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本気になった伊集院と有栖川

人が人に従うのは、当然何かしら理由があるからだ。
立場、お金、権力、暴力、色々あるが、概ね従う事にメリットを感じるからそうする。
危機を回避する為というのもメリットだ。
殺されたくないから従う、なんていうのも当然そうである。
強い者に従うというのは、その多くに通じる理由である。
その人の言う通りにしておけば、自分をより良い所へ導いてくれる可能性が高い。
弱肉強食で適者生存の世界では当たり前の摂理。
この世界の人間も、当然それに従っている部分が多い。
でも人間の場合それは人ではなく、組織やもっと大きな世界だったりする。
獣人はどうやら、それが組織ではなく人である所が強いようだ。
「私は細かい事はよく分からないにゃ。だから自分のやり方でそれを見極めたいにゃ」
そういう茜娘が望んだものは俺との決闘だった。
俺の強さを実際に戦って知っておきたいのだそうだ。
まあそれでスッキリするならいいだろう。
どうせ力の差は歴然だし、俺にとっては猫とじゃれる程度のものだ。
「何時でもかかってきていいぞ!」
「それじゃ遠慮なくいくにゃ」
茜娘は真っすぐに突っ込んできた。
しかし少し手前で横へと跳ぶ。
そこから俺の左側へ攻撃してきた。
俺はそれをギリギリでかわす。
それに反応して茜娘はすぐさま蹴りを入れてくる。
反応速度が尋常じゃない。
でもそれは俺も同じで、かわして後ろへと跳んだ。
猫獣人の反射神経とスピードは確かに凄いな。
茜娘の場合ほとんど神クラスに近い。
佐天でもこの反射神経とスピードにはついていけないだろう。
でも‥‥
続けて攻撃してくる茜娘の猫パンチを、俺は全て受け止めていった。
攻撃は思ったほど重くはない。
パワーや耐久力のある相手には通用しない可能性もある。
少なくとも佐天には勝てないだろう。
茜娘自身かなり強いから、ほとんどの相手は倒せるのだろうけれどね。
だいたい茜娘の強さは理解した。
ぶっちゃけかなり強い。
RPGでステータスの極振りをしたキャラクターみたいだ。
でも対応力のある奴や、能力的に上回る相手には全く通用しないんだよね。
俺は茜娘の腕をとって地面へと叩きつけた。
「茜娘はかなり強いよ。でも俺から見れば‥‥やっぱり猫レベルだな」
「流石は策也にゃ。全く勝てる気がしないにゃ。分かったのにゃ。これからは全面的にいう事を聞くにゃ」
これが獣人なのかな。
でも‥‥
「別に俺は茜娘を従わせようなんて思ってないぞ?従いたくない時は従わなくていい。俺はそういう世界が好ましいと思うから」
そっか。
俺はそういう世界にしたいのかもな。
でもそれって、俺が神にでもならないと無理じゃね?
それにみんなが好き勝手に生きられる世界なんて、たとえ神でも成り立たせるのは無理だよな。
「分かったにゃ。でも猫獣人の未来は策也に任せるのがいい気がするにゃ」
おいおいそんな大きなもん俺に背負わせないでくれ。
とはいえ気づけば色々背負わされているわけだが。
「とりあえず終わったようじゃの。さっさとメシにするぞ」
「そうだな」
俺は移動用の家へと入っていった。
「で、これはなんだ?」
「金魚から教えてもらった肉じゃがなのね?」
「ちょ、ちょっとだけ失敗しちゃったようなんだよ」
これがちょっとだと?!
