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獣人の町は残念過ぎる

昔ヨーロッパでは、王族貴族だけが人間だった。
それ以外の一般庶民は人ではあるけれど、王様の『物』である。
更に遠い外国の一般庶民ともなれば、もう『猿』として扱われていた。
だからヨーロッパの王族女性は、日本人男性の前でも平気で裸になれたという。
現代日本では、マイノリティ(少数派)だけが差別の対象になり得ると考える人が多い。
でも本当は、マジョリティ(多数派)こそが差別の対象になる事も多々あるのだと理解しておく必要があるだろう。
でないともしかしたらいずれ、日本人は少数の外国人によって支配される事になるのかもしれない。
組織の構造を考えてもらいたい。
逆ピラミッド型では概ね成り立たず、ほぼすべてがピラミッド型で構成されているはずだ。
本当の差別とは、少数が多数に行う不当な事なのである。
ちなみに現在の日本では、少数の日本人権力者が多くの日本国民を差別しているようだった。

新巻鮭領から出たその日の夕方、俺たちは最初の目的地へと到着した。
鬼海星領のウミウシ砦の町だ。
「凄く防壁が高いのです。イワオコシよりも頑丈そうですね」
「話には聞いてましたが、本当に要塞みたい~」
「壊せるかどうか‥‥試してみたくなる‥‥」
「凄いんだお。ようやく異世界に来た実感がわいてきたんだお」
皆それぞれ感動を声に出していた。
まあ俺はアルカディアでこれくらいの場所は何度も見ているしな。
特に思う事もな‥‥おっ!
門番をしているのは猫獣人か?!
「おお!猫獣人がいるんだお!とっても可愛いんだお!」
ヤバい!
思っている事が猫蓮と被るとは屈辱だ。
人のフリを見て我がフリを直さなければな。
「オデは早速話しかけてくるんだお!」
猫蓮はそう言って、門の方へと走っていった。
こいつと同類とは思われたくはない。
それにアルカディアでは可愛い猫獣人とも友達になっていたのだ。
|茜娘《あかねこ》は元気にしているだろうか。
思い出すと耳をモフモフしたくなるから考えるのはよそう。
視線を戻すと、猫蓮は何やら猫獣人門番に話しかけていた。
聴力も強化させられるから会話は聞ける訳だが、内容はプライバシーの侵害という事で伏せておく。
話している内容が猫蓮にとってあまりに残酷だからさ。
なんにせよあの猫獣人門番は、見た目と違ってかなり嫌な奴に感じた。
ションボリと俯く猫蓮は、少しこちらに歩いた所で俺たちが来るのを待っていた。
この町はなんだか嫌な気配に包まれている気がする。
気のせいならいいんだけれど、こういう勘って案外当たるんだよな。
俺たちが猫蓮に追いつくと、当然先ほどの事について話し始めた。
「あの獣人の門番はおかしいんだお!人間を猿か何かだと思っているんだお!もしかしたらこの町のみんなそうなんだお?」
いやお前、さっきは猿どころかゴキブリ扱いされていたじゃないか?
おっとプライバシープライバシー。
とにかく先ほどまで猫獣人に喜んでいた猫蓮がこう言うのだ。
皆何かがおかしいと感じているようだった。
いや『猫蓮が相手だからじゃないか』と半分思っていたりもしたかもしれない。
ただ知っている者は知っている訳で。
「この町は獣人が集まっている町なのよねぇ~。と言うか身体能力の高い獣人を守りに利用する為に集められているって話よぉ~。その代わりこの町では獣人こそが正義となっているらしいわぁ~」
「そう言えば‥‥人口の半分以上は‥‥獣人って‥‥聞いた事ある‥‥」
なるほど獣人の町か。
転生前の世界で見た物語の場合、多くは獣人って差別される対象となっている。
でも実際は人間よりも身体能力が高く、恐れられる存在にもなり得るんだよな。
アルカディアじゃ獣人が、人間を裏で支配していたりもした。
この町はそれがハッキリと出ているって事かもしれない。
「それでどうするのです?町に入りますか?」
「遠慮する事はないわよぉ~。それにどんな感じなのか見てみたいのよねぇ~」
「でも危険‥‥」
「大丈夫よぉ~。狛里ちんがいるんだからぁ~」
本当に大丈夫かよ。
狛里もかなりの困り顔になってるぞ?
