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夢の中のような北都村

これは夢だ。
夢を見ているのだ。
それが夢だと分かる事は時々ある。
そうなったら、俺は夢の中では無敵だ。
何でもできてしまう。
魔法だって使えるし、空を飛ぶ事だってできる。
今じゃ普通だけどねw
でも、此処は日本でもなければアルカディアでもないな。
メタバースの世界。
日本で暮らしていた頃にやっていたアレか。
夜の十時にログインができなくなり、十一時には強制退去させられる世界。
あれ?そうだったっけ?
何かが違う気もする。
他にもMMORPGはやっていたし、そっちの世界だったかもしれない。
そんな世界に俺はフルダイブだ。
まだフルダイブができる技術は無かったはずだけれど、これは夢だから可能のようだ。
スタートは赤ん坊から?
チート赤ちゃんって、流石にそれはやりすぎだろ‥‥。

この日朝起きると、俺たちは次に向かう場所を決める為に町の情報を宿屋の主人に尋ねた。
すると北東にあるアワビの町の手前に『北都村』という村がある事を教えてくれた。
なんでも十五年ほど前までは『最初村』という村だったらしいのだけれど、あの北都尚成が英雄となった事で名前が変わったらしい。
どうやら北都村は、英雄北都尚成が生まれた町のようだ。
尤も北都尚成について詳しい事はあまり伝わっていないのだけれど、魔王を倒し英雄になったという話だけはこの法螺貝王国にも伝わってきていた。
当然俺たちは気になる訳で、とりあえずその村に寄って行く事にした。
少女隊が合体して北都尚成になるのだから、全くの無関係って事はなかなか考えられない。
そもそも北都という苗字自体、日本に実在しなかったはずだ。
あくまで俺が付けたハンドルネームなのである。
それがこの世界にあるだけでも不思議なのだから、この世界自体きっと俺と何か関係があるのだと断言しても良いだろう。
可能性としては、俺と直接関係があるのもそうだけれど、間接的に関係がある場合もあり得る。
例えばネット上で北都尚成と知り合いだった奴が、死後神となってこの世界を作ったとかね。
ただ英雄にする辺り、そんな事をしてくれる奴の心当たりはない。
それにこの世界はもっと昔から存在していたはず。
だから俺と直接関係がある可能性が一番高いのは間違いないと考えられる訳だけれどね。
シジミの町から北都村までは約十キロ。
午前中の内に村には到着した。
「なんだか村とは思えない防壁があるお」
「でも‥‥町ほど大きくはない‥‥」
外観は俺が防壁を建てた戦士の村のようだった。
「この辺りに魔獣はほとんど出ませんよね?どうしてこんなに高くて立派な防壁があるのでしょうか?」
想香の言う通り違和感はあった。
ただおそらくこういう村もあり得るのだとは思う。
実際に戦士の村はそうなったのだから。
それに新巻鮭王国の湖の村だって、此処まで立派ではないけれど柵は頑丈に作られているからね。
「理由は中に入ってから住民に聞きましょう~」
尤もだな。
この村の事はこの村の者に聞けば分かるだろう。
俺たちは門へと近づいて行った。
門に近づくと、俺は少し違和感を覚えた。
なんとなく夢の中にいるような気分になってきた。
門には門番が立っていた。
村なのに門番とか、規模以外はもう町だな。
此処でも門番は狛里を知っているようで、俺たちを見て少し驚いた顔を見せていた。
まあそれはもう慣れ始めている訳だけれど、それよりも気になった事があった。
『門番が動物寄りの獣人』だった事だ。
この世界の獣人は概ね、人間に動物の耳と尻尾が付いているようなよくあるタイプの獣人である。
しかし門番をしていたのは、小型の動物に近いタイプの獣人だ。
動物が二足歩行をして言葉を喋る、そんなタイプだな。
もしかしたら魔獣に近いのかもしれないけれど、見た所可愛く穏やかそうで親しみやすそうな感じだった。
「小型獣人か。珍しいな」
陽蝕がボソッとそう呟いていた。
あらゆる人種や種族が共に暮らすシジミの町ですら見なかった種族『小型獣人』ねぇ。
さっきから夢の中にいるような感覚があるし、この村は何か特別な感じがする。
それになんだろうか。
初めて見るはずの小型獣人に、俺は既視感を覚えていた。
その既視感は、村に入って益々と感じられた。
なんだこの村‥‥いや既に町と言っていいだろう。
建物がズラッと並び、門を入った所は整備された綺麗な広場になっていた。
そしてそこには、村の案内役であろう小型獣人が立っていた。
「北都村にようこそ!冒険者の方々、何か聞きたい事をあれば私がお答えしますよ!」
この小型獣人、俺は初めて会ったのだろうか?
