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孤独な戦争

これは佐天から提案してきた事だった。
お互い住み分けをハッキリさせた方が、みんなにとって良いのではないだろうか。
そしてゆっくりと少しずつでないと、種族の違いは埋められないのではないだろうか。
この日、魔界の王である悪魔王サタンより、人間界へ向けてメッセージが伝えられた。
『魔界の王、悪魔王サタンであるのじゃ。我は人間界に興味はない。しかし人間は魔界にゴミを捨てたり荒らしたりしよる。魔界に来るなとは言わんが、魔界の住人に迷惑をかける行いは、見つけ次第排除するのじゃ』
魔物悪魔の姿で発信したその映像は、人間界に大きな衝撃を与えた。
誰もが気が付いたのだ。
人間界に攻め入ってきたのはやはりただのヒューマンであり、魔界には本当の悪魔王が存在したのだと。
そして多くが思った。
人間同士で争っている場合ではないのだと。
そんな訳で再び、神武大聖の元に英賀谷海戦がやってまいりました。
「南の大陸の事はご存じかと思われますが、既に決着はついております。しかしまだ残党が残っておりまして、これを片付けていただきたいのです」
「残っている奴らを全員殺せと?」
「いえ。小鳥遊の者は全員ひっ捕らえ、その後北東の島のみ領土として与え統治させる予定です。獣人は好きにしてかまいません」
「生かしてもいいんだな?」
「はい」
「これをして俺たちにメリットは?」
「獣人王国を新たに作る必要がありますので、それをお任せします。傀儡国でもなんでも結構です」
作ったり管理したりする面倒を押し付けてるだけじゃないのか。
現在この世界で大量破壊兵器のような攻撃手段を持つ国は、一応伊集院と有栖川、そして神武国が影響力を持っている妖精王国だけとなっている。
伊集院や有栖川の狙いは、神武国の戦力を少しでも削ぐ事なのだろう。
或いは戦力がどれくらいあるのか見極めたいのか。
普通なら受け入れられる話ではないし、そもそもどうして神武国ならできると思うのだろう。
魔物や亜人種国家の代表みたいなもんだし、黒死鳥王国の防衛でその力を見せてしまっているか。
それに妖精も従えている感じになっているから、無理もないと言えばそうなのかな。
「南の大陸の領有権はどうなる?」
「それはもちろん伊集院と有栖川のものです。これは譲れません。ただし獣人王国の領土として、何処か一ヵ所提供はさせていただきます」
つまり町一つとその領地だけで我慢しろという事か。
「それは南の大陸以外でも?」
「そこは話し合いという事になるでしょう」
どう考えてもやっぱり面倒を押し付けられているだけなんだよな。
でも前の事もあるし、また大量破壊魔法とかやられたら洒落にならない。
あの魔法の面倒なのは、三十分ほど効果が持続する事だ。
町を守る為にバリア結界を準備しても、そこまで持続するものはなかなか維持ができない。
背後にある武力ってのは、外交では大きな力を持つんだよな。
現状断る事はできないか。
「いいだろう。ただし条件がある。報道記者は全て大陸から出ていってもらう。見つけた場合は相応の責任は取ってもらうぞ」
「分かりました。そうするように伝えておきます」
「それとこれが終わったら、小鳥遊の捕虜を三四十名預かっている分、それもそちらに引き渡そう」
「えっとそれは‥‥」
「島津第二のノーナルの町を襲撃したかもしれない容疑者たちだ。捕らえたのはただの冒険者だが、預かるように頼まれたんでな。事が終われば返しても良いと連絡を貰っている」
「そうですか‥‥ではよろしく頼みます」
こうして大聖の俺は南の大陸の残党狩りを引き受けた。

「そんな訳なんだが、今回はただの冒険の旅でもないし報道記者の仕事でもない。長くなりそうだし参加は自由だがどうする?」
「えっと‥‥なんだよ‥‥」
「まことに言いにくいんだけど‥‥俺たち‥‥子供ができったす」
えっ?子供って金魚と洋裁の子って事か?
