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第六十七話 チーム

俺は昔からチームプレイが苦手だ。
昔というのは、もちろん義経が若かった頃から。
息が合わない訳ではない。
ただ俺が、相手に迷惑をかけたくないと、いらないプレッシャーに押しつぶされてしまうのだ。
だから、遊び程度ならうまくいくのだけれど・・・

今日はバトルグリード全国大会3日目。
チームダブルの準決勝までが行われる。
チームで機体は2機、4人でのコンビバトル。
このゲームの団体戦だ。
参加組の数が、他と比べると圧倒的に少ないから、予選レベルは他より低いが、ココまで来ると他よりもハイレベルになる。
ひとりで1機を操作するには、かなりの無理があるが、2人で1機なら、息さえ合えば、夢ちゃんのドリームでもかなり苦戦するだろう。
あくまで息が合えばだけど。
リアリードリームは、我が部の突撃隊長まこちゃんが攻撃系、天才夢が移動系を担当する。
スターダストは、俺が攻撃系、魔女チリちゃんが移動系。
で、追尾ミサイルを回避する方法を実行する為には、2人の息が合わないといけない。
何故なら、必要な操作が2人に別れているから。
シングルなら、妨害電磁波をとばすのも、急旋回するのも同じ人だけど、チームだと電磁波は攻撃系、急旋回は移動系となる。
昨日の夜は、結局回避練習をしまくって、リアリードリームはほぼ100%、スターダストも8割は回避できるようになった。
まあ、夢とチリちゃんの力そのままくらいにはできるようになった訳だ。
これで普通に戦えれば、この団体戦、優勝することも十分可能だ。
何故なら、俺達は裏技を使う事や回避する事ができるだけでなく、夢とチリちゃんがコンビを組んでいるのだ。
まこちゃんは、攻撃だけなら夢にも負けない強さを持っているから、リアリードリームはドリームよりも強い機体と言えるかもしれない。
いよいよ俺達の出番、皆は席につく。
なんだかこのゲームを始めて最高の緊張が俺を襲う。
俺のせいで負けたら、3人に迷惑がかかる。
やぱい。
手が震えて操作がうまくいかないし、集中できない。
このままでは・・・
 夢「達也は追尾ミサイルを音に合わせて撃つだけでいいから」
 まこと「たっちゃんは楽でいいねぇ~」
 チリ「お兄ちゃんは、裏技を解明してくれたから、それだけで十分だよぉ~」
あっ・・・
そう言えば、俺の仕事って、追尾ミサイル撃ってるだけでも十分なんだよな。
みんなが声をかけてくれたおかげで、気がついたら俺の緊張は無くなっていた。
チームプレイはダメだと思っていたけど、この面子なら楽な気がしてきた。
どうせ俺、あてにされてないし。
いなくて良い程度の働きで良いなら、目を瞑っていてもできる。
俺が登録を済ませると、直ぐにマップ表示に切り替わった。
どうやらみんなを待たせていたようだ。
機体が表示される。
カウントダウン開始。
 達也「よし!勝つぞ!」
 夢「はいはい」
 まこと「うっし!」
 知里「やっちゃうよぉ~」
画面にスタートと表示された。
直後リアリードリームが敵表示位置に向かって一直線に進む。
相変わらず無鉄砲のような移動だけど、夢にとってはこれが普通。
敵は6位通過の、オタクな人たちの集まりみたいだ。
そこそこは強敵、昨日までの俺達よりは強いと思われる。
しかしドリームの名前は、流石に相手にプレッシャーを与える。
 敵の人A「夢ちゃんがきたぞ。距離をとれ」
ビビってる。
てか、もしかしてこの人達は、ドリームダストファンなのだろうか。
なかなか研究しているようだ。
うまく距離をとって、離れた位置から攻撃してくる。
お互いダメージを受けないまま、時間だけが過ぎてゆく。
ココは夢達の支援より、俺達が隙をつく方が良いかも。
 知里「行っちゃうよぉ~」
チリちゃんも同じ考えのようだ。
チリちゃんは、リアリードリームから少し離れて、一方の敵の側背から近づく。
 敵の人C「知里ちゃんがきたぞ。応援頼む」
 敵の人A「おっ、おう」
しかしそこは夢が押さえる。
 敵の人A「くっ!なんとか頑張ってくれ!」
形としては、別々で勝負する形になった。
そしてスターダストは、長距離同士なら簡単には負けない。
ビーム砲で左右を牽制、移動制限。
追尾ミサイルが飛んでくる。
普通の追尾ミサイルの回避なんて、裏技のミサイル回避と比べれば楽勝。
チリちゃんはあっさりとかわす。
代わりにこちらからミサイル発射。
敵は両サイドのビーム砲が気になって、通常の追尾ミサイルですらかわせない。
勝負は決まった。
終わってみれば、俺が敵を倒して勝利していた。
 夢「当然ね」
 まこと「たっちゃんが倒して勝つなんて、これが最初で最後だね」
 知里「大丈夫だよぉ~私と組んでるんだから、絶対スターダストが落ちる事はないんだからぁ~」
 夢「私だって、リアリードリームは絶対落とさせないわよ」
そう言えばこのチーム、移動系と防御系は、最強コンビが行っているんだ。
落とされて負ける事って、ほとんどあり得ないんじゃ?
予選で負けたのだって、ほとんど判定負けだった気がするし。
 達也「でも次は、あの早慶高校だ」
いよいよ次は、裏ワザを使ってくるチーム。
予選3位通過で、さきほど1回戦を楽勝していた。
あの裏技を多用している。
俺達の成果を発揮する時は、もうまもなくだった。

