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千えるの記憶

多数決で物事を決める時、普通なら半分以上の票を集めなければ勝てないと考える。
しかし勢力が割れている時は、少ない人数でも力を持ったりするものだ。
例えば賛成が四十パーセント、反対が三十五パーセント、自分の思い通りになる票が二十五パーセントなら、たとえ二十五パーセントの票しかなくても決定権は自分にあると言える。
これが三つのグループだとしたら、別に二十五パーセントのグループでも十分な力を持つ事ができるのだ。
更にそのグループ内で、半分以上の票を自由にできれば、そのグループも支配できる。
つまり全体の十三パーセントの票を自由にできる力があれば、その人はこの組織全体を牛耳れる可能性があるという事になる。
こういう力関係は政治の世界では当たり前にある話で、その力学を意識して利用できる人間が権力者となるのだろうな。

貴信が亡くなった後、俺は此花第二の国王と貴信たちの葬儀を準備した。
主に冬籠に指示するだけだったが、一応継承権第二位だった者としてやるべき事はやった。
そしてその場で、俺は改めて此花第二王国の終わりを皆に告げた。
とりあえず難波津家の者には『神武国が俺の国』だという事を伝えておいたので、激しく反対したり暴れたりする者はいなかった。
難波津が従うのなら何かがあると考えてくれたようだな。
いつまでになるかは分からないが、しばらく元第二の領地は難波津に任せるしかないだろう。
仕えてきた者たちの気持ちがそんなに簡単なモノじゃなかった事は、想像はできても俺には分からなかった。
会社が外資系企業に買収された所で、会社員は従うしかなかった世界に生きていたわけだしね。
「民の方も一応落ち着いたか」
「はい。麟堂様がああ言ってくださったので助かりました」
『民の皆さんは安心してください。もしも神武国の元で大きな問題が起こるようなら、私が統治します!今はとりあえず策也の言う通りにしてみましょう』
英雄の言葉は民に響くんだよな。
今の俺はその仲間に名前を貸していたただの継承権第二位だった訳で。
俺が何かを言っても所詮はよく知らない王族の声程度。
「これから民にちゃんと納得してもらえる町にしていかないとな。でも町としてはおそらく発展させる事ができるだろう。神武国は人間の世界ルール外の世界だからな。冒険者ギルド協会も商人ギルド連盟も口出しはできない」
「具体的には何をなさるのですか?」
「全ての町に新たに領民ギルドを置いて行く」
領民ギルドとは、資幣を中心に作られた商人ギルドの拡大版のようなもので、冒険者ギルドやその他ハローワークや役所なんかの仕事を合わせたような、総合的なギルドである。
俺が管轄する町全てに置かれている、便利な相談承り所のようなものだ。
皇国とその他王家の統治する町では、例えば商売をするなら商人ギルドへ行って許可を得る必要がある。
日雇い的な労働は、基本的には冒険者ギルドでしか受ける事ができない。
しかし人外の国である神武国の領内であれば、そのルールは絶対ではないのだ。
元此花第二領の町では、商売も何もかもが自由になる。
その手助けをする場所は、早いうちに作っておく必要があるだろう。
別に今まで通り商人ギルドを利用するもよし。
冒険者ギルドを利用するもよし。
でも抜けたい人がいるなら、問題なく抜けられるように支援もするつもりだ。
ちなみに資幣の領民ギルドのメリットは、既存ギルドのようなルールに縛られない事。
更に領民ギルドには、全ての民が無料で利用可能な魔法通信端末が置かれている。
冒険者ギルドのニュースサイトを見るのは一部有料になるが、マイチューブなら全て無料で見られる。
俺の管轄する領民には、全ての情報にアクセスできる手段を与えるのだ。
そもそも今までコレだけの魔法通信ネットワークがあるのに、王族貴族と冒険者くらいしか情報を得る手段が無いってのもおかしな話。
情報がすべての人々に行きわたらないから、閉鎖的な環境でしか生きられなくもなる。
別に世界中が共生共存を受け入れる必要はない。
