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リンの結婚式といきなり国造り?

六歳の頃、俺は竜宮城へ行き玉手箱を貰った。
それを開けたら、俺は不老不死の体になった。
今その呪いを解く為に、俺は旅をしていた。
呪いを解く鍵は、竜宮城にあると思っていた。
しかし、俺の目的地は弥栄曰く『皇領』ではないらしい。
竜宮城は皇領内にあるような口ぶりだったから、つまりこの呪いを解く鍵は竜宮城にはないのだろう。
それに今は、みゆきを連れて皇領には行けない。
弥栄は、俺には目指すべき場所が何処であるか分かるのではないかとも言っていた。
俺は俺の中の記憶を掘り返す。
転生する前の記憶と、転生した後の記憶。
それ以外に今の俺がこの世界で十八年生きて来た記憶。
その記憶を探れば何かが分かるはずだ。
俺は一体どうやって竜宮城へ行ったのか。
必ず何処からか行き、その何処かへはまた別の何処かから行ったはずなのだ。
転生後、俺が最初にいたのは此花領の東。
そこへはどうやって行ったのか。
その前は何処にいたのか。
ハッキリと思い出せれば、俺の瞬間移動魔法で行けるはずなのだ。
しかしこの世界での俺の記憶は霧の中にあるようにハッキリしない。
ずっと、何もない海の上で漂っていた気もする。
それもとてつもなく広い海だ。
広い海が見える所から竜宮城へ行き、そして竜宮城から広い海を渡って此花領内へとたどり着いた。
そんな感じがする。
俺は地図を広げ確認した。
大きな海のある場所。
そこに亀浦家が統治する島を発見した。
日本人なら分かるだろう。
竜宮城は浦島太郎という童話に出てくる場所だ。
浦島太郎は助けた亀に連れられて、竜宮城へ行く。
そしてそこから戻った時、元の世界はかなりの時が流れていた。
玉手箱を開けた浦島太郎は、その流れた年月の分歳をとった。
この話の通りではないけれど、もしもこの話にヒントがあるとするならば、俺はおそらく六歳から十八歳になるだけの年月、十二年を竜宮城で過ごした可能性がある。
そして、玉手箱を開けて歳をとるのではなく、その姿のまま不老不死となった。
いやなんとなくだが話がおかしい。
一つに、玉手箱の中にはちゃんとクラーケンの腕輪というお土産が入っていた事。
もう一つ、何故不老不死になったのかという事だ。
こう考えたらどうだろうか。
実は浦島太郎は、竜宮城に行く時、或いは行く前に不老不死になっていた。
そして帰って来た時の玉手箱によってそれが解除され年老いた姿となった。
だけど玉手箱は玉手箱だ。
何が飛び出すか分からない。
俺の場合はクラーケンの腕輪がでてきた。
これは今の俺にとっては必要なモノだった。
浦島太郎は歳をとる事を望んでいたのではないだろうか。
こう考えれば、この世界での記憶がほぼ無いのも説明できる。
だいたい五歳とか六歳くらいまでの記憶は元々残らないというしね。
竜宮城での記憶は夢の記憶として残るが、海を漂うような霧の中。
つまり不老不死の鍵は、竜宮城に行く途中にあるという事。
俺が目指す先は此処に決まった。


結局俺は、エルグランドをパーティーメンバーに加えて旅をする事となった。
他の顔ぶれを見れば、これは仕方が無かったと言えるだろう。
まずはみゆき。
一緒に旅をする相手としては当たり前であり、ここに関しては問題はない。
次に環奈。
ドラゴンや朱雀を相手に戦って勝った、元黒死鳥の親分。
もう目的は達成されたし、一緒に旅をする必要もないかもしれないが、特に行き場もないので連れていくのは仕方がないだろう。
そして風里。
悟空の為に一緒に村を出たはずが、何十年かの放置プレイに合い目的を失くしたオーガの女。
見捨てるなんて可哀想過ぎてできるわけもなく、当然連れていく事になる。
以上!
