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蟻の巣ダンジョンに残されたもの

何かを秘密にされた時、それはそういう『約束』であると考える人は多いかもしれない。
でも大抵はそうした方が良いと考えてか、或いは自分の名誉の為に秘密にする事がほとんどではないだろうか。
その昔世界では思想の自由すら否定された時代もあったけれど、今ならそれは当然の権利と言える。
そしてもちろん言論の自由や表現の自由も当然の権利なのだ。
ただ言論や表現は、それに責任が伴う以上本当の自由とは行かない。
人は言論の自由を行使せず、多くの事を内緒にして生きている。
しかし誰にも聞かれない。
誰が言ったか分からない。
或いは誰にも話さないという『約束』によって話せるようになるのだから不思議だよね。
言論の自由を制限する事で言論の自由が生まれるのだから。
尤も、『内緒の約束』によって聞いた話を『内緒の約束』によって平気で話す人は、全てにおいて信用されなくなるんだけどさ。
人としても、その話す内容も‥‥。

ギルドマスター鬼丸は、二十年ほど前の事をつい最近の出来事のように話してくれた。
その日北都尚成を連れて、ライガー&バニーという旅の冒険者がやってきた。
ライガー&バニーは、若い男女二人のパーティーだった。
それが子供を連れての旅だから、正直最初に会った時は何かの冗談かと思ったらしい。
男の名前は|龍善獅虎《りゅうぜんしとら》で、女の名前は|兎束姫香《とつかひめか》。
後に鬼丸がギルドマスターになった時にその名前を知ったようだ。
つか兎束姫香の名前が兎束想香に似ているのは偶然か?
それとも何か繋がりがあるのかは分からない。
名字の読み方も違うし全く関係がない可能性も高いけれど、俺にはなんとなく関係があるのではないかと思えた。
そんな二人に連れられていたのが北都尚成だった。
その三人は当時の冒険者ギルドで、町の雰囲気がとても悪い事について聞いてきたらしい。
その辺りは鬼丸もあくまで聞いた話として話してくれた。
当時アリの町では、人間とオーガとの間で問題が起こっていた。
オーガは気性が激しく、人間よりも全ての能力に優れている。
しかも角が生えていて、人間はオーガを恐れていたそうだ。
その恐れと、オーガが自分たちを自ら特別視する事で、人間はオーガを差別するようになっていた。
そこに数対力の争いが起こっていたのである。
町は負の感情が充満し、当時の雰囲気は最悪だった。
そこでライガー&バニーと尚成は、こんな事を言ってきたそうだ。
『体の大きな強い人間は存在する。でもそういう人は別に差別の対象にはなっていない。つまりオーガを恐れるのは角があるからなんだよね?だったらその角を切って人間になったオーガとなら仲良くできるんじゃない?』
最初は単なる子供の戯言、笑い話程度に受け取られていた。
でももしも『オーガがそれをしたなら仲良くする』という言質を頑なに取ろうとしてきたとか。
その意気に負け、ギルドは領主に話を通し尚成たちとの約束に応じた。
尤もそんな事はできないだろうと誰もが思っていたらしい。
そんなライガー&バニーと尚成は、今度は当時のオーガ側の権力者を訪ねた。
その場には、今では人間となっている鬼丸もいた。
そこでライガー&バニーの獅虎は言った。
『この子供がお前たち相手に戦って勝ったら、全員角を切って人間になれ!そしてこの町で人間として人間と仲良く暮らすんだ!』
正直最初は何を馬鹿な事を言っているんだと思ったそうだ。
六歳から七歳くらいの子供が、屈強なオーガと戦いになる訳がない。
馬鹿にするにも程があると誰もが思った。
しかしやってみたらオーガ全員がかりでも尚成には勝てなかった。
しかもオーガに死者が出ないように手を抜いて、更に怪我をした者たちは後で回復までしてもらった。
完璧な手も足もでない敗北だった。
それが恥ずかしかったので、あまりこの件については話したくなかったのだそうだ。
それに尚成とも約束をしていた。
『私は強い事をあまり知られたくないんだ。だからできれば人間との話し合いで角を切る事になったという風にしておいてくれ』
