ネット小説

東日本大震災の時、被災地での規律ある行動が世界から称賛された。
それはきっと過去の教訓が活きたからかもしれない。
大正時代にあった関東大震災では、約十四万の人が亡くなられた。
地震は主に房総半島の先から神奈川県で起こったものであり、東京はさほど大きな揺れはなかった。
せいぜい南部で震度六マイナスが記録されている程度だ。
なのにどうして桁違いに多くの人が亡くなられたのだろうか。
関東大震災以前の江戸でも、地震は何度も起こっている。
にもかかわらず、最も多くの死者が出た元禄地震でさえ死者は二万人にも満たなかった。
人口も江戸時代と大正時代ではさほど変わらない。
いずれも二百万人程度と記録が残っている。
では何故？
結論から言うと、死者の多くは火災による焼死であったからだ。
でもそれまでの震災でも火災はやはり起こっていた。
何故此処まで死者に差がでたのだろうか。
『お昼の準備時間だった』なんて話もあるけれど、それだけでは流石に説明できないほど差がある。
その答えは、当時の新聞に見る事ができた。
酷い状態だったので、軍の監視下に置かれ戒厳令まで出されて事態収拾が行われたとある。
国内の治安は警察だったり消防だったりが担当するのに、軍が出動するなんてよっぽど酷いって事だ。
何がそこまで酷かったのだろうか。
新聞には『不貞鮮人が火をつけて回る』と書かれてあった。
多くの死者が出た原因は、これだったのか。
では何故このような悲惨な事が起こってしまったのだろうか。
不貞鮮人がいたからだと言ってしまえばそれまでだが、社会の状況が良くなかったのも理由の一つだろう。
この頃は戦争特需からの下り坂にあり、景気が悪くなって生活が苦しくなっていた時期だった。
人が酷い事をする時ってのは、だいたい景気が悪い時であると覚えておきたいね。
さて今になって、この時鮮人が大量に虐殺されたというプロパガンダが広がっている。
でもこういうのは、嘘であっても大抵本当の事が少しは含まれているのだ。
『鮮人が井戸に毒を入れて回る』などという流言飛語にも振り回され、この時多くの鮮人が自警団によって殺された記録も残っていた。
裁判で裁かれたのは二百三十三名。
ただ被害に遭われた鮮人には、日本人の約十倍のお金が支払われたという話だ。
間違いや過ちに対しては、ちゃんと日本は対応していた。
ただくれぐれも言っておくが、不貞鮮人は極一部であったという事は理解しておいてもらいたい。
その一部の不貞な輩が多くの日本人を焼き殺し、その為に鮮人が自警団に殺されたのが関東大震災である。

旧神を倒してから数日、俺は引っ越し作業に追われていた。
引っ越し先は空中都市バルスである。
バルスを移動させ海上に置けば、おそらく誰にも見つけられる事はないだろう。
仮に見つかりそうになれば滞在場所を変えればいい訳で、俺たちの住まいは全てバルスへと移動させた。
ガゼボのある庭も概ねそのままに再現し作り上げた。
防衛システムには、新たに認識阻害や防御結界なども付け加えた。
魔石によりシステム魔力も底上げしておいた。
バルスはとりあえず此花領の妖精保護区域の奥に置き、転移ゲートはその辺りの地下に作った転移ルームへと繋いだ。
これらの作業を終えた俺は、ようやく旧神の魂をスマホに憑依させて話を聞く事ができた。
旧神は元々、有栖川の者によって人間界に召喚された。
しかしあまりに強く、殺して蘇生し言うことを聞かせる事が有栖川にはできなかった。
そこで賭けをし、それに勝った旧神が王になった。
この賭けが当時の有栖川王を焦らせ、ブレイブ爆破などの蛮行に至らせたみたいだね。
その時の大量破壊魔法の実験が運命の分かれ道だった。
実験をした事により、有栖川領内で大地震が起こったのだ。
実は地震そのものの被害はそれほどでもなかった。
