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2013年11月4日【月】19時43分21秒
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第六十九話 受け入れられない想い

人は人を、どんな理由で好きになるのだろうか。
どんな人が、どんな人に恋をするのだろうか。
たとえば強い人は、支えてあげたい人、守ってあげたい人を愛するのかもしれない。
弱い人は、支えてくれる人、守ってくれる人を求めるのだと思う。
では、俺みたいに弱いくせに、弱い人を助けてあげたいと思う人は、一体どんな人と愛し合えるのだろうか。

再びのテレビ局。
まさか俺が、2度もテレビに出る事になるなんて。
決勝参加者以外のメンバーは観客席に、参加者は待合室で待機だ。
 達也「おかしい。俺はこんな所にこれる人間ではないはずだ。はぁ~」
マジため息が出た。
 うらら「達也くんは、ここにいるにふさわしい人だと思うけど?」
なんだその自信。
俺はそんなに大層な人間ではない。
夢みたいに突出した才能があるわけでもないし、チリちゃんみたいに努力家でもない。
うららみたいに頭がきれるわけでもなければ、まこちゃんみたいに元気でもない。
って、最後のは関係ないか。
 達也「とにかく、そんなわけないよ」
俺は首を振った。
 うらら「でも、夢ちゃんがココにいるのは、きっと達也くんのおかげだし、チリちゃんががんばれるのも達也くんのおかげ。ね!」
なんだろうか。
うららにそう言われると、なんだかその気になってくる。
以前俺は、うららを支えてあげている気になっていた事があったけど、逆に俺が支えられているような気がしてきた。
部費の予算会議でも、このバトルグリードでも、ホント助けられている。
 達也「それを言うなら、俺はうららに支えられているな」
思ったまんま口に出した。
 うらら「えっ?それはないよ・・・」
うららは少し照れて俯いた。
 達也「いやマジで。うららじゃなかったら、チームでココまでくるのは無理だったと思う」
 うらら「えっ?そうかな。だったら嬉しいけど」
ますます照れているようだ。
まあお世辞で言ってるわけでもないし、これは俺の本心だ。
何となく思ったんだけど、俺の探している恋ができる女の子、うららが一番近い気がした。

番組が始まり、まずは夢がひとりでテレビに出ていた。
俺達は待合室で、テレビ観戦。
ドリームとアブサルートの対戦は、簡単に勝負がついた。
裏技が攻略された今、夢と早慶の彼との間には、大きな実力差があった。
テレビ放送している勝負としては、若干面白みが無かったが、夢が勝ったからそれなりに盛り上がっていた。
夢が待合室に戻って来た。
 達也「おめでとー!流石夢。楽勝だったな」
俺は夢に祝福の言葉をかけた。
 夢「弱すぎ。つまんなかった」
夢は勝った喜びよりも、勝負のつまらなさが面白くないらしい。
てか、夢とタイマンで良い勝負ができる奴なんて、チリちゃんだけなんじゃね?
美鈴でも弥生でも全く歯が立たない気がする。
 達也「お前は日本一、しかもダントツだ。喜んどけ!」
俺はそういって夢の頭をなでた。
夢は少しいやがったけど、顔を真っ赤にして、大人しくなでられていた。
俺達にダブル出場は無いから、みんなでテレビ観戦。
早慶高校の奴らが、裏技を使わずに戦って負けていた。
ココに来て、勝つのも悪いと思ったのだろうか。
大会の最初から、いろんな掲示板で批判が出ていたからな。
批判は日に日に増えている。
俺が裏技を公開した事も関係しているのだろう。
でも俺達には、やましい事は何もない。
全力で戦う事を皆で約束した。
うららだけを残して、俺達は撮影スタジオに移動した。
観客の前に立ち、挨拶する。
2度目でもやはり緊張する。
 アナ「前回も出ていただいた部長さんです」
 達也「はあ」
 アナ「今日の意気込みを!」
 達也「まあ、適当に」
