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陽蝕の戦いと天冉の能力

案ずるより産むが易し、なんて|諺《ことわざ》がある。
やってみたら案外、思っていたよりも簡単にできてしまう事はよくある話で。
しかし異世界で冒険者をやるのは命がけだ。
一つの判断によって命を失う世界では、とりあえずやってみようという話はありえない。

ハマグリの町を出発した直後、陽蝕が突然言い出した。
「みんな。頼みがあるんだ。この近くにドラゴンダンジョンがあるんだが、そこの攻略を手伝ってほしい」
「いきなりですね」
「でもダンジョン攻略とかテンション上がるお!異世界と言えばダンジョンなんだお!」
一応今日の予定は決まっていたけれど、ダンジョン攻略とか強くなるには良いかもしれない。
猫蓮も乗り気だし、俺としても反対する理由はないな。
決めるのは狛里であり、そして天冉な訳だけれどどうするかねぇ。
「私は‥‥構わない‥‥」
狛里はオッケーと。
となると天冉もおそらくオッケーだが、後は料金しだいという事になるのだろうか。
萬屋ぼったくりは、仲間に対してもぼったくるんだよね。
「狛里ちんが良いなら私は構わないわよぉ~。それじゃあ行きましょう~」
あれ?ぼったくらないの?
『乙女心という奴なのです』
『天冉も満更じゃなかったのね』
少女隊がテレパシー通信で言ってきたように、なるほどそんな気もする。
確かに先日から陽蝕は天冉に対して思う所があるようで、積極的に話しかけている。
それに対して天冉も満更じゃないご様子に見える。
『陽蝕がこんな事を言い出すのも、何か関係があるように思うのです』
『男の子なのね』
少女隊は見た目に逆らって全く乙女じゃない訳だけれど、そういう所はやはり割と鋭いのだろうか。
しかし一体どうしてこんな事をこのタイミングで言い出すのかねぇ。
天冉に早く認めてもらいたいから?
「ドラゴンダンジョンは十階層になっている。その最奥にはダンジョンボスのドラゴンがいるんだ。それでそのドラゴンなんだが、我一人だけで相手させてほしいのだが?」
おうおう陽蝕はやる気だねぇ。
「一人でドラゴンボスを倒すとか無茶なんだお」
「仮に千年竜のようなドラゴンだと、瞬殺されてしまいます。僕たちに頼るべきです」
「うん‥‥ドラゴン相手だと‥‥危険‥‥」
ここまでに出会ったドラゴンを見るに、陽蝕だと勝てそうにないんだよな。
「いや、ここのボスはそんなに強くはないんだ。我の二人の兄も単独討伐している。だから心配する必要はない」
「そうなんだお?」
「兄たちは魔力的には我と変わらない。鬼海星流剣術だって我の方がレベルが高い。問題はないはずだ」
言い聞かせるように陽蝕は言葉に力を込めた。
この様子だと、倒せるか倒せないかギリギリの所なのだろう。
だけどこの壁は今乗り越えなければならない。
そんな感じか。
「ダンジョンボスが強くなっている可能性ってのはねぇのか?」
「それは大丈夫かと思います」
「ダンジョンが生み出せる魔物は一定と聞いているであろう」
雪月花たちの話す通り、この世界のダンジョンは概ねそんな感じらしい。
ダンジョンの魔物を倒したら、数日中に新たな魔物が生まれてくる。
そしてそれは、倒された魔物と同じレベルの個体なのだ。
強くなったりはしないから、その辺りは安心できるだろう。
「我は一度、単独ではないがそのドラゴンを倒している。何も心配はいらないぞ」
実際にパーティーで戦って倒した事もあるのか。
ならば、これは逆に不安になるな。
相手の力を知った上で、陽蝕はこれだけの決意をしなければならないのだから。
だけれどその決意を蔑ろにはできない。
命がけの戦いになるのは明白で、皆少し緊張した面持ちでダンジョンへ向かう事となった。
「つまりこういう事よねぇ~?最後のボス戦までは萬屋メンバーでなんとかして、最後のボス戦を万全の状態で戦わせてほしいと‥‥」
「その通りだ。だからそれまでの戦闘は皆に頼む」
