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エルフ王国スバルとエルグランド

「ひゃっほーい!妖精の糸最高!」
俺たちは今、ギョウサンの町を出て西へと向かっていた。
目指すはエルフの王国スバルである。
エルフの王国というのは、エルフの王が統治するエルフの町の事で、定住している住人はほぼエルフだ。
世界に数えるほどしかないエルフの王国は、世界ルールによって権利が約束されている。
どの王国の領内にあっても、そこだけは治外法権を認めるよう定められている。
その王国の一つであるスバルは、元は島津領内にあったわけだが、今は伊集院領内となっている。
三十年前の戦争目的は、実はこの王国の取り込みにあったのではないかと云われているが、真相は定かではない。
エルフは、人間と最も近い亜人種で、人間と共に人間の町に暮らしている者も多い。
特に冒険者となると、ギルドに行けば大抵二三人のエルフを見られるくらいだ。
だから決して珍しいというわけではないが、俺は割と町に行くのを楽しみにしていた。
「特に策也殿の攻撃に変化があるようには見えんがのぉ」
環奈の云う通り、妖精の糸で攻撃した場合、ほぼ糸は見えないわけで、今まで指を鳴らしてカマイタチで攻撃していたのと見た目大きな差は無かった。
ただ攻撃力は格段に上昇し、ほぼ全ての魔物は一撃で倒せた。
その切れ味に俺は大いに満足していた。
「使っている方は気持ちいいんだぞ!」
他のメンバーで変わった所のあるのは、まずは総司だろう。
妖精を沢山連れて行く事になり、常に独り言をぶつぶつと喋っているように見える。
本当は妖精と話をしているのだけれど、はたから見ると怪しく見える。
イヤホン型の携帯通話をしているようで、初めて見た者はビックリするだろう。
リンはフェンリルをホームに置いてきている。
テイムモンスターは魔法で簡単に呼び寄せる事ができるので、必要な時だけ助けてもらう事にした。
町に入るだけでも大変だからな。
洋裁は今はナイフになって、俺の鞘に収まっている。
イテコマスとイキリの町が正式に島津に返るのは一ヶ月ほど先になる予定だが、既に権限は島津へと移されていた。
その中で洋裁は島津から色々とやらされそうになり、姿をくらます為にナイフになっている。
尤も、外で魔物を狩っている時までそうしている意味もないし、誰かが追いかけてくるわけでもないのだが、どうも人間の姿ではいたくないようだった。
「この辺りの魔物も概ね狩れたわね。他国領地だしこんなもんでいいわよね」
「そうだな。数匹なら村でも対処できるだろうし、今はまだ外を行く時は護衛も付けているだろうしな」
やはり俺たちは、なんだかんだ魔物を狩りながら目的地へと向かっていた。
伊集院領とはいえ、被害にあうのは一般人である。
伊集院の為に働きたくはないけれど、人としてやっておこうと皆の意見は一致していた。
妖精の糸、略して妖糸も試したかったしね。
武器を持つと、格段に狩りが楽しかった。
やっぱファンタジーゲームでは武器を使うのが楽しみなんだよね。
魔法と合わせてやはり大きな楽しみ要素と言えばこれなのだ。

こんな感じでいつも通りの旅を続けて数日が過ぎ、俺たちはようやくエルフ王国スバルの町に到着した。
「おお!此処がスバルか!」
町の外から見ても、人間の町とは少し雰囲気が違っていた。
防壁にも色々な模様が彫られ豪華に見える。
更に上空へも結界が施してあり、流石は魔法が得意なエルフの町といった感じだった。
もしかしたらこの町から外へは瞬間移動魔法が使えないかもしれないな。
ただ、今の俺にはそれも問題がない。
人間界での移動はさえぎられる可能性があるけれど、妖精界に転移してしまえばいいのだ。