「マジか。それはおめでとう!」
「あ、ありがとうなんだよ」
「うっす‥‥」
「祝いに何かやるが、欲しいものはあるか?」
「えっ?そんなの悪いんだよ」
「金‥‥一生グータラできる‥‥」
流石にそれは金魚が可哀想だろ。
「ちゃんと男の甲斐性は見せろよ。住む場所は決めたのか?」
「まだなんだよ。子供には昨日気が付いたんだよ」
「とりあえず旅はやめて新婚生活をする事だけしか決めてない‥‥」
「だったら家族の家に住むか?あそこは俺とみゆきが将来暮らそうとキープしておいた場所だが、今はメイドたちしか住んでないんだよ。メイドはやらんけどな」
「本当にいいんですか?」
「あんないい所‥‥」
洋裁は割と顔が知られているし、金魚もあまり普通の町では暮らせないだろう。
兎束から抜けてきているわけだからな。
「構わないぞ」
世界を色々回って、いい所ってのはまだまだ沢山ある事を知った。
住む場所なんて他にいくらでも見つけられるさ。
それに俺とみゆきの新婚生活は七年以上先になる。
その時の事はその時に考えればいい。
「じゃあ住まわせてもらうんだよ」
「そうだね‥‥」
「それで仕事はどうするんだ洋裁?」
俺はグータラなんてさせてやらないのだ。
「えっと‥‥考えてないけど‥‥」
「だったら、七魅を助けてやってくれないか。無理やり人間界に引きずり込んで、チョッピリだけ悪いと思ってるんだ。お前ら元領主だし手伝うくらいは余裕だろ?」
「金魚はやるんだよ!」
「えー‥‥じゃあやるけど、領主の記憶も無いし自分ダークドラゴンっすけど」
そういえばそうだったな。
「でも炎龍にはもう色々なドラゴンが住んでるんだ。いずれはフレイムドラゴンの国ってよりはドラゴンの国にしようと考えている。その為に今ヴリトラに神武国の天王をやらせている訳だしな」
そうなのだ。
ドラゴンは色々いるけれど、ドラゴンの王ってのも存在する訳で、東征がヴリトラだと知れば、ドラゴンたちは一つになれるのではないかと思っている。
「よく分からないけど、七魅がいいなら‥‥」
「決定な。二人はこれから七魅の側近秘書みたいな感じだ」
こうして洋裁と金魚もパーティーから離れる事になった。
気づけば俺は一人になっていた。
にぎやかな梅影姉妹はいるけどね。
でも今回伊集院から受けた仕事は戦争な訳だし、友達にやらせるのもどうかと思っていた所だ。
俺と部下たちだけで片づけるとしよう。
しかし残党とはいえ熊獣人たちは割と強い。
現在のボスは最初に戦争をおっぱじめた時のボスとは違うらしいから、若干戦闘力は落ちると云われているが残虐性は上だとか。
全体の戦力も十分の一くらいまで落ちているとはいえ、俺一人で南の大陸全てをくまなく掃討するとなるとかなり面倒だ。
やはりもう少し戦力が欲しいよな。
そんなわけで、あの海神でも敵わなかった奴らの魂をとうとう使う時が来たな。
ずっと魔砂も育て続けたし、視覚と聴覚のリンクも可能なくらいにまで従順な戦士にできるだろう。
俺の意思がこもった二十七人。
一番強いヤツは最大限俺の意思を刷り込んで完璧な駒にしてやろう。
俺は二十七人を順番に蘇生していった。
一応蘇生した者が突然暴れ出しても大丈夫なように、作業は炎龍の地下魔法実験場で行った。
結局万一の事は起こらず、全員予定通りの蘇生が行えた。
最後の十人は、視覚と聴覚の共有ができる所までにはできなかったけれどね。
「お前にはこれから俺の代わりに働いてもらうぞ。名前はそうだな‥‥『|咲耶王仁《サクヤオウジン》』にする。呼ぶ時は『|王仁《ワニ》』と呼ぶぞ」
「仰せのままに」
王仁はこの中で一番魔力が強いので、俺の意思を最も多く刷り込めるように魔素ゴーレムとして蘇生した。
当然視覚と聴覚の共有も可能で、部下として最も使いやすくなったはずだ。
見た目は銀髪で格好良くしたが、スマホで話した時の性格から、目は少し細目で冷たい感じにしておいた。
