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厄介事に巻き込まれるのは嫌だけど‥‥

異世界に転生したら、魔物も殺さず仲良くするって話が多い。
実際に転生したらどうなるのかは統計の取りようがないけれど、俺もなんとなく殺すのはためらわれた所があるから、おそらくそうなる事も多いのだろう。
なんせ日本人だしさ。
殺さず仲良くすれば、当然共存共生という話になってくる。
みんな仲間になってゆく。
俺は今現在異世界の神だから殺しはなるべく避けるし、狛里も相手によっては殺しは避けようとしている。
その流れで転生者である猫蓮も殺しは避けるだろうし、つまりこのままだとまた、俺がアルカディアでやったように仲間がドンドン増えて行きやしないだろうか。
そうなると色々と面倒なんだよね。
あんな事やこんな事や、そんな事にもなっちゃう訳でさ。
でもアニメ作品なんかは、キャラの多さに比例して人気が出る場合もあるんだよな。
数がいれば推しキャラが見つかる可能性が高くなるだろうし。
数撃ちゃ当たるってね。
でもアニメだったらまだいいけれど、小説だと文字だけだから喋りに特徴がないと書き分けるのが辛いよな‥‥。
おっとソロソロ法螺貝王国最初のカラスの町に到着するようだ。

カラスの町に到着した時には、昼食タイムも少し回っていた。
町に入る時は少し門番に驚かれたが、既に不可侵条約は締結済みで問題なく入る事ができた。
まあ狛里は法螺貝軍の敵として参戦したと見られているからね。
そりゃ法螺貝側からすれば思う所もあるだろう。
しかし町に入ってみると、反応は思っていたのとは真逆だった。
「アレが萬屋の狛里か?!」
「この前まで法螺貝とは敵だったが、味方となれば王族たちも頼もしく感じているのだろうな」
「お前本気で言っているのか?あの見た目、戦力として頼もしいってよりは癒される感じだろ?」
「確かに。本当にアレで強いのか、俄かには信じがたい」
「いや、多少魔力を感じられるヤツなら分かると思うが、俺にはあの子の恐ろしさがハッキリと分かるぜ」
「何にしても俺たちには感謝しかない。無駄な戦争も回避できたしな。大歓迎しようじゃないか!」
なんだかおかしな事になっているな。
隣国の鬼海星領内ですら、一般人だと狛里を知らない者は多かった。
なのに何故この町ではこれほど狛里が知られているのだろうか。
まあ狛里に軍が追い返された訳だから、名前が売れるのは分からなくはない。
でもみんな狛里を見て一目で分かっている。
情報の伝達速度が早いと思う事はしばしばあるけれど、一体どうやっているのかねぇ。
この世界はまだまだ分からない事だらけだ。
「この町の人たちは、戦争を回避できた事で狛里ちんに感謝しているようねぇ~」
「戦う者は民の家族なんだお。殺し合いはどの世界でも庶民には嫌われるんだお」
「何故王族は戦おうとするのか疑問です。頭が悪いのではないでしょうか?」
おい想香。
ここに王族が二人いる事を忘れているぞ?
