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第四十話 地下世界へ

「さあ地下世界へ行く為の入り口を探すぞぉ~」
シュウカはいつものシュウカへと戻っていた。
何としても早急に地下に残る天皇を地上へと連れてきて、シュウカは今の状態から解放されたかった。
とは言えその前にエルフとのルール作りなどやらなければならない事もあった。
今しばらくは解放されそうになかった。
「とりあえず俺は魔界への扉を閉じに行く。シュウカはムサシやヒサヨシ、或いは各地方の領主を集めて、エルフたちとルール作りに頑張ってくれ」
「はぁ~‥‥めんどくせぇなぁ~‥‥」
そういうシュウカの言葉も、今ではみんな口だけだと理解していた。
「シャオ、ナディアは呼ばなくて大丈夫?」
扉を閉じるのにどれくらいの魔力が必要なのか、どのくらいの時間がかかるのかは分からなかった。
シャオは一度ナディアの魔法を見て『自分もできる』と判断してはいたが、実際扉を閉じた事もない。
アイはその辺りも気になってはいたが、シャオは全く心配していなかった。
「大丈夫だろ。いざとなればエルフたちに協力を求めよう。きっと力になってくれるさ」
尤もな話で、魔界の扉を閉めるべきだと考えるのは、別にシャオたちだけではない。
エルフたちもまた、既にそう考えていた。

次の日、シャオとアイはエルファンの案内により、エルフの島に来ていた。
ドラゴンに乗ってやってきたシャオたちを見て、人間と仲良くすることに不満を持っていた者たちも心が揺らいでいた。
それほどドラゴンという存在は大きかった。
そして島に着いた後ドラゴンが、ナイフへと姿を変えるのを見て、エルフたちは驚きを隠せなかった。
少なくとも、『人間にもエルフ以上の者が存在し得る』という事実を受け入れるしかなかった。
中には、むしろシャオに学ぼうとする者も現れ、シャオがこれから行う『魔界の扉を閉める魔法』を見ようと多数が同行する事となった。
エルフの島の周りには、6つの島が綺麗に六角形になるように在る。
0時の方向、2時の方向、4時の方向、6時の方向、8時の方向10時の方向だ。
シャオたちはまず、0時の方向にある島へと向かった。
この島は6つの島の中では最も小さく、エルフも住んでいない。
魔界の扉が存在する山の頂上からは、島全体が軽く見渡せるほどだ。
此処を最初に選んだのは、万一失敗した時の為である。
しかし、そんな心配をする必要は全く無かった。
シャオはナディアの魔法を見様見真似でアッサリとやってのけた。
しかも圧倒的にスムーズで早かった。
「もう終わったの?」
「ああ。思ったより簡単だったな。南の大陸にあったのは門だったし大きかったが、こちらは扉で小さい。これならアイでも余裕でできるんじゃないか?」
シャオがそう言うと、集まっていたエルフたちが、残りは自分たちでやりたいと言い出した。
次に向かった10時方向の島でエルフたちに任せてみると、シャオほど早くはできなかったものの、4人でしっかりと扉を閉じる事に成功した。
これなら大丈夫だとシャオは判断し、残りはエルフたちに任せて中央のエルフの島で結果報告だけ待つ事にした。
5時間ほどシャオとアイは、エルフたちと食事をしたり話をしたりして時を過ごした。
シャオとアイの魔力はエルフから見ても強大であり、集まるエルフは皆敬意を持ってシャオとアイに接していた。
もちろん良く思わないエルフもまだまだいるが、この日だけでもかなりのエルフが人間に対する見方を変えざるを得なかった。

この日無事に、6つの扉は閉められた。
シャオとアイはドラゴンに乗り、上空から最終確認だけして、南の大陸へ向かった。
一応南の大陸にある魔界の門も確認する為だった。
しかしこのわずかな時間が、この先の運命を変える事になったかもしれない。
この時トキョウで大きな地震があったが、シャオたちに知る由も無かった。

シャオたちは、南の大陸で門を確認した後、アルテミスに寄ってナディアに会っていた。
そこでシャオたちは初めてトキョウの大地震の話を聞かされた。
「トキョウで大きな地震があったみたいだよ。死者は出ていないし、被害もそれほど大きくはなかったみたいだけど、ちょっと心配だね」
ナディアの所には、通信魔法によって情報がすぐに伝えられるようになっていた。
