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深雪

「俺一人じゃ天界へは行けないんだよ。霧雨、手伝ってくれよ」
「最初から素直にそう言えよ。だが断る。町がこの状態だからな。放ってはおけない」
「だからやめておけと言ったんだよ」
「聞いた覚えはないが?」
「‥‥。俺もハッキリと言った覚えはない!」
「ドヤ顔で言う所じゃないぞ?」

近未来を思わせる通路を通り抜けると、そこは普通のダンジョンだった。
ただ少し違うのは、人によって作られたダンジョンって所かな。
前後左右どこを向いても同じ景色に見える、ベタなダンジョンゲームみたいな感じね。
「迷いたくなければちゃんとついてこいよ」
「お、おう!」
黒川が黒川らしからぬ優しさだな。
だからこそ気味が悪い。
何かあるんだろうけれど、それがなんなのか読めない。
とにかく黒川の言う通り、ここで迷うと面倒そうだ。
俺なら魔法記憶もあるし、妖凛ストレージだって使える訳で、全く問題はないんだけどね。
あくまで普通なら面倒だって話だから。
そんな訳で俺たちは、とにかく黒川についていった。

しばらく経って、俺はある違和感を覚えた。
どうやらさっきから、同じ場所をぐるぐると回っている。
まさかこのダンジョン、先に行くにはそういう事もしなければならないのだろうか。
それだと無数にある暗証番号を一つずつチェックしていくような作業が必要になるし、到底俺たちだけじゃ抜け出せないダンジョンだったという事にもなり得る。
黒川が助けてくれなかったら、俺たちはダンジョンで迷子になっていた可能性もあるぞ。
もしかして黒川って、本当は優しいのだろうか。
そう思って黒川を見ると、何やら不安に押しつぶされそうな顔をしていた。
額からは汗が流れでている。
何かあったのだろうか。
「すまん‥‥。迷ったみたいだ」
お前が迷ったんかーい!
「使えない人なの‥‥」
「すまん‥‥」
ああでも、なんか思い出したわ。
黒川って本来こういう奴だった気がする。
俺の記憶にはもう殆ど残ってないんだけどさ。
「なんとなくそんな気がしていたのよねぇ~。一応歩いた所は全て記憶しているけれどぉ~、どっちに行けば正解なのかは分からないわぁ~。策也ちん、なんとかなるぅ~?」
「そうだな。俺も一応歩いた場所の空間認識はできている。問題はそこからどっちへ進めばいいかだな」
結局こういうダンジョンって、行ってない所を全て回っていかないとダメって事なんだよ。
「お前たち、今の場所が分かるのか?だったら、このダンジョンに入ってからまずは左方向のエリアに向かい、そして正面側へ。更に右のエリアといった感じで進めば抜ける事ができるはずだ」
大体でも分かれば、半分くらいはスルーできそうだな。
でも本当にこいつの言う事を聞いて大丈夫なのだろうか。
正直このダンジョンに慣れている風ではない。
おそらく数回、誰かに連れられてきたって所。
いっそダンジョンをぶち壊して、直進行軍した方がいいかもしれない。
でもそれはダンジョンセオリーの無視であり、かつて俺が批判した|輩《やから》と同じになってしまう。
仕方がないな。
信じて黒川の言う通りにしよう。
俺と頷きあった天冉が、先頭に立って歩き始めた。
「こっちに向かいましょう~」
流石は天冉。
黒川の言った通りの方向へ歩き出した。
本当にこの複雑なダンジョンを覚えているんだな。
尤も覚えていたのは、中にいる百万診なのかもしれないけれどね。
天冉がみんなを従えて歩く中、黒川は最後方をトボトボとついてきていた。
今の黒川なら、色々と話してくれそうな気がする。
あの時、町のマスターとして俺たちの行く手を阻んでいた奴とは違う気がするんだよな。
俺は黒川の横に並び声を掛けた。
「なぁ黒川?この世界の事、少し聞かせてはくれないか?香ってのはどういう人なんだ?」
「香の事を呼び捨てにするんじゃねぇよ」