人間だけの国もあっていいし、ヒューマンだけの国があってもいいし、全てが受け入れられる国があってもいい。
でも、お互いがそういった国を認め合える世界にはしたい。
そんなわけで俺は、早速資幣でそれらを手配していった。

まずは各町の城や屋敷をぶっ壊し、新たに屋敷と領民ギルド施設を建ててゆく。
有能な領民ギルド職員がやれば、建物の建設は一日もかからない。
それが終われば魔法通信設備を整えてゆく。
この辺りはセカラシカの私設民間傭兵隊のメンバーがやるようになっていた。
傭兵の仕事なんて平和であれば何もないわけで、現在は秘密基地の支部として魔法通信関係の実働部隊というわけだ。
これらを王都から順にやってゆき、一週間未満で作業は終わった。
従業員は他国から何人か連れてきて、後は現地で募集をかける。
領民を集める為の宣伝もやった。
『人間だけが暮らす自由の町で、あなたも好きに暮らしてみませんか?』
島国で物流に船が必要な事からそこは少し弱いけれど、越えられない山も無いから魔物もほとんど出ないし、好きな仕事が気軽に始められる場所という事で若者が多く集まってきた。
領民ギルドでは、そういった若者へのアドバイスは無料で行うし、融資もしている。
僅か二ヶ月で元第二王国領地に住む領民は倍近くにまで増え、何もかもが追い付かないほどに町も経済も発展していった。
自由だから仕事でのトラブルは結構あったが、ちゃんと働けばお金には困らないので犯罪は少なかった。
治安維持に全力を尽くしたのも犯罪が少ない理由だろうか。
それとこの世界の良い所は、世界中の民が行き来する事から、人間の中で大きく価値観が違うという事が少ない。
人種や民族の違いなどで文化の違いはあるけれど、貧しすぎる国みたいなのは存在しないのだ。
そんな所が有ればすぐにみんな出ていくし、基本的に税は横並びだからね。
転生前の世界で言えば、この世界は全てが日本みたいなものかもしれない。
それにやっぱり、人間だけの町ってのは大きいと感じた。
俺はみんなが共存共生できる世界を夢見たが、現実問題民の事を想えば今はこの方がいいのだと痛感していた。

全てが順調に行っているように思えていたある日、俺は総司に呼び出された。
「策也さんすみません。ちょっとマズイ事になってきました」
総司の表情から、話は割と深刻な事だと想像できた。
そして総司と言えば商人ギルド連盟だ。
俺はすぐに新たな町に置いた領民ギルドが関係しているのだろうと察した。
そもそも有栖川が黙って既得権を渡すとも思えないしね。
「商人ギルド連盟がらみだな?」
「そうです。今まで人間以外の国は、町が一つだけというのが当たり前でした。しかし神武国がそれを破った事で、かなり危機感を持っているのです」
「それで有栖川は何をしようとしているんだ?」
「商人ギルド連盟の商人に、連盟に加入していない商人との大きな取引を禁止しようとしています。或いは領民ギルドを連盟に無理やり引き入れようと画策しています」
そうなるだろうな。
現状ならまだ商人ギルド側にはほとんど被害はないけれど、こちらの商人にとっては大問題になる。
なんちゃら包囲網みたいなもんだ。
尤も神武国の領土が有れば、自給自足地産地消も可能ではある。
でも圧倒的に生活レベルは低下するだろう。
そうなれば再び民は外へ出ていくか、或いは結局商人ギルドに加入させられる事になって、俺の町にメリットは無くなる。
「それで、まだ決定ではないんだな?」
「次の七星会議で投票によって決まります。ご存じの通り有栖川が半数以上を自由にできる状態ですから、このままだと間違いなく可決されますね」
「でも差は一票なんだよな?」
現在の七星会議は、昔ほど圧倒的有栖川支配という訳ではない。
総司が王族になった事で、持っている票を増やしたからだ。
有栖川が五票、総司が三票、他五人が一票の合計十三票。
有栖川は他五人の内の二人を囲い込んでいるので、有栖川の提案は必ず通るようになっているのだ。
「はい。でもその一票がどうにもなりません」
「確か一票は兎束が持っていて、これは完全に有栖川と一体だったな」