「本当にそうよねぇ~。馬鹿ばっかりで困るわぁ~」
「まったくだ。うちの者たちも我の言う事を聞きもせず多くの兵を見殺しにした。補償額もかなり大きなものとなったよ」
こいつら、自分は別だと心底思っているみたいだな。
尤もそれに相応しい知性は持っていそうだけれどさ。
何故此処まで自信満々になれるのか、ちょっとうらやましいぞ。
そんな感じで俺たちは、和気あいあいと歓迎ムードの町を楽しんだ。
買い物をすればサービスが後を絶たない。
他国の強者を此処まで歓迎できるって事は、法螺貝王家はよっぽど嫌われているのかもな。
他国とは言え民を軍隊に襲わせようとするとか、イカレているよね。
さてしかし、全てが俺たちを歓迎している訳でもなさそうだ。
「旦那様。三人ほど殺気を放つ者がいるみたいじゃぞ?」
「そうか。おそらくこの三人だな」
俺には殺気は感じられないのだが、魔力の大きい者が三人感じられていた。
おそらくこの三人は、殺気を抑えるのが得意な暗殺者か何かだろう。
探知能力のある尾花にだけしか殺気を感じられないのだからプロに違いない。
「動物的な能力で殺気を消しておる。おそらくは魔物が人に変化しておるのじゃろう」
「そんな事まで分かるのか?」
「元フェンリルの力を舐めないでもらいたいぞ」
「いや普通に尾花は凄いなって思っただけでさ」
「そ、そうか。ならいい」
尾花はそう言って少し照れていた。
愛い奴め。
それは良いとして、殺気が俺にも感じられるくらいに三人は俺たちに近づいてきていた。
此処まで近寄ってくれば分かる。
殺気の対象は間違いなく俺たちだ。
「はぐれレッサーデーモンのようじゃ」
「なんだそれ?」
「普通のレッサーデーモンは最下級悪魔じゃが、それよりも弱い人間の姿をした悪魔が稀におる」
「つまりこの三人は、見た目は人間そのものの最下級悪魔って事か」
そんなレアなのが三人もいるのか。
『レアと聞いたら黙ってはいられないのです!』
『そうなのね。捕まえるのね』
やっぱり少女隊はそこに反応するか。
『でもデーモンは仲間じゃないのか?』
『シャドウデーモンは他のデーモンとは違うのです』
『厳密にはデーモンじゃないのね。妃子たちはデーモンに似た影の魔物なのね』
知ってるけどさ。
とはいえ人間の姿をしているって事は、人として生きているって事だよな。
つまり言葉も話せるのだろう。
そもそも悪魔は知性の高い魔物な訳で、レッサーデーモンは人間並みと聞いた事がある。
そんな奴らを殺してしまうのもちょっとどうかと思うし、仮にそうしたらまた狛里がションボリとなっちまいそうだ。
まだ気が付いているのは俺と尾花だけか。
『菜乃たちも気が付いているのです』
『むしろ町に入る前から気が付いて‥‥いたのね』
嘘だな。
つか一々少女隊プラスの事を言うのが面倒なんだよ。
俺と意識も一部共有しているのだから、同じという事で判断してもらいたいものだ。
『ならばいいのです』
『一心同体を確認したかっただけのね』
さいですか。
おっと少女隊とテレパスしていたら、いつの間にか町外れの人気の無い所に来ているじゃないか。
なんと都合の良い展開なのだろう。
それを待っていたかのように三人が動き出した。
ちなみにテレパシーじゃなくて『テレパスする』ね。
お互い相手の思考を読みあっている感じだからさ。
そんな事はどうでもいいけれど、狙いはやはり狛里か。
ただ実際に行動してしまったら、殺気や気配を隠していても気づいてしまうんだよ。
まずは想香が背後にいる一人を峰打ちでぶっ飛ばす。
「十年早いと思います!」
続いて陽蝕がエストックで一人の攻撃を止めた。
「何者だ?」
そして最後の一人は、狛里自身が思い切りぶん殴っていた。
「あっ‥‥突然来られると‥‥手加減できない‥‥死んでないよね?‥‥」
そして一人だけ驚いていた。
「一体何が起こったんだお?敵の襲撃なんだお!」
全く猫蓮は。
「とりあえず落ち着け。もう片付いている」
俺はそういって猫蓮の肩を叩いた。
「分かっているんだお。リアクションが必要かと思って演技しただけだお」