菜乃や妃子に料理をさせようとしたのは失敗だったようだな。
いや分かっていたよ。
こいつらが完全に使えない奴らだって。
でもそこで見捨ててしまったらこいつたちの未来が心配なんだ。
気長に温かい目で見守ってやらなくては。
「そ、そうか。まあカレーだと思えば食える‥‥はず‥‥」
ドロドロで原型を留めてないしな。
「カレーのスパイス入れるのです!」
「やめるのです!」
俺は菜乃がカレーのスパイスを無造作に入れようとしたので止めた。
こいつらに料理は無理だ。
絶対無理だ。
でも諦めたらそこでゲーム終了なんだよな。
まずは自分たちの食うモノだけを作らせる事にしよう。
「菜乃。妃子。俺たちの料理はしばらく作らなくていい。自分の分だけ自分で作るようにしろ」
「えー‥‥金魚の料理が食べたいのね」
「自分で同じモノを作ればいいんだ」
「それは酷いのです。横暴なのです!」
「人間界で生きていく以上、最低限自分の事は自分でできるようになりなさい」
「はーい‥‥」
「じゃあ普通に料理するのね‥‥」
こいつら、もしかしてわざと変な料理作ってできないフリをしているのか?
全く、こんな魔物今までにいなかったぞ。
でもな、なんとなくこういう人間らしい奴もいるのは安心するな。
こういう奴ら、俺は割と好きよ。
とりあえず今回は仕方なく『トロトロ肉じゃが』を食べるのだった。
別に凄く不味いわけではなかった。

さて俺たちは南の大陸の西側、有栖川領の方へと移動していた。
今後おそらく小鳥遊と熊獣人たちは、西にある有栖川領、或いは伊集院領へと攻め込むに違いないのだ。
或いは逆も然り。
戦争は止めたいが、止めるのに武力を用いるのもまた違うような気もするし、正直俺たちは迷っていた。
だからとりあえずは、目の前で起こる事を記録し、それを世界へ配信する。
金魚と茜娘にも、改めてスカウター型のビデオカメラを渡しておいた。
それから小鳥遊の動きは特になく、一週間が過ぎた。
俺たちもようやく有栖川領との国境付近まで来ていた。
男の直進旅をしたため、越えられない山も所々越える事になり、強力な魔獣にも遭遇したが俺たちの問題にはならなかった。
「ジャージーデビル、マジでヤバかったわ」
「あいつに出会うと気分が悪くなるにゃ」
「自分‥‥今も耳がおかしい‥‥」
「金魚もなんだよ」
「鳴く前に殺ってしまわんと、その後二時間くらい鬱になるのじゃ」
倒すのには問題なかったが、その魔獣の鳴き声がとんでもなく不快だったのでみんなグロッキー状態になっていた。
でもこの能力は何かに使えるかもしれないし、出てきてくれて良しとしておこう。
国境付近まで来た俺たちは、そこに移動用の家を置いてしばらく様子を見る事にした。
一応戦場になりそうな場所には、菜乃と妃子を行かせて視界共有で見ておいた。
『|梅影《ウメカゲ》姉妹』の目を通して見た場所へも瞬間移動できる事は確認してある。
これからは多少楽が出来そうだった。
「国境線を見て来たのです。褒めて欲しいのです」
「あーはいはい、いい子いい子」
「感情がこもってないのね。もっと愛情が必要なのね」
「うおー!いい子だなぁ!よしよし!」
本当にこいつらは一体なんなのだろうか。
我がままかと思えば子供みたいに褒められたいとか、ちょっとだけ可愛いじゃねぇかよ!
萌えキャラの髪色にしたから萌えキャラになってしまったのか?