「そうです。そしてもう一票は御剣家に仕える|豪傑《ゴウケツ》家の筆頭、『|豪傑奉先《ゴウケツホウセン》』です。御剣家に仕えながら、有栖川にかなり近い男です」
名前から察するに豪胆で武闘派な感じがするな。
「どんなヤツなんだ?」
「でかい男だとしか分かりませんね。七星会議も基本的にリモートですし、会ったのは一度だけです」
そいつをなんとかできないだろうか。
名前だけで判断して行動するなんて愚の骨頂だし、とりあえずそいつがどんな奴なのか調べるか。
「分かった。とりあえずこちらで出来る事はしてみるよ。総司は反対票だけ固めておいてくれればありがたい。尤も、賛成した方が商人ギルドにとってはいいのだろうけどな」
「冗談でしょ。僕は民の為に商人ギルドはあるべきだと思っています。むしろ領民ギルドに商人ギルド連盟を吸収してもらいたいくらいですよ」
「そうだな。流石にそこまでやるのは無理だけど、今回は民の為にできる事をやってみよう」
「お願いします」
さてどうするかな。
俺はまず秘密基地で諜報活動の指揮を任せている『|密島禰子《ミツシマネコ》』にテレパシーを送った。
「禰子?ちょっと聞きたいんだが、御剣の所にいる豪傑奉先について教えてほしいんだが」
禰子は十年以上前に海神を狙ってやってきた強者の内の一人だ。
俺の意思でかなり教育できており、今ではすっかり俺になついている百目鬼の魂を持つ女の子。
「あ、お兄ちゃんだ!」
ちょっと変に教育しすぎたかな。
「お兄ちゃんだよ。それで豪傑奉先なんだけど?」
「この人あんまり情報ないんだよね。貴族筆頭なのに何してるんだろ?人生楽しんでなさそうだね」
俺はこいつに諜報活動の総指揮を任せて良かったのだろうかと毎回思う。
一応統括責任は王仁だからあっちに聞いてもいいんだけど、そうすると禰子が寂しがるんだよな。
「そうか。もう少し何か詳しい情報はないのか?」
「この人たぶん引きこもりなんだよ。可哀想だからお兄ちゃん遊んであげたら?」
「そうだな。今度機会があればそうしてみるよ」
「流石お兄ちゃん。優しいね」
どうしてこういう話の流れになるのだろうか。
まあいいけどさ。
「じゃあな禰子。王仁の言う事しっかり聞いていい子にしてるんだぞ」
「うん、分かったよ。お兄ちゃんも悪い事しちゃ駄目だよ」
「おう」
これじゃ何のための諜報活動か分からないな。
本当に情報が必要なら、セバスチャンに聞けばすぐに調べてくれるんだろうけれどね。
ただ今回は本当に情報がなさそうなんだよな。
引きこもりとか言ってたしな。
誰かこいつの事を知ってそうな奴はいないだろうか。
そう思って頭に浮かんだのは『氷菓折太郎』の顔だった。
あいつは人を見抜く力に優れているんだよな。
大聖でも長く会ってないが、ちょっと行ってみるか。
大聖の俺は神武国にある愛洲王国の大使館を訪ねる事にした。
「わざわざ来ていただいて。呼び出していただければすぐに行きましたのに」
「いや、俺は既に天王ではないからな。それに今日はほとんど私用だ」
「私用ですか?」
私用ってのも違うかもしれないけれどね。
神武国の未来の為、領民の為だからな。
俺は用意されたソファーに座ると、向かいに座った折太郎に早速聞いてみた。
「豪傑奉先の事は知ってるか?」
「一応名前くらいは知ってますよ。七星の一人ですし、名前の通りかなり強い方だという話です」
「ほう。そんなに強いのか?」
「話を聞いただけですから、正直本当の所は分かりませんよ」
「誰に聞いたんだ?」
「嫁ですが‥‥話した事無かったですよね」
知ってますよ。
聞いたのは策也で、嫁の方の千えるからなんだけどね。
「そうなのか。その嫁は奉先の事はよく知っているのか?」
「学園時代のクラスメイトだったらしいです。それ以上の事は知りません」
クラスメイトか。
若い頃の奉先がどんな人間だったか分かれば、何か攻略の糸口がつかめるかもな。
「その嫁は今どこにいるんだ?話を聞いてみたいんだが」
「えっと‥‥それが‥‥今は会えないと申しますか‥‥」
「何かあったのか?」
こういうのは聞かない方が良かったか?