他にもナイフの洋裁、ジョウビタキの陽菜、泥傍猫のキャッツはいるが、この辺りはペット枠なのであえて言及する必要はないだろう。
つまり、もしもエルグランド、通称『エル』がいなければ、このパーティーは女子供のお遊戯パーティーと見られるわけで。
そうして再び旅に出て一ヶ月近く。
すっかりエルも俺たちの仲間らしくなっていた。
「もうすぐ伊集院領を出て速水領ですね!いやぁ。わたくし伊集院領を出るのは三十年ぶりですよ。ワクワクします」
「エル殿落ち着くのじゃ。外なら空中都市バルスに行ったじゃろぅ?それに速水領は逃げたりせんのじゃ」
「でも私もなんだか嬉しいアル。伊集院領は飽きたアル」
「別に何処の領でも俺たち冒険者にはそんなに変わらないぞ?まあ伊集院領だと何処の町に行っても多少注目されちまって精神的には疲れるけどな」
「それは大きなポイントじゃぞぃ。風里殿は特にモテモテじゃったからのぉ」
そういえば風里には、何処の町に行っても男が言い寄ってきていた。
リンと一緒に魔王にとどめを差した冒険者として紹介されたりしたからな。
その辺り本人もウンザリしているようだし、もうすぐ伊集院領を出られるのはホッとしているのかもしれない。
でも魔王を倒したのは世界中から称賛されているわけで、きっと何処の町に行っても同じだろう。
ほとぼりが冷めるまでは、我慢してもらう事になりそうだ。
男除けにエルを連れて来たはずなのに、よくよく見ればエルも美人の部類だし、今一効果が薄いんだよなぁ。
「でも、今日の旅もそろそろ終わりですかね?」
「うん。暗くなってきたアル」
「そうだな。そして明日はホームに戻らないといけないからな。速水領は明後日以降にお預けだな」
「そうじゃのぉ」
明日俺たちは、一時冒険を中断してホームに戻る。
そして久しぶりにリンたちに会う。
別にただ会いに行くわけじゃない。
リンと総司の結婚式に参加する為だ。
まさかこんなに早く式を上げるとは思っていなかったわけだが、リンの事だと思えば割としっくりくる。
更にリンは既に懐妊しているとか。
早く子供を産んで仕事は任せ、また冒険の旅をしたいとか言ってたもんな。
その希望を十五年後には叶えるのかもしれないな。
「じゃあ今日はこの辺までにしておくか。どうする?今からホームに戻ってもいいし、明日でもいいわけだが」
「私は早く会いたいアル」
「わたしも早くリンにあいたーい!」
「わたくしも早く麟堂姫にお会いできれば嬉しいですね。とても素敵な方ですから」
リンが素敵か。
分からなくはないか。
「決まりじゃな。ただ策也殿は大丈夫かのぅ?」
「流石に転移距離が伸びてきたからな。多少しんどくはなってきているが問題はない。人数も前より少ないし一気に行けるよ」
瞬間移動魔法は、送る人数と距離に比例して魔力を消費し辛くなってくる。
いくら俺でも当然例外ではない。
ただまあ俺は回復力が尋常じゃないので、一瞬の辛さを我慢できれば何も問題は無いのだ。
「じゃあいくぞ。せっかくだから入口から帰るか。一応あの家はもう総司に返して俺の家じゃなくなっているからな」
三階にあった転移ルームは今も機能してはいるが、最近は家族の家をホームにしているし、ホームの経由も庭にある作業小屋の地下の転移ルームを使うようにしている。
新婚生活なるべく邪魔はしたくないしね。
次の瞬間俺たちは、ナンデスカの町のリンと総司の屋敷の前、柵門の近くの陰にいた。
「ん?どうしたんだ?」
柵門前は何やら慌ただしかった。
結婚式前の準備にしては何か様子がおかしい。
時差を考えるとこちらは既に夜中の零時を回っている。
何かが有ったとしか考えられなかった。
「何かあったみたいだな。行くぞ!」
俺たちは柵門前に走って行った。
するとそこにはリンの姿があった。
「リン!どうしたんだ!?」
「あっ!策也!良い所に来たわ。非常事態なのよ。ちょっとこっちに来てくれる?!」
俺たちは挨拶する間もなくリンに云われるまま、屋敷の中へと誘導された。
屋敷の執事やメイド、或いは明日の結婚式の関係者らしき人たちが、不安そうな顔で応接室のドアの前に集まっていた。
「ちょっとどいてくれる?もしかしたら助けられる人を連れて来たわ!」
助けられる?