瞬間移動と転移は同じ意味で使われる事が多いが、本当は微妙に違う。
転移魔法というのは場所を移動するだけではなく、世界と時の移動なのだ。
尤も、時間をさかのぼったり未来に行ったりはできないが、あくまでそのようなものだと理解してもらいたい。
そう考えると、魔界の扉を閉じる前に、一度魔界に行っておいても良かったな。
転移魔法で行く事ができるようになっていたわけだし。
でも扉の内側を少しは見ているから、やればできるかもしれない。
失敗したらどうなるか不安なので試したりはしないけどね。
妖精界との転移の時、ちゃんと邪眼で世界を確認していたのはその為だ。
それよりも魔界の扉を閉じる前、イフリートの魂を回収するのを忘れていたのが悔やまれる。
あの時は草子が死んだりして大変だったから仕方がないんだけどね。
とにかく俺たちは町に入る事にした。
防壁門では、監視する門番が何人か目を光らせていたが、特に住民カードのチェックはなかった。
この町は人間ではなくエルフのルールで動いているのだ。
そうは言ってもお金は同じものが使われているし、住民カードの発行もある。
冒険者ギルドもあれば商人ギルドもあり、似たような業務はしている。
ただ、商売に商人ギルドの許可がいるような事はなく、管理は政府行政が行っていた。
町の中は人間の町とは少し様子が違った。
まず町の規模が大きい。
人間の住む町はだいたいが直径約二キロくらいの円形をしている。
大きな町でも三キロくらいだ。
しかしこの町は地図によると直径八キロもある巨大な町だ。
ただ全てが人の住むエリアではなく、中心の王城の周りは森が広がっており、住居はその周りを囲うように建っていた。
俺たちはとりあえずいつも通りにギルドに寄った。
此処では普通に人間の姿も確認できた。
ただ、ドワーフの姿は町にもここにも確認できない。
エルフとドワーフは本能的に仲が悪く、間に人間がいないと一緒にいるような事はまずないのだ。
此処はエルフの町であり、ドワーフはまずいないだろう。
ちなみに人間の町でも、ドワーフを見る事は少ない。
そもそも絶対数が少ないのだ。
ドワーフ王国も世界に一つしかなく、それも有栖川領内なので、訪れるのはかなり先になるのだろうな。
まずギルドではいつも通りの情報収集だ。
俺と環奈、そして陽菜は、飲み屋で食事をしながら冒険者たちの会話に聞き耳を立てる。
他のメンバーは端末を使ってニュースの確認だが、エルフの町ならではの情報もあるかもしれないので、そこは入念にチェックしていた。
何時もよりも多くの時間を費やし、リンたちが飲み屋の席へと戻って来た。
「どうだった?」
「面白い情報があったわよ」
リンはそう言いながら席についた。
「リン、それは逆だよぉ。面白くない情報だよぉ」
みゆきがそういうって事は、苦笑いしたくなるような話か。
誰かが想定内の絵にかいたような悪だくみをしているとか、そういった感じだろう。
「そうですね。面白い話ではありません。伊集院はエルフの町を完全に取り込もうとしているみたいですね」
「この町を見ればエルフの凄さってのが分かるもんな。その力が欲しいと思うのは権力者なら当然じゃねぇか」
「逆に脅威にも感じるアル」
確かにこの町を見れば、エルフが人間よりも優れた存在であると分かる。
常に町全体を結界が覆い、しかもその町は大きい。
ここも魔界の扉に近い町だが、それによって傷つけられた形跡は全くない。
一般人でさえ上級冒険者並みの魔力を持っていて、おそらくトップクラスともなれば魔王クラスの使い手もいるだろう。
それは手に入れたい力でもあるけれど、敵になれば脅威だ。
そんなのが領内にいれば、取り込むか排除するか、やはり権力者としては考えるよな。
