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第七十六話 答え

生まれ変わるなら何時が良いかと聞かれ、俺は高校生だとこたえた。
しかし、その中に唯一の欠点が存在する。
それは定期テストだ。
教師をやっていた時でさえ、時々学生であった時の夢を見る。
そしてテストを受けて、凄くいやな気分の時に目が覚める。
目が覚めて安心するんだ。
ああ、俺はもう卒業してるんだと。
実際やってみると、それほどでもなかったりするんだけど、それでもやはり面倒だよな。
だいたい、しっかり勉強していれば、テストなんて必要ないじゃないか。
そんな時間があるなら、別の事を教えてくれた方がいい。
でもテストが無いと、家で勉強なんて、まずやらなくなってしまうのか?
授業も聞かなくなるのか?
それは授業が面白くないから、テストをするからと強制的に勉強させているんだ。
大人になると、一部勉強が面白くなる。
たとえば俺の場合、政治経済の授業なんて嫌いだったけど、今は凄く面白い。
歴史もそうだ。
だから凄く頭に入る。
だけど、若い頃ってのは、他に興味があったりするのだ。
うまくいかないものだ。
でももし、その時々に興味のある事をしっかり教えてあげれば、この世の中、天才で溢れるような気もするのだけれど。
教育の在り方を、そろそろ考え直す時期ではないだろうか?
「キーンコーンカーンコーン」とチャイムが鳴った。
中間テストがようやく終わった。
最後の代数幾何のテストは、即効終わってしまって、いろいろ教育について考えてしまった。
ココはすっきりするために、久しぶりのゲーム部に行かなくては。
ってか、ずっと部室には行ってるんだけど。
 達也「うらら、行こうか」
俺は隣の席のうららに声をかける。
 うらら「ちょっとまって」
うららはテストの自己採点をしていたようで、教科書を見ていたが、直ぐに鞄に詰め込む。
 達也「うららは真面目だな」
俺は思った事をそのまま言う。
 うらら「達也くんと義経先生は似てるけど、やっぱり言うことが違う事もあるよね」
最近は義経の名前がでてきても、あまり緊張する事はなくなっていた。
と言っても、やはり緊張はするんだけど。
 達也「ふーん。まあそらそうだろうけど。こういう時にはどんな事言ってたんだ?」
自分ではよくわからないので、聞いてみた。
 うらら「うーん・・・あれ?やっぱり同じかも。だたニュアンスが違うのかな」
そうだな。
義経が今のうららを見たら、「おお!えらいえらい」とか言いながら、少しあきれるのかな。
先生だから誉めるべきだとわかっているけれど、心の中では「もっと適当に生きてもいいんだぞ」なんて思っているんだ。
だいたい子供なんてもっと遊ぶべきなんだ。
好きな事をやらせるべきなんだ。
大人の仕事は、人様に迷惑かけないように教育する事と、色々な事を、色々な選択肢を見せる事なんだ。
うん。
 達也「うららが、それが好きならやったらいいさ」
きっとこれが俺の本心だろう。
 うらら「だね。でも受験するなら必要になるから、面倒だけど少しはやるよ」
 達也「うららは受験するのか?」
 うらら「受験しようと思っているけど、達也くんはどうするの?」
そう言えば、俺はまだどうするか決めていなかった。
また大学に行って教師をするのか?
でも、教師になっても、もう俺がやりたいことはできない気がする。
もしあったとしても、舞がきっとやってくれるから。
 達也「教師になるつもりがない事は確かだな」
高校出たら働きたい。
何故そう思うのかわからないけれど、俺が高校生からやり直している意味は、もうほとんど終わっているような気がした。
 うらら「教師に向いてると思うけど」
でもこれ以上できないんだよ。
上が見えない事をやる程、つまらない事はない。
 達也「会社でも作るか・・・」
なんとなくそう思った。
 うらら「達也くんが会社作るなら、私も雇ってね」
・・・
これが面白そうじゃね?
 達也「マジでやる?ゲーム部のみんなが協力すれば出来そうなんだけど」
 うらら「やる!」
即答だった。

