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第四十話 体育祭

何かが違う。
何かが違うのだ。
いや、この状況は既に見なれてはいるのだ。
だけど俺の記憶が、今見えるものを否定してしまうのだ。
今日は体育祭。
グラウンドに全校生徒が集まり、走って跳んで、掴んで投げて。
まあ一部生徒達にはかったるく、また一部生徒達は楽しんで。
そんな状況を見ている俺なわけだが、どうも納得がいかなかった。
「どうしてブルマーじゃないのだぁ!!」
あれは20年ほど前の事。
ブルセーラショップなるものが流行って、子供のブルマーを嫌らしい目で見る大人が増えて。
よってブルマーは廃止されてしまったのだ。
義経だった俺が学生の頃は、それはもうブルマーはあったりまえだった。
それに対して、嫌らしい感情など一切無い。
むしろブルマーなぞ邪道。
はくんじゃないくらい嫌われていたものだ。
スカートめくりをする男子にしてみれば、ブルマーは最大の敵だったのだ。
しかしそれが廃止されて、今この状況を学生の目線から見てみると・・・
なんとも寂しい。
残念だ。
いや、決して嫌らしい気持ちから言っているわけではない。
俺達の青春が全て否定されてしまったような焦燥感?
まあそんな感じだ。
ほんとうだよ?
俺はとにかくやる気がなくなった。
確か俺の出る競技は1500m走だけだ。
競技は午後から。
俺はそれまで寝る事にした。
正確には食事タイムまで。
 きらら「達也!これから走るから見ててね」
目を開けると、短パン姿のきららとうらら。
どうでもいいや。
 達也「おやすみー」
 きらら「寝るなぁ!!」
きららのでかい声で俺の意識は一気に覚醒した。
 達也「おお!ビックリした!」
眠い時の突然の大きな音。
ビックリするよね?
 うらら「じゃあ達也くん、行って来るね」
 きらら「寝るなよー」
そう言うと2人は集合場所へと小走りに走っていった。
2人は借り物競走に出るようだ。
まあ説明はいらないよね?
まずはきららがスタートだ。
小さな体だけど、まあそれなりに速い。
1番に、借り物の書いてある紙が入った封筒が置いてある場所にたどりつくと、封筒を一枚手に取り、中身を確認した。
確認したきららは、どうやらこっちに走ってくるようだ。
この辺りに目的の物があるのだろうか。
すると大きな声で、
 きらら「たーつーやーーー!!きてーーーー!!」
と叫んだ。
恥ずかしい。
しかし呼ばれてしまっては仕方あるまい。
俺は立ち上がり、きららのところまで小走りでいった。
 きらら「はやく!」
きららは俺の手をとると、無理矢理引っ張ってゆく。
おいおい、ちょっと恥ずかしくね?
そんな事を言ってる余裕もなく、俺はゴールまで引きずられ、1着でゴールした。
そこで借り物の内容をチェックする先生に、借り物の書いてある紙を渡す。
俺は書いてある内容を確認する為、先生の後ろからのぞき込んだ。
内容は「変な人」
・・・
 達也「それ間違ってますね」
俺はそう言うと、その場を立ち去ろうとする。
 きらら「なんでー!合ってるじゃん!」
きららは俺と先生に訴える。
 先生「星崎君は、これが間違っていると?」
先生にたずねられる。
きららが小犬のような目で俺を見つめる。
しかし俺はそんな目には騙されないのだ。
 達也「はい。当然です。高鳥さんは失格ですね」
借り物競争は、借り物を納得させるのも競技のうちなのだ。
きらら、君にはそれができなかったのだよ。
俺は不適な笑みをきららにプレゼントして、その場を後にした。
きららは結局失格だった。
さて、次はうららの番だ。
うららもきららと同じく、1番で封筒に手をかける。
2人はなにげに運動神経良いのかも。
そんな事を考えていると、うららもきららと同じようにこちらに走ってきた。
そして
 うらら「達也くーん!きてーーー!」
と、きららと似たような感じで俺を呼ぶ。
またかよ。
俺は立ち上がると、うららに走り寄る。
するとうららも俺の手を取って引っ張る。
今度は俺も、自分の意志で少し走った。
そしてきららの時と同じく、1着でゴールした。
きららの時と同じように、紙を先生にわたす。
そして同じように俺はのぞき見た。
書いてある内容に驚いた。
「先生」確かにそう書いてある。
 先生「これはどう考えても間違いだと思うんだけど?」
先生は俺にその紙をわたした。
やはりどう見ても「先生」と書いてある。
 うらら「先生。達也くんは、私の先生なんです。間違いないですよ」
どういう事だろう。
もしかして、俺が義経である事がばれたのだろうか。
舞が話したのだろうか。
俺は動揺していた。
 先生「で、星崎君は、どう思うの?」
先生は再び俺の意見を聞いてきた。
俺はとにかく動揺を隠して、
 達也「ゲーム部では、俺がゲームを教えているから、あってると言えばあってますね」
かろうじてそうこたえた。
どうしても違うとは言えなかった。
 先生「じゃあ、1着という事で」
うららは普通に喜んでいた。

