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第十四話 南の大陸へ

次の日から訓練は、神木のそばで行われていた。
2週間が過ぎた頃には、ヒサヨシもこの地を訪れ、カンセイの騎士団や魔法部隊も訓練に合流した。
アキラとヒサヨシは今後の相談もして、シャオの南の大陸への出発日も決まった。
シャオがこの地に来て丁度1年の、2007年元旦の日となった。
移動の方法は、大陸間移動魔法。
おそらくこれで行けるはずだ。
シャオの他、アサリとアサミ、それにアイが同行する。
更にはチューレンと、ヒサヨシの部下らしき『チンロウ』という名の少年も同行する事となった。
アイの同行にシャオは反対したが、本人がどうしてもついて行くと言って聞かなかった。
チンロウは、見た目はアサリやアサミよりも更に幼く見えたが、剣の腕は強くなったシュータを凌ぐものだった。
ただこのチンロウも、チューレンやタァスーシ同様、何処か存在感の薄い存在であった。
シャオはこのメンバーに、大陸間移動魔法について教えた。
正確にはチューレンとチンロウ以外に。
ヒサヨシ曰く、2人には大陸間移動魔法はとにかく使えないという事だった。
だからチューレンはシャオが、チンロウはアイが背負って行く事になっていた。
大陸間移動魔法の発動方法は実に簡単だった。
基本的には、強大な魔力を持つ者なら誰でも簡単に使えるものだった。
ただ試す事はできないので、使うのはぶっつけ本番になる。
そして強大な魔力が必要である事から、シャオたちは日々自分の魔力を高める毎日だった。
もしも足りないような事にでもなれば、シャオがこの地へ来た時のように、魔力が回復しづらい可能性も考えられた。
神木の傍での特訓は続いた。
その間東の大陸では、ローラシア大国がその領土を広げていた。

月日は流れ、いよいよ南の大陸に渡る日の前日、ローラシア大国が東の大陸を統一したという情報が入ってきていた。
もうこの中央大陸へも戦火が及ぶ日が近づいてきている。
日々入ってくる情報を聞いて、もっと早くに出発する事も考えはしたが、大陸間移動魔法を失敗するわけにはいかないので予定通りの日となった。
それに統一したと言っても、戦後対応もあるだろう。
まだしばらくは時間があると判断できた。
ただ、ここ数週間は黒の霧が濃かった。
それは多くの人の命が失われたという事だ。
それを防げなかった事は、皆残念に思っていた。
「それでは最後の確認をしておこうと思う」
アキラやヒサヨシ、南の大陸に渡る面々皆会議室に集まっていた。
「西の国境はわしの部下に任せてほしい。ゆっても西には特に脅威は無いし、まあ全然大丈夫やけどな」
既に西の国境は、ヒサヨシの部下であるタァスーシが防衛任務についていた。
「で、この地には私とシュータ、それに雄志軍が残る」
「私もね」
アキラやシュータは当然の話だが、ミサもかなりの戦力となるまでに成長していた。
使える魔法は相変わらず、攻撃や回復とは関係がない。
それでもいくつか、ハイレベル魔法を使いこなせるようになっていた。
「それでわしはタイナンを見ておく。東から来る場合、おそらくまずここに来るやろからな。シャオが戻ってくる前に大規模で来られたら逃げるけどな!ははは」
ヒサヨシの冗談は微妙に笑えなかった。
「まあそれよりシャオ、とにかくヴァレンを早よ見つけて連れ帰ってきてくれ。そしたらローラシアと同じテーブルで交渉できるやろ。1日で任務完了!なんて事もあり得るし、頼むで」
ヒサヨシはなれなれしくシャオの肩を叩いた。
シャオは少し複雑な顔で苦笑いしていた。
「でも交渉なんて本当にできるかな。遣いがそのまま殺される可能性もあるぞ。ローランドはそういう奴だ」
シャオの疑問は尤もだった。
そういう噂は皆聞いていた。
「少なくとも殺される心配はあらへんな。チューレンに行かせるから。チューレンはわしが死ねへん限り決して死ねへんねん。正確には1ヶ月もしたら生き返る、そんな感じや」
皆ヒサヨシがいう事が理解できなかった。
説明が足りないと感じたヒサヨシは続けて話した。
「チューレンもタァスーシもチンロウも、みんなわしの召喚した妖精やねん」
そこでシャオだけは納得した。