もしそうならこれからはこの髪色のゴーレムを作りまくるかな。
いや、これ以上いたら流石にしんどいので止めておこう。
俺は何となくそんな事を考えるのだった。

国境線辺りで様子を窺い始めて三日目の朝だった。
セバスチャンからの報告によると、動き出したのは小鳥遊と熊獣人側との事だった。
金魚の言った通りにはならなかったな。
有栖川は手が離せない何かがあるのだろうか。
でも消極的なのは伊集院もだな。
町が一つ奪われたのに何も動きがない。
魔法通信ネットワークにも『遺憾だ』としか声明が上げられていないのはやはりおかしい。
『平穏を期待している』という言葉に何かがあるのかもしれない。
とにかく俺たちは現場へと急行した。
「おいおいおい。こいつらワイバーンの海賊じゃねぇか」
「違うんだよ。これは有栖川の蜥蜴ワイバーン部隊なんだよ」
やっぱりあの時襲ってきたのは有栖川だったか。
有栖川は裏でバレないように実力行使してくるようだな。
あの時西園寺望海を襲ったのもまず間違いないだろうし。
謀略の伊集院と、大っぴらに実力行使する九頭竜。
今後何かあったらこの辺りから犯人が分かりそうだな。
「ワイバーン部隊は押されているな」
「空を飛ぶ獣人もいるんじゃの」
「アレは鳥獣人にゃ。種類が多いので個別勢力はないのにゃ。大型と小型に別けられたり、まとめて鳥獣人と云われたりもするにゃ」
「熊獣人を空に上げられたらワイバーン部隊も対処できないんだよ」
思った以上に獣人の連携は強力だな。
正直レベルが違い過ぎる。
「こりゃ有栖川も南の大陸から追い出されそうだな」
有栖川や伊集院が弱いという事は考えられない。
海神を襲った二十八人は確かに強かった。
あのクラスがまだまだいるとするなら、俺でも迂闊には手を出せない。
ん?もしかしてもうあのクラスがいないなんて事はないよな。
それは無いにしても、もしかしたら数がそんなにいないのか?
一人を除いてみんな死んでしまったわけで、それで伊集院も有栖川も動けない可能性はないだろうか。
それなりに強いヤツがいたとしても、大国は守るべき領土が大きい。
集めて反撃するにも時間がかかるしリスクもある。
このまま進めばひょっとする事態もあるかもしれない。
数時間で目の前の戦いは終わった。
小鳥遊と熊獣人側の被害はほとんどなかった。
小鳥遊の兵隊が数十人やられていたようだが、獣人のほとんどは無傷だった。
「俺たちはこのまま遠くからついていくぞ。そして目の前の事実をすべてマイチューブにアップだ」
「しかし人間たちは歯がゆいの。負ける戦いをどうしてするんじゃろうな」
佐天の言う通り、この戦いで有栖川に勝ち目などなかった。
それにこの戦いは、特に民を守る戦いというわけでもない。
単なる領土争いだ。
もしかしたらこの先、熊獣人たちが利益を求めて、民に奴隷労働を強いたりするような事にはなるかもしれない。
それでも勝てないなら一旦引いて、勝てる準備をしてから戦いに挑む方が良いはずなんだけどな。
そして俺は一体この中で何をすればいいのか、その答えはまだ出せずにいた。

この後も小鳥遊と熊獣人の攻勢は続いたが、大きな動きはまだ見えなかった。
全ての戦闘映像をマイチューブに上げているが、まだまだ人々の反応は楽観視したものばかりで、熊獣人の力もそれほど脅威に感じている様子はない。
『どうせそのうち伊集院も有栖川も本気で対処する。そしたらすぐに小鳥遊と獣人は皆殺しだよ』
こういうコメントが王族貴族の視聴者から出てくる辺り、おそらく本当にそうなのだとは思う。
力を持っているのは間違いないだろう。
でも自由に動かせる戦力が不足している可能性が見て取れる。
いったい何処まで小鳥遊と熊獣人たちを自由にさせておくのだろうか。
有栖川や伊集院だけじゃない。
民への被害がほぼ出ていないとはいえ、世界はこれを何処まで放置するのだろう。
そういえば転生前の世界でも、遠くの国で起こっている戦争にはみんな無関心だったよな。