「問題は、少し前まで戦争が起こるかもしれなかったって話よ」
「戦争?伊集院は此処に攻め込むつもりだったのか?」
いや、聞いててなんだが流石にそれはしないだろう。
世界ルールは破るデメリットが大き過ぎる。
全世界を敵に回す事になるからな。
「どうやら相手は此花みたいですよ。それは回避されたようですが」
「先日の妖精の件が関係しているのかのぉ」
「おそらくね。その辺りの事で因縁付けて、元島津領を奪う算段だったのかもしれないわ」
普通なら先日の件は、妖精の森を焼くか焼かないかの二択を迫られたようなものだった。
やればきっと妖精殺しの此花と島津って事でプロパガンダするつもりだったのだろう。
そこは読めていたが、まさかそれをネタに戦争をするつもりだったか。
最近の伊集院は少しおかしい気もするな。
尤も、以前の伊集院も俺は知らない訳だけどね。
「とりあえず危機は回避されたわけか」
「そうね。でも逆に領土を還す事になったわけだし、これからも此花や島津に対するちょっかいは続くのでしょうね」
此花と言っても、第二王国なんだけどな。
そうはいっても形式上は第一も第二もない。
外からは同じとして扱われる。
それにしてもなんで此花が伊集院とねぇ。
地政学的には本来対立するような位置関係ではないんだけどな。
とりあえず俺は平和に暮らしたいしなんとかしたいんだけど、巨大な力を止めるには巨大な力がいるわけで。
ここまで見て来た感じだと、此花や島津で伊集院を止める事は不可能に思えた。
「そっちは何か情報はあった?」
「この町一のべっぴんさんが明日結婚するそうじゃ」
「そ、そうですか」
「おっ!それちょっと見たいかも」
「邪鬼くん‥‥」
「なんの話だよ!それよりも、魔王の復活はどうやらこの伊集院領が有力視されているらしいぞ。予言というと少し違う気もするけれど、今までの傾向分析でそうでているらしい」
俺は総司に出会ってから、予言というものについて調べてみた。
すると大きく分けて四つの能力に別けられている事が分かった。
一つは総司の能力である、予言の魔法だ。
これは未来に起こる危機を察知し、その対処方法を得るものだ。
そんな魔法を得意とする集団がこの世界のどこかにあるという話だが、その組織に総司がかかわっているかどうかは聞いていない。
聞く必要もないからな。
次に危機回避専門の予言能力。
予言の魔法に近いが、これは魔法ではなく王族の一つである『|四十八願《ヨイナラ》家』の能力らしい。
だからこの世界ではその辺りから、四十八願領に行けば四十八の願いが叶うと言われている。
旅をするなら四十八願領のある西へ向かえと言われているくらいで、その能力は有名だ。
その能力故に多くの勢力がその力を欲しているが、自らの能力によって此処まで勢力を保ちながら生き残っている。
次に皇家の占い能力で、これは未来を見通すものだ。
危険を回避する方法などは分からないが、とにかく未来に起こる出来事を占い見る事ができる。
他の能力と比べると対処方法が分からない分本当にただの予言である。
ただし何もしなければ占いに出た事は百パーセント当たる。
そして最後に統計分析という名の予言だ。
今までのデータや情報から分析し、その結果を当てるというもの。
俺に言わせれば全く予言ではなくあくまで予想なのだが、この世界の事だからそれはそれで受け入れる事にしよう。
そしてさっき聞いた話はどうやらこの予想予言による所からの話のようだ。
「だったら聖剣エクスカリバーとやらもやはりこの領内にあるんじゃねぇか?」
「分からないですが、僕は策也さんの判断に任せます」
総司が俺に全て委ねるのも、おそらくそれは予言にあるんだろう。
だったら俺は迷わず自分の思った通りに行動していればいい事になる。