今はもう北都尚成もいないし、少しだけなら話す事もあるらしいけれど、子供に戦いで負けたというのはやはり言いたくなかったとか。
ここまで話したのは俺が初めてだという事だった。
なるほどね。
大抵秘密の事ってのは、自分の為に秘密にするんだよな。
それにしても、俺がもしも北都尚成としてこの世界に来ていたとしたら、これは十分ありえるエピソードだと感じる。
いやむしろ聞かされて、そうだそうだと思い出した気分にもなっているよ。
実際は後から得た記憶なんだけれど、昔夢の中でそんな事があったようなそんな感じだ。
「話してくれてありがとう。何も思い出せはしなかったけれど、しっくりとくる話だった」
「そうか。まあ今となっては負けたのが英雄北都尚成だから、負けて恥ずかしがる気持ちももうないんだけどね」
こうして俺は北都尚成について、新しい情報を手に入れたのだった。
しかし北都尚成よりも、ライガー&バニーの兎束姫香が気になるよな。
想香と似た名前で、しかも尚成と同じパーティーって。
だいたい物語ってのは、近い所に色々な繋がりがあるものだ。
ちなみに同じパーティーってのは、この町で尚成が冒険者登録をしてからという事になる。
この件で子供の尚成に冒険者登録の特別許可が出たらしい。
尚成の名前がもしも広がっていったとしたなら、きっと此処からなのだろう。
だけど実際はあまり情報が出ていないし、ヒッソリとした冒険の旅をしていたと予想される。
何にしても少し前進だな。
俺は皆の所へと戻った。
話は全て仲間に話しても良いという事だったので、俺は聞いた話を全て話した。
想香は兎束姫香について少し思う所もあったようだけれど、全く何も思い出す事はなかった。

さて次の日、予定通りだと俺たちはいよいよ砂漠へと足を踏み出す事となる。
目的の伊勢神宮は、砂漠の向こうの更に遥か向こうにあるみたいだからね。
まずは今目の前の砂漠を越えなければならない。
でもその前に、俺たちは『蟻の巣ダンジョン』を攻略する事に決めていた。
ギルドマスター鬼丸が話の後に教えてくれたのだけれど、このダンジョンには尚成も挑戦しているのだとか。
尤も尚成なら簡単に攻略できただろうから、挑戦というよりはちょっと攻略してみたって感じなのだろうけれどね。
ただかなり長くダンジョンには入っていたらしく、その辺りが少し気になった。
蟻の巣ダンジョンは、攻略しても一日で魔物が湧いてくる生きたダンジョンタイプだ。
攻略難易度は一応高く、マスタークラスが複数いても全部はなかなか踏破できない。
猫蓮辺りの訓練としては良いダンジョンだろう。
「じゃあ皆さんいくわよぉ~」
「我は正直面倒だが、前に協力してもらった分は返してやる」
最近陽蝕の当たりはほとんど失くなってきているけれど、やはり俺の都合で何かするのは嫌みたいだな。
やはりこいつは俺を嫌っているようだ。
まあでもそこそこ付き合ってきていて、理由はなんとなく分かってきたんだけどね。
出会った最初からだから性格とか人柄とかそういうのではない。
強い者は好むし、変わったものも好きだし、仲間意識も強い。
色々と観察してきて、行き着いた結論が俺の見た目を嫌っているという事だ。
『女みたいだからなのです』
『つっても髪を伸ばしているくらいで後は地なんだけどな』
『あの時の変化に影響されたのね』
『それでも上杉家に似たわけで、そもそもこういうDNAなんだから仕方ないだろ』
とは言え俺も本音を言えば、オカマとかあまり好きじゃないんだよな。
生理的に受け付けないというか。
それを表に出さないようにしてはいるけれど、人としての本能だからどうにもならない。
中性的な女の子は割と好きなんだけどなぁ。
ぶっちゃけるとやっぱり女の子が好きなんだよ。
その女の子の見た目をした男に嫌悪感を覚えるのは理屈じゃない。
きっと陽蝕は俺と一緒なのだろうね。
だから気持ちも分かるし、しゃーなしだよ。
そんな事を考えながら、俺は最後にダンジョンへと入っていった。
中は蟻の巣ダンジョンと呼ばれるだけあって、蟻の巣のようなダンジョンだった。
