ネット小説

2013年11月14日【木】08時49分21秒

昨日、よく分からないおっさんから電話があった。
「はいもしもし秋華です」
「おう、秋華！久しぶり！」
「えっ？誰ですか？」
「ははは、相変わらずだなぁ～」
「えっ？もしかして、先生っすか？」
「誰が先生だよｗ」
「えっ？じゃあ、先輩っすか？」
「ははは、そうだ先輩だ！」
どうやら先輩だったらしい。
「で、先輩、どうしたんっすか？」
「いやなにね、秋華、今からちょっと遊ばないか？」
「何言ってるんっすか！俺今仕事中っすよ！」
「ははは、秋華は相変わらずだなぁ～」
相変わらずって、先輩はいつも仕事中に電話をかけてくるようだ。
「で？何時なら時間空いてるんだ？」
「そうっすねぇ～‥‥明日ならいいっすよ」
「じゃあ明日、いつもの河川敷で待ち合わせな」
「いいっすけど、いつものってどの辺か分かんないっすけど？」
「ははは、秋華は相変わらずだなぁ～」
もういいや‥‥
「で、時間は？」
「一時だ！」
「一時っすね！分かりました！」
「久しぶりで顔が分からないかもしれないから、いつものように鉄アレイ持って待っててくれ！」
「えっ？俺いつも鉄アレイなんて持ってましたっけ？」
体育会系なら有りえる話なのか？‥‥
「ははは、秋華は相変わらずだなぁ～！じゃあ、まあ、そういうことで！」
「ちょっ！」
電話は切れた。

こうして今日、俺は鉄アレイを持って河川敷で先輩を待っている。
そろそろここにきて三時間になろうかというのに、あのおっさんは何をしているのだ。
そう思っていたら、ようやく向こうから歩いてくる男の姿が見えた。
「よう！秋華久しぶり！なんだか疲れた顔してるなぁ～」
「いや流石に三時間も鉄アレイ持ってりゃ疲れますよ！」
「ははは、秋華は相変わらずだなぁ～」
おいおい俺は、毎回三時間も鉄アレイ持って待たされてるのかよ！
「先輩、勘弁してくださいよぉ～」
「すまんすまん！ところで腹が減ってるんだ。飯を食いに行こう！」
「そうっすね。昼飯食ってきましたけど、もう四時っすからね！」
「ははは、相変わらず秋華はきついなぁ～」
普通先輩相手でも、三時間も待たされりゃ怒りますよ！
「で、何食います？」
「秋華は何が食べたいんだ？牛丼か？」
「そうっすねぇ～‥‥ラーメンなんか‥‥」
「そうだな！やっぱり牛丼だよな！」
この人、牛丼が食いたいならそう言えばいいのに。
「ですね。牛丼が食べたいっす！」
「ヨーシ！牛丼にするか！まあわしはそんなに食いたくもないから、今日は秋華の奢りだ！」
「何言ってるんっすか？！普通先輩が奢るもんでしょ？」
「ははは、秋華は相変わらず言うことが同じだなぁ～」
おいおい、俺は毎回奢らされているのかよ！
「いらっしゃいませぇ！ご注文は？」
「えっと、じゃあ並を‥‥」
「わしは超特盛りをつゆだくで！味噌汁と卵をつけてな！」
「かしこまりましたぁ！並一丁！超特盛りつゆだく入りましたぁ！！」
この人、奢りだと思って遠慮なさすぎじゃね？
「おまたせしましたぁ！」
デカ！超特盛りデカ！
「いただきまぁ～っす！」
早！この人食うの早！
よっぽど腹が減ってたんだな。
先輩は、俺が並盛を食い終わるのとほぼ時を同じくして、超特盛りを食べきっていた。
「ごちそうさま！」
「お会計、二千二百八十円になります！」
並盛が二百八十円なので、超特盛りがどれくらいの大きさだったのかは、想像できるだろう。
「ふぅ～食った食った！」
「先輩、奢りだと思って食いすぎですよ！」
「ははは、数日何も食べてなかったからな！」
おいおい、この人大丈夫か？
「とこで先輩、この後どうしますか？」
「ん？なんだお前？誰だ？」
「えっ？秋華っすよ！」
「秋華って、それお前の店の名前じゃねえのか？」
そうだよ！店の名前だよ！
今日は、飯が食えれば良かったのか‥‥
「いえ、なんでもないです‥‥」
こうして俺は、先輩と別れた。
この人は、相変わらずよく分からないおっさんだ。