召喚魔法。
それはアウターゾーンの住人を、こちらの世界に実体化させる魔法。
魔界、精霊界、妖精界など、アウターゾーンには色々と存在する。
魔界というのは人間界とは全く別の所に在る。
この世界からの召喚は比較的難しいとされている。
何故なら魔界は、場所の概念としては下位にあるとされるが、格としては人間界の上位にあるからだ。
魔界人は人間よりも上の位であると自覚しており、人間の呼び出しに応じにくいという事。
精霊界は人間界のすぐ近く、物理的に説明はできないが、すぐそこにあると言える。
だから比較的楽に召喚が可能だ。
ただ魔界と同様に全くの別世界であるから、魔力の発動が行われている間だけしか人間界に存在する事はできない。
術者の魔法が終了した時点で、或いは術者か精霊本人が死んだ時に元の場所に帰る事になる。
妖精界は人間界と全てを共有しており、同じ世界と言っても過言ではない。
しかし妖精界からの召喚はかなり難しい。
時間軸と呼ばれるものが全く別で、人間と妖精は互いに干渉はできない。
見る事も出来ない。
でも共存はしている。
時々時間軸が交わる事があって、『妖精を見た』という報告はあるが、それは極稀だ。
そして別の時間軸に行った時に起こった事は、元の時間軸ではそれは無かった事となる。
つまり人間界で死んだ妖精は、妖精界では無かった事になるわけで、元の世界に戻れば生き返るというわけだ。
ただし人間界で死んだ妖精が元の妖精界に戻るには時間がかかる。
それがほぼ1ヶ月という時間なのだ。
ちなみに妖精は、一度召喚してしまえばその後維持する為の魔力も何も必要がない。
元々同じ所にいるからだ。
それでも妖精本人に歪が生まれてしまうので、1年以上人間界には存在できない。
それ以上いると、別の何かに生まれ変わってしまう可能性がある。
故にヒサヨシは、時々妖精たちを妖精界へ戻しては、再び召喚するという事を繰り返していた。

ヒサヨシの説明を聞いて、みんな分かったような分からなかったような、微妙な表情をしていた。
それでもとりあえず、チューレンたちが妖精であるという事で納得した。
その後ローラシアにどう対応するか色々と話し合われたが、結局やってみなければ分からないという事で話は終わった。
それに今は、まずはとにかくヴァレンと南の大陸を味方につける。
全てはそれからだった。

話し合いが終わった後、会議室にてアイとシャオの誕生日パーティーが行われた。
アイの誕生日は本日4月91日であり、シャオの誕生日は明日の元旦であった。
2人は今日明日で13歳になる。
戦争が迫る今の状況を忘れ、みんなで大いに騒いだ。
そしていよいよ、南の大陸に旅立つ日がやって来た。

朝から神木の前に、面々は集まっていた。
準備は万全。
おそらく何も問題はないだろう。
ただ1つあえて言うなら、アサミが大陸間移動魔法を使えるかどうかが不安だった。
大陸間移動魔法は、魔力が一定以上開放された時に発動する事ができる。
その人自身がどれだけの魔力を持っているのかが大きく影響する魔法だ。
シャオが初めてこの魔法を使った時の魔力を基準にすると、アイとアサリは既にその域を超えているので問題なかった。
ただアサミだけは、普段黒魔法を使っている事もあって、アサリたちと比べても持っている魔力量が少し小さい。
その辺りだけが気になっていた。
予定を早めなかったのも、これが一番の原因だった。
「シャオ君、よろしくたのむ」
そういうアキラの言葉。
シャオは、ヴァレンの事よりもアイの事だと受け止め頷いた。
「うんじゃま、行ってくるわ」
そう言ってシャオは、チューレンと自分を魔法のローブで縛る。
同じようにアイもチンロウと自分を結んだ。
魔法のロープは、術者の魔力によりその強度が決まる。
解除(切る)にはそれ以上の魔力があれば可能だが、魔力無しで切るのはかなり難しい。
まず切れる事はないだろう。
準備は整った。
「お父さん、行って来るね」
アイの笑顔に、アキラは黙って頷いた。
「アイもみんなもしっかりねー!」
ミサは、旅行に出かける友人を見送る感じで手を振った。
「行くぞ!」
シャオの声を受けて、各々魔力を解放し始めた。
それぞれの体を白のオーラが包む。
皆手を合わせ、南の大陸へ行く事だけを頭にうかべる。
更に白のオーラが大きくなる。
その瞬間、まずはシャオの姿がその場から消えた。
正確に言うなら、超高速でその場から空へと舞い上がった。
次にアイとアサリがほぼ同時にその姿を消す。
後はアサミだけだ。
みんな少し心配する。
しかしすぐに、問題なくその姿が目の前から消えた。
4つの光の塊が、海の上を飛んでいた。
そのスピードは、飛翔の魔法などくらべものにならないくらいに速い。
それでもGがかかったりすることはなく、息苦しくもなかった。
ほどなくして南の大陸が見えてくる。
それを視界に捉えた後すぐ降下が始まり、4つの光の塊は南の大陸の北端にある草原に突き刺さった。
爆発音が響く。
砂煙が上がる。
草原には4つのクレーターができていた。
その中心部分には、何事もなかったようにそれぞれが立っていた。
「ついたの?」
アイには少し疲労感もあったが、表情からはそれよりも驚きが勝っているように見えた。
「そのようですわね。それにしても凄いです」
「はぁー‥‥疲れたー!」
アサリに疲れはなさそうだったが、アサミはかなり疲労しているようでその場にしゃがみこんだ。
「アサミ、大丈夫か?」
シャオは魔法のロープを解除しながらアサミを気遣った。
アイも魔法のロープを解除しチンロウを降ろした。
「うん。大丈夫だけど魔力がほとんど残ってないかもー‥‥」
無理して笑顔を作るアサミにアイも駆け寄って行った。
その足取りは少し重いようだった。