しかし有栖川へ出稼ぎに来ていた碓氷の領民たちが、混乱に乗じて町を破壊し金品を奪っていったのである。
碓氷は長く有栖川の属国に近い扱いだったようで、あまり裕福ではなかったらしい。
だから一般の民は有栖川への不満もあったのだろう。
そして碓氷の民は、割と魔法を使える者が多かった。
そんなだから、地震の混乱に乗じて魔法で町を破壊できた訳だ。
当然有栖川としては碓氷に責任を取るように言った訳だが、碓氷は民のやった事だから関係が無いと突っぱねた。
怒った有栖川は世愚を差し向け、碓氷の王都ハエルを攻撃するよう命じた。
その時、旧神は奴の存在を知ったと言う。
町にある政府施設を破壊した際、世愚は大きな魔力が広がるのを見た。
世愚でも敵わない相手が、政府施設内にはいたのだ。
施設の名前は『戦士ファーム』だとか。
もしかしたら強化人間かホムンクルスを育てる施設かもしれない。
そこから碓氷と有栖川の関係は徐々に逆転し始める。
有栖川の王が死んだ後、国家を継承した旧神はその相手を確認に行った。
その時理解したのだそうだ。
自分では全く歯が立たない相手であると。
そこからは、常に碓氷の顔色を窺いながら行動してきたという。
よく分からない行動も、そういう事だったと分かれば今になって納得はできるかな。
三国での世界支配は、三国で奴を倒そうという思惑があったらしい。
「これで一応、旧神の言う奴の正体は分かったよ‥‥しかし地震から暴動の流れがあったとはね‥‥」
そりゃそうか。
あの大参事の映像は、地震だけでは説明がつかないよな。
この世界でも転生前の世界と同じような事があって当然なんだよ。
それにしても碓氷か。
俺や汽車を生んた国。
強化人間かホムンクルスかは分からないけれど、絶対その類だよなぁ。
となると悪い神とは違うのだろうか。
ただ旧神の魂は、奴の事を『ＫＡＭＩ』と呼んでいるんだよな。
神かもしれないし、神じゃないかもしれない。
しばらくは様子を見るしかないだろう。
俺はそう結論付けた。
「という訳なんだ」
「なるほどそういう訳だったのね」
「そうですか」
「理解はしましたが、そうするとまだまだ問題は残りそうですね」
リンも総司も千えるもみんな凄いな。
『という訳なんだ』で理解できるんだから。
なんて事は言っちゃダメだね。
とにかく俺たちは、また此処から一つずつやっていくしかない。
「リン。引っ越した後の防衛体制は構築できたか？」
「此処に本部ね。神功が全てを統括してくれるってマジなの？」
「マジマジ。このガゼボにあるテーブルの中心に意識を直結して、全ての端末と接続してある。必要な情報は登録してある端末に瞬時に送ってくれるよ」
「はい。私も暇でしたから。何かお役に立てればとマスター策也様に相談した結果、やらせていただける事になりました」
神功は賢者の石とは思えないくらい、表情豊かに話していた。
元は人間だからな。
しかもみゆきと同じ捨てられた神の子。
死ぬのを止める為に賢者の石を使ったら、逆に取り込まれてしまったというオチ。
つまり神功も死ぬ事が出来たら神になるんだよな。
みたまちゃんもいて、俺の周りにはなんだかんだ女神が集まってきている。
兎白もそうだし、そう言えば木花咲耶姫や岩永姫もそうだったよな。
まあ後の二人は別に集まって来てはいないし、正確には神の使いらしいけどさ。
世の中には何人も女神っているもんなんだなぁ。
つか皇で男が生まれる分だけ女が生まれりゃ、そりゃ神だらけになるわ。
尤も、同じだけ生まれるのかどうかは知らんけどさ。
「総司と千えるはどんな感じだ？」
「ゲームの人気は徐々に高まってきています。麻雀が思った以上に売れています」
「こちらも同じですね。食料はもう大丈夫でしょう。今後何事も無ければの話ですが、利益は凄い額になりそうです」