エルフたちと共に生きる地球にする為に、直ぐに情報をやり取りできるようにしたかった。
そんな話をエルフにしたところ、こういう便利な魔法があるという事を教えられ、正に今朝設置が完了したばかりの魔法システムだった。
「それは心配だな。でもその通信魔法では大丈夫だって言ってたんだろ?」
「そうだね。特に深刻そうでもなくて『結構大きい地震だったよ!でも全然ヘーキ!』とかアサミは言ってたから、問題は全くなさそうだけどね」
「だったら大丈夫ね。どうせこれからトキョウに戻るし、連絡は必要ないかな」
ナディアの口ぶりからも大した事は無さそうだし、アイも特に心配している様子はなかったので、結局トキョウへ改めて連絡をする事はなかった。
ただこの時トキョウで起こっていた事を考えると、連絡を入れた方が良かったかもしれない。
この時トキョウでは、地震によって地下世界への入り口が見つかっていた。
地下からの爆風のようなものにより、隠されていた入口が現れていたのだ。
シャオとアイがアルテミスを発った直後、トキョウではシュウカとアサリが、エルファンとエルフィンを連れて地下世界へ向けて出発していた。

シャオたちがトキョウに戻ったのは、それから2日後だった。
そこでシュウカとアサリがエルフ2人を連れて地下世界へ行った事を聞かされた。
「地下世界へ出発してから既に2日か‥‥」
「どうなんだろう。向こうにも町があって普通に暮らせるわけだから、ゆっくりしているのかもしれないし。でもすぐに戻ってくるって言ってたから心配だよね」
アサミの話だと、シュウカはすぐに戻ると言っていたらしい。
ただ、2日が経過しているのをどう判断していいかシャオには分からなかった。
「地下世界に行くまでにどれくらいの時間がかかるのか、どの程度の広さがあるのか全く分からないからな」
「だったら私たちも行ってみるしかないよね」
アイの言う通り、分からない以上行ってみるしかなかった。
「じゃあ私も行きたい!」
アサミが手を上げた。
「アサミ待ってくれや。俺らには俺らの仕事があるやろ。エルフとのルール作り、世界の管理体制構築、通信魔法で世界中の町への連絡、仕事は山ほどあるんや‥‥うう‥‥なんでこんな事に‥‥」
ムサシの言葉に、流石のアサミも諦めるしかなかった。
「もうすぐヒサヨシとか妖精連中も来てくれるし、まずは仕事終わらせよな‥‥」
「うん。ごめんねムサシ。もう我がまま言わない」
2人の世界を作るムサシとアサミを置いて、シャオとアイは静かに部屋を出た。
「シュータ先生、案内してもらってもいいですか?」
「アイ殿、私はもう先生ではないですぞ。それにアイ殿は既に私を超えている」
「アイ殿は止めてください。私はもう国王の娘でもなんでもないんですよ」
「た、確かにそうだが‥‥言い慣れたものはなかなか変えられませんな」
「ですね、先生!」
とりあえずアイとシュータの間で、呼び方の合意はできたようだった。

シュータに案内された先、そこは神木近くの森の中だった。
シャオが初めてこの地に来た時に作ったクレーター、正にその場所だった。
クレーターによって掘られた所から、更に地面の中に入口はあった。
「そういえばシャオ殿が初めてこの地に来た場所でしたな」
シュータは、かなり前からシャオの事も、『シャオくん』ではなく『シャオ殿』と呼んでいた。
でもそんな事を気にするシャオでは無かった。
「俺が此処に落ちたのも意味があったんだな。もしもここ以外に落ちていたら、この入口は発見されていなかったかもしれない」
誰の目から見ても、これだけ地面が掘られていたから、何かの拍子に入口が現れたといった感じだった。
「それにしても、かなりの地震だったんでしょ。中はかなり酷い事になっているんじゃないかな」
中では大きな爆発か何かが起こったのではないかと予想できた。
「シュウカ殿曰く、昔の技術で作られた機械なんかが爆発すれば、これくらいの事は起こり得るらしい。だからそれほど心配はいらないとか言ってたんだが‥‥」
むしろ余計に心配だった。
「とりあえず行ってみるしかないだろうな」
「うん。やっぱり心配だしね」
シュウカはクレータになっている所を滑るように下りて行った。
アイもそれに続いた。
そしてそれにシュータも続こうとしたが、アイに一言止められた。
