかしたら助けられるかもしれないと」
「あっ!その手があったか!」
ははは。
簡単に助けられるじゃねぇか。
「これだけ強力な魔力じゃ。これを吸収できるような呪いの指輪なんて存在せんじゃろぅ?」
「もしかしてコレかな?阿吽の腕輪は魔力を吸収するから、これで助けられるとか?」
「いや、流石にその腕輪程度じゃ魔力を吸収しきれないよ。それにその腕輪が自らの力で吸収する魔力は僅かなものだ。まあとにかく命を助ける事は確実にできる」
「本当ですか!ありがとうございます麟堂様ー!」
おばさんはリンにしがみつくように泣き崩れた。
いや、助けるのは俺なんだけど。
やはり俺はリンのオプションか?
まあいい。
とりあえず後は俺の欲望を満たせるかどうかだ。
俺は改めてみゆきを見た。
超絶可愛いしなんかヤバい。
もう決めたぞ!
俺はこの子を絶対に嫁にする!
「みゆき。俺はお前を助ける。それは決定事項なんだが、ちょっとお願いもあるんだけど聞いてくれるか?」
「なぁに?どうせもうすぐ死ぬはずだったんだし、助けてくれるなら何でもお願い聞くよ?」
よしっ!
これは心の中でガッツポーズをした。
「もしかして将来ハーレムに加われとか、そんな事言い出すんじゃないでしょうね?」
「ちょっ!?おまっ!そんな事言う訳ないだろうが!そんなもんもう作る気ねぇよ!」
「もうって事は考えが変わったっていう事じゃのぅ?」
「くっ!」
こいつら仲間のクセして俺を貶める事しか考えてねぇのかよ。
「いや、ハーレムとか違うからね。俺はもっと真面目だ!みゆきにお願いってのは、なんていうかさ、ほら、ずっと俺が傍についている事になる訳だからさ、みゆきもこの先ずっと俺の傍にいてほしいっていうかさ‥‥」
照れてなんかハッキリ言えねぇ!
「つまりじゃ。みゆきちゃん、結婚して!って事じゃのぅ?」
ぐはっ!
俺吐血‥‥
その通りかもしれないけど、そんなハッキリ言わんでくれ環奈。
「いいよ!でもその前に、そのマスク外して顔を見せてもらっていいかな?」
「えっ?ああ‥‥」
俺はゆっくりとマスクを取った。
自分でも顔が赤いのが分かる。
目が合わせられなかった。
「とっても可愛い!」
小さなみゆきが、目の前で手を合わせて俺を見ていた。
こうして俺とみゆきの婚約が決まった。
【<┃】 【┃┃】 【┃>】
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