「それでだ。王仁は何かに変化はできるのか?」
俺は確認しておきたい事があった。
これだけ強い戦士を人間の中から集めるのは可能なのだろうかと疑問に思っていた。
強い血統を持っているであろう王族なら分かるが、この二十七人はいずれも王族とは関係がないという。
となると俺の考え得る可能性は一つしかなかった。
「はい。可能でございます」
「此処で変化しても大丈夫な大きさか?」
ザラタンだったらヤバいから一応聞いておく。
「大丈夫でございます」
「では変化して見せてくれ」
「はい」
王仁は変化して見せた。
その姿はどう見ても『死神』だった。
やはりそうか。
こいつは確か伊集院の転移ゲートを通ってきたヤツだ。
死神を使役するなど考えられないから、おそらく魂を蘇生させて使っていたのだろう。
ヴァンパイアと同じくらいの魔力を持っているし、想定内の結果だった。
「分かったありがとう」
「いえ」
「じゃあ次はお前たち二人だ」
「僕たちですか」
「僕たちみたいだね」
この二人は有栖川の転移ゲートを使ってきた者たちで、どうやら兄弟のようなんだよね。
だから容姿も似た感じにした。
黒髪の可愛いアイドル系だ
「名前は『|天照太妖《あまてらすたいよう》』と『|天照日凛《あまてらすにちりん》』にする」
「太妖か‥‥」
「日凛だってさ!」
「太妖じゃ不満か?」
「いえ、とても嬉しいです」
「そっか‥‥」
この二人は対照的だな。
太妖に太陽神天照の名前を付けたのは間違いだったかもしれない。
「じゃあお前たちも変化できるならしてみてくれ」
「分かりました」
「了解っす!」
おいおい、まさかの『ネプチューン』ですか。
ネプチューンは転生前の世界ではポセイドンと同一視されていたが、この世界では水陸両用の騎士のような魔物である。
よくもまあこんなのを二体倒せたな。
大量破壊魔法のような事ができるのなら倒せる相手ではあるけれどさ。
「分かったありがとう。普段は人間の姿で頼む。戦闘時は好きにしてくれ」
「分かりました」
「オッケーですっ!」
「じゃあ次はお前たち三人だ」
この三人までが大魔王クラス以上の強さを持つ者たちだ。
「はい」
「どんな名前を付けてくれるのかしらね」
「いい名前頼むよ!」
また三姉妹的なのがきちゃったよ。
「そうだな‥‥苗字は月詠でいこう。名前は『|富士子《フジコ》』『|鷹千代《タカチヨ》』『|那須香《ナスカ》』にする!」
「富士子ですか‥‥」
「少し古い感じがするわね」
「微妙にバカっぽくない?」
そろそろ名前を付けるもの面倒になってきてるし、こっちもネタを考えるのが大変なんだぞ。
もしも俺の活躍が小説になったとしてそれを読む人がいたら、そりゃもう頭がこんがらがっているに違いない。
魔法記憶があるからなんとか覚えていられるけれど、脳内記憶だけじゃ覚えてないしな。
「これは全て縁起がいい名前なんだ。それにとっても可愛いと思うぞ」
「そうなのね」
「まあ良しとしましょう」
「分かったよ。これでいい」
納得してくれたか。
「じゃあ変化できるならやってくれ」
俺がそういうと、三人とも同じものに変化した。
こりゃまたなんと言っていいか、『ドラゴンキメラ』か。
九頭竜の転移ゲートを通ってきた奴らだけはある。
九つの首が、基本の七龍とヤマタノオロチ、そしてヒドラね。
本体はヒドラって事になるのかな。
こんな綺麗なキメラが自然に誕生するなんて正直考えられないから、九頭竜が作った魔物なのかもしれない。
それを使役していたとしたら、九頭竜は完全にドラゴンマスターだな。
こんな感じでこの後も調べていったが、小鳥遊の転移ゲートを通ってきた者以外はいずれも魔物に変化できた。
間違いなく伊集院と有栖川は魔物を蘇生させて戦力として使っている。
九頭竜はドラゴンキメラが切り札といった所か。
さて次は戦争をどう決着させるかだな。
戦力は揃った。