誰かが大怪我でもしたのだろうか。
或いは死んだか。
応接室のドアが開き、俺たちは中へと入っていった。
そこには総司が心配そうな顔で、ソファーに横たわる男の前で膝をついていた。
誰だろうか。
「策也どう?なんとかなりそう?」
確認すると、男は既に死んでいた。
邪眼で辺りを調べるが魂はなかった。
「死んでどれくらいだ?」
「もう数時間にはなると思う」
「流石に蘇生も無理だな。かなりの人物なのは分かるが、一体誰なんだ?」
総司が無言で傍にいるって事は、おそらくは総司の身内か。
「総司のお父さんよ。御伽法師さん。蘇生は無理か。流石に困ったわね」
「そうだな。これじゃ明日結婚式は中止か?」
「そんな訳にはいかないわよ。もう沢山の人たちがこの町に来ているし、お父さんたちも役所の方に来てるんだもの」
「じゃあやるしかないな。だったら何に困っているんだ?」
そこが分からない。
身内が死んだ中結婚式ができないってのは分かるが、それでもやらなければならないならやるしかないじゃないか。
「御伽家の事情は知ってる?御伽家は今、御伽法師と御伽総司しかいないわけ。ここで法師さんが亡くなったとなれば、総司一人になるの」
「それの何が問題なんだ?」
「結婚すると御伽家は潰えてしまうんだけど、それ自体は大きな問題じゃない。御伽家の家名が売りに出されるだけだから。でも世界ルールで『苗字を失くす事』はルール違反になる。それは自らの家名でも同じ事なの」
「つまり結婚して自らの意思で相手の姓を名乗り、御伽家を終わらせるのもルール違反になるってのか?」
「そういう事よ。困ったわね。どうしたら‥‥」
そこまで言った所で、リンの表情が一気に変わった。
何か嫌な予感がしてきたな。
「そうよ策也!洋裁の時みたいにエアゴーレムでなんとかしてよ。結婚式が済んで婚姻届けを出したら後は上手く死んだことにするの」
「そうくるとは思っていたよ。それは構わないけど、おそらくだけど総司の父さんは殺されたっぽいぞ。今邪眼で調べたら間違いなく毒殺だ。つまり死んだ事を知ってる人がいる」
「それは蘇生したとか延命したとか誤魔化してよね!それよりも殺されたって本当なの?」
「まず間違いないな」
この毒はかなり強力なものだ。
魔力が低い普通の人が飲めば即死。
マスタークラスの者でもその日の内に処置しないと死に至る。
「一体誰が‥‥」
「それなりに地位の高い貴族を殺すのだから理由はあるだろ。犯人を捜すならまず、法師を殺して最も得をするヤツが一番怪しい」
「得をする人ね‥‥やっぱり九頭竜かしら。御伽という苗字を継ぐ者がこれでいなくなるわけだから、この苗字は売りに出される事になる。それを仕切っているのが九頭竜なのよ」
「でも今回のタイミングだと、結婚できずに総司がそのまま苗字を持って残る事にならないか?」
「そうよね。となると有栖川かしら?もう既に総司が父親の後を継いで商人ギルドの役員になってるんだけど。七星っていってね。商人ギルド連盟には七人の役員がいるの。トップは有栖川なんだけど、他に貴族が六人いるのね。ここでの決定は多数決なんだけど、貴族は一票、王族は五票なのよ」
「つまり有栖川は現在、自分以外の全役員が反対しない限り、商人ギルド連盟を自由にできるわけか」
そこで総司が此花の名を持つような事になれば、自由にはできなくなってくる。
「そして既に二名は完全に有栖川の言いなりなわけよ」
「じゃあ総司が五票持つようになったら、完全に立場が変わってしまうんだな」
「ただ今の所五票とはならないみたいで、三票となる可能性が高くはあるんだけどね」