まああの門番の獣人程度なら、なんとでもなるだろうけれどさ。
「オデはあの門番の獣人女性だけがおかしかったんだと信じてるお!」
猫蓮、割と立ち直りが早いな。
異世界の獣人と仲良くなるのは、日本人男性の八割が求める夢だ。
※そんなデータはありません。
だから期待してしまうのは男の|性《さが》か。
「策也ちゃん‥‥どうしたの?‥‥何も喋らない‥‥けど‥‥」
狛里が少し心配そうに顔を覗き込んで来た。
「いや、俺は元々寡黙でダンディーを目指している男だからな。まあ気にするな」
正直俺が喋り出すと、アルカディアの時みたいに仕切ってしまいそうだしな。
そうなると目立ってこの世界の神に気づかれる可能性が高くなる。
なるべくパーティーのその他大勢でありたいのだ。
「そう?‥‥それで策也ちゃんは‥‥どう思う?‥‥」
「とりあえず入っても大丈夫じゃないか?一応町な訳だし」
別に危険なダンジョンに潜ろうという訳じゃない。
町として機能している以上、危険って事はないだろう。
「分かった‥‥」
「じゃあみんな納得したようだし、町に入りましょう~」
天冉の言葉に、皆門へと歩いて行った。
「猿たちの冒険者パーティーね。いらっしゃい。せいぜい金を落としていってあげてね」
ニヤニヤと女性の獣人門番が声をかけてきた。
見た目は可愛いはずなのに、全く可愛いと感じられない。
やっぱり人は内面が大切だよなぁ。
「はい~、ゆっくりさせてもらうわねぇ~」
天冉は相変わらずの笑顔とポワポワした喋りで返した。
流石にブレないなぁ。
ん?今一瞬女獣人門番の顔が強張ったような気がする。
何かに怯えるようなそんな感じだ。
気のせいだったかな。
俺たちは門番の前を通り過ぎ、町の中へと入っていった。
町の中は普通の町とは少し違った雰囲気があった。
町を歩くのは概ね獣人たちで、人間の姿は少ない。
いやいるにはいるのだけれど、ほとんどの人間は店で何かを売っていた。
そして町を行く獣人は騎士とか戦士であり、或いは冒険者と言ったところ。
適材適所という意味では上手く役割分担ができている。
ただ、その役割分担が人の価値そのものとなっているのか。
まあ命がけの仕事をしている人の方が尊いと考える事もできるけれど、人間は卑屈なくらいに獣人に対してペコペコしている感じだ。
それに対して獣人もかなり横柄な態度で接している。
なるほど、昔の差別意識が強かったヨーロッパ各国の植民地ようなんだな。
流石にこのような状況が想像できなかったのは、そんな町で人間が暮らすはずはないと思っていたからだ。
どうして人間は、こんな時代遅れな町で暮らしているのだろうか。
見ると人間が出す店は、どこも繁盛しているようだ。
儲かるなら多少|蔑《さげす》まれた対応も我慢するといったところか。
だったら俺がとやかく言う所は何もない。
しかしだ。
俺たちまで猿扱いをされたら話は変わってくる。
「猿の冒険者か?変わった服を着ているな。その服俺たちが買ってやるぞ」
話しかけて来たのは体のごつい狼の獣人で、冒険者パーティーのリーダーといった感じの奴だった。
何が買ってやるだ。
売買は買う方が偉い訳じゃないっつーの。
それに誰が買ってほしいと言った?
こういう奴を相手にはしたくないなぁ。
「別に買ってほしいなんて言ってないわよぉ~?」
「なんですかこの狼の人は?ゲロりそうなナンパですね」
「もしかして‥‥この人‥‥頭がおかしい?‥‥」
うちの女性陣は、予想通りの返しをしてくれてなんだか嬉しいよ。
狼魔獣の男は怒りにプルプルと震えているようだった。
「この猿たち、どうやらボスの事知らないみたいですね」
「だとしてもこの町で人間風情が獣人にこの態度はありえないわ」
「軽く痛めつけちゃいましょうか?」
相手は四人のパーティーで、男性二人と女性が二人。
みんなそれなりに強そうではあるけれど、ボスと呼ばれた狼獣人以外は俺たちの敵とはなり得ないだろう。
ボスだけはそこそこやりそうには見えるけれど、天冉以外にはまず勝てないレベル。
俺はとりあえず天冉を守る事だけ考えておくか。
尤も俺が守らなくても、妖凛もいれば少女隊もいる。