でも簡単に終わらせたら、また俺たちの力を脅威と感じて何かしてくる可能性もある。
かといって何年も戦争している訳にもいかない。
次にやるべき事があるからだ。
半年かな。
それくらいなら、結構いい勝負をしてようやく終わらせたという感じを出せるだろう。
それと気を付けるのは、やはり強すぎる個の力を見せない事か。
報道は入らなくても、民の中に諜報員は隠れているに違いないのだ。
町での戦闘の場合は極力個の力を抑えて戦わなければならない。
特に王仁には気を付けてもらわないとな。
これを機に、逆に弱い奴らを強く見せておくのもいいだろう。
傭兵隊はトップレベル相手には完全に力不足だからな。
まだまだ戦えると思わせておいた方が抑止力になる。
力は強すぎず弱すぎず見せないとね。
そんなわけで戦争参加のメンバーを紹介しよう。
まず総大将は神武大聖だ。
近衛兵として私兵五十名も同行する。
ちなみに俺は雑魚キャラ一般兵として参加。
大聖以外はすべて忍者衣装の覆面着用で、誰が誰だかできるだけ悟られないようにする。
セバスチャンが是非戦いたいという事で、傘下の忍者部隊など五十名と共に参加を許可した。
『あくまで』執事をやってもらおうと思っていたのに、どうも違う事をやらせているな。
この戦いが終わったら今度こそ執事をやってもらおう。
洋裁と金魚が家族の家に住むという事で、追い出された家郷ファミリーも参加する。
黒死鳥王国の青い三連星も出さないと伊集院が納得しないだろう。
神武国からは、仁徳不動と防衛部隊の半分を送り出す。
私設民間傭兵隊も参加させる。
今回はこいつらを俺がフォローし、まだまだやれる所を見せるつもりだ。
これらに今回蘇生した二十七名を加えて全ての戦力とする。
四百五十名ほどになるかな。
割と少数精鋭だ。
一般兵とか連れて行っても、誰も死なせたくない俺にとっては足手まといになるからね。
「進攻ルートは、大陸の西の端ベットーから入り、元有栖川領域を取り戻してから、大陸の中心にある越えられない山の周りを時計回りに回って大陸を制圧する。作戦期間は半年を予定している。俺たちが本気になれば一ヶ月もあれば終わるミッションだが、これも世界平和の為だ。のんびりいくぞ」
こうして俺たちの、いや、俺の戦争はスタートした。

戦争は思った以上に最初楽に進んだ。
既に九割の戦力は壊滅しているわけで、正直これだけの戦力を揃える必要はなかったと言える。
ぶっちゃければ、半年あるなら俺一人でも大丈夫だったかもしれない。
しかしこれくらいは出さないと、また脅威を与えてしまう。
脅威は排除の対象になるわけで、特に個の力を大きく見せるのは良くない。
四百五十名みんな似たような力が集まり、みんなで勝ち取った勝利を演出するのだ。
青い三連星は既に力がバレているので、強い相手はこの辺りで対処している。
最初に難関が訪れたのは元有栖川領土を取り返した辺り、一ヶ月後だった。
小鳥遊正規軍の生き残りたちが相手だった。
流石に世界六位の国だけあって、一応まともな騎士が揃っていた。
更に王族も絡んでくるから、捕らえないといけない。
小鳥遊家固有の能力への対処はできるものの、とにかく面倒くさかった。
先に結界を抜け出す為の結界を張っておいても、相手の結界が覆いかぶさればまともに身動きができない。
だから結界の穴から抜け出して新たに結界を張り、再び戦いを挑もうとすればまた結界を張られる。
個の力を見せずに戦うには嫌な相手だった。
それでもなんとか全員を捕らえ、先へと進攻する。
次に手を焼いたのは、犬獣人の罠だ。
回避はできるがこれまた時間がかかる。
二ヶ月を過ぎた辺りで進行速度は半分にまで落ちた。
「少しだけ力を出していくか」
そうすると今度は一気に進んでしまい、予定よりも早くに終わりそうになる。
また力を落として進み、南の大陸の北半分を制圧した時には三ヶ月半が過ぎていた。
