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第四十七話 ラジコンバトル

暇な時の時間の潰しかた。
皆色々とあるだろうけど、俺の時間の潰し方は、辞書を読む事。
適当なページを開いて読んでみると、あら不思議、面白い。
たとえば今適当なページを開いてみよう。
[梵]インドのバラモン教における宇宙の最高原理。
普通に生きていてはおそらくは知らずにいた知識が、簡単に手に入る。
そして色々と思うのだ。
俺が生まれ変わったのは、この梵の力によって起こった奇跡なのだろうか。
ドリームダストの2人は、この梵を理解し使いこなしているのかも?
なんて。
そしてこんな事を考えているだけで、この使えない知識は俺の中に浸透してゆく事になる。

平日の部活は、ラジコンのパーツの組み替えと、簡単なテスト走行をしていた。
そして日曜日、体育館が空いているこの日、俺達は体育館にコースを造って、いよいよ本格的なレースをする。
まあコースって言っても、目印置いたり、剥がしやすいテープで線引いたり。
さて、ココには今部員8人全員と、そして美鈴と舞が集まっていた。
てか、美鈴、受験勉強はいいのか?
もういい加減ツッコミを入れるに疲れたよ。
とにかく10人集まっているので、チームは5チーム。
ああ、言うのを忘れていたけど、このラジコンレースは、普通のラジコンレースではない。
一言で言えば、レースバトルだ。
少し前にやっていたアニメ、「格闘フォーミュラ」を再現させたゲームだ。
自動車のラジコンに、色々なパーツを付けて、相手を邪魔しながら行うレース。
勝敗は、チームのどちらかがゴールすれば勝利となる。
とりあえず2チームは直ぐに決まった。
舞と美鈴ペア、吉田君と新垣さんペア。
後は今までに組んだ事の無いペアにしようという事になった。
で、結局決まったペアは、まこちゃんとうらら、きららと夢ちゃん、俺とチリちゃんだ。
今回は、うまくいかなくても変更は無い。
勝つ事よりも、楽しむ事が目的だから。
それに勝つ為なら、仕入れたばかりの知識、梵パワーで頑張ればいいのだ。
うむ。
微妙に使い方が間違っているような気もするけど、言葉なんて時代と共に変わる物だ。
意味さえ通じれば全然オッケー。
 達也「さて、最初にやりたい人!」
俺がそう言って手を挙げると、チリちゃんが手を挙げる。
 知里「はぁあい」
チリちゃんは、練習ではあまりうまく操縦できないでいたけど、まあ楽しんでいるのかな?
でもチリちゃんは、楽しいならきっと、もううまくなっていてもおかしくないんだけど。
今日ココに来てやる気を出してる感じ?
まあいいか。
他を見ると、気がついたら美鈴と舞以外みんな手を挙げていた。
 達也「ああ、チリちゃんが早かったね。次はぁ~きららが早かったかな」
俺はみんなの雰囲気から、おそらくきららが早かったのだろうと思い、きらら夢ちゃんペアを指名した。
俺達はラジコンカーをスタートラインにセッティングして、みんなで体育館の観客席のようなスペースへと移動する。
ココからだと、体育館のコース全てが見下ろせる。
 達也「じゃあ、試しに1周してみるぞ」
俺がそう言うと、みんなラジコンカーをコースどおりに進める。
俺は義経の頃もラジコンで遊んだ事があるから、速くコースどおりに走らせるだけなら楽勝だ。
きららは俺ほどでは無いけど、なかなかスムーズな操作。
夢ちゃんも、ゲームのコントローラーを操るのと変わらない。
なかなかうまい。
ただテレビゲームほどのうまさはまだ感じないけど。
で、チリちゃんは、ノロノロと操作している。
やはりやる気とは裏腹に、うまくいかないのだろうか。
チリちゃんだからと言って、やる気になってもできない事もあるのだろう。
俺がまず元の位置に戻り、続いて夢ちゃんときららが戻ってくる。
そして最後にチリちゃんが元の位置にラジコンカーを止めた。
