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秋華エントランス

第四十五話 巨大すごろく大会

恥も外聞もない。
とにかくプライドを捨ててみよう。
そこには日頃味わえない楽しさがあったりなかったり。

文化祭2日目、午前中は俺が店番をしていたが、午後は美鈴と舞がきてくれたので、今はゲーム部みんなが集まってゲームをしている。
文化祭では、成果報告自体が部活であり、部活が成果報告なのだ。
ソフトボール部は、他校と試合をしたり、美術部は絵を描いたりしている。
つまりはそういうわけで、俺達はゲームをしなくてはならないのだ。
で、今日は一番奥のグラウンドが丸々空いていたので、グランド全体を使ったゲームをしていた。
このゲームは、いつかグラウンドが空いてる時にやろうと、密かに作成していた巨大双六だ。
サイコロは、スポンジでできた巨大六面ダイス。
俺はそれを思い切り投げた。
 達也「2は勘弁してくれよー」
俺は転がるサイコロに祈る。
よし、どうやら出た目は4だ。
俺は4つ分、グラウンドに書かれたマスを移動する。
そのマスに書かれているのは、1回休みだ。
てか、本当に休憩ができる。
このゲームはグラウンド全てを使い、自身が動くのでとてもつかれるのだ。
休めるのはとても嬉しい。
 夢「いいなあ」
俺はその場にしゃがみ込んで次の番の夢ちゃんを見た。
すると夢ちゃんがつかれた顔でサイコロを拾いに行く。
拾い上げるとその場でサイコロを転がした。
出た目は1だ。
夢ちゃんは自分のマスに戻ると、ひとつ分進む。
そこにはチャンスと書かれていた。
夢ちゃんはグラウンドの真ん中まで行って、チャンスカードをめくる。
行ったり来たりと疲れているようだ。
カードを見た夢ちゃんの顔が更に疲れた顔になる。
しかし直ぐに微妙な笑みを浮かべた。
どうやらカードの内容は、そう悪くはないようだ。
ただし疲れるのだろうけど。
夢ちゃんが読み上げる。
 夢「サイコロをぶつけた人と場所を入れ替わる」
つまりは、今から夢ちゃんが、休んでいる俺以外の誰かにサイコロをぶつけ、その人といる位置を入れ替わると言うことだ。
このミッションは、誰かにぶつけるまで終わらないという非常に危険なミッション。
夢ちゃんはサイコロを拾い上げると、現在1位のきららを追いかけはじめた。
どうやら当てやすい人を当てて、ミッションコンプリートを狙うよりも、ゲームコンプリートを目指すらしい。
しかし相手はきららだ。
そこそこの運動能力を持っている。
対する夢ちゃんは、運動はかなりダメだったはずだ。
 達也「ってあれ?」
夢ちゃんの走るスピードはやたらと速い。
 きらら「なんでそんなに元気なのー!」
先ほどまでヘロヘロにつかれていた夢ちゃんとは思えない。
やはりゲームとなると、隠れた力を発揮するようだ。
逃げるきらら、追う夢ちゃん。
逃げるきらら、追う夢ちゃん。
逃げるうらら、追う夢ちゃん?
あれ?
いつのまにかうららに代わっていた。
さっき高鳥姉妹がぶつかりそうになった時だろうが。
夢ちゃんはどうやら気がついていない。
気がついてるのはおそらく俺だけ?
そしてその後すぐにうららはサイコロをぶつけられた。
皆、元の位置に戻る。
きららはもちろん先頭の位置。
 夢「あれ?うららさん?」
どうやら気がついたようだ。
最近のゲーム部員は、高鳥姉妹をみわけられるようになっていた。
といっても、しっかり見ないとわからないようだけど。
 うらら「そうだよ。だから私と場所入れ替わらないとね」
うららの位置は、現在ビリだったから、夢ちゃんは最後方に位置を変える事となった。
 夢「えーつかれたよー」
トボトボと最後方に歩いてゆく。
可哀相に。
俺は心の中で笑ってやった。
まあこうしてゲームは進んでゆく。
チリちゃんが兎跳びで3マス進んだり、チリちゃんが目隠しで5マス進んだり、チリちゃんがこけたり色々だ。
って、チリちゃんばっかり辛そうなのに当たっているのは、どうしてだろう?
なんだか涙が出てきたが、俺には見守る事しかできないのだ。
大きくなれよ。
これはちょっと違うな。
身長って話だと、チリちゃんは美鈴より高そうだ。
ってか、みんな低いな。
特に高鳥姉妹は150cmくらいしかなさそうだ。
とにかくいつのまにか、グラウンド双六は大詰めにきていた。
トップはチリちゃん。
この順番で3以上出せば優勝が決定だ。
しかしまあチリちゃんの事だから、きっと無理だろう。
チリちゃんの運や強さは、時と場合を選ぶのだ。
今日はその日でも無ければ、その時でもない。
 チリ「てやぁ~」
転がるサイコロが止まった。
やはり。
数字は2だった。
ゴール寸前のマスで止まった。
で、だいたい直前というのはひどい命令があるものだ。
 チリ「最後方の人と場所を入れ替わる。このマスに来た人は3マス戻る。お互いその場の支持には従わなくてよい」
チリちゃんは肩を落として、最後方の夢ちゃんの所に行った。
 夢「知里ありがとう」