嘘だと思うのだけれど、全部が全部嘘って訳でもなさそうだな。
流石日本人、周りに気を使いやがる。
「貴女らは何者なんだお?オデたちに向かってくるとはいい度胸なんだお」
猫蓮は陽蝕が止めた、一人元気な女に話しかけた。
「クッソ!なんだよこいつらの動き‥‥早すぎんだろ‥‥」
猫蓮は無視されたか。
「これは夢であろう‥‥ミィたちがこんなにアッサリと制圧されるなんて考えられないであろう‥‥」
「コノヒトタチはキケン。スグにテッタイを」
「はい!駄目なのです!」
「少女隊に目を付けられたら終わりなのね」
少女隊は三人が行動を起こす前に、既に魔封じの足枷を取り付けていた。
レアもの相手だと流石に仕事が早いな。
マスターコレクターと呼んでやろう。
「なんだコレ?魔力が使えないだと?!」」
「残念ながら、ミィは初任務で死亡が確定したであろう」
「‥‥」
襲撃者は見た目は同い年くらいの女の子三人か。
しかも定石通りみんな可愛い。
捕らえたはいいけれど、はたから見ると女の子たちをイジメているように見えはしないだろうか。
此処は念の為妖凛には人間の姿になっておいてもらおう。
「タマー!」
妖凛はそう言って俺の腕に捕まった。
さてどうするかね。
狛里は襲ってきた相手が弱すぎて、お仕置きしたら死んじゃうんじゃないかと思っている表情だ。
既に殺しそうになっていて、それにショックを受けてもいる。
想香も相手が自分よりもかなり小さな女の子だったので、狛里同様に動揺を隠せない様子だ。
陽蝕は自分が対応するものではないと考え、一歩引いて天冉に対処を任せる様子。
しかし天冉も困っているようで、このまま何事も無かったかのように去ろうとしている。
狛里に袖を掴まれ動けないみたいだけれど。
そんな中猫蓮だけが動いていた。
「大丈夫かお?うちのはみんな強いんだお。無理しちゃ駄目だお」
まずは狛里にぶん殴られて瀕死になっている白髪ボブの女を、猫蓮は魔法で治療した。
そしてすぐに移動して、今度は想香にやられた赤髪ポニーテールを治療し始めた。
「ミィたちはユーたちを殺そうとしたであろう?どうして助けるのであろう?」
こりゃまた無理のある語尾を持った喋りをする子だな。
猫蓮がブヒブヒ言ってるじゃないか。
俺の想像の中ではだけどな。
「でももう殺意は感じられないお。もう二度とオデたちを襲わないなら逃がしてやるお」
『勝手に逃がすとか言わないでほしいのね』
『捕まえたのは菜乃たちなのです。レアものはコレクションするのです』
『まあまあ。ああは言ってもあいつらもこのまま帰る事はできなんじゃないか?』
彼女たちはどうやら暗殺者のようだ。
身なりからそう感じるのもあるけれど、気配や仕草から誰が見ても分かるくらいにそれらしい。
そんな彼女たちが仕事に失敗したらどうなるか。
「コロシにシッパイシタ‥‥ニガサレテもソシキにコロサレル」
「だよなぁー!だから負けた時点でマイたちは死んだようなもんなんだよ」
嘘ではなさそうだな。
つか殺し屋の癖にやけにアッサリと色々話すのな。
変な喋りするヤツばかりだけれど。
まだプロにはなり切れていない駆け出し暗殺者か。
年齢も俺たちと変わらない感じだし。
「もうオデたちを殺そうとしないなら、オデたちで守ってあげてもいいんだお。でも信用も難しいんだお」
猫蓮がそう言うと、厄介事を引き受けそうになっている事に皆が不安の表情を浮かべた。
でもどうしていいかも分からないし、何かを言えば厄介事が転がり込んできそうで、俺も含めて皆は無言だった。
「ダッタラ‥‥アイタチをユーがテイムスルノはドウカ?」
「テイムだお?」
「ソウ‥‥アイタチは、ハグレレッサーデーモン。ニンゲンデアルユーナラカノウ。ミタトコロユーはキモチワルクナルホドのスゴイオーラをマトッテイル。ソンナユーナラテイムもウケイレヨウ」
「気持ち悪くなるほど、オデは凄いオーラを纏っているんだお?分かってしまう人には分かってしまうんだお。分かったお。オデが貴女たちをテイムして守ってやるお」
おいおい、完全にやっかい事に足を踏み入れようとしているぞ?