出てくる魔物もアリが中心だ。
力も強く動きも速い為、今まで見てきた獣型の魔物と比べてもかなり強い。
数も多いし皮膚も硬く、物理戦闘だと本来は厄介な敵だ。
ただうちの面子で戦いにくそうなのは、陽蝕と舞月くらいか。
蟻魔獣の装甲を貫くのが大変だからね。
だから舞月は愛雪と協力して戦っている。
愛雪がサファイアバンテージのアイスミサイル|貫斬《つらぬき》で穴をあけ、そこを舞月が|抉《えぐ》るように攻撃してトドメを刺していた。
こうなってくると、基本戦わない天冉と陽蝕が組むのは相性が悪いよなぁ。
陽蝕が神候補の可能性もあるし、魔法も覚えてもらいたい所だ。
天冉が魔法を使えればとも思うんだけどね。
マジックアイテムで属性付与程度は考えておくか。
宝石のストックももう無いけどさ。
戦いは基本的にみんなに任せて、俺と天冉は観戦。
少女隊は影を移動しながら素材回収をしていた。
これが今の俺たちの戦い方だけれど、パーティーとしての戦いにしては効率が悪い気がする。
「天冉は陽蝕と一緒に戦わないのか?」
「ん~‥‥。あの姿はあまり見せたくないのよねぇ~。それに今は沢山の蟻が相手でしょ~?味方に攻撃が向かってしまう可能性も怖いわぁ~」
なるほどな。
荒魂は敵を倒すと後は無差別にその場の者を攻撃する。
最初のターゲットを複数に設定したとしても、後から湧いて出てくれば終わらせるタイミングが測れない。
「そっか。でも相手がボス一体なら戦ってもいいんだよな?陽蝕も荒魂の天冉を素敵だとか言っていた訳だし」
「それはそうだけどぉ~‥‥。でもボス戦でも私が出ると直ぐに終わっちゃうのよねぇ~」
「こんな物理攻撃が難しい蟻でもか?」
「全く効かない訳じゃないしぃ~、最悪魔力をぶつければなんとかなるでしょう~?」
エネルギーブラストか。
魔法とは言えない魔法でもある。
魔法攻撃の中では最も効率の悪いものではあるけれど、魔力コントロールが上手ければ物理攻撃の効かない相手にもダメージを与える事ができるし、魔法一枠からも除外が可能。
もちろんエネルギーブラストとして魔力が放出されるものは魔法と数えられるけれど、武器や手に魔力を込める場合は魔法とは数えられない。
「その手があったか。じゃあ結局このパーティーがバランスよく機能する為には‥‥」
「陽蝕くんに強くなってもらうしかないわねぇ~」
決して陽蝕が弱い訳じゃないんだよなぁ。
魔力は猫蓮や雪月花の方が低い訳だし。
でも猫蓮は雪月花とのコンビネーションにますます磨きがかかってきている。
天冉も陽蝕も一人で戦うスタイルだしなぁ。
養殖だし地道に育てるしかないか。
俺が育てるとか面倒だし、天然に育つのを期待する。
そんな事を思いながら、俺たちは蟻の巣ダンジョンの奥へと足を進めた。

ダンジョンに入って一日が経過していた。
複雑に入り組んだダンジョンをくまなく見て回るのは大変だった。
ただ攻略するだけなら数時間で終わっていても不思議ではないかもしれない。
でも俺たち、いや俺の目的は尚成の残したものが無いかを探す事だ。
みんなには悪いけれど、攻略は時間をかけて全てのマップを埋めるように行った。
そんなダンジョン攻略も、この面子だからそろそろ終わりに近いだろう。
出てくる魔物もかなり上位のものに変わっている。
目の前に大きな扉が見えてきた。
間違いなくラスボスの部屋だと確信できた。
中にある気配から感じるものは、ドラゴンとまではいかないまでも、ラスボスにふさわしい魔力だった。
「ここに‥‥ラスボスが‥‥いそう‥‥」
「間違いないのです。ようやく最後の部屋ですね」
「でも結局ここまで英雄殿の痕跡は何も無かったんだお」
「悪かったなみんな。此処までは無駄足だったみたいだ」
俺は一応謝っておいた。
俺の為に付き合わせた訳だしね。
とは言えこの結果を一番残念に思っているのも俺だ。
みんな当然そんな事は分かっているので、文句を言う者はいなかった。
「全く。本当に無駄足だったよ」
あ、文句を言う奴いたわ。
「だけど、まだ最後の部屋がある。大抵何かがあるなら此処だろ?」
「‥‥そうだな‥‥」
陽蝕が俺を励ましてくれている?