麻雀は秘密基地用にしか最初作らなかったけど、やっぱり売れちゃったか。
有栖川との商人ギルド手数料争いも一旦落ついて、今では徐々に利益が出るように変わってきている。
有栖川のシェアも少しずつ奪い、世界の七割は我ら商人ギルド連合だ。
九頭竜ギルドも既に此花商人ギルドへの統合は終わり、九頭竜の魔法通信ネットワーク事業も名前を変えて『アルカディア通信事業』として一つにまとめていた。
「七魅、アルカディアの活動はどんな感じだ？」
「堕天使部隊は分散していろんな場所で監視活動なのだ。他の部隊は農業の手伝いなのだ。後はミケコの指示で訓練や魔石集めなどやっているようなのだ」
「そっか。ありがとう」
なんだかんだ一応全て落ち着いてきたな。
一時はどうなるかと思ったけれど、俺一人で全てをやる必要はないのだ。
仲間が自発的に動くのはデメリットもあるが、メリットはその何倍もあるように感じる。
転生前の世界で、『日本の官僚は優秀だ』と言われていた。
言った事は確実に遂行する能力があるからだそうだ。
でも逆に、『言った事しかできない人たち』だとののしられてもいた。
官僚は日本の為に働いているのだから、間違っている仕事なら自ら変えようとするアプローチは必要だろう。
それが間違っている可能性もあるが、そこは国民の声や政治家の力でなんとかすれば良かったのだ。
俺は皆に任せ、どうしても違うと思えば皇帝の権力でそれを止める。
もちろん俺も間違う事は多々あると思うが、今のこの世界ではそれが一番いいと思えた。

朝の四阿会議の後、俺はいつもの魔法実験場にて蘇生を行った。
旧神は今も蘇生を望まないので、とりあえず他のメンバーだけかな。
タナトスの能力も間違って使用したら危ないので、悪いけど蘇生はしない事にした。
暗黒神の系統だから、今度魂は暗黒神に返しておけばいいだろう。
蘇生は『ダゴン』『アザトース』『シュドメル』『シュブニグラス』そして『ヨグソトース』だ。
ヨグソトースは、嫁のシュブニグラスを蘇生すると話したら喜んで俺たちに協力すると言ってくれた。
やっぱり嫁の力って大きいね。
男を動かすのはいつも女なのだよ。
二人は既に名前もキャラも出来上がっているので、そのままの形で魔砂ゴーレムとして蘇生した。
名前は｜世愚《ヨグ》と｜闇囁《アンショウ》だよ。
苗字は残念ながら有栖川は難しいので、後で適当に別のをあてがう。
ダゴン、アザトース、シュドメルは、雄雌調べるのも面倒なので、全員女の子にしておいた。
名前はそれぞれ『団子』『アザミ』『｜芽瑠《メル》』に決めた。
名づけもドンドン適当になるな。
団子だけは不死でウロコガードが強力なので、ダイヤモンドミスリルゴーレムにした。
そしてドンドンナカーマが増えるな。
もう確実に、二度目の名前が出てこないキャラもいると思う。
いつか別の作品で使ってやろうとか、俺はそんな事思ってないんだからね！
さてしかし全部皆がやってくれるから暇になったな。
魔力容量も広がったままもう戻らなくなったし、神の領域は維持できている。
しばらく様子見しようと思っていたけれど、暇なら話は別だ。
「じゃあ‥‥ＫＡＭＩとやらを見に碓氷に寄ってく？」
「いいねぇ～なのね！」
「ららら無人‥‥」
「ちょっと待った！菜乃！それ以上は言ってはいけないぞ！」
危ない危ない。
こいつら一心同体だからか、何故か俺の記憶が洩れてるんだよな。
それで突然著作権違反というかネタをパクリそうになる。
別に言ってもいいかもしれないが、できるだけグレーゾーンには入りたくないのだよ。
「せっかくいい所だったのです」
「策也タマは心が狭いのね」
そういう問題では無いのだけれど、まあいいか。
「とにかく碓氷に行くからちゃんと影に入っておけよ」
「ちょっと行くのが怖いのね」