死んでるとか言われたらちょっと悲しいぞ。
「申し訳ないですが、ちょっと今は会う事が無理なのです。理由は話せません」
死んだ訳ではなさそうだが、表情から何やら深刻な状況である事は伝わってきた。
これは‥‥『気になります』な。
「そうか。聞いて申し訳ない。今日は時間を取らせて悪かったな」
「いえいえ、こちらこそお役に立てなくて」
結局折太郎から得られた情報は、千えるが良く知っているという事だけか。
しかし今は千えるには会えない。
でも、そう言われて『はいそうですか』とはならないのだよ。
俺はチート大賢者だからな。
『禰子?またまた聞きたい事があるんだけどさ。氷菓千えるが今どこにいるのか分かるか?』
『あ、お兄ちゃん。氷菓千える?ちょっと見てみるね‥‥うーんと‥‥愛洲王国の王都カガラシにはいるみたいだよ。でも‥‥』
『ん?どうかしたのか?』
『この人、十年間くらい行方不明になってたみたいだよ。二年ほど前に見つかったみたいだけど、なんだか変だねぇ‥‥』
『何が変なんだ?』
『十年間行方不明だったのに、捜索され始めたのが十年経ってからなんだよ』
なんだそれは?
あらかじめ十年は何処に行っているのか知っていたような。
つまり十年は帰ってこない事を知っていた?
しかし十年経っていきなり捜索をするというのもどうなんだ?
十年で帰ってくるはずが帰ってこなかったから捜索したと考えられるが、でも何故十年間は行方不明となっているんだ?
十年間出張とか、旅に出たとか、普通はそういう風になると思うんだけどな。
あまり知られたくない所に行っていたから隠しているのか?
こりゃマジで『気になります』わ。
『分かった、ありがとう禰子!』
『どういたしまして』
とにかくカガラシに行ってみよう。
俺は瞬間移動魔法でカガラシの町中へ移動した。
この町は人が多いので、意識阻害魔法で見つからないようにしてね。
とりあえず千えるの屋敷へ行ってみよう。
俺は影に潜んで影から影へと移動しながら屋敷の中に入っていった。
屋敷内を隈なく探したが千えるはいなかった。
千里眼と邪眼を使っても、どうも千えるの魔力は感じられない。
元々大きな魔力じゃないから、識別も難しいのか。
普通の状態なら見つけられると思うんだけどなぁ。
俺は今度は愛洲王家の屋敷内を探した。
すると地下の一室で千えると思われる人を発見した。
椅子に座って惚けているのは間違いなく千えるだ。
でも、前に会った時と見た目がほぼ変わっていない。
これはどういう事だ?
部屋には千えるだけのようだったので、俺は影から出て千えるの前に立った。
「よう千える!久しぶりだな」
俺の挨拶に千えるは、惚けた顔のまま俺を見あげた。
「あなたは誰でしょうか?」
俺が分からない?