しかし何か言う事もできない。
流石にこんな若い女の子たちを見殺しにもできんしな。
全て猫蓮が引き受けてくれるなら、それもアリだと皆考えているようだ。
「でもオデはテイムの魔法が使えないお」
「モンダイアリマセン。ナマエをヨンデイタダケレバ、コチラにテイムサレルイシがアルノデテイムデキマス」
「だったら問題ないお。名前を教えるお」
『おい尾花、名前を呼んだだけでテイムできるのか?』
流石にそれは簡単すぎやしないかと、俺はテレパシーで尾花に尋ねた。
『レッサーデーモンなら可能だの。だけど召喚は無理じゃよ。あくまで主従関係ができるってだけの話かな』
それだとテイムのメリットが半減だな。
でもこちらに危害を加えなくさせる事が出来るのなら、別に逃げられても問題はない。
むしろその方がありがたい訳なんだけれど。
それにしてもこの暗殺者の三人娘は必至だな。
猫蓮に近寄るのをメチャメチャ嫌がっているのだけれど、それでもテイムされる為に必死に近づいて名前を伝えている。
周りの者に名前を聞かれたらマズいのかねぇ。
俺には聞こえてしまうんだけどさ。
「じゃあいくお!」
本当にこいつらテイムされる気なのか?
魔力レベル的には自分たちと同程度の相手だぞ?
気持ち悪いオーラを強さと勘違いしているようだけれど、言ってやった方がいいのだろうか。
騙しているみたいで気が引ける。
かといって他にテイムを了解するヤツは我がパーティーにはいない。
こいつらが組織から逃げ切るには唯一の選択肢なのかもしれないけれど‥‥。
「|松梅愛雪《しょうばいあいゆき》!」
「ハイ!」
結構微妙な名前だよな。
まあ最後にはその意味を紹介してくれると思うが‥‥。
「|竹松舞月《ちくしょうまいつき》!」
「うぃっす!」
こっちはなんか毎月腹を立てているような名前だぞ。
誰だよこんな名前を付けたのは。
『作者なのね』
『後で名前の由来が分かるのです』
おいおい少女隊、それは言っちゃ駄目なラインを超えているだろが。
「|梅桜美花《ばいおうみいはな》!」
「ミィであろう!」
今度はなんとなく綺麗な漢字が想像できる名前だな。
でも名前にしてはかなり無理がある読みだぞ。
なんにせよ名前を呼ばれた三人は少し光を発した。
そしてどうやらテイムは成功したようだった。
「成功したみたいだお。分かるお!貴女らはこれからオデの為にご奉仕するがいいお!」
テイムが終わった途端に猫蓮の気持ち悪いオーラが激増した。
こんなに可愛い女の子を三人もゲットしたようなもんだからな。
まあ猫蓮にとっては良かったのだろう。
少しは異世界生活を楽しめそうじゃないか。
でも厄介事はちゃんと自分で処理しろよ。
『とりあえず魔封じの足枷は取ってやれよ』
『分かったのね』
『仕方がないのです』
少女隊は無言で彼女たちに付けていた枷を取り払った。
「コレでアイタチは、アンサツシャタチカラカイホウサレル」
「これだけヤバいオーラの持ち主だ!萬屋狛里の仲間でもあるみたいだし、マイたちの事も守ってくれるだろ!」
「ミィは結局誰も殺さずに暗殺者を引退できたであろう」
なんかテイムされて普通に和気藹々と喜んでいるな。
おそらく最初からこれが狙いだったのかもしれない。
萬屋狛里を暗殺する仕事を引き受け、テイムされる事でその仲間になる。
一つ間違えたら逆に殺される可能性もあっただろうけれど、狙い通り上手く行ったって所だろうか。
でもこんな子たちが暗殺者とか間違っているし、殺されるってのも可哀想だから、結果はこちらとしても一番マシだったのだろう。
猫蓮が全て引き受けてくれた訳だし。
「オデの名前は『猫』に『蓮』と書いて猫蓮だお。猫蓮先輩と呼んでほしいお」