「じゃあ先生!行ってきます!」
「あ、ああ‥‥」
シュータは自分も行くものだと思っていたようで少し寂しそうな表情をしたが、シャオもアイも気が付かなかった。
シャオは穴に入る所でライトの魔法を発動した。
シャオの頭の上やや前方に、光の玉が浮かび穴の中を照らした。
穴は四十五度くらいの角度で斜めに伸びていた。
シャオは迷わずその穴を下りていく。
アイも後に続いた。
「どうやら階段が土砂に埋もれているみたいだな」
「うん。所々に見えるもんね」
階段は終わりが見えないくらいに続いているようだった。
真っすぐ永遠に続くと思われた階段は、ある所で方向が変わっていた。
そこには土砂が積もっており、かろうじて人が通れるくらいの穴があけられていた。
「これはシュウカたちが空けた穴だろうな」
「掘られた土砂がこちらにあるもんね」
シャオたちは穴を通り抜け、再び続く階段を下りていった。
徐々に階段にある土砂は減ってゆき、階段がハッキリと分かるようになってきた。
「そろそろ到着かなぁ?」
「ああ。そろそろだと思う」
階段を下り始めて、三十分は経とうとしていた。
辺りは徐々に、ライトの光が無くても状況が認識できるだけの光が差してきてるようだった。
「地下世界か。真っ暗な世界をイメージしていたけれど、思ったのと違っているみたいだ」
「私もそんな世界を想像してたよ。かなり明るいみたいね」
もうシャオのライトの魔法が必要ないくらい明るくなってきた。
シャオはライトを消した。
出口はもうすぐだった。
シャオは階段を駆け下りた。
それにアイも続いた。
二人はほぼ同時に地下世界へと到着した。
そこには、外の世界とほとんど変わらない世界が広がっていた。
「此処が地下世界?」
「外の世界と変わらないよね‥‥」
シャオたちが下りた階段の先は、とても高い建物の屋上だった。
そこからはこの地下世界が一望できた。
「これは、石碑に書かれている文字と同じだね」
出口の傍らに『地上への出口』と書かれた看板が置かれていた。
「ああ。漢字とひらがなだな」
「へぇ。昔の文字って事?そういえばイニシエでも見たね」
「昔の文字と言えばそうかもしれないが、今はカタカナだけが使われている所が多いってだけで、古い本などを読む時は必要だし、今でも使われている所はあるよ」
「それでシャオは石碑の文字が読めたんだね」
アイは出会った頃の疑問が今になって解消され、暖かい嬉しさに顔を緩ませた。
二人は再び地下世界へと視線を戻した。
右手には大きな木があり、それは天を貫いているようだった。
しかしその木は、既に死んでいるようで、少し枯れかかっていた。
「あれってご神木かな?」
「おそらくそうだろう。もしかしたら地上のと繋がっていたのかもしれない」
「地上のが倒されたから、地下の部分も死んでしまったのかな」
「おそらくは‥‥」
少し悲しい記憶が甦ってきたが、二人とも気が付かないフリをした。
地下世界は本当に外の世界とあまり変わらなかった。
しかしよく見ると、外の世界と明らかに違う所も確認できた。
空には太陽のようなモノが浮かんでいるが、どこか太陽ではない事が分かる。
世界に後ろはなく、左右が岩山のような壁に囲まれていた。
世界は前方へのみ続いていて、その先には町らしきモノが確認できた。
「アレは町だよな」
「うん。でも何かおかしな感じがする」
「行ってみよう」
シャオはサザンを召喚し、背に乗って町らしきものが見える方へと向かった。
そこへ向かう途中、ご神木らしき木の袂に、何か気になる建物を発見した。
「あの建物、なんだろう?」
「他にある建物とは少し違うな。ちょっと見てみるか」
シャオもアイも何故か気になったので、その建物を調べてみる事にした。
中には古の技術で作られたであろうモノが色々とあった。
正直二人にはそれが何かは分からなかった。
「入ったは良いけど、何も分からないな」
「うん。でも何か気になるよね」
気になった二人は更に奥へと入っていった。
「この部屋も、特に何もないかな。いや‥‥」
「何か感じるよね。神木から感じたような何か魔力のようなものが‥‥」
テーブルを見ると、そこには一冊のノートと、カプセルが置かれてあった。
シャオはノートを、アイはカプセルを手にとった。
シャオはパラパラとページをめくった。