「気にするな。自分とは関係のないアイドルや芸能人は、普通呼び捨てにして話しをするだろ?」
「ま、まあそうだな。確かに、アイドルと言えるかもしれん」
「お、おう。そんな訳で気にせず教えてくれ」
「‥‥お前は、策也とか言ったな。だから話したくはない‥‥と言いたい所だが、少しだけ教えてやるよ。香はな。俺にとっては神みたいなもんだ」
やっぱり生前の俺、かなり嫌われていたみたいだな。
ちょっと悲しい。
しかし、香は『神みたいなもの』か。
つまりそれは神ではないって事だ。
この世界の神なら男のはずだから、その可能性は最初からなかったんだけどさ。
でも香って名前で男って事もあり得る世の中だ。
少なくとも俺が死んだ頃の日本では、性は二つじゃないとか、なんともおかしな流れはあったけどさ。
自分を男と認識したい人、或いは逆に女だという人の気持ちを尊重したとしても、それぞれ男か女かである訳で、第三の性が存在する訳じゃない。
結局は男か女かのどちらかなんだよ。
まあそんな話は、今となってはどうでも良い事だけどさ。
「香を守るとか言っていたけど、俺たちが来ると何故守られないんだ?別に俺は香とやらに危害を加えるつもりはないぞ?」
あくまで神の味方をしなければ。
或いは俺たちに危害を加えるような者でなければだけどね。
「お前たちは、この世界にある今の秩序を壊そうとしている。それは現状を破壊する事だ。不満はあるかもしれんが、皆が幸せを感じ、上手く行っているのだからいいじゃないか」
確かに黒川の言う事も分からなくはない。
でもそれに不満を持っている者だって大勢いるのだ。
それが自由の中での事なら自己責任でいいだろう。
でも誰かが誰かの自由を制限し、|剰《あまつさ》えやりたくない事を強要しようともしている。
その上での幸せは、本当に幸せと言えるのだろうか。
誰かを蹴落とした先の栄光が虚しいと感じるのは、俺だけじゃないと思うんだけどねぇ。
それに何処か、黒川も自分に言い聞かせるように話しているように見える。
つまり、自分でも少し疑問に思っている所があるみたいなんだよな。
「鳥かごの中での生活に、黒川は満足なのか?」
そんな風に思えたので、俺は何気に聞いていた。
そうなんだよな。
決められた幸せの世界って感じがあるんだよ。
この世界は、大きなサファリパークのような所なのかもしれない。
限りなく自由に見えるけれど、だけど自由じゃないんだ。
「俺だって、今の幸せには疑問はあるさ。でも香が幸せだっていうんだから、信じるしかないんだよ!」
黒川が少し声を荒げて答えた。
どういう事だろう。
おそらく黒川から見て、香の幸せは幸せには見えないって所か。
やはり一度香には会ってみたい。
「香はどこにいるんだ?一度会ってみたいんだけど」
「それは教えられないな。それに教えた所で、お前たちはそこへは行けないだろう」
黒川はそう言って視線を俺から前方へと向けた。
ダンジョン内を進んで、どうやら俺たちは広間に出てきていたようだ。
そしてそこには、ラスボス感漂う巨大なモンスターが複数鎮座していた。
「これは‥‥邪神なの‥‥」
「その通りなのです。それに冥凛曰く、策也タマでもコントロールできないレベルのユニーク種なのです」
というか、クトゥルフにヨグソトース、そしてニャルラトホテプなんだけどな。
つまり邪神の中で最強ベストスリーが揃っている訳だ。
こりゃ土筆たちだけに相手させるのは無理だわ。
そう思ったのだけれど、土筆たちはやる気満々か。
こちらが近づいていくと、邪神たちもゆっくりと立ち上がってこっちを見ていた。
その時だった。
黒川が何やら叫びながら、魔法を発動したようだった。
「消失!」
これは‥‥、黒川の存在が限りなく消えている?
俺ですら認識するには集中力が必要だ。
おそらく狛里ですら一瞬認識できなくなっている可能性がある。
その一瞬の内に、黒川は三匹の邪神の向こう側まで移動していた。
一人で先に進む気か?