借り物競走の後、俺は寝ていた。
気がつくと昼時、体を起こす。
どうやら既に昼休みのようだった。
俺は立ち上がると食堂へと向かった。
さて、今日は何を食べるかな。
券売機の前で少し悩んだが、俺はイカタコ定食のボタンを押した。
食券を実物にかえ、定食を持って席を探す。
俺内候補の席を1番から見ていくと、早速席が空いていた。
それもそこだけ空いていて、周りには生徒が座っているようだ。
って、ゲーム部のみんなが集まっていた。
 達也「よっ!」
俺はそれだけ言うと、空いてる席についた。
 きらら「達也ひどいよ」
どうやら借り物競走の事を言っているようだ。
 達也「ひどいのはきららだよ。俺が変な人だって」
 きらら「えー!前にそう呼ばれるのが好きだって言ってたじゃん!」
・・・
確かに。
変な人ってのは、ある意味誉め言葉だと思う。
個性があるって事だから。
でも借り物競走の時のきららからは、悪意しかつたわって来なかったのは何故だろう?
まあきららは、俺が喜んでくれると思って、俺をつれていったわけだから、そんな事は全くなかったわけなのだけど。
 達也「確かに。そう言えば言っていたな」
俺は笑ってごまかした。
 きらら「それにうららの先生でなんでオッケーなのかな」
 達也「そ、それは先生って呼ばれれば嬉しいじゃん?」
俺はドキッとした。
その話は避けないと、そのうちボロがでそうだ。
 きらら「うららもなんで達也を連れて行ったの?」
少し気になる。
でも、やめて欲しい話題だ。
複雑な気持ちでうららを見た。
 うらら「んーなんだか、義経先生と間違っちゃったんだ」
ドッキーン!
今日一番のドキドキが襲ってきた。
 きらら「そう言えば、前から達也と先生が似てるって言ってたよね」
そらそうだ。
中身は同じ人物なのだから。
 達也「へぇ~そうなんだ」
俺はしらばっくれる事しかできなかった。
早くこの話題変わらないかなぁ。
俺はだた祈っていたが、そうはいかないようだ。
 美鈴「やっぱりそう思うよね」
 知里「私も時々錯覚するんだよね。最近舞ちゃんといる事が多いからかなぁ~」
他の話をしていた2人も、こちらの会話に入ってきた。
 きらら「なるほど。舞先生がいるから、思い出す事も多いもんね」
 美鈴「そう言えば、達也ちゃんが記憶が戻ったのって、7月14日とか言ってなかった?」
うーむ。
雲行きがますます怪しい。
 知里「先生が亡くなられたのが、その日だったよねぇ」
 まこと「あー!その日って、たっちゃんの誕生日だよね!忘れてた!」
こんな時に思い出すんじゃないよ。
 美鈴「義経ちゃんの誕生日もその日だよね」
みんなが俺を見ていた。
どうしたらいいの?
 達也「あー・・・」
俺はみんなに本当の事を話さなくてはいけないのだろうか。
ピンチな俺。
そのピンチを救ってくれたのはうららだった。
 うらら「すごいね。でも、達也くんは達也くんで、義経先生じゃないんだよね」
うららがそういうと、皆言葉を失った。
まあ、これだけの偶然が重なり、いくら俺が似ていても、普通は同一人物だなんて答えはでるはずもない。
そう、確信が持てる証明、証拠が無い限りは。
誰かの視線を感じた。
見るとうららが笑顔で見つめていた。
なんとなく、うららは俺が義経だと確信しているのじゃないかと思った。

午後の1500m走。
俺はとりあえず完走した。
一緒に走ったチリちゃんも完走したのには驚いた。
美鈴は100m走で楽勝していた。
ゲーム部と言っても、みんなそれなりに運動出来るんじゃないかと思った。
ん?
他の面子?
寝てる間に競技に参加していたらしいが、もちろん見てません。
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