三票ならまだ有栖川が権力を維持できるのか。
ただこういうギリギリの一票差ってのは色々な思惑が出てきて逆に厄介になる事もある。
五票を持っている有栖川が強い事には変わりはないが、たった一票でも大きな力を発揮できてしまうからな。
「まあどっちにしても、今から犯人は見つけられないだろうな。有栖川にしても九頭竜にしても、こういう工作は得意だろうしな」
「そうね。犯人捜しよりもこの場を乗り切る事よね」
「ところで御伽法師は結婚式の後に死ぬわけだが、その辺りで少し細工して、その御伽家の家名を貰う事はできるか?殺したかもしれない相手にやすやすと利益を与える必要もないだろ?」
「好きにしていいわよ。でも誰が継ぐの?あんたが貰うの?」
「俺がまた御伽策也に戻った所で、既に此花との関係は切れなくなっているからな。意味がない。それよりもちょっと世界ルールについて聞きたい。人間以外が家名を継ぐ事に制限はあるのか?」
誰かに加盟を継いでもらうにしても、この家名を継ぐのは危険がある。
既に法師が殺されているわけだしね。
だったらそれに対抗できるような誰かに継がせたい訳だが、そうなるとどの候補も人間じゃなくなるんだよね。
「またルールの隙間を突こうとするわね。まあでも、『人間じゃないと駄目』なんて事は書いてないわよ。だいたい家名にこだわるのなんて人間だけだし、人間以外を想定なんてしていないわ」
「じゃあ少し面白い事に使わせてもらうか」
「こっちに迷惑かけないでよ。一応元御伽家の総司がいるんだから」
「そうだな。じゃあ間にビジネスをカマすか」
こうして俺は御伽法師のエアゴーレムを使って、リンと総司の結婚式を無事に行えるよう力を貸す事になった。

結婚式は元領主の屋敷、現在は役所として使われている敷地内で盛大に行われた。
俺は直前まで法師がどういう言葉遣いで振る舞うのかレクチャーを受け、バレないよう必死に演じた。
正直二人の結婚式を楽しむ余裕は無かった。
「おめでとー!リンとっても綺麗!」
「ひゅーひゅーじゃのぅ」
「素敵アル」
「ありがとうねみんな。短い旅だったけど、やっぱりあんたたちに祝われるのが一番うれしいかも。いつでもホームに遊びにきてね」
みんなはリンと楽しく話していた。
俺は魂の一つが緊張の中にあって、全てがそれに引きずられ、最後まで楽しむ余裕はなかった。
とはいえなんだかんだ時は経つもので、なんとか無事に結婚式は終わった。
「さて、結婚式後まで生きていたという証拠も残しておかないとな」
俺は預かっていた法師の住民カードを操作して、総司にメッセージを送った。
「おめでとう。後の事は頼んだぞっと」
では御伽家の家名いただき作戦を始めますか。
「洋裁。ダイヤモンド―カードで手続き頼むな」
「了解。でも一体何をするつもり?」
「御伽の苗字を使って遊ぶだけだよ。まずは法師のカード内にあるアイテムは全て取り出し、金は総司のカードに振り込む」
アイテムは後で総司に遺品として渡す事になっている。
「次に譲渡だ。カードの譲渡は別に禁止されていないし、貴族のカードは高値で取引されている。尤も変なのが一族に入ってくれば排除もあり得るから、滅多にあるもんじゃないけどね」
俺は法師のカードの持ち主を資幣に変えた。
次に俺は家族の家の執事をしている元大魔王のセバスチャンに命令を送る。
セバスチャンとは思考、視覚、聴覚などをやり取りさせる事が可能なので、何処にいてもゴーレムに近いコントロールが可能だ。
本人が拒否してくることもあるから、コントロールというよりは命令といった感じなんだけどね。