こいつ、ツンデレだな。
俺、ツンデレはあまり好きじゃないんだけれど、今日だけは良しとしておいてやろう。
「ところでこの部屋のボスなんだが、我一人に任せてもらえないか?今度こそ一人でボスを倒したいんだ」
陽蝕、やはりドラゴンを一人で倒せなかった事を引きずっている。
好きな女に助けられ、パーティー内でも目立った活躍ができていない。
パーティーメンバーじゃないけどw
自分の為にも、何かを成し遂げたいのだろうな。
こういう気持ちを持った者は強くなれるはずだ。
やって見せてくれ。
「うん‥‥いいよ‥‥」
「僕は楽ができるので問題ありません」
「気をつけるんだお。中から感じる魔力はオデたちよりも上なんだお」
「分かっているさ猫蓮。でも男にはやらなければならない時があるんだよ」
「分かるお。だから頑張ってほしいお」
「ああ」
なんか少年漫画の良いシーンみたいじゃないか。
俺はこういうマジなシーンはどうにも照れくさいんだよね。
そんな訳で‥‥。
俺はラスボスがいるであろう部屋のドアを押して、一気に開放した。
「じゃあ陽蝕頑張れ!」
「おい待て!心の準備が‥‥」
部屋の中に見えた魔物は、いかにもな女王蟻の魔物だった。
予想通りとは言え、予想通りだからこそこれは強敵だぞ。
物理戦闘を得意とする陽蝕には、ドラゴンよりも手強い相手かもしれない。
ただ倒す方法が無い訳でもない。
天冉と話したようにエネルギーブラストを使えば多少なりともダメージは通るだろう。
それにいくら硬い装甲を持っていても、急所や弱い部分は必ずある。
「陽蝕くん‥‥頑張ってね‥‥」
「天冉‥‥じゃあ、行ってくる!」
しばし天冉と見つめ合った後、陽蝕は一人部屋に入っていった。
と言っても俺たちも後からついていくんだけどね。
一応死にそうになったら助けてやらんとだし。
でも今度も負けたら、陽蝕は俺たちの前から姿を消しそうな気がする。
天冉の前からも。
なんとか勝たせてやりたいが、手を貸せば絶対にバレるよなぁ。
勝てる可能性はおそらく半分以下。
でもガチャなら十分引ける確率だ。
課金してでも挑戦するだろう。
後は気合の勝負。
俺たちは息を呑み戦いが始まるのを黙って見ていた。
陽蝕に気が充満した。
いよいよ陽蝕が戦闘態勢に入り、女王蟻魔獣へと向かっていった。
戦いの火蓋は切られた。
戦いは正直一方的なものに見えた。
魔力も動きも体格も、全てが女王蟻魔獣の方が上だった。
それでも陽蝕は全てを最小限のダメージになるように回避する。
パリィディフェンスをマスターした者ほどでは無いけれど、それに近い回避技術は流石だ。
鬼海星流剣術の使い手だけある。
しかしこのままでは確実に負ける。
此処まで戦い続けてきた事もあり、前回のドラゴン戦よりも体力的余裕はない。
ただ動きは前よりも軽やかだった。
何かを狙っているのか、陽蝕の目は常に敵に向けられている。
勝つ気だ。
負ける事など考えていない。
長期戦は難しい。
ならばやるしかないよな。
その開き直りが陽蝕の神経を研ぎ澄ませた。
勝負に出た!
女王蟻魔獣の攻撃の隙を突いて一気に距離を詰める。
それでもそこに一撃が飛んでくる。
コレをかわせれば敵は無防備になるぞ。
紙一重かわした!?
いや、攻撃を受けかなりの深手を負っているようだ。
しかし肉を切らせてなんとやら。
骨を砕いてしまえば勝てる。
「|啄木鳥《ウッドペッカードラミング》!」
陽蝕は見えないほどに速い突きの連続攻撃を首の付け根目掛けて放った。
関節部分は守りが弱い。
急所に向けた必殺技か。
しかし通るのか?
通った!
陽蝕は更に畳み掛ける。
あけられた一筋の光に向けて、陽蝕は可能な限りの攻撃を叩き込んだ。
そして次の瞬間、女王蟻魔獣の首が体から離れていた。
『雨垂れ石を穿つ』からの『蟻の一穴』か。
同じ所を攻撃し続け、勝利の為の小さな穴を一つだけあけた。
よくやったな。
しかし勝利した陽蝕も力つきたようにその場に倒れていった。
それを素早く天冉が受け止めた。
「無茶しすぎよぉ~」
「問題ない。全ては計算通りだ」
その言葉に嘘はないだろうな。
勝つべくして勝った。
それはハッキリと分かった。
猫蓮が回復魔法をかけていた。
無粋な事を。
俺は笑顔になるのを抑えられなかった。
さてそれよりも、俺は俺の目的を遂行しないとね。
何かあるかなぁ~‥‥。
探すまでもなくそれは見つかった。
部屋の奥に見えない扉があったようで、それがゆっくりと開いていったのである。
「策也さん!なんか扉が開いていますよ!」
「まだ‥‥ダンジョンは‥‥続いている?‥‥」
今の女王蟻がラスボスじゃなかったのかよ?