 きらら「結構難しいね」
 夢「直ぐに極めるわよ」
この2人なら、格闘フォーミュラ大会に出ても、そこそこやれそうな気がする。
ちゃんと練習すればだけど。
言ってなかったが、この格闘フォーミュラにも大会がある。
子供から大人まで参加しており、地区大会から全国大会、更には世界大会まであるのだ。
大会は2種類で、個人戦とチーム戦がある。
まあ俺達はゲーム部だし、楽しみたいのでチーム戦を中心にやるつもりだ。
うまくなれば、大会の出場も考えている。
まあ今回は、バトルグリードみたいにうまくはいかないだろうけど。
 達也「じゃあ始めるぞ?」
皆頷いた。
 達也「よーい、ドン!」
俺達は一斉にスタートした。
俺達の作戦は、さっき少しだけチリちゃんと話して、俺が妨害、チリちゃんがゴールを目指す事にしていた。
スタートは綺麗なスタート。
えっ?
チリちゃんもうまくスタートしていた。
そしてすぐ先頭に立つ。
ギアチェンジがうまい。
俺は妨害を警戒していたとはいえ、俺よりも速い走り。
 達也「チリちゃん、そのままゴー!」
 知里「うん!」
 夢「いかせないわよ!」
 きらら「ああ、邪魔だよ!」
チリちゃんに食らいつこうとする夢ちゃんだったけど、あっさりと引き離される。
俺はきららの前に出てスピードを落とし、妨害に出る。
現在楽勝。
それにしてもチリちゃんは速い。
やはりやる気を出したチリちゃんは凄いのだ。
 美鈴「それにしても知里って変わったよね」
俺はそう言った美鈴の言葉が気になったが、今はレース中だから話す余裕がない。
 知里「うん。なんだか最近、なんでもできそうな気がするんだぁ」
ラジコンをコントロールしながら、チリちゃんは美鈴にこたえていた。
 美鈴「知里って、中学の時はやればできるのに、ほとんどの事でやる気ださなかったもんね」
そうなのか?
そう言えば、プログラムとゲーム以外では見た事がない。
この学校にいるって事は、受験勉強も頑張ったのだろうけど。
 知里「やる気って言うか、何もかもが楽しく無かったんだよぉ」
 美鈴「これもさっきまでは、今ほど楽しくはなかったみたいだけどね」
楽しくなかったの?
 知里「楽しかったよぉ~でも、今の方が100倍楽しいかもぉ」
ああ、実際にやってみて、凄く楽しくなってきたって事か。
 美鈴「まあ理由はわかるけどね」
ん?
何か特別な理由が?
チリちゃんの顔が赤くなっている事には、気がつかなかった。
おっと、集中しないときららを行かせてしまう。
夢ちゃんは周回を1周遅らせて、チリちゃんの妨害をしようとしていた。
助けに行った方がいいかな?
俺がそう思った瞬間に、チリちゃんは瞬間に夢ちゃんの妨害をかわして走り抜けた。
 達也「おお!チリちゃん凄いよ!」
 知里「へへへ。本気だよぉ~」
どうやらレース前は本気ではなかったようだ。
策士チリちゃん。
 夢「くきー!まてーー!!」
おおっ!
夢ちゃんがこんなに感情を出して悔しがるなんて。
チリちゃんは親友であり、最大のライバルでもあるのかも。
チリちゃんは規定の3周を回りきっていた。
 達也「おお!楽勝だったよ。チリちゃんのおかげだ」
俺はいつもの癖でチリちゃんをなでた。
うんうん。
こんなに嬉しそうにされたら、ずっとなででいたくなるな。
 夢「く、くやしい」
夢ちゃんは俺の後ろで唸っていた。
なんか怖いし怒ってる?
この後も皆色々な組み合わせで楽しんだ。
俺達のチームは結局みんなに勝った。
思ったよりみんなうまかったが、それ以上にチリちゃんがやる気を出して強かった。
なんとなく中学の頃、更には春に再開した頃よりも、良い笑顔をしているように見えた。
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ドクダミ

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