今は思うがままに旅を続け、聖剣エクスカリバーを見つける事にしよう。
情報収集が終わってからしばらくは食事をして、その後は近くに宿をとった。
「やっぱり移動用の家よりも宿の方がいいわねぇ。広いし食事も作る必要がないし」
「それにエルフが経営する宿は一般人用の部屋でも僕ら貴族レベルに感じるね」
「今までで一番良い部屋だな。ベッドもフカフカだぜ!」
「どうしてわしが男部屋なんじゃ?わしもそっちにいきたいのぉ」
部屋は男女別にとった。
女性陣は男性用の部屋を覗いた後、女性用の部屋へと出ていった。
「付いてきちゃ駄目アルよ」
「策也ならいいよー!」
「みゆちゃん。策也も駄目よ。アレでも私より年上なんだから。一昨日に一つ差にはなったけどね」
二日前の三月十日はリンの誕生日だった。
その日は魔物が沢山いる場所で夜を迎えたが、それでも軽く皆で誕生日を祝った。
リンの歳はこれで再び総司と同じ十七歳になっていた。
女性陣が部屋を出て行ったあと、俺たちは風呂に入ったりゴロゴロしたりと思い思いに過ごし、間もなく全員眠りについていた。
流石に休んだ後の連戦には皆疲れているようだった。
そうして眠りについてどれくらいが経っただろうか。
眠りが深くなった所で強制的に目覚めさせられる事態が起こった。
外からもの凄い爆発音が聞こえてきたのだ。
俺は瞬時にマスクを付け戦闘態勢をとり、千里眼で辺りを探った。
しかし近くでは全く何も変化はない。
俺は瞬間移動魔法で宿屋の上空へ出た。
町の外で大きな煙が立ちのぼっているのが見えた。
俺は再びそこへ瞬間移動しようとしたが、町の結界に阻まれ町からは出られなかった。
「くそっ!まさか本当にこういう事態に会うとはな」
俺は一度妖精界へと転移してから町の外へと瞬間移動し、そしてまた人間界へと転移した。
そして千里眼で辺りを探る。
すると猛スピードで町から離れる人の影を捕らえた。
「こいつか!」
爆発は一回で収まっていて、この状況でこの行動は怪しすぎる。
直ぐにエルフ警備隊が町から出てきて犯人を捜しているようだが、警備隊では捕まえられそうにない。
俺は逃げるその影を追った。
「俺から逃げられると思うなよ」
俺は一瞬にしてその影の上空まで移動した。
逃げていた男は逃げ切ったと思ったのか、木にもたれかかってその場に座り込んだ。
「ふぅ~‥‥楽勝だぜ。いくらエルフでも町の外の対応は変わらないな」
「そうだな。一応町の外はエルフの力が及ばない場所でもあるからな」
俺は地上へ降りて、男が座る木の後ろから話しかけた。
「ちっ!まさか追っ手が?」
男は立ち上がってこちらを振り返った。
「子供?今の話聞いてたな?悪いが死んでもらうぜ」
男は迷う事なく俺にナイフを突き刺してきた。
全く、こりゃ相当悪い事してきましたって言っているようなもんだろ。
俺は軽くナイフをいなし、その手を後ろに回して腹から落ちるように男を地面にたたき伏せた。
「さっきの爆発お前だな?何のためにあんなことをしたんだ?誰かに頼まれたか?」
俺がそう聞くと、力の差を理解したのか、どうやら口の中に仕込んでいた毒を飲んで、その男は間もなく死んでいた。
でも、それで諦める俺では無かった。
「風の蘇生」
俺は毒を癒しすぐに男をよみがえらせた。
「死んでも無駄だぞ。さあ答えろ!何故あんな事をしたんだ?誰に頼まれた?」
すると男は、今度は開いている左手で別のナイフを抜き、それを自分の首へと突き刺して自殺した。
「全く、面倒くさいな。よし、とりあえず魂だけ持ち帰るか」
俺は魂ボールで男の魂を確保し、一旦町へと戻る事にした。
とりあえず瞬間移動魔法で爆発現場上空へと戻った。
すると地上にはリンたちの姿があった。