「そうなのです。クトゥルフよりも強いＫＡＭＩなのです」
確かにクトゥルフが恐れる相手だもんな。
でもＫＡＭＩを見た世愚も旧神も生きていた訳だ。
見たくらいでこちらに危害を与えるような奴ではないだろう。
それに見に行くだけなら妖精界から行ってもいい訳で、更に影に入って姿と気配も消せばなんとかなるはずだ。
「じゃあいくぞ！」
俺は碓氷領へと飛んだ。

すっかり日も暮れている王都ハエルの町の中を、妖精界から影に潜って邪眼で様子を窺いながら移動した。
特に大きな魔力を持った者はいない。
それにしても、やはり既視感を感じる。
俺の記憶にはないけれど、魂の方には多分残っているのだ。
洗脳の記憶は消しているから、それを思い出す事はあり得ない。
ならばそれ以外、安心して思い出せるというもの。
俺はなるべく細かく町を見て移動した。
町の一角に一際既視感の強い建物があった。
転生前の世界にあるような、鉄筋コンクリート造りの強固な建物に見える。
建物自体は全く覚えていないが、雰囲気が魂に刻まれているような気がした。
ＫＡＭＩがいるならこの中ではないだろうか。
表札には『戦士ファーム』と書かれてあった。
農園や農場って意味で解釈するとよく分からないから、戦士の｜二軍《ファーム》が使用する施設なのだろうか。
でもＫＡＭＩがいた訳で、もしもその者が二軍だったら一軍はどんな感じになるのだろうか。
或いは指導なんかやっていたとも考えられる。
此処は入って調べてみないとな。
俺は影を移動しながら施設内へと入っていった。
入ってすぐに感じた。
「この建物は魔力ドレインが働いているのね」
「魔法が使えなくなるのです」
「つまりここは牢獄のような場所なのかもしれない。或いは魔法を封じて戦士としての特訓でもするのだろうか。ただ多少の魔力は残るように調整がされているな」
ちなみに今の俺たちは別に魔力を吸い取られたりはしていない。
なんせ妖精界にいるからね。
妖精界にいるものは人間からの干渉を受けないのだ。
それでも最大限警戒しつつ、俺は部屋を移動していった。
応接室のような所から、資料室のような部屋へと移動した。
「凄い資料が置かれているな」
「まるで図書館なのね」
「見ているだけで眠くなるのです」
とりあえずなんの資料か見てみないとな。
丁度テーブルに何冊か置かれていて、ページが開かれているのもいくつかあった。
別に資料を手に取って見てもいいけれど、なるべく見つからないように俺は影を移動し開いているページが見える所へと移動した。
「なんだこれ？競馬の血統表か？」
一瞬そう思ったけれど、直ぐにそうではない事が分かった。
「これは人間の血統表なのね」
「九頭竜、有栖川、御幸、伊集院‥‥よく分からないのです」
俺は競馬が好きだったからよく知っている。
こうやって能力の高い馬が生まれる組み合わせとか考えるんだよな。
ってもしかして此処って、そういう場所なのか？
俺はずっと強化人間やホムンクルスを作る場所があるのだと思ってきた。
でもその実態は、より強い戦士を生み出す血統の組み合わせを考える場所なのかもしれない。
「ははは‥‥ふー‥‥」
俺は少し笑えてきた。
そして安心した。
自分は作られた人間で普通ではないかもしれないと思ってきた。
でも、もしもこの施設が俺の推測通りなら、俺は普通に生まれて来た普通の人間って事になる。
両親と思われる人物の記憶もある訳だから、その可能性の方がずっと大きかったんだけどさ。
「策也タマ、なんだか嬉しそうなのです」
「そうだな。どうやら俺もちゃんと人の子だったらしい」
「神の子なのね」
まあ神になる可能性があるのは今の自分の力でだいたい納得できている。
なんせ神の領域に自分がいるのが分かるからな。
それにしても神か。
ＫＡＭＩは一体どこにいるのやら‥‥。