 夢「勝つっていいなよ」
夢が小さな声で言ってくる。
いや、そういわれても、俺の力で勝つわけじゃないし。
 アナ「元気が足りない部長さんは放っておいて、夢ちゃんどうですか?シングルに続いてチームダブルでの決勝ですが」
 夢「勝ちます」
 アナ「流石に凄い自信です。チョッピリムッときますね」
夢もムッとしていた。
まあ、このアナウンサーの気持ちもわかりますけどね。
 アナ「では、知里ちゃんはどうですか?」
 知里「お兄ちゃんがいるから、きっと勝っちゃうよぉ~」
いや、そこで俺がいるからって、足引っ張ってるだけだって。
でも、良い子だなぁ~
お兄ちゃんをたてる妹。
妹のカガミだね。
 アナ「そっ、そうなんですか・・・」
でもやっぱり、俺がいるからってのは、無理があったようだ。
 アナ「では、今回初めてのまことさんはどうですか?」
律儀にみんなに聞くんだね。
 まこと「負ける要素は、部長だけです」
おいおい、なんてこといいやがりますか。
本当の事だけど。
 アナ「今日一番、真実に近い言葉が聞けたような気がします」
なんだこのアナ。
絶対近いうちにテレビから消えるな。
ってか消えやがれ。
こうしてチームダブルの決勝が始まった。
画面のスタート表示を見るやいなや、リアリードリームが突っ込む。
接近戦なら、ドリームダストよりも強いだろう。
比べる事はできないけど。
敵は完全にびびっている。
てか、完全に俺達のスターダスト狙いのようだ。
俺達は逃げながらの戦闘。
チリちゃんが移動系を操作しているから、敵は簡単には近づけない。
敵に少しずつダメージを与える。
やはり俺達のチームは最強だ。
負ける気がしない。
予選の時にあまり役にたたなかった俺が、裏技によって力を発揮できるようになったから、もう隙は無かった。
楽勝だった。
これで我が森学が、ダブル以外の3種目での優勝が決定した。
ダブルをとっていれば、全制覇だったけど、まあ3種目でも十分凄い事だ。
全ては夢の力が大きいな。
全て夢がからんでいるんだから・・・
って、まだチームが残っていた。
俺とうららのブライトスターが、ドリームダストに・・・
 達也「勝てるわけないか」
 うらら「そんな事ないよ」
俺はうららに促されて、2人きりになっていた。
なんだ?
こんな人気の無いところにつれてきて・・・
もしかして、告白?
なーんてな。
マジなんだろ?
ドキドキ。
 うらら「作戦考えたんだ」
 達也「作戦?」
ああ、決勝か。
てか、うらら、勝つ気なんだ。
 うらら「私に攻撃系させて。で、達也くんは、障害物の近くでなるべく行動。敵との距離は中距離維持で。どうしたの達也くん?」
 達也「あっ!いや、オッケーだ」
うららは本気だ。
もう負けるだろうし、どうでも良いと思っていた自分が嫌になった。
 うらら「昨日のように迎撃すると、夢ちゃんの攻撃はかわせないから、止まるのは死角に入ってからで」
 達也「ああ」
これはやるしかない。
うららは勝算があるんだ。
俺はそれに精一杯力を出し尽くさないと、申し訳ない。
 達也「もしかしたら、夢とチリちゃんは逆でくるかもな。回避100%は魅力だ」
 うらら「うん。もしそうでも、さっきの作戦でお願い」
 達也「おう」
 うらら「後、フィールドが砂漠、だったら、今までどおりのポジションで。後、接近されたら負けです。ばれないようにビームソードとバルカンは持ちますけど、燃料は最低量に押さえて、追尾ミサイルを余分に積みます」
確かに、追尾で追尾を落とす訳だから、使用量は倍、長引けは弾数が足りなくなる。
てか、敬語になってるのは何故?
 達也「わかった」
 うらら「勝ちましょ」
うららの笑顔を見ていると、勝てる気がしてきた。

撮影スタジオに入った。
さっきもいた場所だけど、なんとなく違って見えた。
今回は俺もやる気がでていたから。
 アナ「さて、いよいよ最後の戦い。夢ちゃん、自信は」
 夢「一応あります」
あれ?
どうしたんだろう?
いつもの自信は?
