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策也とみゆき

突然何かがあると、人はすぐには反応できない。
だから人は、突然に備える為に準備をしておく。
でも突然は、忘れた頃にやってくる。
突然とは、思いもしないものだから。

この日俺は、みゆきとリンと総司を連れて、黒死鳥王国にある環奈の屋敷へと来ていた。
リンは身重ではあるけれど、二回目という事もあるのか全く辛そうな所はなかった。
「リン、本当に大丈夫だったか?」
「大丈夫よ。策也は心配しすぎよ。出産予定日まで一ヶ月以上あるんだから全く問題ないわよ」
「そ、そうか‥‥」
なんかお腹の大きい女性を見ると、壊れやすそうで心配になるよね?
俺たちが部屋でくつろいでいると、そこへ環奈がやってきた。
「久しぶりじゃのぉ」
「久しぶりー!」
「陽菜との子供が産まれた時以来かしら?」
「やっぱりその恰好だと、なんだかしっくりこないですよね」
総司の言う通り、やっぱりこの格好だと環奈って感じじゃないよな。
アイドルの環奈ちゃんゴメンナサイ。
こんな爺さんを環奈と呼ぶ事になっちゃって。
「それで弥栄は何時頃くるんだ?」
「もう世界会議本部を出てこちらに向かっておるようじゃぞぃ」
「まさかこんな怪しい町で会おうなんて、この後遊びに行こうなんて思ってないわよね」
「僕は絶対に行かないよ」
「もちろん俺もだ!」
みゆきの前で、いやみゆきがいなくても絶対に俺はそんな所へは行かないのだ。
「そうなのか。残念じゃのぉ」
環奈は本当にハーレムの国を作ってしまいやがった。
「陽菜もいるんだから、ほどほどにしといてやれよ」
「陽菜も納得済みじゃ。わしは後百年は現役を続けるつもりじゃぞぃ」
全く元気な爺さんだ。
でも現役を引退して生き甲斐もなくションボリ暮らしているよりは百倍いいと思うよ。
「弥栄様とお連れの方が到着しました」
「来たか。一体なんの話があるんだか」
「わざわざこのメンバーを集めるんだから、相当重要な話があるんでしょ」
「策也。悪い話じゃないよね?」
「大丈夫だみゆき。どうせそんなに大した話じゃないよ」
結構心配してるんだけどね。
色々メールで聞いても、とにかく会ってから話すって事だったからな。
俺たちは思い思いの場所でくつろぎながら、弥栄が部屋へ入ってくるのを待った。
人影が見えた。
部屋へと入ってくる。
連れの者と合わせて二人だ。
俺たちは二人を見て、少しその場で何もかもを止めずにはいられなかった。
反応ができない。
突然の事に何もできない。
俺たちがそんな状態の中、二人が部屋に入るとドアはすぐに閉められた。
ドアが閉まったのを合図に、みゆきが走り出した。
「お母さん!」
部屋に入ってきたのは、みゆきの母親のみことだった。
「みゆちゃん!」
みゆきが飛びつき、みことがそれを受け止めた。
二人はただ抱き合っていた。
まさかこんな事になるとはね。
これは嬉しいサプライズだったと言えるだろう。
でもこちらはどうなんだ?
