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第六十八話 勝利への想い

俺は、ゲーム部みんなに許可をとって、今日の朝、裏技の方法をネット上に公開した。
バトルグリード公式サイトの掲示板に、森ノ宮学園ゲーム部の名で。
おそらくこの裏技は、プレイヤが自力で見つけたものではないし、公平性に欠ける気がしたから。
本当は昨日のうちに書こうと思っていたけど、流石に前の日に練習しまくっていたので疲れていたようだ。
直ぐに寝てしまったのだ。
 達也「これじゃ、みんな練習できないけど、まあ仕方ないか」
何も書かずに使い続けるのも罪悪感があるし、これで少しは力の差もバランスがとれるだろう。
今日は全国大会4日目。
いよいよドリームダストの登場だ。
いつもよりもギャラリーが少し多く感じる。
でも今日は対して緊張はしない。
俺達は全く注目されていないし、負けて元々みたいなところがあるから。
それにコンビが、ずっと組み続けているうららだし、考えなくても体が勝手に動くだろう。
俺は軽い気持ちで初戦に挑む。
既にドリームダストは、1回戦を楽勝していた。
他のバトルでは、裏技を使おうとしている人もいるけれど、逆に失敗したりして弱くなっている感じがする。
今日の朝に書いた事は、失敗だったかもしれないと思った。
まっ、結果的には俺達に優位に働いてしまったわけで。
敵は予選2位通過チームだったんだけど、もたもたしている間に勝ってしまった。
 達也「なんか逆に悪い事したかな?」
罪悪感を無くす為に公開したのに、逆に罪悪感がでてくるなんて。
 うらら「どんな状態でも油断したら負けるよ」
まあそうだ。
2位通過のチームだって、俺達に油断せずにやっていたら、もっと良い勝負になったはずだ。
16位通過だと思って裏技を試したりしてるから、俺達にあっさり負けるんだ。
俺は深くは考えないようにした。
きっと朝、練習してきたのだろう。
2戦目は、ある程度裏技を使いこなしている相手だったので、良い勝負になった。
移動系はうららが担当しているが、夢やチリちゃんほどうまく回避はできない。
あの2人と比べたらダメだと思うけど。
裏技での撃ち合いになった。
かろうじてこちらの回避が1度だけ成功して、俺達は勝利した。
なんだか今日のバトルは、追尾ミサイルの撃ち合いばかりで、つまらないバトルばかりだ。
そんな中で、自分たちの戦闘スタイルを貫いてるドリームダストは、やはり人気があった。
準決勝の、ドリームダストと早慶高校のバトルには、今日一番のギャラリーが集まっていた。
しかしドリームダストが圧勝し戦闘が終わると、集まっていたギャラリーはほとんどいなくなった。
 達也「やはりドリームダストは人気だな」
 うらら「だね。私達のバトルは、誰も見ないもんね」
コントローラーを持って、うららと並んで座り、ゲーム登録をする。
周りをみても、我がゲーム部の連中しかいない。
大型モニタ前に、数人ギャラリーが見えるくらいか。
俺達もこれに勝てば決勝進出なのに。
そしてそれは、ドリームダストとの直接対決の決定を意味するのだ。
前にテレビ局で負けた戦いの再戦ができる。
俺はなんとなく、勝ちたいと思った。
元々負けたいなんて思っていないのは当然だが、昨日までの勝ちたい気持ちは、今ほど大きいものではなかった。
準決勝のバトルがスタートした。
この相手も、長距離から追尾ミサイルの裏技を使ってきた。
前回の戦いと同じような感じになりそうだ。
1度でもかわせれば良いけど、期待はできない。
敵と同じタイミングで、追尾ミサイルを発射。
さて、うまく回避できれば良いが・・・
しかし、期待とは反対の結果が起こる。
敵には回避され、こちらには命中してしまった。
これで、もしこのままの戦術を続けるなら、俺達にほとんど勝ち目は無くなった事になる。
どうする?
俺はうららを見た。
うららは、コントローラーを差し出して来た。
交換?
コントローラーの交換は、認められている。
基本家でプレイするネットゲームだから、そこまでの制限はない。
だからわざわざ交換しなくても、この大会のコントローラーには、切り替えスイッチまでついてるくらいだ。
でも俺達は、その場でコントローラーを交換した。
その隙に更に俺達はダメージをくらった。
向こうはもう追尾ミサイルと回避だけに意識を集中している。
うららがビーム砲で攻撃しても、それを回避する事はしない。
その間に、敵は追尾ミサイルを撃ってきた。
さて、俺が回避しろって事なんだけど、別にそれほど上手いわけでもないし、回避できる可能性は低い。
代わった意味があるとは思えない。
でも俺は、うららを信じるだけだ。
 うらら「動かないでその場でキープ」
何をする気だ?
何もしなければ、裏技じゃ無くても当たる事必至。
しかしかわすのも不可能なら、うららに従ってみるしかない。
俺はその場に止まり、防御だけを固めた。
うららは電磁波を飛ばす、機体のほぼ正面に。
 達也「えっ?」
そんな事をすると、ますます命中率を上げるじゃないか。
普通は自分と違うところに飛ばしてかわすのに。
何を考えているんだ?
次の瞬間、モニタが爆発に包まれる。
やられたか?
いや、まだ残っている。
ってか、ダメージをうけていない。
俺は直ぐに移動を開始。
うららは直ぐにビーム砲で牽制してから、追尾ミサイル発射。
裏技のではない。
うららは普通の戦いをしていた。
どうやって追尾ミサイルを止めたのか、一瞬見えなかったが、どうやら迎撃したようだ。
相手の戦術は、早慶高校と同じ戦術。
あの裏技さえ止められるなら、戦い方がわかっている分こちらが有利。
こちらの追尾ミサイルはうまくかわされるが、ビーム砲で少しずつダメージを与えてゆく。
そして敵の追尾ミサイルがくると、俺は動きを止めて防御を固めた。
うららはどうしたのか、もう一度見る。
ミサイルが近づく。
電磁波をまた正面にとばす。
ああ、電磁波でミサイルをこちらの手の内で誘導して、迎撃しやすくしていたのか。
動きを止めるのも同じ理由。
そしてうららは、追尾ミサイルを発射した。
次の瞬間、また迎撃が成功してたい。
なるほど。
電磁波は、敵のミサイル誘導だけでなく、こちらのミサイルも誘導するのか。
おそらくだけど。
俺は再び移動を開始した。
うららもビーム砲での攻撃と追尾ミサイル。
ゲージは五分になった。
残り時間は1分を切った。
相手の動きが変わった。
どうやら戦術の変更のようだ。
裏技を捨てて、近中距離戦か。
これは、ラッキー!
なれた形で戦える。
俺達はアイコンタクトで再びコントローラーを交換した。
うららが直ぐに機体を下げる。
俺が追尾ミサイルを発射。
もちろん裏技の。
サイドをビーム砲で牽制する。
僅差なので、ビーム砲の牽制は効果的だ。
追尾ミサイルをコントロールして、見事敵機に命中させた。
ココで時間が切れた。
最後の1発で、逆転していた。
俺達の判定勝ちだった。
【<┃】 【┃┃】 【┃>】
ドクダミ

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