それだと陽蝕があまりにも可哀想だぞ?
そんな事を思いながら、俺たちはその扉の所まで駆け寄った。
少し雰囲気が違う。
ダンジョンとは違うのだろうか。
もしかするとお宝部屋に続く扉なのかもしれない。
扉の向こうは真っ暗な洞窟のようだ。
ライトの光が差し込むと、そこに一つの石碑のようなものが浮かび上がってきた。
「何か書いてあるようですね」
「うん‥‥結構いっぱい‥‥書いている‥‥」
確かに。
ん?なんだこの字。
何処かで見た事があるような‥‥。
「あっ!これ俺の字だ」
間違いない。
自分の書く字くらい分かる。
「旦那様が書いたのか?」
「いや、違う。北都尚成が書いたんだ」
そう思って書かれている文字の最後の所を見ると、そこに『北都尚成』とあった。
やはり。
俺は書かれている内容を最初から確認した。
『まずは女王蟻魔獣の単独討伐おめでとうございます。この扉は単独で女王蟻魔獣を倒す者が現れた時のみ開くようになっています』
なるほどそういう事か。
このダンジョンは既に何人かが攻略していると聞いていたが、こんな奥の扉については何も情報が無かった。
単独討伐はおそらく陽蝕が最初だったのだろう。
『私は強い冒険者を探しております。それは今日、私がいなくなっているかもしれないこの世界で、ようやく見つかりました。女王蟻魔獣を倒した貴方です』
自分がいなくなるかもしれない事を尚成は知っていたのか。
どういう事だろう。
『そんな貴方に是非お願いがあるのです。どうか私の魔法と能力の半分を受け継ぎ、強くなってこの世界の強大な悪を倒してほしいのです』
強大な悪だと?
それってもしかして、この世界の神の事だろうか。
『残念ながら私にはその悪を倒す事ができません。何故なら私はもう今以上に強くなる事ができないからです。その理由は分かりませんが、私の成長は突然ストップしてしまいました』
成長がストップか。
つまり北都尚成は神を倒す存在にはなり得ないという事なのだろう。
『もしも私の願いを聞き入れてもらえるのなら、此処から先へは女王蟻魔獣を単独で倒した貴方だけが進んでください。出口に到着するまでに魔法と能力の受け渡しは完了しているはずです。しかしもしも断るというのなら、皆で先に進むか引き返してください。できれば願いを聞き入れてくださる事を願っております。ちなみにこの先は、砂漠の真ん中にある遺跡に続いていますので、砂漠を渡ろうとしてるなら利用してもらっても構いません。ただしみんなで進まれた場合には、魔法と能力の継承は不可能となります』
不親切な設定だな。
つか魔法と能力の継承ってのがどういうものか調べたいんだけど、それをさせない為にこんな風にしているのだろうか。
俺が尚成の立場だったら、悪い奴に悪用させない為。
能力の継承だけなら悪い奴でも大きな問題にはならないけれど、魔法と能力を渡す事ができてしまったらそれは世界のバランスを崩しかねない。
俺がその能力を手に入れる事ができたら、世界中の人を不老不死にだってできる訳だからな。
尤も誰かに能力を与えた場合、もうその能力を得る事ができないとかって成約があったら別だけどさ。
さて続き続き。
『それでは何故私が強大な悪の存在を知っていて、倒さなければならないと言っているのか疑問もあると思いますので説明しておきます。私は異世界とこの世界を行き来する者だからです』
なんだって?!
異世界とこのイスカンデルを行き来する者だと?
なんだ?何かが思い出される気がする。
頭がモニョモニョするぅー!
あっ!ああそうだ!
ハッキリとは思い出せないけれど、なんとなくそんな生活をしていた日々があった気がする。
それは何時だ?何時なんだ?
北都尚成が書き残した石碑を読んで、今俺の記憶に変化が起ころうとしていた。
【<┃】 【┃┃】 【┃>】
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