「悪いが、お前たちにはここで死んでもらう!流石にこの三匹相手じゃ勝てねぇだろう?」
そういう事か。
俺たちを囮にして、自分だけが先に進む。
天界に行くには、この方法をとる必要があるんだろう。
これだけの邪神が、ダンジョンに湧くモンスターとは思えない。
つまりこいつらを倒せた者はこの世界にはいないって事。
倒せる者はいると思うけれどね。
あえてこのダンジョンの先に進ませないように、ガーディアンとしてここに置かれている。
黒川を捕まえる事もできるけれど、俺たちならこの相手でもなんとかなるし、ここまで案内してくれた駄賃に見逃してやるか。
それよりも、土筆たちを止めよう。
一応強制ログアウトなんかをレジストできる腕輪もしているけれど、流石にこの相手だと、負ければ死ぬだけでは済まされない可能性もある。
そう思って声をかけようとした時だった。
突然一人の女性が現れ、俺たち全員を包むように魔法を発動する。
「このモンスターは危険だよー!だからとりあえず今は逃げよう!」
どこのどなたかは存じませんが、大丈夫なんだけどね。
というかこの魔法は、瞬間移動魔法か。
恐ろしく早い魔法の起動なので、この者はかなりの高レベル冒険者に違いない。
どんな人なのか。
確認してみると、俺はその顔に見覚えがあった。
想香に似た長い黒髪。
雰囲気も結構似ている。
歳は一回りくらい上に見えるけれど、間違いなく俺に近しい存在。
そしてその魔力も、以前感じた事がある。
あの時、いなくなっていた者。
『深雪』という名の元冒険者。
俺がこのゲームをしていた頃、共にプレイしていた深雪そのものだった。
一斉に姦し娘たちの視線が俺に集中した。
そこで魔法は発動され、俺たちは光の中へと消えた。

次の瞬間、みんなは深雪の魔法によって、第五大陸の中心の町近くへと移動させられていた。
俺なら止める事も可能だったけれど、今はこの深雪という人とゆっくり話がしたいと思ったからね。
一旦戻って来る事もアリだと考えた。
「みなさん、黒川にはめられたみたいだねー?」
深雪がそう言うと、アーニャンと左之助は普通に話を始めた。
「そうみたいね。でも、かなり強そうだとは思ったけど、あのモンスターならなんとかなったかも?」
「深雪。アレなら戦って勝てない事もなかったのではないか?」
「アーニャンちゃん以上のレベルが三体いたと考えれば、そう簡単に勝てないって分かるよね?」
ふむ。
あの邪神たちの強さを的確に把握しているな。
だけど俺たちが本気になれば、そんなに難しい相手じゃない。
正直な所、どう土筆や孔聞の経験値にするかを考える方が難しいというか。
「そうなんだね。でもこの人たちなら、強いからなんとかなったんじゃないかな?」
アーニャンはそう言って、俺たちを指さした。
「新しいお仲間さんだね。強そうだし気にはなっていたんだけれど、私じゃ判断つかなかったから安全策を取らせてもらったよー」
喋り方はみゆきに似ているな。
雰囲気も完璧にトレースされた感じがする。
みゆきをモデルに作られたこの世界の深雪って事で間違いはないだろう。
しかしあまりに完璧すぎる気もするな。
どことなく雰囲気というか、空気も同じ感じがするんだよ。
つまり俺の|心《しん》の|臓《ぞう》がドクドクと、波打っているのが感じられた。
「えっと、深雪、さん‥‥」
ぐおー!
なんて呼べば良いんだ?
なんかみゆきであってみゆきでないけれどみゆきな深雪とどう喋ればいいのかわかんねぇ!
「深雪さんだってーwいいよ、別に呼び捨てで」
「お、おう。えっと深雪。俺は此花策也って言うんだけどさ、ちょっと色々と聞きたい事があるんだが、いいか?」
「策也?‥‥。えっ?ううん。何でもない。いいよ!それで聞きたい事って?」
おいおいなんだ?
策也に反応した?
この世界で作られた深雪なら、旦那の名前は北都尚成となるはずだ。
なのに策也で反応したのはどういう事だろう。
黒川から何かを聞いているのか?