そんな事、このメンバーでなければなかなか叶えられない要望だ。
そこまでしなければ倒せないドラゴンなのか。
何もなければと思いつつ、嫌な予感しかしないな。
未来予知能力がそう告げている。
ただ、陽蝕が死ぬという感じは伝わって来ない。
ならばやらせるしかないのだろう。
『お前たちはどんなドラゴンか知らないのか?』
もしかしたら少女隊が自由に行動していた時期にダンジョンに入っているかもしれない。
そんな期待を持って聞いてみた。
『ドラゴンダンジョンはレベルが低すぎて入ってないのです』
『そうなのね。あまり良い物が手に入るとは思えないのね』
お前たちにしたらそうだろうけれどさ。
『でも陽蝕の兄タマが倒したのなら、きっと楽勝なのです』
『そうなのね。兄タマは見た事があるのね。魔力は猫蓮や雪月花程度なのね』
『えっ?そうなの?』
いつの間に見てるんだよ。
でもその程度の魔力で単独討伐できるのなら、ちゃんと戦えば陽蝕なら勝てるだろう。
剣術でも兄より上だって言っていたからな。
嫌な予感は別の事かもしれない。
そんな不安を持ちつつも、俺たちはドラゴンダンジョンへと入っていった。
俺たち以外に冒険者の姿はなかった。
普通に見れば最高難易度のダンジョンの一つだろうからな。
とは言えこのメンバーが集まれば、序盤のリザードマンは敵ではなかった。
しかし徐々に敵も強くなり、八階層目にはレッサードラゴンも出てきた。
「雪月花たちはオデの後ろに回るお!奴は危険だお!」
「そうさせてもらうぜ!小型とはいえドラゴンだからな」
「やって殺れない事もないかもしれませんが、命をかけて戦う場面でもないです」
「だったらミィに戦わせてほしいであろう。ミィなら安全であろう」
猫蓮の静止も無視して、美花はレッサードラゴンへと向かっていった。
ほう、この魔力差でもあの子は向かっていけるのか。
雪月花の強さや能力はまだよく分かっていないけれど、おそらくみんな何かしらの能力を持っている。
一応プロの中でも上位の殺し屋だった訳だしね。
いざとなったら助ければいいだけだし、ちょっと見させてもらうか。
美花は武器に忍者刀を使う。
見た目もそれっぽい衣装だ。
ならばそれっぽい技を使うと見た。
「分身の術!」
美花の姿がドンドン増えていった。
なるほど、確かに忍者だ。
だけれどこれは、神眼で見たところ元々は幻影の魔法だな。
つまり自分の姿限定の幻影魔法と考えられる訳で、レベルは大して高くはない。
当然ドラゴンの中で最下級のレッサードラゴンとはいえ、通用する相手ではないだろう。
「くっ!通用しなかったであろう」
美花はドラゴンの爪を|既《すんで》のところでかわした。
通用するか試したな。
最初から通用すると思って向かって行っていたら、今の爪攻撃はかわせていない。
「全く仕方がないですね」
愛雪も前へ出て戦闘に参加する事にしたようだ。
となると流れで舞月も前へと出るしかないか。
「ったく、しょうがねぇな!三人なら楽勝だろう?」
結局雪月花三人対レッサードラゴンの戦いとなった。
ちなみにレッサードラゴンは一頭ではない。
狛里や尾花は前線で複数と対峙していた。
そっちは力の差があるし殺られる事はありえないだろう。
俺は雪月花の戦いに注目した。
まず愛雪だが、最前線でレッサードラゴンの攻撃を一手に引き受けている。
装備は両方の腕に丸い盾を付けていて、その周りは刃になっており武器としても使えるようだ
どうやらパリィディフェンスの能力を持っているようで、これに集中していれば不安はなさそう。
ただレッサーとはいえドラゴンだから、繰り出してくるのは物理攻撃だけではない。
体格差もあるので受け流しスキルには限界があるだろう。
それをサボートするのが舞月か。
ドラゴンブレスのモーションに入ったら、|苦無《くない》や手裏剣で攻撃し相手の気を自分に向ける。
それらの武器はどうやら魔法によって作られているようだ。
ただし魔法武器ではなく、普通の鉄製武器の具現化だな。
魔法武器じゃないのは、暗殺の後に自分の魔力を残さない為か。