「よし。セバスチャンから資幣のカードに三十億円が振り込まれたな」
俺は資幣のカードを確認すると、今度は御伽法師のカードの持ち主をセバスチャンに変える。
こうして売買によってカードの持ち主が変われば、その後の御伽家が何をしようと総司に責任追及はできなくなるだろう。
「じゃあ洋裁、このカードの名前を御伽七魅に変えてくれ。年齢は百二十八歳。女。備考には御伽家当主でフレイムドラゴンな」
「とんでもない事考えるね‥‥」
御伽家はこれから人間じゃない者の集まりにしてやる。
俺はカードの持ち主を更に七魅に変更した。
「洋裁。後はそうだな。乱馬、セバスチャン、依瑠、津希、妖精に与えたゴーレム十体全てを七魅の養子とし、御伽の苗字を与えてやってくれ」
「乱馬も?」
「ああ」
乱馬には既に許可を得てある。
後は事後承諾になるが大丈夫だろう。
こうして一気に御伽家が大きくなっていった。

この後ドラゴンの里に行って七魅に無理やり住民カードを押し付けた後、ドラゴン王国の七魅として世界にニュースを発信させた。
「御伽家当主が暗殺によって亡くなる間際、私は商人を通じて住民カードを購入させてもらったのだ。これより私が御伽家の当主となるのだ!そこでだ。人間社会で貴族になれない人間じゃない者たちの為に、あたしの子となる事が条件になるが、御伽の姓の使用を許可していこうと思う。もちろん人間でも構わないのだ。沢山の貴族になりたい者を待っているのだ!」
このニュースは世界中に衝撃を与えた。
暗殺の件も多少は話題になっていたが、ほとんどは多くの者に御伽の家名を与えるという行いに対して騒がれていた。
次の日には世界中の町で役所に人が殺到した。
まさかここまで騒ぎが大きくなるとは思っていなかったが、想定通りの反応ではあった。
「策也、なんて事したのよ!」
「前々から思っていたんだけどさ、王族はまあ統治に必要だから良いとしてもさ、それ以外に血統による上下関係があるのってなんか違うと思うんだよね。だったらみんな貴族にしてしまえば面白いかと思ったんだよ」
「もう大変な事になってるわよ。今世界の王様たちが世界ルールが始まって以来の変更を議論しているわ。そして満場一致で何かしら制限される事になるでしょうね」
「ははは!そうなのか。だったら早いうちに御伽のメンバー増やさないとな。洋裁!環奈や風里も御伽にしてやってくれ。早くしないと制限されるらしいから早急にな」
「もうなんか凄い事になってるらしいよ。世界中の役所にドラゴンの子になるって人が殺到しているとか。多くは対応不能らしいし」
「ついでにわたくしも御伽にしてもらえますか?スバルは住民カードには記されていないのですよ。エルフに苗字はありませんからね」
「だそうだ。洋裁頼むぞ」
「自分はいいっすけどねぇ」
この騒ぎに世界の王族は困っているのかな。
でもこんな事になったのは、法師を暗殺しようとした誰かの責任だ。
法師はまだ爺さんというほど歳ではないし、あと数十年は普通なら生きただろう。
普通に養子をとって家名を継がせていたかもしれない。
それをさせなかったヤツが悪いんだよ。
これに懲りて己が利益の為に暗殺なんて考えないようになってくれればと思う。

結局この事態は、その日のうちに世界ルールの追加によって収束に向かった。
現在の世界ルールの変更には反対する勢力が多かった。
今まで結果的に上手くいっていたものを変えるのには、議論する時間が足りなかったといった所だろう。
そこで貴族は『人間に限る』という風に決められた。
そして新たに、貴族以外の者が家名を持つルールを新設したのだ。