それを囲うように、エルフの警備隊が集まってきていた。
犯人と間違えられたか。
俺は上空からその場へと向かった。
「そいつらは‥‥」
「その人達は犯人じゃありませんよ」
俺が声をかける前に、一際綺麗で高貴という言葉がピッタリとはまりそうなエルフの男が、警備隊にそう伝えていた。
エメラルド色の髪は肩まで伸び、白を基調とした服装はそのエルフの美しさを際立たせていた。
「そうですか!これは失礼しました!犯人は別だ!この辺りを探せ!」
エルフの警備隊連中は辺りの捜索へと散っていった。
俺はその綺麗なエルフの男の前に空から降りて行った。
「策也!」
後ろからリンたちの声が聞こえた。
「犯人は捕らえたよ。なんの目的かは知らないけれど、誰かに命令されてやったっぽいな」
俺は綺麗なエルフの男を見たまま、リンたちにそう伝えた。
「本当ですか?犯人を捕まえたっていうのは?尤も命令した人物もその目的も、だいたい分かっているのですけれどね。おっと自己紹介しておりませんでした。わたくしこのエルフ王国スバルの国王をしております、「スバル・エルグランド』と申します」
良い名前なんだが、何処か違和感を覚える名前だな。
「私は此花王国第三王女の麟堂です」
俺の後ろから前に歩み出て、麟堂が挨拶していた。
こういう時の動きは本当に素早いな。
流石王女様だ。
「おお!やはりあなたが麟堂姫でしたか。町に入ってきた時からそうではないかと思っていたのですよ」
「町に入った時から?」
「ええ。この町の事は全て私には見えるのですよ。でもプライバシーを侵害するような事はしていませんよ。姿を見るのは外でだけです。居場所はある程度把握はさせてもらっていますが、この町の治安を守る為ですのでご容赦ください」
つまり俺たちの行動は、町に入った時から一応監視されていたって事か。
それで直ぐにリンたちが犯人じゃないって分かったわけね。
良さそうな町だし此処でも店とか出したいと考えていたが、ちょっとこれは難しいかもな。
転移ゲートとか見つけられると厄介だし。
「で、そちらの方は?」
視線の先は俺だった。
「え?ああ。俺は此花策也だ」
「というとあなたが第二王国の王子ですか。なるほど。子供なのは見た目だけのようですね」
「そんな事が分かるんだ?」
「いえ。十八歳という情報を得ていたもので、だったらそういう事かなと」
エルフだから何でも分かってしまうのかと、ちょっとビビったわ。
「で、策也に訊ねたいのですが、犯人を捕らえたと?それはどちらに捕らえてあるのですか?」
俺は魂ボールを異次元空間から取り出し、掌の上に乗せて見せた。
「ここだ。二回も自殺しやがったから魂だけとりあえず持ってきた」
「そんな事ができるのですね。いや、まあ理屈ではできなくないですか。私も今度試してみる事にします。それでその魂を蘇生して、身柄をこちらに引き渡してくれると?」
「それは構わないが、先に情報を聞き出しておかないか?絶対自殺できない体に蘇生して聞きだしてやろうと思っていたんだが」
「そんな事が?おそらくわたくしの予想は間違っていないと思いますが、一応お願いしてよろしいですか?」
「分かった。でも此処だとアレだから、人に見られない宿屋の部屋にでも戻ってから‥‥」
国王が此処にいる事で、住民が周りに集まってきていた。
流石に俺の能力はあまり多くの者には見せたくない。
将来はヒッソリとみゆきと暮らしたいのだから、名を売るにしてもそこそこでいいのだ。
「では王城にきませんか?おそらく相談したい事も出てくるかと思いますから」
「みんないいのか?」
この国王エルグランドは、並みの能力者でない事はすぐに分かった。
おそらく魔王相手でも十分に戦えるレベルの強さを持っている。
環奈でも勝てないだろうし、洋裁相手でも負けないだろう。