トキョウで見送った面々は、しばらく空を見上げていた。
(さて、無事に見つかればええけど、なんか嫌な予感もするなぁ)
ヒサヨシは言葉に出さず、少し心配そうな顔で空を見上げ続けた。

しばらく草原で休憩していたシャオたちは、アサミの状態が少し回復したのを確認してから、シャオの記憶を頼りに神木のあった場所へと向かった。
神木は巨大で、それはすぐに見つかった。
ただ、シャオは以前と何かが違うと感じていた。
(人がいない‥‥そしてなんだこの気配は。禍々しい魔力を感じる‥‥)
シャオはアイたちに警戒するよう促し神木を目指した。
間もなく町に入った。
そこで一同驚愕した。
町は破壊され、既に腐敗し始めている死体がそこいらじゅうにあった。
「うっ‥‥」
「これは‥‥」
「酷い‥‥」
アサミもアサリもアイも、冷静にその光景を見る事はできなかった。
それはチャイルドの町の惨状を思い起こさせる光景だった。
いや、人の死体が形として残っている分更に酷く感じられた。
「とりあえず行きましょう」
その中でもチューレンは冷静だった。
表情もいつもと変わらなかった。
チューレンに促されるままに一同は、少し町の中を進み、直ぐに神木の傍までたどり着いた。
まだ生きている人には出会えていない。
そしてここでも一同は驚いた。
「何これ?‥‥」
アイの視線の先には、深く傷ついた神木があった。
その傷から、まるで神木が泣いているように、白い樹液が流れ出ていた。
神木はかろうじて生きている、そんな感じだった。
「もしも神木が死んでいたら、俺たちは此処に来られなかったかもしれない。ギリギリ間に合ったって所か」
おそらくシャオのいう通りだったのだろうと皆思った。
大陸間移動魔法の移動先として機能しているであろう神木。
もしそれが枯れていたから、正直何処に飛んでいたのだろうか分からない。
最悪先は東の大陸であったかもしれない。
シャオはギリギリ助かったのだと思った。

しばらくそこに立ち尽くしていた面々だったが、その後生きた人を探す為に歩き出した。
しかし何処を歩いても生きた人に出会う事はない。
ただ同じような光景、状況がそこにあるだけだった。
町の全てを見て回るまでに、さほど時間はかからなかった。
とりあえず皆は、シャオが住んでいた場所へ向かった。
そこには昔のままだが、何年か放置していた分古びた感じの家が残っていた。
何か魔法で守られていたのだろうか、シャオの家だけは無傷だった。
「とりあえず今日は此処で休もう」
シャオはそう言うと、魔法でロックされているドアに手をかざす。
直ぐに解錠されドアが開いた。
中も昔のまま、シャオの魔法によって守られていた。
「まだ日は高いが、全ては明日だ。とりあえず魔力を回復しないと」
そう言いながらシャオは中に入り、皆に入るよう促した。
流石に疲れていたのだろう。
椅子に腰掛けたアサミは、そのまますぐに眠りについた。