もう一人の部屋に入ってきた男は、弥栄ではなかった。
見た目は弥栄なのだが、感じる魔力は全くの別人だ。
俺はそいつに尋ねた。
「あんた、誰だ?見た目は弥栄だけど、弥栄じゃない」
「そういう策也くんも、本来の姿ではなさそうだね」
俺は少し警戒した。
魔力も弥栄とはくらべものにならないくらいに大きい。
俺の敵ではないと思うが、魔力だけでは強さは測れない。
「どういう事なの策也?弥栄じゃないって」
「リン。魔力が弥栄のモノとは全く違うんだ。みことを連れてきている訳だから敵ではないと思うが、偽物って可能性もあるからな」
「策也!大丈夫だよ。わたし分かるの!この人はわたしのお母さんだよ!」
そういえばそうだな。
みゆきが母親を間違えるわけがないか。
たとえ記憶になくても、みゆきなら分かるだろう。
「とりえず座って話そうか」
俺はソファーに座った。
するとその男も向かいのソファーに腰かけた。
みんなも改めて話を聞く体制を整えた。
みゆきはみことに抱かれるようにソファーに座っていた。
「とりあえず策也くん、一応本当の姿を見せてはくれないか?」
俺は黙って変化状態を解いた。
「なるほど。君なら大丈夫そうだな」
男の言っている意味はよく分からなかったが、初めてみゆきに会った時を何となく思い出した。
「それで、あんたは弥栄じゃない。ならば誰なんだ?」
「まずはそこから話そうか。これから話す事は此処だけの話、他言無用でお願いしたい」
「誰にも話すつもりはないが、その話がみゆきにとって話すべき内容なら話すかもしれない」
「ならば大丈夫だ」
男の言葉に皆が頷いた。
「私は弥栄ではない。実は一年ほど前に、私は弥栄くんと体を‥‥魂を入れ替えたんだよ」
「魂を入れ替えた?」
そんな事が‥‥俺なら可能だな。
だったら他にできる奴がいても不思議ではないか。
「そうだ。君が皇帝暗殺を忠告してくれた時、弥栄くんから相談されたのだ。魂を入れ替えて自分が代わりに死ぬのはどうかと」
本来死とは肉体の消滅ではなく、魂がこの世界に存在できなくなった事を云う。
器がなんであれ魂が有ればそれは生きているという事だ。
そして皇帝暗殺の前に魂の入れ替えを提案したと云うなら、その相手は‥‥。
「あんたはもしかして、元皇帝なのか?」
「いかにも。私が元皇帝の『|皇大化《スメラギタイカ》』だ」
リンも総司も驚いていた。
そして一番驚いていたのはみゆきかもしれない。
実の父親が生きていたって事だからな。
でも‥‥。
「あんたは弥栄を犠牲にして生きて、それで良かったのか?」
「良くはないな。だが、良くはないけれどこれは弥栄が望んだ事だし、それに弥栄はまたこの世界に帰ってくる」
「帰ってくる?」
「魂の話を知っているかな?魂は人間界で死んだら魔界へと行き‥‥」
「魔界で死んだらまた人間界へ。そして妖精界を経てまた人間界に戻ってくるんだろ?でも戻ってきた所であの弥栄はもう帰ってこないぞ」
魂が別の世界に行く時には、記憶は全て失われるのだ。
それを帰ってくると言われても、本人にとってはもう別ものだ。
「少し違うな。魂に穢れがなければ、実はまたすぐに人間界へと戻ってくるんだ。すぐと言っても十年二十年はかかるかもしれないけれどね」
そんな話があるのか。
「でも弥栄の魂に穢れがあればすぐには戻ってこないんだろ?それにいくら戻ってきても記憶がないんじゃ意味がない」
「それがな、皇の者は穢れを死ぬ前に祓う事ができるのだ。そして、弥栄の母方の能力なんだが、予定通りに死ぬことで生まれ変わった時に記憶も残す事ができる」
穢れを祓うのはともかく、記憶を持ったまま生まれ変わる能力ってなんだよ。
あれ?もしかして俺の転生も似たような能力なのかな。
記憶を持ったままこの世界に来たわけだし。
そう考えると、無い話でもないのか。
「なるほどな。弥栄はそうする事が皇にとってもみゆきにとっても良いと判断したわけか」
「私は何故弥栄がそんな提案をしてきたのか分からなかった。でも事が済んだ後に分かったよ。みことが私を弥栄だと思って話したからな。みゆきが生きている事を」
弥栄よ。
最初皇帝が死んだと聞かされた時は、マジでこいつなんなのって思ったわ。
みゆきの父親をどうして守れなかったのかと。
でもこの日の為に自らを犠牲にしてくれていたとは。
出来れば両方死なない選択肢を考えろってな。
この方が皇にとっては良かったとか言うんだろうけどさ。
「じゃあ、弥栄じゃない弥栄が本当にお父さんなの?」
みゆきが立ち上がっていた。
「そうよみゆちゃん。見た目は弥栄だけど、あなたのお父さんよ」
「そうだ。それに年寄りのお父さんよりも若い方がいいだろ?」
みゆきが泣いていた。
滅多に涙を流さないみゆきが、ボロボロと涙をこぼしていた。
俺は気が付いたらみゆきの所へ行ってみゆきを抱きしめていた。
「この話、私たちが聞いていて本当に良かったんですか?私これでも此花の人間ですし、話しちゃまずい話のような気がしますが」
「構わないよ。いやむしろ君たちにも聞いてもらうべき話もあるんだ」
「私たちにですか?」
「そうだ。皇が占いの能力を持った家系だってのは知ってると思うが、その占いで君たちが世界を救う鍵となっている事が既に告げられている」
「私たちがですか?」
リンたちが世界を救う鍵?