いきなりそんな要求をするとか相変わらずキモイな。
「スゴイオーラ‥‥センパイとヨバセテイタダク‥‥」
「マジか?!マイは流石にこのキモ凄いオーラに抗ってそうは呼べそうにない。悪いが普通に『猫蓮』と呼ばせてくれ‥‥」
「ミィもこのオーラの前では無理であろう。猫っちと呼ばせてほしいであろう」
おそらくこの愛雪って子がリーダーだろうとは思うけれど、凄い精神力だな。
頼まれた通りセンパイと呼ぶとか。
ただやはり他の二人は無理なようだ。
命令されたら抗えないかもしれないけれど‥‥。
どうなるのか見てみたい気もするけれど、女の子がもだえ苦しんでいる所を見るのも悪趣味だから、命令はしないように猫蓮には言っておかないとな。
「仕方ないお。オデのオーラが凄すぎるんだお」
「トコロデセンパイ。ホカのメンバートクラベテ、マリョクはチイサイキガスル‥‥」
おっとそこに気が付いちゃったか。
「そうだお。この中だとオデが一番弱いお。もしかしたら愛雪の方が魔力が大きいお」
「ちょっと待て!魔力が弱くても戦闘力はあるんだよな?」
「この中じゃやっぱり最低だお。でも大丈夫だお。貴女らの事はオデが守るお」
「後のカーニバルであろう‥‥」
彼女たちの顔が、急に不安な表情へと変わった。
猫蓮のオーラに本気で強いと思っていたようだ。
これはちょっと安心させてやらないとな。
俺はようやく口出しする事にした。
「大丈夫だ。猫蓮は魔力はお前たちと変わらないけどな。不老不死なんだよ。だから戦い方によっては絶対に負けないし、一番強いとも言える。身を犠牲にして守ってくれるさ」
だけど三人の反応は良くなかった。
「フロウフシ‥‥」
「ちょっと待て!それってマイたちは死ぬまでこいつを主としなければならないって事じゃねぇの?」
「人間は長く生きても百歳であろう。そのくらいなら我慢できるであろうと考えていたであろう」
俺の言葉に逆にショックを受けていた。
なるほどね。
テイムと言っても人間はすぐに寿命がくる。
その間我慢すれば自由になれると考えていたんだな。
ご愁傷様。
「はいはい~!一応これで落ち着く所に落ち着いたわねぇ~。猫蓮ちんはちゃんと三人の面倒を見るのよぉ~」
「面倒だお?」
「食事代とか宿代とか、これから色々とお金がかかりそうですね?本人たちが持っていればいいのですが?」
想香よ。
この三人が金とか持っているように見えるか?
身なりはかなりボロだし、まずは衣服を新調してやる必要があるかもしれない。
「オカネはアリマセン」
「金があって人生楽しめるなら、暗殺者組織にいても問題ないんだよ。ただ殺しをやらされるだけだったから抜けようと考えた訳でさ」
「萬屋狛里のパーティーメンバーなら金は持っているであろう」
もう既にぶっちゃけトークを始めちゃうか。
ただ残念ながら猫蓮は一番金を持ってないんだよな。
まあ俺も持ってないけど、いざとなったら調達は可能だしさ。
「なんとかなるお。一応貴族だし、しばらくは策也殿に借りるお」
「俺も金なんて持ってないぞ?」
‥‥。
「猫蓮、必要なら我が貸すから安心してくれ‥‥」
「ありがとうだお。持つべき者は友達だお」
良かったな。
友達がいて。
陽蝕もちょっと嫌そうだけどな。
兎にも角にも俺たちパーティーは、メンバーを一気に三人増やして、暗殺者組織から狙われる十人の集団へと変わったのだった。
つか少女隊プラスを含めると十三人もいるよ。
きっと一人が偽物だな。
なんてネタが分かれば俺と同世代かもw
いやあれは十一人だったか。
十三人は銀河を漂流する方だ。
さてこの後俺たちは、個室の食事処で食事をしながら、三人の事や暗殺者組織の事を色々と聞いた。
まず組織の事だが、名前は『ワクチン』と言うらしい。
おいっ!