「ん？この血統表、個体名として『ＫＡＭＩ』と書かれているぞ？」
「本当なのね。ＫＡＭＩはこの血統って事なのね？」
「九頭竜、有栖川、御幸って苗字は初めて見るな。百八のどの苗字にも当てはまらない。そして伊集院‥‥。あれ？苗字をローマ字にして頭文字を取ったらＫＡＭＩになるぞ」
「ＫＡＭＩとはそういう意味だったのです」
そういう事か。
汽車は『｜ＯＵ－２《オウツー》』と呼ばれていた。
王の二番目という意味かとも思ったが、これは『織田』と『上杉』って意味だったんだ。
つまり汽車の父親は織田の血統であり、母親は上杉の女系血統という事だろう。
もしもこの考えが正しければ、ＫＡＭＩは九頭竜の血統という事になるな。
そう言えばリンが言っていた。
『九頭竜が此花に併合された事で、九頭竜の者が全て他国に出て行った』
劉邦曰く、その者たちはファフニール家が九頭竜を乗っ取る前からいる九頭竜家だとか。
泉黄歴になる前の話で、まだ九頭竜が皇と仲が良かった頃の話な訳だが。
もしかしたらＫＡＭＩの存在を知って、こちらに来ていたりして。
まさかそれはないか。
とにかく俺はページの開かれた資料に一通り目を通してから、更に別の部屋へと移動した。
一階は資料室と研究室のような所ばかりだった。
最奥には地下へと続く階段があった。
正直見たくない何かがありそうだと感じる。
そういう雰囲気だ。
そして俺が、あまり碓氷へ来たくなかった理由がここにある気がする。
「この先に行くのやだなぁ～‥‥」
「大丈夫なのね。きっと大したものはないのね」
「そうなのです。見たら案外ショックはないのです」
（コクコク）
「お前ら‥‥やっぱ持つべきものは少女隊だな」
俺は意を決して地下へと下りて行った。
下りた先には、目をそむけたくなる惨状が広がっていた。
邪眼で見ているからリアリティは薄れている。
それは少し助かったかもしれない。
「策也タマ？これはおそらくアレなのね」
「そうなのです。きっとそうなのです。私たちには人は見えないのですが、ベッドが揺れているのです」
「そうだよ。お前たちの想像通りだ」
地下はまるでラブホテルのようだった。
個室がズラっと並び、そこで男女がまぐわっているのが分かった。
この者たちは、此処で日夜励まされているのだろう。
きっと俺の両親も此処にいたのだ。
なんか気分が悪くなってきた。
俺は数部屋を確認しただけでその場を去った。
「種付け場だったのです」
「強制されているようには見えなかったのね」
きっと好きな人が集められているのか、或いはそういう教育や洗脳を施された者たちなのか。
エロビデオなら喜んで見られるけれど、こういうのは駄目だと感じた。
その後は上の階も確認した。
赤ん坊や子供が沢山いたが、悪い環境にいるようには見えなかった。
孤児院よりもずっと良い生活ができているように感じる。
ただ魔力ドレインの効果は緩く建物全体にあった。
汽車の記憶にあった部屋らしき所も見つかった。
この部屋で洗脳されていたようだが、今は使われてないように見えた。
一部天井や壁に壊れて直した痕があり、おそらく世愚が壊したのはこの辺りだろう。
なんとなく状況が分かってきたな。
おそらくＫＡＭＩは当時洗脳の為にこの部屋にいたんだ。
でも世愚が建物を壊して魔力ドレインが効かなくなったのだろう。
そこでＫＡＭＩの魔力が徐々に回復し、膨大な魔力を発した。
それを感じた世愚は驚き撤退したに違いない。
そんな所かな。
とりあえずＫＡＭＩはいないようだし、これ以上は調べても無駄か。
それにこの施設も、元の使用用途からは少しずれてきてる所がありそうだ。
「帰るか」
「ＫＡＭＩなんていなかったのね」
「そうなのです。これからは神を信じないのです」
「そうしよう」
俺たちはスッキリしない気分でのんびり帰るのだった。