この村の建物も他の町とは何となく違う。
この世界にも日本風の建物はあるけれど、概ね中世ヨーロッパといった感じだ。
でもこの村の建物が並ぶ景色は、昭和の商店街に似ている。
やっぱり俺はこの景色をどこかで見ている。
あちらに行けば公園が、そしてこっちに行けば魚が釣れる池があったはずだ。
何故分かる?
そうだ、まだ生きていた頃にやっていたメタバースの町そのままなんだ。
なるほどそういう事か。
あのメタバースをやっていた者が亡くなった後にこの世界を創ったとしたら、ソックリなのも頷ける。
おそらくこの村を造った者は、あのメタバースの世界が好きだったに違いない。
だからそこの住人だった北都尚成がいたのもおかしな話ではないはずだ。
異世界転生といえば日本人だし、死んで神になるのも日本では多々ある。
逆に言えば一神教だったり、神の存在しない宗教を信仰している国では、こういう展開はあり得ないのだろうな。
そう考えると、俺は日本に生まれて本当に良かったと思うよ。
いやだから、それだと計算が合わなくなるんだって。
この世界は最近できた世界じゃない。
正確な数字は教えてもらってはいないけれど、俺が死ぬよりもずっと昔からあったはずだ。
その頃はまだ当然メタバースの世界も無かった訳で、こんな町を造る事は不可能と言える。
ちょっと待て。
この世界全部がそのメタバースと同じという訳ではない。
メタバースと同じなのはこの村だけだ。
ならばこの村だけ後から改装されたと考える事はできないか?
天界にいる世界を創る神なら、日本の様子はうかがい知る事ができたはずだ。
ならば何の為にこの町だけメタバースのような世界にする必要があったのだろうか。
なんだろうなぁ。
何かを忘れている気がするぞ。
「どうしたんですか策也さん。凄くエロそうな顔をして惚けていましたが?」
「えっ?マジでエロそうだったか?想香?」
考え事をしていたら俺はエロそうな顔になるのか?
ヤバすぎじゃねぇか!
「嘘です。ただ魔力が切れたオモチャのようでした」
「そ、そうか‥‥」
嘘だったか。
ふぅ~ヤバいヤバい。
そんな嘘ですら一瞬本気にしてしまうほど俺は考えていたようだ。
こりゃ惚けない為にも、ここは小型獣人に聞いてスッキリさせた方がいいだろう。
「何か聞きたい事があればって言ったよな?」
俺は案内役であろう小型獣人に声をかけた。
「はい!僕たちはこの村の案内役。なんでも聞いてください」
「そうか。じゃあ聞くけど、君たちはずっとこの町、村で暮らしているのか?」
まずはこの村がいつから今のような感じになっているのかが知りたい。
割と最近の事なら、俺は十五年近くアルカディアにいた訳でやっぱり関係がないって事になるはずだが。
「ん~この村で僕たちが案内役を始めたのは三十年近く前になりますね」
そんなに昔?
そんな前からメタバースって無かったよな。
「この村の建物もその頃からこんな感じだったのか?防壁なんかもあるし」
「建物はもっと前からこんな感じだったみたいですよ。防壁も昔からあります。この村は特別な村ですから」
「特別な村?」
「そうです。そもそもの名前は『最初村』っていうんですよ。異世界での記憶を持った者が産まれる村なのです」
そういう事か。
この町が昭和の商店街のようになっているのは、きっと異世界人の影響だ。
だけどこの小型獣人が案内役なのは引っかかるな。
それは単なる偶然なのだろうか。
「この村に公園や釣りの出来る池があるはずだ。それはどっちだ?」
小型獣人は指さした。
「公園はあっち、池はこっちです」
バッチリ俺の記憶と合ってるやんけーい!
こりゃ間違いなくあのメタバースを意識して『つくられた』村だよ。
でも誰が何の為に?
それが三十年近く前なのは何故だ?