夢ちゃんは普通に歩いて、ゴールまで4マスのところまで移動する。
普通に歩いているのに、スキップしているように見えるのは気のせいだろう。
夢ちゃんは俺のひとつ前のマスで止まると振り返った。
 夢「復活だから」
微妙に敵対意識と言うか、敵対感情が伝わってくるのは気のせいだろうか。
 達也「ふっ。俺のが順番が先に回ってくるのだよ」
そう、順番では俺が先で、5以上で勝ち。
 夢「5以上なんて無理無理。その後こっちが4以上だして優勝するよ」
やはり俺には負けたくないようだ。
 達也「さて、次はだれだぁ?」
 きらら「私よ」
きららは序盤先頭を独走していたけど、止まってはいけないマスに止まって、一気に順位を下げていた。
腕立て伏せ10回にかかった秒数分だけのマスを戻る、ってので、15秒かかったんだよな。
 きらら「うりゃ!」
きららの投げたサイコロは、6で止まった。
 きらら「きゃー!」
ゴール一歩手前で止まった。
これでチリちゃんが夢ちゃんと同じマスに、きららが最後方に下がった。
 達也「次は新垣さんか」
新垣さんは、俺より1マス後ろにいる。
6なら優勝だ。
 吉田「がんばれー!6で優勝だよー!」
 新垣「うん。がんばるよぉー」
なんかムニョムニョするな。
新垣さんのサイの目は5だった。
 新垣「ガーン」
新垣さんは最後方に、きららが俺の前のマスにくる。
なんだか良い勝負だ。
 吉田「残念。次は僕か」
今度はゴール一歩手前のマスまで届かないから、また同じ事が起こる事はない。
吉田君の数字は、6だった。
ゴール2つ手前のマス。
ミッションカードと書かれている。
ココでミッションカードを引いてミッションをこなし、その結果により良くも悪くもなるカード。
吉田君はカードを引いて読み上げた。
 吉田「グラウンドを走って一周する。タイムを計り、1の位の数字引く5の分だけマスを移動する。移動したら、その場所の支持に従う」
かなりしんどいミッションだけど、うまく行けば優勝だ。
 吉田「1の位が7から9で優勝か」
吉田君の性格から、狙うはおそらく7,8秒辺り。
俺の合図に、吉田君が走り出す。
吉田君は心の中で数字を数えながら走っているのだろう。
集中している。
このままだと、吉田君ならきっと優勝する気がする。
なんとかしなくては。
 達也「新垣さん。応援応援。旦那の優勝がかかってるんだよ」
 新垣「あっ!そうか。うん。光一くーん!ファイトだよー!!」
 吉田「あっ!うん。ありがとう。って、えっと、あれ?」
ふふふ、作戦成功だ。
今ので数秒狂ったに違いない。
って、吉田君って、名前光一だったんだ。
もう半年のつき合いになるけど知らなかった。
まあ男の名前なんて、普通覚えないよね?
さて、そろそろゴールだ。
ストップウォッチを見ていると、不正したと思われるのもいやなので、それは見ないで最後ストップを押した。
果たして何秒か。
66秒。
うーむ。
お約束ですな。
新垣さんが俺の前のマス、吉田君が最後方へと下がった。
次は、うららだ。
うららもゴールはできない位置。
サイコロを振る。
5だ。
俺のひとつ前で止まる。
 うらら「次の自分の番まで踊る。踊り続ける事ができれば4マス進む」
微妙だ。
これが今先頭であるならば、踊っていれば次の番でゴールだ。
しかし、それまでに誰かが優勝を決めてしまうだろう。
何故なら俺の前に3人いて次に1/2の確率でゴールできるのだから。
俺も含めれば、誰もゴールしない確率は、1/12だ。
 うらら「・・・」
うららは踊り出した。
よくわからない踊りだ。
あえて名前をつけるなら、芋虫踊り?
ウネウネしてるだけ。
うーん。
採用。
君いいよ。
 まこと「次私かぁー。どうせもう勝てないかなぁー」
まこちゃんはぶつぶつ言いながらサイコロを振る。
出目は4。
俺のひとつ前のマスで止まる。
流石にもう踊らないだろう。
と、思ったけど、ノリで踊っていた。
炭鉱節。
盆踊りだった。
踊るって、普通こんなものなのだろうか?
まあいいや。
 達也「ははは!とうとう俺の番だ!5以上で優勝!楽勝だ!うりゃー!」
俺はサイコロを転がす。
ん?
転がっていたサイコロは、前のマスの誰かの足に当たって止まった。
 夢「はい1ね」
・・・
なんて奴だ。
今足だして止めたよね?
 夢「ん?気のせいでしょ」
何も言ってないのに。
それにしても流石夢ちゃん、ゲームに対する思いは半端じゃない。
 達也「まあいいだろう。うぉーーー!!!」
俺もやけになって踊り出す。
なんだか楽しいぜぇーー!!!
楽しかった。
訳がわからず楽しかった。
人間全てを捨てると、なんと心地がいいのだろう。
疲れた体に鞭うって踊り続けた。
その後、夢ちゃんも、チリちゃんも、きららも、新垣さんも、そして吉田君も、サイコロで3を出したことは言うまでもない。
って、ありえねぇー!!
第一回グラウンド双六大会優勝は、芋虫踊りのうららだった。
ちょっと格好いい?
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