ゲーム部の面々が集まっていた。
俺は先ほどうららと話していた事を、今ココでみんなに話そうとしていた。
 達也「えっと、これは強制でもないし、俺の思いつきなんだけど、嫌なら嫌ではっきり言って欲しい。反対する人がひとりでもいたら、これは部活とは別に個人でやるから、なんら問題はないから」
 今日子「うわー!面白そうー!私やる!絶対やる!やるったらやるよーー!!って、なんの話?」
・・・
ココはスルーする場所だよな?
 達也「これは俺の進路の話をしていた時の話なんだけど・・・」
 夢「その話長いの?」
 まこと「前置きはいいよ」
・・・
 達也「俺が高校出たら、会社を作りたいと思っている。みんなも一緒にやってみないか!?」
単刀直入に言ったらこんなもんだろう。
 夢「やる」
 今日子「うわー!楽しそう!で、なんの会社ですか?裏DVD販売会社ですか?薬物密輸会社ですか?それとも怪しい宗教集団ですか?」
 達也「んなわけねぇ!てか最後の会社じゃねえし!」
 知里「私もやりたいよぉ~」
 きらら「私でも役に立つの?それでも良いなら」
 杏「今日子先輩がやるなら、私もやります」
 和己「姉貴もやりたいって言うと思うよ。そんな事したら」
 華恋「私、なんでもします!」
 愛奈「仲間にいれてくれますか?」
 まこと「やるに決まってるじゃん」
どうやらみんな、乗り気のようだ。
てか、自分の人生左右するかもしれない決断を、こんな簡単にして良いのか?
 達也「これは、ゲーム部最大のゲーム、マネーゲームだ!」
こうして俺達のゲーム部は、ゲーム部の殻をかぶった小さな会社の卵となった。

まずはゲーム部とは別に、俺達の個人出資サークルを作った。
サークル名は「ドリームダスト」
これだけのバリューネームを使わない手はない。
1日何千の検索数が未だにあるんだ。
で、サークル☆ドリームダストのホームページを作成。
ゲーム部のページよりリンクをはった。
そこにバトルグリードの攻略や、戦術、その他にも色々なゲームの攻略をのせる。
日本一のゲーマー夢の言葉は、ブログにして配信。
本当はチリちゃんのも乗せたかったけど、チリちゃんにはプログラムを中心に担当してもらった。
アフィリエイト会社と契約し、広告ものせる。
そして当面は、全学年のテスト勉強用クイズゲームの作成。
シェアウェアで売り出す為だ。
みんなで問題と答えを作って書き出す。
それをチリちゃんがまとめるだけなら、チリちゃんの負担もかなり減る。
ってか、基本プログラムはできてるので、後は教えてもらえば他のメンバーでも完成系までもっていける。
で、それ以外に、一気に資金を増やすためにチャレンジする活動。
株式投資。
正直学校側が部活動で許可してくれるかが問題だったが、過去の実績や、学校の評判にも良いと言う事で、あっさり許可がおりた。
むしろ積極的に協力してくれた。
会社にする話も、学内ベンチャー企業にしても良いとか言ってくれていたけど、それは断った。
やっぱり自分たちでやりたかったから。
1ヶ月は投資の勉強。
シミュレーション投資を何度も繰り返す。
中心となっているのは、俺とうららと夢と今日子。
一応長く生きてる俺の経験と、うららの軍師の才、夢の勝負強さと、今日子のギャンブラーとしての運。
これだけの面子がそろっていたら、損する気がしなかった。