こりゃまたきわどい名前を付けるな。
だから俺はワクチンじゃなくて七色に光るキノコを食べた事で死んだんだよ。
ハッキリ覚えてないけどさ。
で、その組織はこの世界で最大規模だと自称している。
世界の事を分かるには難しい世界だから、本当かどうかの判断は難しい所だ。
だけれどそう言うのだから、その可能性を考えて対応を考えないとな。
「ぶっ飛ばす‥‥」
狛里の対応案はそれ一言だったけれどね。
そして三人は、魔物を強制的に従わせる術者によって組織に入れられたらしい。
尤も入らなければ殺されていたと考えられる訳で、そこに選択肢は無かったのだろう。
愛雪は美花とは元々知り合いで舞月とは組織で知り合って行動を共にするようになったとか。
美花はこの仕事が初仕事で、まだ人殺しはした事が無かったようだ。
愛雪はそんな美花に殺しをさせたくなくて、今回の仕事を進んで受けたらしい。
狛里のパーティーなら、もしかしたら自分たちを守ってくれるのではないかと考えたとか。
作戦が成功すると本気では思っていなかったみたいだけれどね。

食事の後は宿屋へと移動した。
まだ休むには早いけれど、女性陣は温泉に入って親睦を深めるのだとか。
なんだかんだみんな優しいね。
厄介事に巻き込まれるのは嫌でも、そうなってしまったら仕方がないと割り切れる。
まったく、俺もその輪に入ってそう考えられるならいいんだけれどさ。
とは言え男は一緒に温泉には入れないので、護衛は尾花に任せて俺は部屋で三人の服を作る事にした。
同じようなのを妖糸でさ。
猫蓮と陽蝕は二人で町に出ていった。
なんだかんだ仲良しだねぇ。
俺は更にその後は、闇の訓練場へと潜って移動用の家を増築する。
アルカディアでの冒険の際に作ったのは十人用だったので、此処でもそうしていた。
でも少女隊プラスも出て来たらかなり狭い。
この調子で行ったらまだまだ仲間が増えそうな予感だ。
今回猫蓮以外は、それを避けたい思いが見えたけどさ。
或いは猫蓮も同じ思いになれば、今後はもしかしたら最少に抑えられるかもしれない。
とりあえず二十人用にしておくか。
最悪百人で冒険の旅とかありそうだよなぁ。
そうなったらナマヤツハシの町に送ってそこで生活してもらおう。
こうして俺たちのパーティーは実質十三人となった。
これ以上増やしたくはないけれど、どうなるのかは神のみぞ知る。
神でも知らないんだけれどね。
ちなみに今回の三人娘、名前がかなり微妙だと思った人が多いと思う。
この三人の名前、四つの三文字言葉が含まれているんだよね。
『松竹梅』はみんなご存知だとは思うけれど、めでたい植物として知られている。
そして等級を表すのにも使われているね。
『梅松桜』は花札の役にある。
『愛舞美』は『アイ・マイ・ミィ』で、自分の一人称にそれぞれが使っているものだ。
最後は『雪月花』で、四季の美しいものを表す言葉だね。
『風花雪月』とか『雪月風花』とか『風』が含まれる場合もあるよ。
とりあえず今後、この三人の事は『雪月花』と呼ぶ事が決定していた。
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