夜になると部屋の中は少し寒く、シャオは暖炉に火球を灯した。
皆無言で、ただ食事をとっていた。
食料は1週間分くらいは持ってきている。
とは言え簡単な保存食だから味気はなかった。
そんな中、チューレンがシャオに訊ねた。
「ここはシャオ様の家ですよね。生活感がまるで無いようですが、ご両親はどちらにお住まいだったのでしょうか」
ただ両親を探さなくていいのか、そんな気持ちで発した言葉だった。
それに対してシャオは、少しためらいがちにこたえた。
「俺が此処を発つ前に死んだ。いや‥‥俺が殺した」
「‥‥」
皆が驚いた様子だった。
それを見てから、シャオは更に続けた。
「両親は俺を殺そうとした。俺はその時、世界統一が悪い事だなんて思わなかったし、その為なら人を殺す事も当然だと考えていた。そんな俺を、おそらく両親は危険だと思ったんだろうな。あの頃の俺は強大な魔力を手にして増長していたし、今思うと両親の対応は当然だったかもしれない。そんな両親を俺は殺し、此処にはいられなくなった。だからすぐに東の大陸に渡った。その後は皆が知る通りだな」
シャオを責める者は誰もいなかった。
逆にアイは同情していた。
「親に殺されそうになるなんて‥‥可哀想‥‥」
アイの目には涙があふれていた。
「そうですか‥‥では、明日からどうしますか?」
皆が何とも言えない雰囲気の中であっても、チューレンは変わらない対応だった。
「町を見て回って気が付いた事がある。倒れていた人々についた傷、そして破壊された家々。あれはおそらく魔獣の仕業だな」
「魔獣?話によれば、町には入ってこられないんじゃなかったの?それに魔獣ってよく分かんなーい」
アサミの言う事は尤もだった。
魔獣は今までアルテミスの町には入って来た事がないと聞いていた。
そしてその魔獣がどういったものなのか、皆は知らなかった。
「魔獣ってのは魔界の住人の事だ。普通は召喚する事でこの人間界に実体化する。しかし何故かこの大陸にはそれが存在した。どこかに魔界とつなぐ門が存在するのかもしれない。それでも今までは町に入ってくる事は無かったな。その理由については俺にも分からない」
見た事もない魔獣を想像するのは難しく、シャオの説明でハッキリと理解できる者はいなかった。
「とりあえず、魔獣に注意する必要があるという事ですね」
チューレンの言葉に皆が頷いた。
「この家にいる間は大丈夫そうだけどな。一応無傷で残っていたし。でも油断はできないし、一応俺が警戒はしておくから、みんなはしっかりと休んでくれ」
「でもそれだとシャオが休めないよ」
「大丈夫だ。俺ももちろんちゃんと寝る。結界を張って侵入者を感知できるようにしておくだけだよ」
アイの心配も尤もだが、シャオにはまだまだ計り知れない力があった。
話した所で理解できないくらい、世界一と言われた魔法使いは能力が規格外だった。
皆はシャオに任せる事にした。
食事が終わり、皆適当な場所で横になった。
この人数では少々狭い家だったが、それでも外で寝るより遥かに良い。
魔獣が何時襲ってくるかも知れない中でも、皆安心して眠る事ができた。

皆が眠る中、暖炉にある火球だけがユラユラと揺れていた。
とても静かな夜だ。
全てが止まっているかのような、そんな夜。
それでもゆっくりと時間は流れる。
皆の呼吸する音だけが聞こえる部屋の中。
静かな夜の時を刻む。
そして、少し外の景色が闇から解放され始めたそんな時だった。
外からこの世のモノとは思えない、人の叫び声が聞こえた。
「がぎゃーーーー!」
部屋の空気は一変する。
シャオはすぐに起き上がった。
アイとアサミも続く。
チューレンとチンロウは既に立ち上がっていた。
アサリは眠い目をこすりながら最後に起き上がった。
「外だな。見てくる!」
シャオは立ち上がるとすぐに部屋を出た。
「私も!」
アイも続いた。
シャオは止めようと思ったが、一つ頷いて声のした方へと走りだした。
アイの後ろにもアサミとチューレンが続いていた。
アサリはまだ寝ぼけているようで、部屋で目をこすっていた。
そんなアサリを見て、チンロウは此処に残る事にした。
(しゃーないなぁ。おいらもここに残るか)