戦争の無い日なんて無かったのに、まるで戦争なんて考えなくて。
スッキリしない日々の中、俺たちはただ報道するのだった。
そしてとうとう小鳥遊と熊獣人たちは、南の大陸にある有栖川の領土を全て手中に収めていた。
蜥蜴ワイバーン部隊がやられてから丁度一ヶ月後の事だった。
いよいよ残すは伊集院統治の『ベットー』の町と領地だけだ。
もしも此処も落とされたら、南の大陸は完全な小鳥遊領地となる。
そうなればその後は海を渡ってくるのだろうか。
狙うは伊集院と有栖川の領地だけ、とはならないだろう。
近い所と言えば、西の大陸にある九頭竜領地か、伊集院や東雲の島も考えられる。
東雲の島と言えばいい所だと聞く。
戦いで穢したくはないものだ。
流石にそろそろ何かをしなければと思ったのは、当然俺だけでは無かった。
まず動き出したのは伊集院だった。
黒死鳥王国にある世界会議本部から、『|英賀谷幸代《アガタニサチヨ》』が環奈の元へとやってきたらしい。
黒死鳥王国との連絡は、海神がいなくなった今では『飛島』に頼んでいる。
年齢は若いが新王であり知能の高い黒死鳥なので、ちゃんと仕事はこなしてくれていた。
文句は言うけど、国士の命令なら聞かないわけにはいかないからね。
飛島の話によると、幸代は『小鳥遊と獣人の討伐』を依頼してきたそうだ。
特に『青い三連星の協力』を強く望んでいたらしい。
しかしそれに対して環奈は『木花咲耶が死んでもうたしのぉ。守りの要を出す訳にはいかんのぉ。咲耶が生きておったらのぉ』と、嫌味を言って追い払ったとか。
黒死鳥王国としては当然の対応だろう。
この前仲間が殺られたのにすぐに味方をしろと言われても流石に受け入れられない。
そして次の日、今度は此花の王都シタッケネにある有栖川の大使館大使が、わざわざナンデスカの町の資幣の所を訪れてきた。
当然話は私設民間傭兵隊へのお願いだった。
小鳥遊を倒すのに協力してほしいとの事だったが、流石に専属を破棄した相手。
受け入れられる訳もないし、そもそも傭兵隊では戦力不足かもしれない。
「すみません。私はもうあの傭兵隊とは全く関わりがないんですよ。ご覧の通り今はただの学園教師です」
資幣の俺はそう言って断った。
すると更に次の日には、今度は神武国の宰相の所に、大使館大使の英賀谷海戦が協力を頼みにやってきた。
宰相や大臣は当然お断りしたが、それでも食い下がる海戦に、仕方なく大聖の俺が会う事になった。
「話があるんだったな。まあだいたい想像は付くが‥‥」
「はい。率直に申しますと、我々ではあの小鳥遊と獣人たちへの対処が難しいのです。ですからなんとか神武国で対応していただけないかとお願いにあがりました」
やけにハッキリと言うんだな。
それだけ追い詰められてきているという事かもしれない。
「その依頼の最低必要条件はなんだ?」
「と、申しますと?」
「敵を全滅させるまでやれというのか、それとも領土さえ取り返せたらいいのか、或いはこれ以上の侵攻さえ防げたらいいのか」
「そうですね‥‥できれば小鳥遊家をギリギリ残す程度に、獣人は皆殺しにしていただきたい」
本気で言ってるのかこいつ。
そんな事をお前たちの為にやる訳がないだろう。
「無理だな。帰ってもらおう」
「ちょっと待ってください。逆に伺いたい。何処までならやっていただけるのか?」
俺たちができる事と望む事。
「これ以上の侵攻を防ぐ事はできる。その場合、南の大陸は全て神武国がいただく。当然小鳥遊や獣人への対処は全てこちらで任せてもらうぞ」
「それは‥‥小鳥遊が無くなるのは世界ルールに反します」
「小鳥遊家は残してやるよ。俺の仲間の誰かを小鳥遊にして統治させる。これで一応世界ルールは守れるだろ?」
「本国と相談させていただきたい‥‥」
「かまわんよ。それと伊集院の記者も南の大陸から排除だ。表に出たくない奴が結構いるからな」
「わかりました‥‥」
さて、これでどう出るかね伊集院くん。