神の力なら時間を操る事もできるだろうから、他世界との時間の流れが違っても不思議ではない。
でも此処イスカンデルはアルカディアとの行き来が可能な同じ時間軸の世界のはず。
そしてアルカディアもまた元の地球と同じ時間軸にある世界。
何かが引っかかる。
この感覚は一体何なんだろう。
それにずっと夢の中にいるような感覚でもある。
ネズミーランドに行った時の感覚とも違う。
海の中で波に揺られるクラゲのような感覚というべきか。
アルカディアで木花咲耶姫の洞窟や試練の洞窟で感じたあの感覚だ。
何にしても俺はこの村をやはり知っている。
「またエロい顔をしていますね」
「何か‥‥この村に‥‥あるの?‥‥」
おっと。
また惚けていたようだ。
「悪い悪い。ちょっと考え事をな」
「何を‥‥考えてたの?‥‥」
「簡単に説明すると、俺はこの村を知っているし、おそらく来た事があるような気がするんだ。しかし思い出せなくてね」
「策也さんも記憶喪失なのですか?実は僕とナカーマだったのです」
「えっ?」
記憶喪失?
確かに俺には一部記憶がない。
でもそれは、アルカディア設定の昔の記憶だ。
記憶を消す能力で完全に消した部分だけれど、流石にこことは関係がないだろう。
そして日本にいた頃の記憶は、普通に忘れている事以外は時系列で普通に覚えているはず。
なんだ?何か凄く不安になってきたぞ?
「北都‥‥尚成が‥‥ここで産まれた‥‥」
そうだ!もう一人の俺が此処で産まれていたんだ。
記憶にはない。
でも何か記憶があるように感じる。
「俺は北都尚成としてこの世界に来ていた?」
「それならぁ~北都尚成の過去を追えばぁ~?何か分かるかもしれないわねぇ~」
「その通りだ、天冉」
ハッキリとは分からない。
でも確かに俺はこの場所を知っているし、北都尚成としてこの場所に来ていた可能性がある。
「ここはあのメタバースの世界と似てるんだお。でもかなり狭く感じるお」
猫蓮の独り言に、俺は即反応していた。
「猫蓮もこのメタ‥‥村を知っているのか?」
ヤバいヤバい。
危うくメタバースとか言う所だったぜ。
「オデのいた世界には仮想現実の世界ってのがあったんだお。その中の一つがこんな感じの世界だったんだお。でもかなり古い感じがするお」
そりゃそうだ。
ここはメタバースが始まったばかりの‥‥アレ?
俺はこのメタバースをどれくらいやっていただろうか。
一年もやっていなかった?
いや、逆に十年以上やっていた気もする。
でも十年やっていたら流石にメタバースの世界ももっと大きくなっているだろう。
何かが思い出せそうなのだけれど、結局俺は何も思い出せなかった。
何かを考えようとしたら、何か意識を阻害されているようにも感じた。
おそらくこれ以上考えても無駄だろう。
何かが邪魔をしているのだ。
思い出すと誰かに都合が悪いのかねぇ。
とにかく、俺はこの村にいる間『北都尚成』について調べる。
知らなければならない。
そんな気がするのだ。
本当は少し立ち寄るだけだった村だけれど、とりあえず皆に頼んで一日滞在する事となった。

天冉たちの護衛は尾花に任せ、俺は皆とは別行動をして色々と聞いて回った。
雪月花たちもまだ追われている可能性はあるけれど、なんとなくこの村にいる間は大丈夫な気がするんだよね。
そんな訳で思う存分聞き込みをしていった。
しかし情報はほとんど得られなかった。
北都尚成はこの村で産まれた。
六歳の頃、村貴族だった両親が盗賊に殺された。
それを機に、尚成は冒険者として旅に出る。
もちろん冒険者登録はできないけれど、友人のパーティーに参加して村を出た。
そしてそれから六年後、魔王を倒して英雄となった。
しかし直後消息不明となる。
これ以上の情報は、髪が水色だったとか可愛い子供だったとか、何でもない話しか出てこなかった。
「結局情報はこれだけか。北都村って割に情報は何にもないんだな」
「菜乃たちが北都尚成に合体すれば何かが分かるかもしれないのです」
「そうなのね。記憶と存在は対なのね」
確かに少女隊の言う事は尤もだ。
そこに存在するからこそ、人はその人を記憶する事ができる。