「君たちがみゆきと出会ってからの事を思い出してほしい。麟堂王女は魔王を倒した英雄になり、最近では伊集院と有栖川を止めるきっかけになる発言を世界に発している」
「あ、アレは成り行きと言いますか、ちょっと腹が立った勢いって言うか‥‥」
「それでもだ。そして総司くんの方は策也くんとの縁を繋げ、占いでは皇と冷泉を助けるような何かをしていると出ている」
「そうなんですか?」
もしかしてアレか。
竜宮洞窟の件か。
総司の父親のやってきた事だが、そのおかげで皇は再び魔法通信ネットワークの設備面での権益を取り戻しつつある。
それはおそらく世界にとっていい事かもしれない。
「そして環奈殿はこの国を作った。この国ができた事で各国の王族が直接話をする機会も増え、少なくとも今は争いが起こる気配がまるでない。おそらく十年は平和な時が続くだろう」
「この国がのぉ。完全にわしの趣味なんじゃが」
趣味でもなんでも、権力者同士が仲良くなれる場があるというのは大きい。
特にエロネタってのは万国共通の話のネタであり、男同士のコミュニケーションで最も重要だ。
しかもこの世界は概ね男系継承が当たり前。
何故なら各王家にはそれぞれ継承される能力があるからだ。
「そして何より、君たちがみゆきを救った。いや、この人間界に留めたと言うべきだろう。それはこの世界にとってとても大きな事なんだ」
なんとなく分かってきた。
というか前から思っていた事が正しかったと伝えられるのだろう。
「これが最も他言無用の話で、皇の皇帝になった人間と『武内』の継承者しか知らない事なのだが。君たちは当事者なので知ってもらった方がいいだろう。皇の家というのは、神を産む家系なんだよ」
やはりそうか。
みゆきは神なんだ。
「皇の家に女児は産まれないとされているが、それはその子が人間ではなく神だからなんだ。産まれた女児は十歳になるまでに天界へ行ってしまう。みゆきもそのはずだった」
「それを俺が止めてしまった。もしかしてヤバいのか?」
「いや、そうではない。皇の者が止める事は許されないが、全く知らない部外者が止めた場合、それはその世界を救う為となっている」
「つまりみゆきを助けなければ、この世界はピンチになっていたって事か‥‥」
確かにみゆきがいなければ、俺は大魔王にやられて世界は支配されていたかもしれない。
そうでなくても多くの人が殺されていただろう。
「そして話はまだある。その女児である神、女神を助けた男性もまた神になる‥‥かもしれない」
なんだよ、かもしれないって。
まあ俺が神とか言われてもピンとこないけどな。
「今ここにはみゆきを助けた人が集まっているが、男性が三人いるな。でも確か総司くんはその時女性だったとか」
「はい、そうでしたね」
「そして環奈殿も女性の姿だったと聞いている」
「そうじゃの。あの頃はピチピチのギャルじゃったわぃ」
「つまり神である可能性があるのは策也くん。君だけという事になる」
「マジか‥‥」
なんだかとんでもない話になってきたぞ。
「そして男神はとても貴重でな。分かると思うが、皇は女神しか産まない。男神は別の形でしか生まれないから、神は女神がほとんどなんだ。策也くんが神になるとしても何時の事になるかは分からないが、私としては自分の娘が選んだ男が神になってくれるととってもムネアツなんだよ」
なんだなんだ?