「これ、中に何か種のようなものが入ってる。魔力のような何かはこの種から伝わって来てるよ」
「ああ。それはどうやら神木の種だな。魔法研究によって生み出された木のようだ」
此処はかつて、魔法の研究が行われていた建物だった。
その中で、魔法により食料を手軽に確保する為、植物の成長に関する研究もしていた。
そこで偶々できたのが、この木の種だったという事がノートに書かれていた。
「この種、持って帰って植えれば、もしかしてご神木が生えてくるかも」
「そうだな。地上に戻ったら植えてみるか」
先ほど沈んだ気分が、今少し晴れた気がした。

二人は建物から出ると、再び町らしき所へ向かった。
近づくにつれ見えてきたものは、外の世界とは違う、なんとも冷たい感じのする町だった。
「少しイニシエで見た王宮に似ているか」
「うん。多分同じものだと思う。それが町全てに建っている感じかも」
「それにしても‥‥人が誰もいない?」
そこに町はあっても人の姿が確認できなかった。
生活感もまるでなかった。
「この辺りは長く人が住んでいなかったようだな」
「町が死んでる気がする」
少し寒気がする光景だった。
上空を更に進んでも、人は全く確認できない。
「シュウカさんやアサリちゃんは何処にいるんだろう」
この町の様子を見ていて、アイは不安になってきた。
その時だった。
前方に煙が上がっているのが見えた。
更に爆発音も響いていくる。
誰かがこの先で戦闘をしているように感じられた。
「いくぞサザン!」
シャオはサザンを急がせた。
直ぐにその現場へと到着した。
そこで見たモノは、シュウカたちと地下の住人らしき人々、そして敵と思われる黒い肌をしたエルフのような者たちだった。
「エルフ?じゃないよね‥‥」
「とにかく助けるぞ!」
アイはマジックシールドを展開し、シュウカたちと敵の間に移動させた。
シャオはプリズムを発動し、敵と思われる肌の黒いエルフの魔法を跳ね返した。
「シャオ?来てくれたのかぁ~」
「アイさん!」
「無事で何よりです!」
シュウカやアサリと一緒にいる人々は、驚きの表情でシャオたちを見上げていた。
シャオはサザンを上空で旋回させた。
黒い肌をしたエルフは上空へ向けて飛んでくる。
「ドラゴンに乗ったヤツからやるぞ」
「魔法は跳ね返されるみたいだ。接近戦で行け!」
剣を持ち近接戦をしかけてきた。
「めんどくせえなぁ‥‥マジックシールド!」
シャオはサザンを包み込むようにシールドを張った。
肌の黒いエルフはそれに阻まれ近づけず、剣でマジックシールドを破壊しようと斬りつけてきた。
「こいつらなかなか強い。ちょっとはダメージ与えないとヤバいか?」
「大丈夫!聖なる結界!」
ようやくアイが敵全員を結界圏内に捉えていた。
直ぐに結界が張られ、肌の黒いエルフの力が衰えた。
「呪縛!そして束縛!」
シャオの魔力によって、肌の黒いエルフたちは全て捕らえられた。
「流石シャオですなぁ~」
「シュウカさんも十分強いですよ」
こうしてシャオとアイは、先に地下世界へと来てたシュウカやアサリたちと合流する事ができた。

サザンから降りたシャオとアイは、とりあえずシュウカに促されるがまま、地下世界で生き残った人達が集まる建物へと案内された。
そこでシュウカたちから現状を聞く事になった。
「で、現状どうなってるんだ?」
「正直俺も他の者たちも、詳しい事は分からないんだけどねぇ~。とにかく俺たちが地下世界へ来たら、さっきのシャオたちのような状況だったわけなのよぉ~」
「つまり、あの肌の黒いエルフと、此処の人たちが戦っている所に出くわしたと?」
「そそ。ちなみにあの肌の黒いエルフの事は、俺達はダークエルフって呼んでるんだけどね」
「私たちエルフとは、肌の色も違いますし、性格もかなり好戦的な気がします」
捕らえたダークエルフたちは、その後も敵意をむき出しにしてどこか異常にも思える所が感じられた。
「なんだか分からないけれどダークエルフに襲われている状況か。だがどうして此処にダークエルフがいるんだ?」
「先日の大きな地震があった後から、この地下世界の奥の方からやってきたとしか分かってないんだよねぇ~」
「そっか‥‥で、この地下世界の人はこれで全部なのか?」
「いや、まだあと10人ほどこの先の町にいるらしい。でも地下世界で生き残っているのはそれで全部かなぁ~」