俺は成長して確かに姿はかなり変わっている。
でも俺とのパイプがどうとか言っていた千えるなら、今の俺の姿を知っているはずだろう。
それになんというか、あの頃の目の輝きがまるでない。
なんだか今の千えるは抜け殻のようだ。
記憶喪失にもでもなったかのような感じだった。
「俺は策也だ。此花策也。あんたが必死に接待して赤裸々ハニートラップまでして味方にした策也だよ」
俺がそう言うと何かを思い出したように、いや何かに気が付いたように自分の住民カードを取り出し、住民番号帳を開いて俺に見せてきた。
そこには、浦野策也と此花策也の番号が記されてあった。
しかしそれは俺が以前に使っていたもので、今のモノとは違っていた。
「そっか。番号の変更を千えるには伝えていなかったな」
「死んだと聞かされていましたが?」
「いやいや、まあ表向きはそうだけど、海神が影武者だってのは以前に話したはずだぞ?」
「私、記憶喪失でほとんど何も覚えていないのです。此花策也さんだけが頼りだったのですが、死んだと聞かされ絶望していました」
「俺だけが頼り?つかやっぱり記憶喪失なのか?大丈夫なのか?」
おいおいおいおい。
千えるが記憶喪失とか、なんかショックだぞ。
情報が聞けないものあるけれど、千えるには千えるであってほしかったよ。
「多分大丈夫です。策也さん」
千えるはそう言って右手を出してきた。
握手か。
俺はとりあえず右手で千えるの手を握った。
すると初めて握手した時のように、何かの魔力を感じた。
これはアレか。
それが本物かどうか認識できてしまう魔法。
まさか俺自身にそれがかけられていたとはね。
「間違いなく策也さんです。策也さん、しばらく手を握ったまま放さないでください」
「えっ?どうしたんだ?」
「何が有っても絶対に放さないでくださいよ。多分私の命に係わる事ですから」
「ちょっ!」
俺が返事を返す間もなく、千えると俺の間で何かが始まった。
なんじゃこりゃ!
俺の魔力がドンドン消費されてゆく。
しかも何かが俺の頭から抜き取られているようだ。
いや違う。
これは記憶のコピーか?
なるほど、何が起こっているのかだいたい分かった。
まさかこんなのを仕込まれていたとはね。
あのキスの時だな。
俺の魔法記憶は自分で記憶にあると認識しなければ記憶に無いのと同じものだ。
でもあると認識した時点でそれは俺の記憶となる。
これは千えるの記憶だ。
千えるの記憶が俺の魔法記憶と一緒に記録されていたんだ。
しかしこの魔力使用量はヤバくないか?
俺じゃなきゃこんなの、既に魔力が枯渇して気絶しているぞ。
あの時千えるは、俺が此処までの男だと確信を持っていたという事か。
こりゃ壮大なハニートラップだな。
間もなく記憶のコピーは完了した。
「終わったか。まさかこんなのを仕込んでいたとはな」
「やっぱり策也さん、助けてくれましたね。そしてゴメンナサイ」
「仕込んだのはあのキスした時だな?」
「はい。あの時はバレるかヒヤヒヤだったんですよ」
「何かが俺の頭に入ってきているのには気が付いてたんだが、ハニートラップでそれどころじゃなかったからな。しかしまさか不老不死になる為に此処までやるかね」
俺は千えるが二十四歳になるまでの記憶全てを自分のものにしていた。
だからどうしてこういう事をしたのか、どうやってやったのか、全て察っする事ができていた。
「私の力はずっと必要だからと、不老不死になる事を求められていたんです。でもその為には記憶を失うという話がありました。この魔法はアイテムによって可能でしたが、記憶を預かる事のできる人ってのはなかなかいなかったのです」
「それで俺なんだろうけれどさ、一言相談してくれれば、俺はお前を不老不死にする事ができたんだぞ?」
「えっ?そうなんですか?」