 アナ「あれ?自信がないのですか?」
俺の想いを代弁してくれた。
 夢「今までで、一番の強敵だと思います」
いや、身内だからって、コメント贔屓しなくても。
でも、確かに俺達は勝つ気でいるけど。
 アナ「そうですか。では、知里ちゃんはどうですか?」
 知里「お兄ちゃんとうららさんは、強いですよぉ~勝負は時の運ですぅ~」
チリちゃんまで。
2人にココまで思われていると、本当に自分達が強いと思えてくる。
アナウンサーがこちらに来た。
 アナ「では、部長さん、少しでも勝算はありますか?」
俺はなんとなくうららを見た。
良い笑顔だ。
 達也「勝ちますよ」
おれは迷わずにこたえた。
 アナ「えらい自信ですねぇ~今までの戦闘を見ても、勝敗は火を見るより明らかに思えるんですが」
 達也「そうですね。でも良い勝負になると思いますよ」
うららの顔をみると、確信せずにはいられなかった。
 アナ「そちらの、うららさんはどうですか?」
 うらら「達也くんが、きっとなんとかしてくれます」
うららは笑顔で俺をみていた。
なんだか照れた。
 アナ「あー暑いですね。そういう事ですか。ゴールデンコンビとゴールデンペアの戦いってわけですね」
アナウンサーは手をパタパタさせて、自身を扇いでいた。
そんなアナウンサーの行動にも、何故か動揺も否定もする気にはなれなかった。
 夢「本気でいくからね」
夢のそんな言葉を聞いて、俺達は席についた。
いつもの癖で攻撃系の方のコントローラーを操作していたが、直ぐにうららと持ちかえる。
機体を少しいじってから登録。
追尾ミサイルの弾数を増やした。
登録が終わると、フィールドが決定する。
砂漠だとダメだと言っていたが、フィールドは普通に街になった。
 うらら「一番やりやすいフィールドだ」
うららは嬉しそうだった。
確かに障害物の近くで戦うなら、街が最良。
どこにいても直ぐ隠れられる所があるから。
フィールドに機体が映し出される。
カウントダウン。
 達也「中距離だな」
 うらら「うん」
小さな声で確認した。
スタート。
俺はゆっくりだけど確実に距離を詰める。
向こうは相変わらずの高速移動で、左から回り込んできた。
俺はその動きに合わせて、左に旋回。
少しずつ距離を詰める。
一気につめて、中距離勝負狙いがばれてはいけない。
どういった理由で中距離なのかわからないけど、おそらくその距離でないとダメな作戦なんだろう。
向こうは長距離でも中距離でもオッケーだから、ばれなければ中距離勝負できるはずだ。
距離はなんとか中距離まで詰めれた。
後は、障害物をかわして、目視できる位置のさぐり合い。
視界が開けた。
ドリームダストが見えた。
ビーム砲がとんでくる。
こちらもうららがビーム砲を撃った。
両者うまくかわす。
最初の発射チャンス。
同時に追尾ミサイル発射。
俺は直ぐに建物の影に入って止まる。
その時に1発ビーム砲をくらう。
流石夢。
抜け目がない。
追尾ミサイルは、チリちゃんにかわされた。
こちらも、うららがうまく迎撃した。
 達也「これを繰り返していては勝てない」
チリちゃんの回避失敗を期待するのは、むしがよすぎる。
俺達は再び視界に捕らえあった。
又ビーム砲。
お互いかわす。
 達也「えっ?」
今度はうららが直ぐに追尾ミサイルを発射。
これは普通のだ。
 うらら「相手が撃ってこなければ、視界にいれておいて」
少し難しい注文だ。
相手の回避運動について行かなければならない。
なんとかついてゆくが、このミサイルは当たらない。
容赦ない夢のビーム砲での攻撃が、俺達の機体を捕らえる。
不利だ。
そう思ったが、追尾ミサイルがドリームダストを捕らえた。
 夢「えっ?」
 知里「ごめん。でも裏技みたいに軌道が変化したよぉ~」
俺は見た。
うららが何をしたのか。
もちろん、夢達の見ているモニタには映らない。
まさかこんな方法があるとは、だから中距離なんだ。
 達也「わかった。協力する」
俺は裏技が撃てるタイミングをわざと外して、ドリームダストと対峙する。
直ぐにうららは追尾ミサイル発射。
ビーム砲をなるべくかわしながら追随。
機体を相手になるべく向ける。
この方が、うららはやりやすいはずだ。
 夢「回避!」
 知里「うん」
電磁波を飛ばす位置を、最長に設定したうららは、敵機体に向けて電磁波をとばした。
その軌道を追って、ミサイルが軌道を変える。
「ドーン!」という音が鳴り響く。
また命中した。
 夢「なんだかわからないけど、まずい。接近戦に持ち込むよ」
 知里「うん」
俺は一旦敵に背を向け逃げる。
接近されては勝てない。
とにかく俺は逃げる。
中距離維持とか今は言っていられない。
少しずつつめられる。
 うらら「一瞬で良いから、ロックオンさせて」
 達也「おう」
このままでは逃げ切れない。
何処だ?
どこかいい場所は・・・
ココなら見えるか。
一瞬ドリームダストが映る。
中距離武器がギリギリ使える距離。
うららは逃さず、追尾ミサイルを撃つ。
 うらら「逃げて」
うららは耳打ちしてきた。
俺は相手が追尾ミサイルを回避している間に距離をあけた。
 夢「近距離戦をいやがってる。なんとしても接近するよ」
 知里「わかったよぉ~」
くそ。
今度ドリームダストを見る時は、接近状態か。
街が一番良いかと思ったけど、こうなってくると一番嫌なマップだ。
近距離装備持っておくべきだったな。
あれ?