この程度の奴らが天冉をどうこうできるとも思えないけれどな。
「い、いや、放っておけ。別に俺たちはイジメがしたい訳じゃないからな」
ボスと呼ばれた獣人は振り返り、仲間たちの間を通って去って行った。
「ちっ!」
舌打ちする者もいたが、仲間も素直にそれに従った。
一体どうしたんだあのボス。
最初とは完全に別人のようになっていたな。
俺は違和感を覚えて後ろを振り返ると、そこには悲しみのオーラを纏った猫蓮がいた。
こいつ、獣人にかなりの夢を持っていたんだな。
だけど実際の獣人は人間を差別する|下衆《ゲス》のような奴らだった。
そのショックから、猫蓮がキモイ男から哀愁漂うセクシー色男となっていた。
猫蓮は割と純粋でいい奴なのだろう。
善人かどうかは知らないけれどね。
とにかく、猫蓮の雰囲気にあのボスは気圧されたか。
なんだかんだチート魔法使いだしな。
「じゃあ町の中心方面に行ってみましょうかぁ~」
「そろそろ夕飯の時間です。食事ができる所を探しましょう」
「想香ちゃんは‥‥食べる事‥‥ばかり‥‥」
「そんな事ないです。狛里店長の方が食いしん坊なのです」
既に|姦《かしま》し娘たちはさっきの事は忘れたようだった。
後ろをトボトボと歩く猫蓮だけは、ずっとショックの枷を引きずるようについてきていた。

良い食事処が見つからず、気が付くと町の中心部に来ていた。
そこで俺たちは、やっぱりベタな展開に出くわした。
正確にはベタな展開とは逆か。
獣人貴族といった感じの男が、ここでは人間の子供を責めていた。
「俺の前を横切るとは不届きな子供だな。教育してやろう」
するとそれをかばうように、駆け寄った女性が子供を抱きしめる。
「子供のしたことです。勘弁してください」
この町は全く。
人間の店は繁盛していて、おそらくここでの商売は儲かるのだろう。
だから多少差別されてもこの町で生きていく人がいるのだ。
でもその為に子供が危険にさらされるような町で暮らすのだろうか。
「あらあらどうしましょうかぁ~?」
そういう天冉はやっぱり笑顔だった。
楽しんでいると勘違いしてしまうぞ?
いや、マジで楽しんでいるのかもしれない。
「助けてあげたいのはやまやまなんですが、僕がそんな事をするとあの人を殺してしまいそうなのでやめておきます」
「でも暴力を振るうなら‥‥放置もできない‥‥あの人が子供に何かしたら‥‥ぶん殴る‥‥」
おいおい狛里、なんか矛盾しいているぞ。
優しく止めてやってくれ。
「じゃあ母親が責任をとれ!」
獣人は鞭のような武器で母親を打った。
鞭は顔に当たり血が飛び散った。
「ママぁー!わぁーん!」
子供が泣き叫んだ。
あの鞭、ただの鞭じゃない。
刃が仕込まれた斬る事を目的とした武器だ。
「これは‥‥」
天冉がそう言うと、辺りに殺気が広がった。
なんだこれは?天冉がキレた?
「天冉ちゃん!‥‥落ち着いて‥‥」
狛里が声をかけると、天冉はいつもの笑顔に戻り殺気が収まっていった。
今のは一体何があったんだ?
いやしかし、まだ辺りの殺気は残っている。
「オデの好きな獣人は‥‥そんな事しないんだお。許さないんだお!」
猫蓮だったか。
「おい落ち着け。チートなお前が魔法を放ったら、奴を殺してしまうぞ?」
「魔法は使わないんだお。ぶん殴ってやるんだお!」
猫蓮は貴族っぽい獣人に真っすぐ向かって行った。
「ひぃっ!」
一気に接近された獣人が驚き体をそらす。
そこへ繰り出す猫蓮のパンチは、モロにその獣人の顔面を捉えた。
殴られた獣人は五メートルほど転がった。
「死なないように手加減してやったお。子供をイジメる奴は許さないんだお」
迷わず行動したか。
称賛して然るべきだとは思うけれど、ちょっとやっちゃった感もある。
俺たちは獣人の付き人か護衛かに取り囲まれていた。
更にその外にも、町の獣人が集まってきていた。
「お前たち、この町で人間がそんな事をして済むと思うなよ」
「その前に、女性を回復しますね。かなり顔を深く斬られていますから」
想香は空気を読めずに回復魔法を施していた。
でも子供を守ろうと傷を負った母親は、かなり血を流していたからな。