いつの間にか態勢が整い、期末試験も終了していた。
テストの点数は皆上々。
ゲーム作成の為に、皆勉強を楽しんでやっていたのだから。
そして今日は、俺の誕生日であり、サークル☆ドリームダストの本格始動の日。
みなで騒いでいた。
ここのところ、マネーゲームとは言っても、やっていることは勉強だったので、久しぶりの休養だ。
 夢「今日は私の為に集まってくれてありがとう」
 達也「なんでやねん!俺の誕生日だろうが!」
夢と出会ってからもう1年近くになるけれど、こんな冗談が言えるようになっている事がうれしい。
最初はあまり喋らない、いつも下を向いている子だった。
 まこと「えー!誕生日パーティーはおまけだよ!」
 達也「何を言っておる。そっちがメインだぞ!」
あれからまこちゃんには、色々昔の事を聞いたけど、どれも結局は思い出せていない。
でも、まこちゃんと星崎達也は、今これほどまでに仲良くできているのがうれしい。
 きらら「ケーキは私がきってあげるよ。で、小さいのが達也のね」
 達也「おいおい、普通でかいのだろ?チサマが小さいのくいやがれ」
最初は焦ったよな。
俺が名前を叫んじゃって。
それがきっかけで、俺達は再び仲良くなった。
今では、こいつが困った時は、絶対に駆けつけてやろうと思えるくらいの親友だ。
 知里「それだとお兄ちゃんが、可哀相だよぉ~」
 達也「チリちゃんだけが俺の味方だよ。ありがとう」
俺はチリちゃんの頭をなでる。
いつの間にか俺の義妹になったチリちゃん。
あんな頼りなかった、今にも消えてしまいそうだったチリちゃんが、今では俺達に絶対不可欠な存在だ。
 今日子「うわーー!!知里だけずりぃーーー!!!達也贔屓はいかんぞぉーーーー!!私の頭もナデナデせんかい!!」
 達也「却下!」
五月蠅いだけの奴かと思っていたけど、以外と重要なポジションを占めている。
かもしれない・・・
 杏「だったら私が!」
 華恋「じゃあ私は達也さんの頭を・・・」
 愛奈「何故そこで部長?」
 和己「ふん」
こいつらの事は、まだよくわからないし、本当に俺についてきてくれるかはわからない。
でもみんなそれぞれに良いところが見えてきた。
杏ちゃんは、凄く引っ込み思案で、だから今日子にあこがれて、夢と似たタイプかと思えばそうではなく。
実は金持ちの娘、お嬢様らしくて、結構なんでも万能にこなす。
華恋は、明らかに俺に好意をもってくれているのがわかるけど、男として見てるようでははい。
アイドルの追っかけをしてる感じ?
よくわからないけど、凄く俺に似てる感じがする子だ。
俺が女になったらこんな感じかも。
ちなみにアニメヲタク。
マナは中学の頃と全く性格が違う気がする。
義経の目だったからそう見えただけかもしれないけど、今日子の影響だろう事は一目瞭然。
中学からゲーム部だったから、プログラムもかなりできる。
今ではチリちゃんの助手みたいだ。
和己君は、美鈴の男版。
才能だけなら美鈴以上かもしれないと思うくらい。
ただ、努力はあまりしないんだよな。
 うらら「どうしたの?ぼーっとして?」
 達也「ああ、ちょっと考え事」
 うらら「ふーん。何を考えてたのかな?」
 達也「いや、よくこれだけの人材が集まったなって思って」
 うらら「本当はみんな、色々な才能を持っているのかもよ」
 達也「そうだな」
確かにそうだ。
うららがこんな子だった事は、それは驚きだ。
初めて会った時は大人しかったし、理数系教科以外は勉強もあまり出来なかった。
ちょっと見た目が俺好みの女の子。
それだけだったんだ。
それから少しずつ見えてくる。
きららと入れ替わってテストを受けたりして、大胆な子だとわかった。
一緒に何かをすると、凄く息の合う子だとわかった。
戦国時代に男として生まれていたら、きっと歴史に名を残していたであろう知力。
ドリームダストに勝ったのは、未だに俺達だけだ。
俺はひとり、皆が騒ぐ部室から出た。
うららには、「ちょっとひとりで、外の空気すってくる」そう言って。
俺は人がいない、校舎裏側の中庭に来ていた。
一番奥のベンチに座る。
太陽の光が暑い。
昨日梅雨明け宣言が出て、一気に気温が上がっている。
35度は軽く超えていそうだ。
俺は目を瞑って考える。
俺が星崎達也になった訳。
もうすぐ結論がでそうだ。
俺が生まれ変わった事に、何か意味があるのなら、その意味に関係する人物には、全て会ったような気がする。
えっちゃんから始まって、舞、きららとうらら、チリちゃんに美鈴、新垣さん。
由希と夢に会って、今日子と会って、マナと再会して。
他にもいるような気がするけど、今は名前が浮かばない。
そして結論だけど、俺はおそらく舞だと思っている。
全ては舞なんだ。
15年くらい前、俺が舞を偶然助けた時、赤い糸が引き合っていたのだ。
舞との約束の言葉。
ずっと俺が守ってやる。
プロポーズの言葉と言っても違和感がない。
ただ、兄妹だから忘れようとしていたんだ。
誰かと付き合っても、誰かとキスしても、誰かを抱いても、俺はいつも罪悪感を持っていた。
違うと思いながら、俺は相手の気持ちにながされた、自分の気持ちにながされた。
舞はきっと、その約束を信じて、今でも待ってくれている気がする。
それに舞だと納得できるのだ。
全てに。
好きだし、愛しているし、恋してもいると思う。
信頼しあえて、信じあえて、助け合える。
最初の約束も舞だ。
積み重ねもあるし、ダメな事も許し合える。
そして一番の理由は、俺が生まれ変わった事だ。
兄のままだと結婚できなかったが、今俺は義経ではなく、星崎達也なんだ。
結婚だってできる。
これが俺の結論。
ピースのほぼ全てが埋まって出した結論だ。
おそらくこれで正解なのだろうと思う。
確信もある。
俺が言うまで、絶対に舞は待っててくれる。
卒業したら、プロポーズする。
俺は決めていた。
【<┃】 【┃┃】 【┃>】
ドクダミ

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