でもこれからは、両方使えるようにしておいたほうが良いかもね。
人間相手ならまだ良いけれど、ドラゴン相手にその物理攻撃じゃダメージにもならない。
尤も、今は牽制さえできればいいようで、気を惹いては得意の高速移動でブレスをかわしていた。
つか戦闘時の移動速度は三倍速いな。
そして攻撃は美花か。
確か自己流剣術で忍者刀による戦闘が得意。
少しずつ確実にレッサードラゴンを斬っている。
そしてアッサリと三人はレッサードラゴンを仕留めた。
「凄いお!格上でも三人で戦えば楽勝だお!」
「先輩にそう言っていただけると嬉しいです」
「まあ、マイたちはこれくらいできるんだよ」
「ただ、ドラゴンのレベルになると倒すのは難しいであろう」
そうだな。
倒すとなるとおそらくは火力不足だ。
愛雪も攻撃力はありそうだが、せいぜい今のレッサードラゴンが倒せるかどうかのレベル。
舞月は動きは良いが攻撃力がかなり落ちるので勝てるのは同レベルまで。
美花が一番攻撃力はありそうだけれど、大きい魔物や魔法を使ってくる相手だと守備面で不安がありそう。
尤も、まだまだこいつらは能力を隠していそうだし、なんだかんだ放っておいても大丈夫そうだけどね。
「じゃあ‥‥そろそろ‥‥九階層に‥‥行く‥‥」
「旦那様、どうかしたのか?」
流石にこの二人は余裕だな。
「いや、雪月花たちも大丈夫そうだなって思っていただけだよ」
「そうか」
尾花が少し寂しそうだった。
一応俺についてきてくれているのだから、少しくらいは尾花の事も見てやらんと駄目かな。
でも普通に強いし、今の所俺が見てやる必要もないんだよなぁ。
陽蝕が戦うボスドラゴンだって、尾花ならおそらく楽勝だろう。
というかそれくらいの相手じゃないと、陽蝕に勝機はない。
「尾花には凄く助けられているよ。お陰で俺が好きに動ける訳だしさ。ありがとう」
「いや、当然の事じゃ」
尾花が少し照れていた。
やはりお礼ってのはちゃんと言っておくべきだなと思った。
さて九階層。
今度は猫蓮も雪月花たちに混じって戦っていた。
息が合わずに足を引っ張っているようにも見えるけれど、攻撃力は上がっているので倒すまでの時間は短縮されているようだ。
レッサードラゴンくらいの敵を相手に練習しておけば、いざって時に役立つだろう。
「皆さんなかなか強いですね。僕は安心して見ていられます」
いや想香は見てないで戦っていいぞ?
絶対魔法防御とマジックプロテクションがあれば、そうそうダメージを受ける事もあるまい。
それに俺のプレゼントした巫女服だってある訳で、この辺りなら俺が見ていなくても殺される事はまずない。
まあこの階層も楽勝そうだからいいけどさ。
「前に我が仲間と来た時は、ここまで来るのに半日を要した。そしていかに戦わずに下層へと行くことができるのかを考えていた。少し悲しくなってくる」
みんなの戦いを見ながら、陽蝕が独り言を漏らしていた。
この世界で狛里の戦いを見てしまったら、そういう気持ちにもなるかもな。
自分が必死に倒した魔獣を、小さな虫を殺すかのごとく倒してしまう訳で。
上を向いたらきりがない。
下を向いたらあとがない。
男は辛いよな。
でも陽蝕は上を向いて進むのか。
兄たちにライバル心でもあるのだろうか。
王族が物語に出てくると、大抵兄弟はライバルだったりする訳でさ。
実際に王位継承権争いなんて話はよくある話で。
でも陽蝕から王になりたいという話は聞いた事がない。
どちらかというと自由気ままに生きたいのだと思っていた。
まあでも陽蝕が神を倒す者かもしれないし、強くなろうとしてくれるのは大歓迎だよ。
九階層目の討伐も終わり、俺たちはいよいよ最後のフロアへと足を踏み入れた。
「凄く広いんだお」
「この十階層は対ラスボス用のフロアだけなんだ。ただし実際の戦闘は、基本的には奥の半分だけが使われる。こちら側から攻撃したり、ここに逃げてきたりしない限りはね」
つまり俺たちはこちら側で何もせず、ただ陽蝕の戦いを見るだけという事か。