一応あるんだよな。
ビームバルカン一瞬と、ビームソード2秒くらいは使えるだろう。
最悪それで勝負かな。
機体を捕らえられないように接近しないといけないドリームダストは、なかなか俺達に近づけない。
俺はとにかく逃げる。
かなりつめられた。
距離は既に近距離。
追尾ミサイルはもう使えない。
命中率が一気に下がるから。
残り時間は既に30秒を切っていた。
 夢「いくよ知里」
 知里「おっけ~だよぉ~」
追尾が無いとわかると、ドリームダストが目の前に姿を現した。
 達也「ココまでか」
 うらら「まだ。全速前進!」
うららの声は大きかった。
おそらく夢達にも聞こえただろう。
うららはビーム砲を撃つと、ビームソードを手に持った。
すれ違いざまにビームバルカンを撃つ。
そしてソードを振った。
 知里「大丈夫だよぉ」
 夢「攻撃!」
こちらの攻撃は全てかわされ、夢のビームバルカンがこちらに命中する。
しかしこっちはスピードに乗っている。
一気にその場所から離れた。
 夢「しまった!」
 知里「まだだよぉ」
ドリームダストが急旋回してこちらを向いた。
距離は中距離まで離れていた。
夢が追尾ミサイルを撃ってきた。
やばい。
タイミングが合っていた。
裏技だ。
俺は直ぐに建物の影に入り急旋回。
間に合うか。
「ドーン・・・」という音を残して、画面が爆発に包まれた。
そして、勝利の文字が表示されていた。
倒す事はできなかったけど、時間切れ判定で勝利だった。
 うらら「やったぁーーー!!!」
うららが俺に抱きついてきた。
こんなに感情を表に出して喜ぶうららは初めてだ。
俺もうららを抱きしめていた。
 アナ「まさかの結果です。判定とは言え、ドリームダストの初めての敗戦です」
あっ、そう言えばそうか。
まだ未だに負けた事なかったんだよな。
なんだか凄い事をしてしまった気がした。
 アナ「夢ちゃん、先輩に花を持たせてあげたんですか?」
 夢「本気でしたよ」
 知里「見てればわかるよぉ~」
まあ確かに、わかる人が見れば、わざと負けたわけではない事がわかると思う。
でも普通の人なら、そう思っても不思議ではないのだろうな。
 アナ「部長さん、おめでとう。今のお気持ちを」
なんとなく俺はこの人が嫌いだ。
正直こたえたくないんだけど、そうもいかないよな。
俺はいやいやこたえた。
 達也「嬉しいですよ。まあ勝ったのは、うららのおかげですけど」
俺はうららを見た。
 うらら「そんな事ないよ。作戦があってもそれができないとダメだもん」
 達也「ああ、まあ・・・」
 アナ「はいはい。愛は後で語ってくださいね」
 うらら「今じゃダメですか?」
 達也「えっ?」
一瞬耳を疑った。
うららがそんな事を言うなんて。
てか、今愛を語る?
 アナ「えーはい。どうぞ!」
うわ。
許可してるよこの人も。
 うらら「今日勝ったら言おうと思ってたんです」
うららはそう言って、観客席のきららを見た。
どうやら、この事はきららは知っていたようだ。
そしてきららは、握り拳を2つ作って、うららに目で頑張れと言っているようだ。
 うらら「私、達也くんが好きです」
目を見て、正面から言われた。
どうこたえたら良いんだろう。
テレビで全国放送されている。
こんな場所で告白されるなんて。
不思議と緊張はない。
なんとなく夢の中にいるようだ。
夢?
少し夢の方を見た。
俯いていた。
悲しい顔をしていた。
 達也「あ、それって・・・」
俺は返事出来なかった。
はっきり言わないと、傷つけるんじゃないかと思いながら。
 うらら「大丈夫だよ。私は気持ちを伝えたかっただけだから」
返事はいらないって事なのか。
それは、肯定してもらいたいわけではないと。
違う。
これは俺に対する気遣いだ。
だからココはそれに甘えよう。
 達也「ああ、話、後でしよう」
テレビを観ている人にとっては、どっちとも取れそうな感じで、番組は終了した。
その後のうららは、いつもと同じで普通だった。
何事もなかったように、俺ともみんなとも話していた。
最後別れる時、
 うらら「好きなのは本当。私は達也くんの為ならなんでもするよ。だからもし、こたえられるようになったら、教えてね」
そう言って寮へと帰って行った。
【<┃】 【┃┃】 【┃>】
ドクダミ

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