死んだら終わりの世界じゃ、回復魔法を急ぐに越した事はない。
しかし益々獣人たちを怒らせてしまったようだ。
どうするかねぇ。
「おいっ!アレは新巻鮭の萬屋狛里じゃねぇか?」
獣人の一人がそう声を上げた。
あらあら知っている人がいるのね。
まあ狛里がバレた所で問題はないと思うけれど、流れで天冉が王女だとバレたりしないだろうな。
国家間の問題にもなるかもしれない。
「あなたたちぃ~、みんなでかかっても萬屋狛里には勝てないわよぉ~?」
天冉はそう言って獣人たちに笑顔を向けた。
それに合わせて狛里が一歩前に出る。
すると取り囲んでいる獣人たちは一歩後退りする。
群衆の中に、少し人が通れる場所ができた。
「それじゃ行くわよぉ~」
天冉はそう言うと、人の割れ目に向かって歩き出した。
後に狛里が続き、母親と子供は想香と猫蓮が手を引いて連れて行った。
この子供、猫蓮と手を繋いでも平気なんだな。
将来は大物になるかもしれない。
なんとなくそんな事を思いながら、俺はみんなの後に続いた。
それにしても狛里って何者なのだろうか。
なんにせよ新巻鮭王国は、狛里の名声に守られて来た所があるように感じる。
「何が萬屋だ!なめられたままで行かせるかよ!」
獣人の一人が狛里に襲い掛かった。
命は大切にした方がいいぞ。
頭上から剣を振り下ろした獣人だったが、次の瞬間剣は粉々になり体は大きく後ろへと飛ばされていた。
集まっていた獣人たちは更に数歩後退りした。
全く、狛里からすればゴキブリレベルなんだから無茶するなよ。
俺はフッ飛ばされた獣人の元へ行き、回復魔法で回復してやった。
「無茶するなよ。萬屋狛里は魔王よりも強いんだから相手にしちゃダメだ」
俺はそう耳元で囁いてからみんなの後を追った。
こう言っておけば、萬屋狛里伝説は更に大きく広がるだろう。
別に嘘は言ってないし、抑止力にもなるはずだよね。
こうして俺たちは、騒ぎの場から立ち去った。

さて、俺たちは親子を家まで送った。
「ありがとうございました。でも、こんな事になってしまっては、私たちはもうこの町にはいられません。どうしたらいいでしょうか?」
いや俺たちに聞かれてもさ。
でも確かにその可能性は高いだろう。
俺たちがいなくなれば、あいつらは腹いせにこの親子に危害を加える可能性がある。
「こんな嫌な町は出た方がいいんだお」
「そうねぇ~。どうしてこの町で暮らしているのかしらぁ?」
「メリットが‥‥感じられない‥‥」
尤もなんだよなぁ。
おそらく何かしらの理由で儲かるってのが理由だとは思う。
でも我慢して暮らすほどなのだろうか。
「実は‥‥、商人ギルドに借金がありまして‥‥。それでギルド相談したらこの町を勧められました。この町で暮らす者は税金が免除されるのです。だから皆羽振りも良いし借金を返すならこの町が最適でした‥‥」
なるほどなぁ。
無税ってのは魅力的だ。
稼いだ金が全て自由に使える場所でなら、商売も上手く行くだろうしね。
しかしその分差別され、身が危険にさらされる可能性もある。
子供もいる訳だし、いくら借金を返す為とは言え選ぶべきではないと思うけどな。
「それに‥‥。この町で暮らせば、借金の金利はゼロにしてくれると‥‥」
補助までしてくれるのか。
それは逆に考えると、この町で暮らすデメリットも大きいって事だ。
自業自得と言えば自業自得か。
「ふ~ん‥‥。聞いてもいいかしらぁ~?借金っていくらあるのぉ~?」
天冉は助けてあげるつもりかな。
いや、天冉が助けなくても、おそらく狛里や他のみんなも同じ気持ちだろう。
「えっと‥‥。額はよく分かりません。後少しだとは言われているのですが‥‥」
「えっ?‥‥」
おいおい、借金している額を把握していないってどうなっているんだよ。
「それわぁ~‥‥騙されている可能性がありそうねぇ~」
可能性っていうか、完全に騙されているだろ。
少し離れた所で子供と遊んでいる想香も、少し唖然とした顔をしていた。
そりゃ誰でも騙されていると思うよな。
「あと少しなんですか!?ならば想香が貸しますからこんな町から出ちゃいましょう!」
騙されている事に驚いたんじゃなかったんかーい!