「みんなはここから見ていてくれ。そして絶対に手出し不要だ」
陽蝕はそう言いながら天冉を見ていた。
勝つ所を天冉に見ていてもらいたい。
そういう思いが伝わってきた。
この二人、何があったのかは知らないけれど、姫と王子だからな。
お似合いのカップルと言えばそうなんだよね。
でも現状、おそらく先日の一件で天冉の方が圧倒的に強い可能性が出てきた。
どうやって天冉が法螺貝の王を倒したのかは分からないけれど、それに釣り合う男になりたいと考えているように見える。
別に女の子の方が強くても‥‥。
いや、男としてはやっぱりそういう思いあるよな。
俺もみゆきよりも弱いというのはコンプレックスになっていたし。
だいたい男が女に勝てる所なんてそれくらいしか無いわけで。
強さで負けたら何で勝てるんだって思うし。
なんだか陽蝕を応援したくなってきたぞ。
陽蝕は一人向こう側に歩いてゆく。
広いフロアの先には、豆粒ほどの大きさのドラゴンが見えていた。
それにゆっくりと近づいていく陽蝕。
「旦那様。魔力では完全に負けておる。勝てる可能性はほとんど無いように思うぞ?」
尾花の言う通り、魔力を感じられるならみんな同じ気持ちだろうな。
だけど魔力だけが全てでない事も知っている。
不安はあるけれど期待もしてしまう。
眠っているようだったドラゴンが、陽蝕の気配に気がついて立ち上がった。
単純にこの場面を見たら、勝てる可能性すら感じられない。
本当に兄たちはこのドラゴンに勝ったのか?
俺たちは見守るしかなかった。
陽蝕が仕掛けた。
武器はミスリルエストック。
刃が細くて軽量。
振り回しやすく、斬る事も突く事もできる扱いやすい剣だ。
王族や貴族が好む武器でもある。
刃幅のある普通の|剣《スォード》は、斬るというよりは打撃武器に近くスマートじゃないからね。
勇者や戦士は剣を持っている事が多いけれど、スピード重視の対人戦闘ならエストックの方が良い。
尤も今は対ドラゴン戦闘なので、エストックよりも剣の方が向いていると思える。
兄たちが単独討伐をしていると言うのなら、おそらく武器は剣なのではないだろうか。
いや、陽蝕の剣捌きは華麗だ。
この動きから鬼海星流剣術とやらは、エストックの扱いに特化しているものと思われる。
どう考えてもエストックでこのドラゴンは倒せないだろ?
兄たちも鬼海星流剣術を使っていたとするなら、おそらく武器はエストック。
どうやって倒したのか想像ができない。
魔力でも体力でも負けている相手に、攻撃力の低い武器でどうやって勝つ?
何か必殺技でもあるのだろうか?
「少しずつダメージを与えているお」
「だけど‥‥ドラゴンは‥‥治癒力が‥‥ある‥‥」
「ドラゴンは何気に魔法も使いこなすのです。それに陽蝕さんの方が魔力消費が多いように見えますね」
勝機が見えない。
チラッと横をみると、天冉が手を合わせて祈るように見守っていた。
クッソ。
なんとかしてやりたいけれど、手を出せば俺は一生恨まれるだろう。
男の決意を無下にされたら、それは死ぬよりも辛いはずだ。
或いは一生立ち直れない事も考えられる。
それだけじゃない。
ここで助けられた陽蝕は、おそらくパーティーを離れて、もう二度と天冉の前には現れない気がする。
男って奴は面倒くさいぜ。
「やべぇっ!」
舞月の声に合わせて、ドラゴンの尾が陽蝕を捉えてふっとばしていた。
「陽蝕さん!」
うわっ!天冉が『さん付け』で名前を呼ぶのなんて初めて聞いたぞ。
つかそれだけ今の陽蝕はヤバい状態だ。
しかしすぐに立ち上がって次の一撃はかわしていた。
なんとかギリギリ動いてはいるけれど、もう反撃する力も残っていないのではないだろうか。
負けはほぼ確実。
一か八か急所狙いに行くくらいしかもう可能性はない。
そう思った時、陽蝕がドラゴンの額めがけてジャンプした。
「駄目なんだお!空中じゃいい的なんだお!」
焦りやがって。
急所を狙うなら最大限準備してからにしろよ。
ドラゴンの爪が陽蝕に向かう。
俺ならまだ助けられる。
でも‥‥男の決意を無駄にするのか?