シャオたちはすぐに叫び声のあった場所までたどり着いた。
そこには何人かの逃げ惑う人と、3体の魔獣がいた。
シャオはすぐさまマジックミサイルで魔獣を攻撃する。
その全てが命中していたが、魔獣にダメージは見てとれなかった。
「この程度じゃダメか」
魔獣たちはシャオの方を見た。
逃げて来た人たちは、シャオを追い越しアイの所までやってきた。
「大丈夫ですか?」
「君たちも早く逃げないと‥‥」
逃げて来た人たちは、アイたちの余裕を見てか、それともシャオの魔力に気づいてか、そこまで言ってからその場で足を止めた。
「とりあえず、少し後ろに下がっておいてください」
アイは逃げて来た人たちにそう言うと、シャオと共に魔獣に向かい合った。
シャオとアサミは同時に黒の魔力を高める。
周りの草木から魔力が集まってくる。
アイも自身の魔力を高めた。
同じように魔獣も魔力を高めているようだった。
「確かあの魔獣は、狼魔獣だ。おそらく魔法は無い。手の爪に警戒しろ!」
シャオが言い終わるかという所で、狼魔獣は襲い掛かって来た。
そのスピードはかなり速い。
アイが素早く魔法障壁を展開する。
狼魔獣はその魔法障壁にぶつかり体勢を崩す。
そこにシャオとアサミが、ファイヤーボールの上位魔法であるメガメテオを放った。
火球が直撃する。
炎に包まれた狼魔獣は悶絶した。
別の狼魔獣がシャオへと襲い掛かった。
素早くマジックシールドを展開。
狼魔獣の進行を阻む。
別の狼魔獣がアサミに爪で斬りかかる。
「アサミ!」
シャオはエネルギーブラストをそちらの狼魔獣へと放った。
(外したか!)
「大丈夫です」
アサミの前に出たチューレンが、剣で狼魔獣の攻撃を受け止めた。
そして返す刃で狼魔獣を斬りつける。
狼魔獣を吹き飛ばす事はできたものの、傷は負っていないようだった。
「魔獣は物理攻撃に強い!魔法か特殊武器でないとダメだ!」
そう言いながらもシャオは目の前の狼魔獣に再びメガメテオをぶつけた。
狼魔獣は炎に包まれ、その場に倒れた。
「あと1体!」
吹き飛ばされていた狼魔獣が立ち上がる所に、アサミとアイのエネルギーブラストが放たれる。
白と黒の魔力が1つになり、狼魔獣にぶつかって大爆発を起こした。
「ふぅ。ちょっと苦戦?」
目の前に倒れる3体の狼魔獣を見て、シャオは息を吐いた。
「こんなのがいるなんて‥‥ちょっとヤバくない?」
アイも少し息が荒くなっていた。

逃げて来た人はどうやら4人。
その内1人はさきほど狼魔獣にやられたようだった。
話を聞こうとしている所へ、アサリとチンロウもやってきた。
「で、いったいこの町はどうなっているんだ?」
そうシャオは聞いた。
しかし相手の男性はシャオの顔をマジマジと見た後、逆に質問を返してきた。
「シャナクル‥‥か?」
聞かれてシャオも気が付いた。
「あっ!ナディアのおっちゃん‥‥」
「ああ、ナックルだ。しかし君が‥‥何故ここに‥‥戦争で死んだとヴァレンさんから聞いていたのだが‥‥」
よく見ると、3人はシャオの知った顔ぶれだった。
当たり前と言えば当たり前。
シャオはこの地で10年近く過ごしてきたのだ。
小さな町。
町というよりも村といった方があっている。
そんな狭い町なのだから、顔見知りでも当然だった。
「とりえずゆっくりと話が聞きたい。俺の家に来てもらえるか?」
「ああ」
ナックルの返事を受けて、皆でシャオの家へと向かった。

ナックルの話を聞く所によると、1週間ほど前。
東の大陸が統一される間近の事だった。
「弟子であるシャナクルのまいた種は、わしが処理せにゃならんじゃろ」
ナックルの、今は亡き妻の父であるヴァレンは、そう言ってローラシア大国を止める為、東の大陸に渡ったという話だった。
【<┃】 【┃┃】 【┃>】
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