悟空や風里がオーガである事も既に分かっているだろうし、環奈が黒死鳥である事も見抜いているかもしれない。
「構いませんよ。わたくしは種族はあまり気にしませんから。尤もドワーフだけはやはり生理的に受け付けない所がありますけれどね」
「そっか。じゃあみんなで王城に行くか」
「まさかエルフの王城に入る事ができるとは思ってなんだわ」
「俺たちにとっては人間よりも遠い存在に感じるからな」
「でもエルフとは別に敵対してないんじゃないアルよ?」
「そうですね。エルフはオーガが悪魔と全く関係のないヒューマンだと知っていますよ。ただ絶対多数を占める人間がそういう話にしているから合わせているだけです」
やはり悟空と風里の事はバレていたな。
「あ、皆さん通してくださいね」
エルグランドがそういうと、取り囲んでいた住民が海を割るように町への道を作った。
「それでは一気に城まで行きますか。皆さん並みの冒険者ではなさそうですし、ついてこれますよね」
「ああ、大丈夫だろう。行ってくれ」
「では」
エルグランドは町に入ると、一気にスピードを上げて真っすぐ城へと走って行った。
俺たちも町に入ってから後を追った。
五分もしない間にみんな城へと到着した。
城の中は外観の豪華さとは真逆で、結構質素な感じだった。
表向きは人間に対する威厳も示すが、本当はひっそりと暮らすエルフといった感じが伝わって来た。
部屋に案内され俺たちは席へとついた。
「じゃあ蘇生するか!今回は面白い方法を試すぜ!」
俺は魔砂を使って、転生前の世界で使っていたスマホを作り出しテーブルに置いていた。
「なんですかそれは?住民カードに似ているように思われますが」
「まあ似たようなもんだな。とにかく試してみるさ」
上手くいく補償はないが、オリハルコンナイフとして洋裁を蘇生できたのだから、スマホだって行けると思う。
いやむしろナイフよりもスマホの方が魂が宿る可能性は高いだろう。
俺は魂ボールから魂を取り出し、それをスマホにつなげた。
そしてとりあえずゴーレムとして憑依させてみた。
「上手くいったか‥‥」
「ん?なんだ俺?死んだのか?ここは死後の世界か?」
スマホから声が出てきた。
「おお!住民カードみたいなのが喋ってるぜ?」
「うん。こんな生き物見た事ないアル」
「でも動かないよ?動けー!」
いやみゆき、スマホは動いたりしないんだよ。
「おお!動く事もできないぞ?ん?これでどうだ?」
スマホはバイブ振動でテーブルの上を微妙に動いた。
「動いた動いた!」
「動いたな。みゆきの願いが通じたね」
ただのバイブなんだけどな。
さて俺はスマホを手にとった。
そしてカメラを俺の顔に向けた。
「どうだ?俺の顔が見えるよな?もう自殺もできんぞ?俺の質問に答えてもらう」
「うっ!さっきのガキじゃねぇか。俺は何もしゃべらんぞ?」
まあそうだろうな。
でもなこのスマホ、AIによって質問に正確に答えてくれる機能がついてたりするんだよ。
俺はスマホにあるボタンを押してから質問した。
「お前はなんの目的で誰に頼まれて爆発を起こしたんだ?」
「お答えします。ちょっ!待て!私は、大仏凱旋に頼まれ、喋るな俺!この町に入る物資を爆破した」
「ほう。そうなのか」
物資を爆破する理由は分からないけど、頼んだのは凱旋で、その裏には当然伊集院がいる事になる。
「やはりそうですか。実は大仏から伊集院傘下に入るよう言われているのですが、断ってから色々とスバルに関わる所で事件や事故が起こっているのです」
「ひどい‥‥エルフの国は世界ルールで手出し無用と決められているのに」
「たぶん町の外の事なので、手出しはしていないって事なんだろうね」
総司の云う通りだとしても、流石にそれは駄目だろ?