「たったそれだけなのか‥‥」
シャオは何千何万の人がいると想像していただけに、少し複雑な気持ちになった。
「でもこれだけなら‥‥」
もしもダークエルフが地震によってつながった世界からやってきた者だとするならば、皆を連れ出して出口を塞いでしまうという手もある。
今まだ人が残っているので、それを助けてからという事にはなるが、対応は概ねその方向になるとシャオは考えていた。
「所で目的の天皇には会えたのか」
「まあなぁ~」
シュウカがそう言って見た先には、まだ幼い男の子の姿があった。
「えっと、あの子供が天皇?」
「いや、正確には皇太子、つまり時期天皇って事だな」
「時期天皇?となると今の天皇は?まさかこの先の町に残っている10人ほどの中にいるって事か」
「おそらくはね。生きているかどうかは分からない」
それでシュウカたちは帰ろうにも帰れないと言った所だった。
「お金製造機に関しては、既に設計図を手に入れてますから、こちらは問題ないですよ」
アサリは本らしきものを振って見せた。
地下世界に行く理由は2つあった。
一つは外の世界が安全と確認できたので、天皇をはじめ地下世界の住民たちを外へ連れ出す為。
そしてもう一つは、お金を作る機械を手に入れる為だった。
その内の一つは既に目的が達成されていた。
「となるとこれからする事は、その10人を助け出して地上に戻るって事でいいのか?」
「基本的にはそれで良いと思うんだけどさぁ~‥‥」
「出た後出口を塞いだとしても、いずれあのダークエルフなら地上に出てきそうだよね」
軽く思った事を言っただけのアイの言葉だったが、皆少し懸念している事ではあった。
「それに捕虜にしたダークエルフをどうするのかも考えないといけませんね」
これから先ダークエルフと戦い、10人の生き残りを助けるとして、捕虜はかなりの数になりそうだった。
とてもじゃないけれど、全てを捕虜として拘束し続けるのは難しかった。
するとそこに、この世界の住人の一人が声をかけてきた。
「あの、もしかしてあいつらをとらえて置ければいいのでしょうか?だったらこの先に留置所がありますから、そちらを使ってはいかがでしょうか」
「留置所ねぇ~でもあいつらの魔法だと簡単に抜け出せるんじゃないかなぁ~」
旧人類が住むこの地下世界の留置所となると、魔法が使える者たちをとらえておく事は不可能ではないかとシュウカは思った。
「いえ、流石に魔法の歴史も二千年を超えていますから、それくらいの対応はとっくになされていますよ」
「おお!そりゃそうだなぁ~」
シュウカの不安を余所に、この地下世界でもドレインの牢はしっかりと作られていた。
「では捕虜の扱いは任せていいか?」
「はい、では他の者と一緒にそちらに入れておく事にします」
「脱走されたら命の危険もあるから、十分注意してくださいね」
こちら地下世界の住人も魔法は使える。
だけどダークエルフには及ばない。
脱走されれば、殺される可能性は高いと誰もが判断できた。
「それと後は‥‥」
シャオはシュウカが天皇として対応した時の事を思い出した。
なんだか分からないが、シャオは何か大きな力のようなものをあの時感じた。
だから皇太子は絶対に守らなければならないと、何か本能のようなもので確信していた。
「この世界の者に捕虜の扱いは任せよう。ただ皇太子だけは早急に完全な安全を確保しておきたい。アサリとエルフィン。一旦皇太子とその付き人を連れて地上へ戻ってくれないか」
「確かにこのままってのは危険だよな。アサリ、頼めるかぁ~?」
「分かりました。地上へ送り届けたらすぐに戻ってきますね」
そういうアサリは、少し怒っているようにも見えた。
「俺は構わないぜ。ま、この中じゃ俺は大した戦力にもならないからな」
「じゃあ頼む」
「シャオ。となると俺とエルファン、そしてシャオとアイ、この4人で生き残りの10人を助けに行くって事でいいのかぁ~?」
「ああ。まっ、なんとかなるでしょ。一応何人かには付いてきてもらって、捕虜が増えた時の護送役は頼むけどね」
こうしてそれぞれ役割が決まり、シャオたちは動き出した。
【<┃】 【┃┃】 【┃>】
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