いきなりムネアツとか元皇帝らしからぬ言葉を使うな。
「そ、そうかい」
「そのためには今やるべき事、そしれこれからの事で二つばかり策也くんにお願いがあるんだ!」
「お、おう。神とか正直よく分からないけど、みゆきの父ちゃんの言う事なら聞かんでもない」
なんか急に力を込めて喋り始めたぞ。
なんかとんでもないお願いをしてくるんじゃないだろうな。
「簡単な事だ。一つは、今すぐ名前を元に戻して生きてほしい。『此花策也』だろ?自分の名前に責任を持って行動できないヤツは駄目だ!」
何をお願いされるかと思えば、そんな事かよ。
とはいえ偽名を使う奴にろくなのはいないかもな。
「そうだな。みゆきの旦那が死んだ木花咲耶だと思われているのも不愉快だしな」
「それだけではない。その名前には意味があるんだよ。そもそも此花家は皇家と縁が深くてな。親戚みたいなもんなんだ。それと今策也くんが此花で無くなったら、それは世界の不安定要素となる」
「どういう事だ?」
「説明は難しいが、占いでそうなっていると単純に考えてくれ」
「占いねぇ」
でも皇の占いは、結果が出ればそれは百パーセントとか云っていたよな。
別にしばらく派手な事をするつもりはないし、苗字を戻してもいいだろう。
「分かった。それは約束しよう。姿は変えてもいいのか?小さいと不便な事も多いからさ」
「それは構わない。そしてもう一つ‥‥孫は三人早いうちに頼むぞー!」
「なんて事いうんだこのオヤジ!」
みゆきなんてまだ子供だぞ?
まあでもその予定だったんだけどね。
みゆきともそんな話をしていたよな。
「とまあ今のは冗談だ」
「冗談かよ!」
「だいぶ我が息子らしくなってきたな」
そういえば俺、みゆきと結婚しているから一応義理の父親って事になるのか。
「私からのお願いは、絶対に魂を穢すような事だけはしないでほしいって事だ。それはみゆきも同じだし、他のみんなもそうだ。だが特に策也くんにはお願いしたい。君が魂を穢した場合、おそらく闇に落ちる事になるだろう。そうなると二度と出てこられなくなる」
「闇?どういう事だ?」
「私にもよくは分からん。ただ魂が穢れた奴は地獄に落ちるという事だ」
転生前の世界でもそんな事は云われていたな。
特に日本は魂の穢れを嫌い恥と感じる文化だった。
最近はそれを恥とも思わない輩が増えていたけれど、まあこの話は分かりやすいよ。
「分かった。魂を穢さないよう生きる事にする」
マジに考えるのもダサい気がするんだが、俺は何故かマジでそう思った。
「いい顔だな。流石はみゆきが選んだ男だ。子供とは思えんな」
「いや俺子供じゃないし。一応二十歳越えてるし」
「なんだと!お前はロリコンだったのか!?」
「見た目は同い年だろ?ロリコンにはならない!それにみゆきの可愛さを見ろよ!全国の男が惚れても不思議じゃないっちゅーねん!」
「それもそうだな」
親バカだ。
でも事実だけどな。
「さて、では言いたい事も言ったし、そろそろ国に戻るか」
「もう帰るのか?せっかく会えたのに」
「そうですね。でも残念ですが一応この人は弥栄ですし、弥栄の仕事をする必要がありますから」
「そっか‥‥」
「あの‥‥お父さん‥‥今日は会えて嬉しかったよ」
みゆき‥‥。
父親ならちゃんと応えてやれよ。
俺はみゆきの背中を軽く押した。
みゆきはそのまま父親の胸の中に納まった。
見た目弥栄な父親なんだけどね。
つかオヤジ、みゆきを抱きしめて気持ち悪いくらいに感動しておるな。
まあでも父親が生きていて、みゆきの事を愛していているのが分かって良かったよ。
弥栄には悪いけど。
これで国がどうとか継承権がどうとか変な話を言い出していたら、もう二度と会わせてやらなかったんだけどな。