もしも存在しなければ、当然だけれど記憶には残らない。
しかし一度存在したものは、記憶が残り続ける限りそこに存在し続ける。
『お前が死んでも、俺の中では生き続ける!』
そんなお決まりのセリフもあるよね。
ただこれは、逆に言うと記憶が消えれば存在も消えてしまう訳で。
俺はみゆきが死んだ時、その辛さから記憶を消してしまったようだ。
だから転生してアルカディアに来ても、そこに俺を知るみゆきはいなかった。
そして思い出した時、みゆきは本当の意味でアルカディアにやってきた。
その辺りの話は、俺が神を倒した後に少しだけみゆきに聞いた。
みゆきの心のほとんどは、別の世界に飛ばされていたらしい。
ハッキリとは覚えていない様子だったけれどね。
だから思い出せば北都尚成はこの世界に戻ってくるかもしれないし、逆も然りな訳だ。
少女隊が合体して北都尚成になる事で、記憶が戻ってくる可能性はある。
実際少しだけ俺は何かを思い出そうとしているからな。
ただ、おそらく北都尚成は俺自身だから、少女隊がこれ以上北都尚成になっても意味がないだろう。
確信は持てないけれどね。
でもそんな思いを確信に変える者が現れた。
「君か。北都尚成について聞いて回っているのは。うんなるほどそういう事か。確かに君は北都尚成なんだろう」
「ん?小型獣人?」
今俺を北都尚成だと言った?
「僕はこの村で北都尚成と唯一会った事のある小型獣人なんだ。その僕が見るに、君の魔力は北都尚成そのものだと断言するよ」
魔力が同じ?
魔力というか生命エネルギーってのは個々全てが違うと云われている。
だからDNAや指紋なんかで個人を特定するのと同じように使える訳だ。
もちろん絶対とは言えないけれど、魔力が変わる事はないのでほぼ間違いなくこの方法でその者の正体は分かってしまう。
尤も、DNAや指紋から判別できる人が少ないように、魔力で判断できる者も少ない。
でもこの者は断言した。
断言するからには自信があるのだろう。
俺自身、やはり俺は北都尚成と同一人物であると認識せずにはいられなかった。
「北都尚成と会った事があって、そいつの魔力と俺の魔力が一致するというのか?」
「僕はもう二十年近く生きている長寿の小型獣人でね。それくらいは分かってしまうんだよ」
二十年で長生きか。
獣人は成長も早く年をとらないが、寿命は短かった。
小型獣人はそれよりも寿命が短いって事か。
体が小さいと寿命が短くなると言われているし、身長が五十センチ程度の小型獣人ならそれも納得か。
「そうか。でも俺には記憶がないんだ」
「そうみたいだね。それで思い出す為に聞いて回っているんだね」
「まあそんな所だ」
「だったら、伊勢神宮を目指して旅をしてみたらどうだろう。彼がこの村を出る時、そこを目指すと言っていた」
「ははは‥‥」
偶然にしては出来過ぎているな。
いや、俺の進む道はご都合主義に決まっているから、まあこんなもんだろう。
「実は俺たちは今、伊勢神宮を目指して旅の途中なんだ」
「そうなんだね。これも神の御導きかもしれないね」
神の御導きか。
ある意味そうと言えるかもしれないな。
俺をこの世界に行かせたのはあの女神なのだから。
「じゃあ僕はもう行くよ。おそらくもう二度と会う事はないだろうけれど、最後に君に出会えて良かった。異世界の記憶を持つ者は、そろって皆この村には帰ってこないからね」
「えっ?それはどういう?」
俺が尋ねる前に、その小型獣人は猛スピードで去って行った。
異世界の記憶を持つ者は、皆この村には帰ってこない、か‥‥。
もしかしてこの世界の神を倒す為の神候補は、意外と沢山いるのかもしれない。
しかしことごとく皆戦いに敗れている。
そういう事なのだろうかねぇ。
百年もあれば大丈夫だと思っていたけれど、こりゃ結構大変な仕事だったかもしれん。
この日、これ以上の情報は得られなかった。
少女隊に北都尚成に変身してもらったり、或いは妖凛に俺の姿を北都尚成に変えてもらったりもしたが何もなかった。
とは言え『俺が北都尚成である』という事と、『伊勢神宮を目指して旅をした』って事が分かったのだから、焦らなくてもその内きっと何かが分かるだろう。