伊集院は表向き真っ当な国に見えるが、裏では真っ黒にも見える灰色の国だよな。
「他に聞きたい事はあるか?おそらくこれ以上は知らないと思うが?」
「いえ、特にありません。確認できただけで十分です」
「じゃあこいつはどうする?蘇生してもまた自殺すると思うが‥‥」
「その、魂だけとりあえずおいておく事はできますか?」
「この魂ボールに入れておけば大丈夫だし、なんならプレゼントするが?」
「本当ですか。では不要になればお返ししますから、それまでお預かりするって事でよろしいでしょうか?」
「いいよ」
ぶっちゃけ上げるつもりだったんだけれど、エルグランドは結構真面目で良いヤツなんだろうな。
尤も、おそらくだけどエルフだから俺よりもはるかに長生きしている年配者だし、俺が評価するのもおこがましい相手だとは思うが。
俺はスマホゴーレムを元の魔砂に戻して、魂をボールに収めた。
魔砂は異次元へ収納してから、魂ボールをエルグランドへと渡した。
「ありがとうございます。それでですね、皆さんの力を見込んで、一つ相談させてはくれないでしょうか?」
おそらくこれが、エルグランドが俺たちに近づいてきた真の目的なんだろう。
だいたい想像はつくが、俺も伊集院のやり方は気に食わないし、どうせもう事実上敵対していると言っていい。
ならばエルフとは手を組んだ方がいいに決まっている。
「どうぞおっしゃってください」
「ありがとうござます。今の伊集院の嫌がらせは徐々にこの町の機能を停止へと追いやりつつあります。まだギリギリ問題なくやれていますが、今夜の物資が爆破された事で数日後には食料や資源の不足が出てくるでしょう。なんとかしたいのですが、町の外は伊集院の領地で、我々には何もできないのです。仮に何かしようものならみすみす口実を与えるだけで、喜んでこの町に攻め込んでくるでしょう。我々だけでは伊集院に対抗するだけの力はありません。何か良い知恵はないものでしょうか?」
これはアレだ。
此花、そして島津に助けてほしいって事だ。
或いは共に戦ってほしいって事なのかもしれない。
まあ俺としては気に食わない伊集院には一度痛い目を見せてやりたいが、此花に迷惑になるのは明らかだ。
最悪領地を大きく失いかねない。
島津だってせっかく取り戻した領地をまた奪われる事になるだろう。
いくら俺が強くても、何万人規模の魔法に対抗するのは難しい。
戦争は一人ではできないのだ。
それにたとえ勝てるにしても、多くの人の命が失われるだろう。
兵士だけならまだいいが、住民を盾に戦われたり、或いは容赦なく町を攻撃される可能性だってある。
戦争なんてろくなもんじゃないんだ。
戦争なんてものは、戦争するまでに勝利を決めてしまわないと全て負け。
始まってしまえば勝つ為にはどんな酷い事でもするしされる。
だいたいもうすぐ魔王が復活するんだし、戦争なんてやってる場合じゃないだろ。
伊集院はもしかしたら、魔王への対抗手段としてエルフ王国を取り込みたいのかもしれないが。
「おそらく、此花や島津がスバルに味方をしたとして、戦争になれば勝ち目はないだろう。それに俺たちはともかく、本国がそんなバカな話に乗るわけがない。更に戦争になればまずこの町が狙われる。戦争は始めた時点で負けだ。だから戦争しないで伊集院を黙らせる方法が必要だ」
「その通りです。しかし既に戦力差は歴然で、話し合いすらも応じては貰えません。もう伊集院の傘下に降るしかないのでしょうか。伊集院の暗殺も考えましたが、それで問題が解決するようにも思えません。そんな事をすればそれこそそれを口実に攻め込んでくるでしょう」
尤もな話だ。
結局こういう時の解決方法は一つしかない。
伊集院に対抗できるだけの戦力を見せつけ、ある程度対等な立場になる事だ。
同じテーブルに着くためには、同じだけ力をつけるしかない。
「他のエルフ王国との連携はどうなっているんだ?」
「伊集院領にはもう一つエルフの王国があるのですが、実はそちらは既に伊集院に取り込まれています。表向きは変わりませんが、中には伊集院の者が入っていますし、王国軍は伊集院の騎士団傘下に入っています」
ならばほかに何処が味方をしてくれる?