「策也さん。今日はお会いできて嬉しかったわ。みゆきの事、よろしくお願いしますね」
「お、おう。任せておいてくれ」
「はい」
マジ綺麗な人ですな。
流石はみゆきの母親だ。
それにまだ若いよな。
本当は毎日でも会いたいんだろうな。
みこともみゆきも‥‥。
みゆきはまだ子供なんだからさ。
神だかなんだか知らないけれど、もう少しいい感じに神様って産まれないものなのかね。
少しの間、大化はみゆきを抱きしめて何やらコソコソと話した後、みゆきの頭に手を乗せてから開放して部屋のドアへと歩いて行った。
話してた内容聞こえてるぞ。
言いたい事言ってくれてるよな。
いいけどさ。
「それでは諸君、また会える日を楽しみにしているぞ」
だったら皇国に招待してくれればいいのに。
でも今日会って改めて分かった。
みゆきが皇国に行けば、色々問題にもなりそうだ。
魔力ですぐに皇の人間だとバレる可能性が高い。
「また何時でも来ていいぞぃ」
「此花にもいらしてください」
「今日はお会いできて光栄でした」
「じゃあな」
「バイバイお父さん、お母さん」
大化とみことは手を振って部屋から出て行った。
なんか突然色々な事が起こって色々な事を聞かされた気がする。
今更だけど何かヤバい気がしてきたぞ。
「此花って皇と縁があったの?王女の私も知らないわよ?」
「僕も聞いた事がなかったけど‥‥でも少し分かるかもしれない」
「そうなの?」
「麟堂は知ってるかな?此花にあると云われる予言教団の存在」
「聞いた事ないわね」
予言教団ねぇ。
そういえば総司は会った頃予言がどうとか言っていたよな。
総司はその予言教団と関係があるのだろうか。
「みゆきは自分が神とか言われて驚かないのか?」
「ん~‥‥今日はそれどころじゃなかったよ。それにさ、魔王に策也の体が乗っ取られた時、なんとなくそんな気がしたんだよね。なんとなくだけど‥‥」
なんとなくそんな気がしたのは俺もだけど、本人がなんとなくそう思うってどんな感覚なんだろう。
「よく分からないんだけどさ、この世界に生きてる間は普通の女の子だよ」
「そうだな」
普通では無いけどね。
流石にこれが普通だったら、お釈迦様もビックリするよ。
こうして俺は、みゆきとみことを会わせる事ができて、この世界に来てから心に|閊《ツカ》えていたモノを全て解消できた気がした。
そして今日から改めて『此花策也』として生きていく事になる。
「そういえば来週は洋裁と金魚の結婚式だったな」
「なんだか不思議よね。オリハルコンナイフと幽霊が結婚するなんて」
「わしなんか黒死鳥でダイヤモンドミスリル製のジョウビタキゴーレムと結婚したぞぃ」
「此処二年くらいで世界の常識が覆されましたね」
「本当は不思議な事なんていっぱいあるけど、気づいてないだけなんだよ」
「本当だ。ちなみに俺は異世界転生してきた人間だからな」
「ええっ!!!」
そういえばまだちゃんと話したのはみゆきだけだった。
でももう別に隠す必要もないだろう。
俺はもう御伽策也ではなく此花策也なんだから。
「わたしは知ってたよ」
「そりゃ話したからな」
「何よそれ!私にも詳しく話なさいよ」
「僕も興味ありますね」
「別に驚く事でもないわぃのぉ」
この世界に来て、やりたかった事はこれで全部できたと思う。
これからはやりたい事とやるべき事をやっていくターンだ。
俺の本当のチート異世界ライフは此処から始まるのだ。
「そういえば菜乃と妃子を外で待たせてあるんだ。あいつらも呼んで美味いもん食いながら話すか」
「そうね、今夜は寝かさないわよ」
「リンは相変わらず男前だな」
こうして俺の異世界での序章は終わりを告げるのだった。
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