今は自力でなんともできないんでしょ。
この条件を飲むなら、俺は小鳥遊や熊獣人たちに罰を与えつつ、これから皆が上手くやって行く為の場所も確保できる。
しかし一番小さいとはいえ大陸を支配か。
ちょっとやり過ぎな気もするな。
でも大陸支配とか、ちょっと凄いよね。
俺はなんとなく浮かれていた。

次の日、海戦は依頼を断ってきた。
正直いきなり断るとは思っていなかった俺は妙な胸騒ぎを覚えた。
何か嫌な予感がする。
伊集院も有栖川も対処に困っていた。
だから人外の者にも頼ってきたのだ。
そこまでしたのだから助けてやる必要があったのではないだろうか。
でも流石に小鳥遊と獣人の皆殺しは不可能だ。
俺の選択は間違ってはいなかったはずだ。
何処かに落としどころは無かったのだろうか。
いや、別に状況は何も変わってないじゃないか。
伊集院や有栖川がどうするのか様子を見るしかないだろう。
或いは小鳥遊が更に何かする可能性もある。
とにかく俺たちは様子をみる事にした。
その日の夕方、伊集院と有栖川から共同声明が発表された。
小鳥遊と獣人への最後通牒だった。
『今ならまだ首謀者と戦争に参加した者の処刑だけで勘弁してやる。降伏しろ。そうしない場合は、獣人王国牙以外にいる全ての獣人と小鳥遊の者を南の大陸から排除する』
これは‥‥
戦争参加者すべてが死んだら許してやるって事か。
そんなの無理に決まっている。
分かっていてそう言うのだから、その後の通告が大切だ。
関係が無く死にたくない獣人は、獣人王国牙に避難しろって話か。
そして『小鳥遊の者』ってのは、小鳥遊家の事でいいんだよな。
獣人に味方していない小鳥遊家の者がいれば、大陸から出ておけという事だろうか。
「いよいよ伊集院と有栖川が本気でやるようだな」
「既に南の大陸のほとんどの領地を取られておるのに、今更じゃの」
「南の大陸の外に来られるのが嫌だって事なのかな‥‥」
「有栖川は甘くないんだよ。何か嫌な予感がするんだよ」
「とりあえず牙は安全そうで良かったにゃ」
俺も金魚と同じで嫌な予感しかしなかった。

その答えは一週間後、突然訪れた。
俺たちは、次に何かが起こるのならベットーの近くだと考えて、町から少し離れた所に移動用の家を置いて動きを待っていた。
『策也様』
『セバスチャンか。どうした?』
『伊集院のベットーが陥落しました。既に伊集院の者は誰もおらず無血開城のようです』
なんだそれ。
伊集院が逃げた?
あれだけの最後通牒をしておきながら逃げるなんて考えられない。
「ん?地震か?」
「少し地面が揺れておるの」
『追加情報です。たった今、ベットーの諜報員に使わせているマジックアイテムの反応が完全に消えました。三人同時です。更に追加です。ヒヤッコイでも同じ事が起こっています』
『どういう事だ?』
『同時にアイテムが壊れる事なんて普通は考えられません。もしかしたら町が消滅するような大きな破壊が行われた可能性があります』
「この揺れは‥‥なんてことだ‥‥」
「策也?どうしたのじゃ?」
「顔色が悪いんだよ」
「外に出てきて見て!凄い爆発だ‥‥」
「ホントだにゃ。アレは怖いにゃ」
俺は慌てて移動用の家から出た。
するとベットーの町の方には原爆を落とされた後のような大きなキノコ雲が見えた。
「ベットーの町を爆破したのか?」
そしてセバスチャンは、ヒヤッコイでも同じ事が起こっていると言っていた。
「これは魔法かの。凄い威力じゃ」
「何が起こってるんだよ」
伊集院、有栖川、なんて事をするんだ。
いや、おそらく伊集院も有栖川も何か事情があって対処しきれない状況にあったんだ。
そしてこれ以上小鳥遊たちを野放しにはできないと判断して、これをするしかなかったって事か。
俺たちはしばらくの間、爆発のあった町の方をただ呆然と見ていた。
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