此花と島津では足りないし無理だ。
五大国の内の一つでも味方になってくれればと思うが、早乙女と九頭竜は論外だし、皇は今は難しい。
有栖川は割と伊集院側で、そもそもエルフに味方するメリットなんてなさそうだ。
でも俺はエルグランドに味方したいし、伊集院の思い通りにはさせたくない。
何か手はないか。
「ん?そう言えばエルフってのは国を興すのは自由なのか?」
「国ですか?どうなんでしょう」
「一応自由なはずよ。人間は三十三プラス壱の国の固定が世界ルールで決められているけれど、人間と問題を起こさず場所が確保できれば、『人間以外』に制限はないわ」
「だったらいい方法があるぞ。強力な国を新たに作ってそこと軍事同盟を結ぶ。七魅のドラゴンの里も国にしちまおう。フレイムドラゴン三十人は一国の戦力に匹敵する。それに妖精もいるしな。ぶっちゃけ此花よりも戦力あるぞ?」
「無茶苦茶ね。でも、面白そうね」
確かに無茶苦茶ではあるけれど、人間の力が大きくなり過ぎれば、いずれ魔物や亜人種の住まいはなくなっていくだろう。
かつて黒人が全て抹殺されたように。
この辺りで人間以外が、いや、人間も含めた共同組織が力を持たなければ、かつての過ちは繰り返す方向へと進むのではないだろうか。
「環奈の黒死鳥も一応名前だけ貸しといてくれるか?ようは抑止できればいいだけだから、実際に戦う必要はない。あの里は俺以外に見つけるのは不可能だしな」
「まあええんじゃないかのぅ。実際そうなっても戦いたいヤツはきっと多いじゃろうしな」
「黒死鳥?」
「気が付いてなかったか?こいつ、黒死鳥なんだ。それも元親分な。だから黒死鳥王国の王様役をやってもらうんだよ」
「どこか普通の人間とは違う気がしていましたが、まさか‥‥それに先ほどドラゴンとか言ってましたよね?ドラゴンも仲間におられるのですか?」
流石に驚くよな。
俺も今更だけどこんな面子が集まって驚いている。
「まあな。後は実際に戦力を見せられる新たな国を建てたい所だが、場所ってあるか?」
「流石に此花領内は無理よ。此花が協力しているってバレるのはまずいでしょうし」
これが一番の問題か。
「島ならあるんじゃないのか?海の事は分からないけれど、世界地図を見ても小さな島は描かれてないしな」
「駄目ですね。どこも人が住める島はどこかの領地になっています」
「仮にあったとしても遠ければ抑止力にもならないわよ」
「だとしたら、近くに島を作るか‥‥でも今から作ると、事実上国家として認められるまでに時間がかかるな」
どこかにいい場所はないものか。
できれば人に知られておらず、『実は大国がこんな所に隠れてました』なんて風に表に出せるような。
「一つ、良い所がありますよ。かつてエルフが暮らしていたという天空都市バルスが、今は無人で空に浮かんでいるはずです」
「天空都市バルスだと?」
いきなり崩壊しそうな名前だけど、そんなのがあるならうってつけじゃないか。
「聞いた事はあるけど、伝説上の都市だと思っていたわ」
「なんか知らねぇけど凄そうだな?都市が空に浮かんでいるのか?」
「はい。ただ、どうやって行くかが問題です」
「行く手段がないのか?もしかして場所も分からないとか?」
だとしたら厳しいな。
だいたいこういう話の流れならどこかに転移ゲートがあったりするもんなんだけどな。
「昔は転移ゲートがあったんですが、人が出ていく時に使えなくしたという話を聞いています。ただ場所は分かっています。今は固定して『飛鳥』の上空に隠してもらっていますから」
「飛鳥ってえと‥‥」
俺は地図を広げた。
場所は九頭竜と早乙女に囲まれた地域で、飛鳥家は王族の末席に身を置く。
魔法記憶を探って出てくる情報と言えば、年中曇りがちで陽の当たらない日の多い寒い国というくらいだ。
「地上からバルスは見えるのか?」
「いえ。見えないように何か魔法がかけられていると思われます」
あのアニメを思い出すなら、きっと雲の中にバルスはあるはずだ。
そして飛鳥なら、俺はゴーレムで近くまで何度も行っている。
瞬間移動魔法を使えば、飛鳥の中心部まで二時間もかからない。
「よし!ならそのバルスをいただいて国を建てるぞ。誰を王にするかが問題だな。人間以外で、魔物は駄目だろう。仲間が魔物ばかりだと世界の国が敵になりかねないからな。エルフでは意味が無いし、ドワーフは流石に無理として‥‥」
「だったらアレしかないのぉ」
「そうね。誰もが認める第六のヒューマン」
「んー?だれだれ?」
「私にもわからないアル」
「俺にもわからんぞ?もしかしてオーガか?」
「そんなわけないです」
「正解は、妖精だな」
こうして俺たちは、天空都市バルスを確保し、そこに妖精王国を作る事に決定した。
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