この戦いに、陽蝕は何かを賭けていたはずだ。
おそらくは天冉。
俺は横を見た。
「あれ?天冉は?」
天冉がいなかった。
「天冉‥‥ちゃん‥‥」
「天冉さんがドラゴンに向かって行きました!」
見ると走ってゆく天冉の魔力が一気に上昇した。
あの時の魔力だ。
ならばドラゴン相手でも大丈夫だろう。
そして陽蝕も、天冉が助けるなら受け入れられるはずだ。
「天冉ちゃんを‥‥止めないと!‥‥」
狛里がそう言って後を追っていった。
いや既に天冉はドラゴンの腕を蹴飛ばして加勢に入ってしまっているんだが?
「もうやらせていいんじゃ‥‥」
俺がそう呟いた時、天冉の魔力が変化した。
とても邪悪な禍々しい気配がこのフロア全体に広がる。
並みの使い手ならこれだけで気絶するんじゃないかと思えるくらいだ。
「なんだよこれ‥‥」
「天冉|氏《し》の魔力が邪悪なものに変化しました」
「ちょっと吐きそうであろう」
なるほど天冉は、こんな自分を見せたくなかったのか。
だから戦わずに守らせていた。
天冉は次の瞬間にはドラゴンを仕留めていた。
「全く。魔力は確かに見せたくないかもしれないけれど、そこまで隠す必要もなかったんじゃないか?」
「後は周りに迷惑なんだお」
「そうですね。僕でもちょっと気分が悪いです」
でもこれで終わりだよな。
そのはずなんだけど、まだ天冉の魔力は辺りに立ち込めていた。
「旦那様。まだ終わってないようじゃ」
「そうなの?」
俺は天冉の方を見た。
すると天冉は陽蝕に襲いかかっていた。
それを既の所で狛里が止めた。
どういう事だ?
俺は天冉をよく見た。
すると明らかに表情がヤバい。
我を忘れたあの蟲のように目が赤くなっている。
つか普段目が細く笑顔なので、目の色まで見えなかったけどさ。
何にしてもこれは止めないと駄目だと分かる。
俺もすぐに狛里の所まで行った。
「どういう事だ?」
「天冉ちゃんの‥‥|一霊四魂《いちれいしこん》は‥‥|荒魂《バーサクモード》で‥‥そこにいる‥‥みんなを殺すまで‥‥続く‥‥」
おいおい、なんだよそのヤバい能力は。
「止める方法は?」
「前は‥‥私が‥‥六時間‥‥羽交い締めにして‥‥動きを止め続けた‥‥」
マジかよ。
なるほどなぁ。
これじゃ天冉を守らなければならない訳だ。
そしてそれを狛里がやるのも当然。
狛里じゃなきゃできないからな。
いや待てよ。
一霊四魂の能力は知らないけれど、バーサクモードの解除方法はアルカディアで神の南に聞いた事がある。
確か王子様がキスすれば収まるとか。
「陽蝕!大丈夫か?!」
陽蝕を見ると、何やらブツブツと呟いていた。
「天冉姫‥‥素敵だ‥‥素敵すぎる‥‥」
こんな時にヤバいもの好きが出ちまってるのかよ!