「まあ別にいいけどさ。お前の記憶全て、俺はいただく事ができたわけだし。いやぁ、これはなかなか素晴らしい」
千えるの記憶が全て。
察しのいい人なら気が付くよね。
あんな記憶やこんな記憶全てが俺の記憶として‥‥
「あー!変な記憶は見ないでください。プライバシーの侵害ですよ!」
千えるは立ち上がって俺の事をポカポカと叩いてきた。
全然痛くないんだけどな。
でもプライバシーの侵害はほどほどにしておくか。
「大丈夫だよ。必要な情報だけ見る事にするから」
「ならいいです。でもなんで策也さんに記憶が残ってるのでしょうか。普通魔法記憶は元に戻せば消えるはずなんですが‥‥」
「俺は元々魔法記憶を使っていたからな。だから本来は受け渡しだったモノがコピーって形になってしまったんだろ」
知らんけど。
「うー‥‥それは不覚でした」
俺を選んだのは失敗だったな。
しかし千える、不老不死になったとはいえ心配だな。
というか千えるの記憶が俺の中にある事で、少し千えるの感情に引きずられる所もあるようだ。
十年以上会っていなかったこいつが、とても身近に感じてしまう。
こいつにとっては、十年以上会っていなかった時の記憶は無いわけで、二年ぶりくらいの再会になるのかもしれないけれどね。
それにしても折太郎とのロマンスとか、そういう記憶が俺の中にあるのは何とも気持ちが悪いな。
「あー!今何か記憶見てましたよね!?」
「見てない見てない!気持ちだけ感じてただけだ」
「それじゃ一緒です!」
全く、自分で俺に記憶を渡しておいてこの言い草だよ。
「俺に勝手に記憶を渡したのは千えるだからな!これはお仕置きだ。だけどまあプライバシーの侵害はアレだし、お詫びにこれをお前にやろう」
俺はそう言って異次元収納から『光の翼ベルト改』を取り出した。
これは茜娘に上げた光の翼ベルトをより強力にしたものだ。
魔石だと付けられる数に限りがあるので、魔砂にしてベルト全てを魔力供給源としている。
光龍と翼龍以外に氷龍の魔石も加えて、魔石の数は合計三百個だ。
飛行速度、身体強化、攻撃回避、全てにおいてパワーアップしている。
「これはなんでしょうか?マジックアイテムのようですが‥‥」
「空を飛ぶ事ができるようになるのと、後は身体強化や攻撃回避の魔法が込められている。不老不死と言ってもな、体が消滅すれば魂がこの世界をずっと彷徨うような事にもなるんだ。普通の人が死ぬよりも苦しむ事になるかもしれない。だからそうなる可能性を減らすアイテムだと思ってくれればいい」
こいつも不老不死なら、これから先長い付き合いになるだろうし、できればそうであってほしいと思うから。
「そんな凄いアイテム、タダでもらう訳には‥‥」
「タダじゃないよ。先行投資だ。それに記憶は貰ったしな」
「うー‥‥分かりました。もう気にしない事にします」
千えるはそう言ってベルトを付けた。
「えっと‥‥使い方は‥‥」
「イメージだな。光の翼を自分の背中にイメージして、更に飛ぶイメージができれば飛べる」
すると千えるの背中から羽が生え、少し空中に浮いた。
「凄いです!」
「身体強化や攻撃回避は勝手にやってくれるが、イメージできると戦闘でも使いやすくなるぞ」
「分かりました。ちょっと練習してみます」
「おう」
そんな所でどうやら誰かが来たようだ。
俺の広範囲察知能力が告げている。
「そろそろ俺は行くよ」
「あっ!新しいカード番号を教えてほしいのです」
「後で送っておく!」
「分かりました。本当に今日はありがとうございました」
「じゃあな」
俺はそう言って影へと潜った。
とりあえず目的は達成されたし、次は奉先に会いにいかないとな。
攻略方法は見えたよ。
あ、奉先との記憶以外は見てないよ?
本当だよ?
【<┃】 【┃┃】 【┃>】
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