でも想香の言う通り、借金があるにせよ騙されているにせよ、この町から出た方がいいのは皆同じ意見だな。
「本当ですか?では後いくら借金が残っているのか、商人ギルドの方に‥‥」
「ちょっと‥‥待って‥‥」
「そうよぉ~。多分大金を吹っ掛けられるわよぉ~」
全く仕方がないな。
裏方なら目立たないし、俺が調べてやるか。
「それを調べるのは‥‥菜乃と妃子に任せてくれ」
『策也タマ!今俺が調べてやるって考えていたのね!』
『そうなのです。嘘は駄目なのです!』
当然テレパシー通信でクレームを入れて来る二人。
しかし問題はない。
『お前らは俺も同然の一心同隊じゃないか。俺はお前らだしお前らは策也だ!頼んだぞ!』
『全く仕方がないのね』
『菜乃たちが策也タマだったのです』
二人はすぐに影を移動し、俺の影から消えていった。
「分かった‥‥策也ちゃんに‥‥任せる‥‥」
「おう!それで今俺の影を放ってあるから、直ぐに情報は手に入れられるだろう。商人ギルドに借用書があるはずだからな。名前はなんていうんだ?」
「名前は‥‥」
俺は聞いた情報を全て少女隊に伝えた。
後は商人ギルドで借用書を見つけるだけ。
それで答えは出るだろう。
「今までいくら返済したのぉ~?領収書はもらってるぅ~?」
「なんでしょうかそれ?いっぱい返しているとは思うのですが‥‥」
知らない人を騙したって感じか。
お金の貸し借りをするなら、借用書と領収書はしっかりと受け渡ししないと駄目よね。
結局話を聞く所によると、そもそもの借金は百五十万円ほど。
そして返済は毎月五万円で既に五年は返し続けているらしい。
倍は払っているのね。
あくまでこの女性の話を信じればの話だけれど、もう返さなくていいのは明らかだった。
つかそれくらい計算してくれよ。
でもこの世界の住人の多くは、読み書き計算すら教えられないのだ。
こんな愚民政策じゃ騙されても仕方がないのかなと思った。

夜中の内に商人ギルド内を荒らしまわり、少女隊が書類を見つけて帰って来た。
借金は女性の言う通り百五十万円だった。
本来は領収書をもらわなかった女性のミスでもあるけれど、俺たちは女性の言葉を信じる事にした。
女性の顔に傷を付けた貴族っぽい獣人に対しての慰謝料なんかも請求できるし、借用書は既にこちらにある訳だから後の問題とはならないだろう。
親子には今後ナマヤツハシの町で生活してもらう事にした。
狛里の店舗兼自宅も空いてるしね。
一応天冉と狛里、そして俺の分身と母親で商人ギルドに話しを付けに行った。
当然借用書も無く、払った金額も倍ある訳だから納得はしてもらえた。
しかし当たり前と言えばそうなのだけれど、、この世界も知らない者が損をするんだな。
この借金をした女性は、手続きを知らず確認も取らなかったから自業自得とも言える。
悪い奴は世界には沢山いるのだ。
最低限の知識は必要だろう。
それでもやっぱり騙す奴が悪い。
転生前の世界でも、知らずに損をする事は多々あった。
税金を安くする方法、子育ての補助金、色々な優遇措置。
知っている者だけが得をする法律が、多く定められていた。
こういうのって騙すのに等しい行為だと俺は思う。
今回こうして知らずに損をした人と何が違うのだろうかね。
でも日本人は文句ばかりも言ってはいられない。
そういう法律は、少なくとも日本では国民が選んだ政治家が決めた事なのだから。
まあ民主主義が絶対に正しいとは言えないけれどね。
勉強して分かる人もいれば分からない人もいる訳で、全ての人に公平ではない。
無理な話かもしれないけれど、できるだけ誰にでも分かるようにするのが統治者の務めだと俺は思う。
その点異世界は、民主主義ではないけれど、統治者との関係は単純だし分かりやすい。
命を懸けて民を守る者が人の上に立っている訳で、同じ騙されるなら民主主義よりも納得はできるよな。
日本は昔武士の世だった。
武士は命がけで民を守るのだから、統治者として誰もが納得できた。
アルカディアにしてもイスカンデルにしても、異世界は悪い中世ヨーロッパと良い昔の日本とが合わさったような世界かもね。
尤も、昔の日本も良し悪し色々だったけれどさ。
俺は親子を深淵の闇を使って、ナマヤツハシの町へと送った。

「獣人に人間が差別される町か‥‥」
「世界は広いお。まさかそんな世界があるとは思わなかったお」
だよな。
転生前の世界にあった異世界ストーリーに、そんな町はなかなか出てこないからな。
でもそういう事もある。
いやむしろ、力のある少数が力の無い多数を支配するのが当たり前に多い。
マイノリティが常に虐げられる訳じゃなく、マジョリティが支配される世界こそ普通はあり得るのだと本当は理解するべきなんだ。
でも力のある少数が権力を持って情報をコントロールし、マイノリティこそが差別されていると喧伝して洗脳している。
今の日本はどうなっているんだろうな。
そのうち猫蓮に聞いてみるか。
俺たちはウミウシ砦の町を出て、次の町へと向かうのだった。
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