まずプラチナカードを持つ者に限定。
既にある百八の家名は使用不可。
所属する国を明らかにし、領地の君主の承諾が必要。
家名を持つ者は貴族相応の扱いにする。
今回の件での対応については、御伽の名は返還してもらってオークションにかけられる。
既に御伽を取得している者には無条件で新しい家名が与えられるが、住んでいる場所で家名が認められない者がほとんどで、その対応についての話し合いがしたいと七魅の所へ魔法通話が入ったらしい。
七魅から連絡を受け、俺は『全てを受け入れられる領地と町が必要』とアドバイスした。
ほとんどの町で対応できなかった七魅の養子になる手続きだったが、自由の国を謳う愛洲家領の町だけは五千人以上に対応していた。
流石にそれだけの数をドラゴンの里で面倒はみられない。
かといって放置もできない。
多くの国から責められる事となった愛洲家は、伊集院領に近い島を早々に提供する事を決めた。
それなりのお金を全ての王国から貰う事にはなったが、愛洲家としては正直納得いかない結果だった。
提供された島は、人間以外が統治する初めての領地となり国家が築かれる事になった。
新たな家名を持つ者は、その新たな国に認められた貴族相応の人という事になる。
そして新たな国だが、俺は王国ではなく、どんな人種でも例え魔物でも住む事が許される『君民共同統治国』としてやる事にした。
選挙は行われないが、有能な者を君主が選んで統治させる古き日本の体制だ。
君主は俺が新たに作るゴーレムである『|神武大聖《じんむたいせい》』とし、国民の中から優秀な人材を選んで全てを任せる。
最初は神武東征って名前にしようかと思ったけれど、西の端で国を建てるからちょっと違うかなと思って大聖にした。
各々の苗字だが、ゴーレムも含め俺の身近な奴らは概ね『|仁徳《ニントク》』とした。
乱馬は本人の意向もあり、此花所属の『|八乙女《ヤオトメ》』となった。
エルグランドは『|昴流《スバル》』、七魅は『|炎龍《エンリュウ》』、妖精たちは『妖精』に決めた。
その他愛洲家領内の町を中心に苗字を取得した一般人は、『佐藤』『鈴木』『高橋』の中から選んでもらった。
「まさかリンの結婚式に出るだけの予定が、国を一つ作っちまう事になるとはな」
「でも、みんなが一緒に暮らせる国ができるなんて嬉しいアルよ」
「わたしもー!」
「そうじゃの。ただこれから色々と大変な事が起こりそうじゃて」
環奈の云う通りなんだろうな。
今はとりあえず落ち着かせる為にこういう対応になったが、この世界に人間以外の初めての領地ができてしまったわけで、争いを避ける為の手段が色々と必要になってくるのは明白だった。
尤も、君主は俺のゴーレムだから人間が統治しているともいえるわけだが。
「ところでエル殿はどうしたのじゃ?」
「ああ。今回の件で本国が大変な事になったから、少しの間パーティーを抜ける事になったよ」
「可哀想アル」
「もうすぐ速水領なんじゃがのぉ」
ぶっちゃけ俺も忙しいんだけどな。
大聖はこれからの国造りで当然大変だし、ヤバいのは安易に苗字を付けてしまった資幣なんだよな。
此花の者としてヌッカの町で商売していたのに、所属を神武領地に作る新たな町『オトロシイ』に変更せざるを得なくなって、商人ギルド連盟、或いは有栖川がどう出て来るか。
総司に少し期待だな。
きっとまた厄介事に巻き込まれる、そんな予感がした。
【<┃】 【┃┃】 【┃>】
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