今は俺でなく少女隊が北都尚成なんだけどさ。
或いは俺に何かを伝える為に、少女隊は北都尚成になれるようになったのだろうな。
暗示ねぇ。
何にしても旅の目的に『北都尚成の記憶を取り戻す』というのが加わってしまったな。
でも答えが出たとして、それはみんなに話せるのだろか。
考えても仕方ないし、何か分かったら分かった時に考える事にしよう。

次の日の朝、北都村を出発する前に俺たちは、村の神社を参拝していた。
神社がマジでこの世界にあるとはね。
目指している所も『伊勢神宮』な訳で、おそらくそこもやっぱり神社なんだろうなぁ。
「策也殿は何をお願いするんだお?」
神社を知っている唯一の猫蓮がそう尋ねてきた。
しかしそれは少し間違っているんだよな。
「猫蓮よ。神社はお願いをする所じゃないぞ?神様に目標を伝えて決意する場所だ。頑張るからどうか見守っていてくださいってな」
その昔、人はみな『目標』を持って生きていた。
しかしある時から、それは『夢』という言葉に置き換えられたらしい。
自らの力で成し遂げるものから、ただ願うものへと変化した。
それは人々の堕落だったのかもしれない。
それが神社の参拝に現れている。
昔は神様に対して『目標』を伝えていたのだ。
そしてそれを成し遂げた時もう一度参拝して、『見守ってくださりありがとうございました。無事成し遂げる事ができました』と言う所までがセットとなる。
夢を伝えるだけじゃ、夢は夢のままなんだよ。
「分かったんだお!じゃあ‥‥」
「待て猫蓮!まさかハーレムを作るとか、そんな目標じゃないだろうな?」
「なんで分かったんだお?じゃないお!世界を平和にするんだお!」
こいつやっぱりハーレムだったか。
「そうか。ならば世界平和の為にお前がこの世界の神になるって目標はどうだ?」
「オデが神かお?」
「そうだ。これは多分チートなお前にしか成し得ない目標だろ?ノブレスオブリージュだよ」
「できる|漢《おとこ》は大変なんだお。分かったお。目標にして頑張るお」
「よく言った!」
猫蓮はバカでチョロいな。
しかしこういう信じ込める奴が最も成功する可能性が高いと思う。
いくら能力があっても、自分を信じられない奴は自信を持てず緊張したりして失敗するのだ。
いやマジで猫蓮ならって思っているよ!?
マジマジ!
本音を言うと不安も大きいけれど、神猿や陽蝕よりも可能性はある気がするんだよな。
北都尚成は、もしかしたらこの世界の神になろうとしていたのだろうか。
もしも俺だったら、そんな目標立てないよな。
ただ実際に神になってしまった訳で、状況によってはその可能性も無きにしも非ず。
俺の目標はとりあえず、仲間を誰も死なせない事。
どうか神様見守っていてください。
そうだな。
みゆきにお願いするか。
神である俺と結婚した事でみゆきも神だからな。
つかその前から神としてアルカディアも創っているんだけどさ。
俺と一緒になる為に自分の創った世界に神堕ちしていたんだ。
神堕ちって言葉は少しおかしいか。
神から人間に堕ちていた。
でも必ず神に戻れるようにはなっていたんだけどな。
「狛里は何を願ったんだ?」
「策也ちゃん‥‥さっき‥‥目標って‥‥言ってたから‥‥みんなを守る‥‥」
「そっか。狛里らしい」
まさか俺と同じ目標か。
「想香はどうだ?」
「僕ですか?特に何もお願いはしていないはずです。ただ頭の片隅に『記憶が戻れば』と思っていたかもしれません」
「そうか。やっぱり記憶は戻ってほしいよな」
「だからそんな事はお願いしていないのです」
別に記憶が戻る事を望んでも良いと思うんだけどな。
目標とか言っていたのを聞いていたから、お願いはできないと思ったのかねぇ。
こんな感じでなんとなく今までにない村で過ごして、俺たちは再び冒険者の旅へと戻った。
次はアワビの町だ。
村を出た俺は、なんとなく夢から覚めたような気持ちになっていた。
【<┃】 【┃┃】 【┃>】
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