いやでも助けられた事にショックを受けたりしているよりはマシだな。
「陽蝕!天冉は今自分をコントロールできない状態に陥っている!その天冉を助けられるのはお前だけだ!狛里が天冉を抑えてくれる!その隙に天冉にキスをするんだ!そしたら天冉は正気に戻るはずだ!」
「俺が‥‥天冉姫にキスをするだと?そうしないと天冉姫を救えない?なんておいしい‥‥いや、なんて難易度の高いミッションなんだ」
こいつ今おいしいって言ったよな。
まあおいしい役回りではあるし、だからこそお前に譲ってやるんだよ。
天冉はお前の事を好きみたいだからな。
「オデがやってもいいんだお?」
「駄目に決まっているのです。そんな事したら天冉さんはずっと気が狂ったまま一生を過ごす事になるでしょう」
ちょっとそこまでは言い過ぎだぞ想香。
でもマジで更に状況が悪化しそうだ。
「とにかく陽蝕頼む!そして狛里、取り押さえるんだ!」
さっきからずっと狛里は天冉の攻撃をかわし続けていた。
かといって大きく逃げると、ターゲットを他に変えて誰かが瞬殺されかねない。
「頑張る‥‥」
「任せておけ!天冉にキ、キ、キスをすれば良いんだよな」
「おう!唇にブチューとやれば正気に戻るはずだ!」
知らんけど。
南はそう言っていたしな。
それにしても天冉、マジでヤバいよ。
下手にスピード能力を持っているせいで、スピードだけなら狛里と互角に見えるもんなぁ。
走る速さを見た時、戦いに少しは活かせそうとか思っていた頃が懐かしい。
嫌というほど活かしておりますよ。
俺が止めてもいいんだけどさ、俺が羽交い締めしている天冉に陽蝕がキスするのは絵的に良くない。
男が揃ってお姫様を襲っているようだからな。
そんな事を考えていると、ようやく狛里が天冉を捕らえた。
うわぁ‥‥、マジで恐ろしい表情をしている。
もはや天冉は悪魔だな。
間違ってもキスとかしたくねぇ。
陽蝕が恐る恐る天冉の方へと向かってゆく。
「早く‥‥天冉ちゃんを‥‥傷つけたく‥‥ない‥‥」
ただ羽交い締めにするのは難しいようだ。
つまり前にこうなった時は、狛里も天冉をある程度痛めつけなければならなかったのだろう。
つかキスとかしてマジで大丈夫か?
陽蝕の唇が食いちぎられたりしないだろうな。
まあその程度じゃ即死はしないだろうし、そうなったら回復魔法で治してやるよ。
「早く‥‥天冉ちゃんの‥‥魔力が‥‥まだ上がっている‥‥」
これだけやってまだ魔力が上がるのか。
流石に狛里よりも強くはならないと思うけれど、こりゃ相当だな。
「わ、分かった‥‥」
陽蝕が天冉の顔に自分の顔を近づけてゆく。
よくその顔を眼の前にして、そんな愛おしいものを見るような目で見られるな。
ゲテモノ好きだからか、或いは本当の愛なのか。
何しても陽蝕は嫌がる素振りを全く見せずに、天冉にキスをした。
さて、これで南の言う通りバーサク状態が解除されるのか?
‥‥。
あれ?解除される気配がないぞ?
おい!愛の力はどうした?
もしかして陽蝕の愛は足りなかったのか?
その時、辺りがお花畑に変わっていくような心地よさに包まれた。
これは‥‥妖凛?
俺の体を使って、妖凛が静寂の魔法を発動したようだ。
すると今まで狂気に満ちた天冉の表情が、見る見る元へと戻っていった。
妖凛?なになに?
キスで元に戻せるのはバーサク状態であり、これは天冉の能力によるものだから戻せないと?
でもこの静寂の魔法なら戻す事も可能なのか。
いや、だったらキスする前に‥‥。
妖凛はキスするのを待っていたのか。
じれったい二人をくっつけるにはこれが一番だと‥‥。
妖凛、恐ろしい子w
「禍々しい魔力が収まったお!」
「本当にキスで解決するんですね。ちょっと都合が良すぎるので色々と疑ってしまいます」
想香が俺の方を見た。
なんて感のいい子。
俺は気づかないフリをした。
「私‥‥陽蝕さん‥‥」
「あっ、いや。こうしないと天冉姫を救えなかったので‥‥申し訳ない」
「いえ‥‥嬉しかったです。ありがとう」
「えっ?‥‥」
「狂乱している時の事も、私はちゃんと覚えているんですよ‥‥」
つまり、『素敵だ!素敵過ぎるぅ~!』と陽蝕が発情していた所も見られていたと。
「私のあの姿を見ても‥‥素敵と言ってくれたのは貴方だけです」
天冉の顔が色気に満ち溢れていた。
良かったな陽蝕。
ここに一つのカップルが出来上がった。
あーいい事したわ。
今度は天冉から陽蝕にキスをしていた。
ただし、あの天冉の本質は変わらない。
きっと尻に敷かれるんだろうなぁ。
「天冉ちゃん‥‥私‥‥ずっと下敷きに‥‥なってる‥‥」
「あらごめんなさい狛里ちん~」
まあ何にしても、全ては有耶無耶の内にいい方向へと落ち着いたのであった。
【<┃】 【┃┃】 【┃>】
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