いよいよ早慶高校との対戦だったが、先ほどよりは緊張していなかった。
なんとなく、チームメイトへの信頼が、俺に安心感を与え落ち着かせる。
今度は直ぐに登録を済ませ、敵機体も見る事ができた。
両方とも中長距離仕様だ。
戦術としては逃げ回りながら、裏技で攻撃してくるパターン。
今までと同じだ。
だったら、俺達は今までどおりでいける。
ゲームがスタートした。
いつもと同じように、夢が突進する。
俺達はその後ろから追随。
敵は二手に分かれて、距離をとる。
夢は左を追撃。
右からリアリードリームに対して、あの追尾ミサイルを放つ。
俺は右の敵に対して、ビーム砲で牽制。
敵はそれに対して下がりながら、ミサイルコントロール。
夢は簡単に回避成功。
そのまま左の敵を追う。
あっちは放っておいても、大丈夫だろう。
1回戦と同様、1対1になった。
しかし今回は、スターダストに対して、あの追尾ミサイルを撃ってくる。
こっちも同時に発射してやった。
 早慶生徒A「えっ?!」
少し席が離れているから、よくは聞こえなかったが、驚いているような気がした。
俺は妨害電磁波をとばして、直ぐにミサイルコントロールをする。
それに合わせて、こちらにとんできたミサイルも、急にこちらに軌道修正してくる。
しかしそれはチリちゃんがうまくかわした。
俺の放った追尾ミサイルは、見事敵機に命中した。
 達也「ナイスチリちゃん!」
 知里「お兄ちゃんもナイスだよぉ~」
 夢「私達も負けられない」
 まこと「ロックオン!」
リアリードリームから発射されたビーム弾が、連続して敵機を攻撃する。
リアリードリームが、敵機に追いついた時点で、俺達の勝利は決まっていた。
 まこと「ひゃーほーい!」
まこちゃんの連続攻撃に、敵機は簡単に落ちた。
 夢「楽勝」
昨日まであれだけ苦戦していた相手、全てが解明された今では敵ではなくなっていた。
準決勝も、俺達は裏技を使って楽勝した。
決勝進出2つ目。
まさか、チームダブルでここまでこれるとは思っていなかったので、俺は今までで一番嬉しかった。
今日の日程終了後、早慶高校の人に話しかけられた。
 早慶生徒A「ちょっと聞きたいんだけど」
今日のチームダブルにでていた中のひとりだ。
 達也「何かな?」
おそらく聞きたい事はわかる。
どうして裏技が使えるのか、どうやってかわしたのか、まあそんなところだろう。
 早慶生徒A「君たちも、伊東さんに聞いたのかい?」
 達也「伊東?誰それ?」
 早慶生徒A「えっ?あー、もしかして、君たちは自力で追尾ミサイルのコントロールを見つけたのかい?」
 達也「ああ、そうだけど。伊東さんって、もしかして蔵の人かな?」
 早慶生徒A「・・・」
直ぐにはこたえてくれなかった。
ふむ。
おそらくは、俺が昨日予想していたとおりだったようだ。
また腹が立ってきた。
 早慶生徒A「一応内緒なんだ。ごめん」
早慶高校の人は、走り去っていった。
 今日子「あーって事は、大会運営の人が、私達があまりに強いから、敵に策を授けたと、まあそういう事なんだね。ゲームごときでそこまであるなんて、楽しい!」
ああ、そういう考えもあるな。
弱い敵を倒すよりも、強い敵を倒す方が楽しい。
こんな汚い事された事に腹を立てるより、今日子みたいに楽しんだ方がいい。
 達也「でも今日子、お前ずっと寝てたのに、なんでそんな事知ってるんだ?」
 今日子「ん?なんの事?よくわからないけど、さっきの会話がなんだかかっこよかったから、そんな妄想をしてみました。えへ!」
・・・
今日子、怖い子。
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