南のエリアに入ると、今度は熊獣人たちの最後の抵抗とも言える攻撃があった。
おそらくここを突破すれば、後はもう楽に進むだろう。
いやむしろここで終わりになる可能性もある。
だから俺たちは、相手を倒さないで西へ後退させるような戦いを続けた。
三国志演義の孟獲と孟優を相手にしているような気分だ。
それに孟獲のように完全敗北を味わわせる為ではなく、地道に敗北感を積み上げていく戦いだから尚難しい。
なんでこんな戦いをしているのだろうと思う事もあった。
いっそ本気を出して一瞬で終わらせようかと誘惑にも駆られたが我慢して続けた。
そしてそんな戦いを続け、戦争が始まってもうすぐ七ヶ月といった所で、全熊獣人をひっ捕らえて勝利を確定させた。

「やっと終わったー!」
「大変だったわね」
そう言ってねぎらってくれるリンのお腹は大きくなっていて、既に二度目の出産も近かった。
子供と言えば、俺が戦争をしている間に環奈と陽菜の子も産まれていた。
流石にその日は戦争を抜けて、俺だけは出産祝いに駆けつけたよ。
戦争中でもそういうのは大切にしたいよね。
戦争が終わった俺は、人員の再編を行った。
やっぱりセバスチャンには執事をしてもらいたいので、みゆきの護衛執事としてホームに置く事にした。
代わりに秘密基地責任者は王仁にやってもらう。
博士に全部任せてもいいが、リアルタイムの通信手段が無いのは困るからね。
それから二週間が過ぎて、獣人王国は新たな場所で町作りが始まっていた。
西園寺領の北側、越えられない山に近い所に領地を貰った。
この世界、簡単に領地が貰えるように思えるが、人口もまだまだ少なく全く使用していない場所も多い。
実際ちゃんと見ていけば、おそらく魔物の生息地と人間の活動圏は同じくらいになるのではないだろうか。
それに西園寺と言えば娘の望海を大聖に預けていたわけで、その大聖が管轄する国なら安心という所もあったのだろう。
その期待に応えられる国にしないとな。
町の名前は『サファリ』に決まった。
王は割と賢い熊獣人の『|熊野道山《クマノドウザン》』にした。
政治体制は神武国のように、各種族から一人ずつ集まって皆で話し合って決める形にした。
また熊獣人が暴走しても困るからね。
一応言う事を聞かなそうな獣人は、しばらく神武国で抑留しておく。
それと入れ替わりに、今まで抑留していた小鳥遊の者や、大聖を襲った翼龍たちも全て解放した。
サファリの監視役は海神に頼んだ。
熊獣人には強い者も多く、海神レベルでないと制御しきれなくなる可能性もあるからね。
獣人が恐れられ南の大陸に追いやられていたのも分かるよな。
思った以上に一般人まで戦闘力が高かった。
俺が弱かったら今でも一緒に暮らすのは避けたいと思う所だよ。
海神にも苦労をかけるな。
俺の代わりに面倒ごとをずっと押し付けている気がする。
早く代わりができそうなのを見つけたいものだ。
そんな感じで色々やって全てが終わった。
これでしばらく平和が続き、やっとやりたい事もできるだろう。
全てが落ち着いたらやろうと思っていた事がある。
それは、みゆきを連れて皇国へ行く事だ。
皇帝が代われば、会えるようになるかもしれないと弥栄は言っていた。
そろそろいいだろう。
俺は弥栄へとメールを送った。
返事は、『その前に黒死鳥王国で会おう。出来れば誰にも見られない場所に、秘密を知る者全員を集めてほしい。大切な話がある』と書いてあった。
秘密を知る者。
リン、総司、環奈、みゆき、そして俺だ。
このメンバーを集めて大切な話とは一体なんだろうか。
全員の都合を合わせ、2月14日、黒死鳥王国にある環奈の屋敷の一室に集まる事が決定した。
一体なんの話があるのだろうか。
期待と不安が俺の頭の中で錯綜していた。
【<┃】 【┃┃】 【┃>】
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