いや今はとりあえず置いておこう。
「ゆっくり話したいから、一度俺たちの町に来ないか?」
「来ないも何も、深雪は仲間だよね」
「そうだな。帰るだけだ」
なんだか分からないけれど、深雪に会った途端に、アーニャンと左之助には仲間としての認識が戻ってきている。
おそらく深雪の能力、或いは魔法によるものだろうけれど、そういう事になるのならその辺りは突っ込まなくていいか。
「うん。じゃあ一度町に戻ろう」
「分かったよー」
こうして俺たちは、一度にっこりタウンへと戻る事になった。

さて戻った俺たちは、仲間たちに帰った事を伝えながらいつものリビングに集まった。
戻って来た時、誰も深雪に対して疑問を持つ者はいないようだった。
違和感を持っているのは、俺たち元闇太ギルドメンバーだけか。
狛里なんかは混乱して、『なんも言えねぇ~』状態で頭に『?マーク』だしさ。
テレパシー通信で説明しても、納得いかないご様子。
狛里ならどんな魔力干渉も受け付けないだろうしね。
それでも深雪から常に魔力干渉を受けている事は、俺と姦し娘たちは感じている。
おそらくこれは、俺の持つシアエガの魔法に似たものだろう。
発動中の記憶を消してしまうアレだ。
一点違うのは、一緒にいる時は思い出すって所か。
これはちょっと解析して盗みたい能力だな。
そんな事を思いながら、俺はいつものリビングに深雪を案内した。
そして適当なソファーに座わらせ、俺は早速深雪に質問をする。
「あー‥‥」
何が聞きたかったんだっけ?
あまりにみゆきそのものな深雪を前に、俺は聞きたい事の整理ができずにいた。
「何かな?聞きたい事って?」
先にそう聞かれ、俺は何も考えずに質問をした。
「みゆき、なのか?」
そうなんだ。
おそらくみゆきモデルの深雪に間違いはない。
だけれど、俺は正直それだけではない何かを感じていたのだ。
だからつい、そう聞いてしまった。
「そういうあなたは、|御伽策也《おとぎさくや》なの?」
この子も、深雪も分かっている?
やっぱりそうか。
この深雪は、どういう訳かみゆきなんだ。
いや、もしかしたらこの世界を創った誰かが、リアルの俺とみゆきを知っているって事なのかもしれない。
だからゲーム内の深雪でも、北都尚成ではなくリアルの御伽策也を知っているんだ。
‥‥そうじゃないよな。
この気配は、間違いなくみゆきだよ。
俺には分かる。
「その通りだ。つまり深雪。深雪も転生者なのか?」
どういう事なのかは分からない。
みゆきの魂は今アルカディアにあるはずなんだ。
なのに何故、ここにも存在する?
「転生者、か‥‥。そんな風に感じる事も無いわけじゃないよ。だけどわたしは転生者じゃないと思う。本当の所、前世、と言って良いかは分からないけれど、そんなに多くの記憶が残っている訳じゃないから」
「多くの記憶が残っていない?」
そう考えると、みゆきを感じる意味が分からなくはない。
と言うか理解はできる。
少なくともそれは、深雪がみゆきだと自覚しているって事だからな。
或いは記憶だけがアルカディアにいるみゆき、或いは想香の中にあって、実はこの深雪が本当のみゆきの可能性もあるのか?
いやそれも違うな。
アルカディアにいるみゆきは確かにみゆきだし、最もみゆきを感じられると思う。
言ってみれば、ここにいる深雪はみゆきの|残滓《ざんし》と言った所か。
それもまた何か違う。
アルカディアのみゆきは、一部記憶が抜け落ちている。
その記憶を持っているのが、みゆきが生み出した神の使いであり、想香という異世界での|依代《からだ》だ。
つまりアルカディアのみゆきですら、完璧な状態ではない。
或いはみゆきに想香が戻ったら、完璧なみゆきになるのだろうか。
事細かに話した訳ではないけれど、アルカディアのみゆきも、俺の事について忘れている所は必ずある。
それは人間なら当たり前で、不要な記憶なんてものは徐々に薄れていく。
人間である限り普通はそうだ。
では神は?
或いは魔法記憶を持つ事ができるアルカディアでなら。
何かを忘れるって事は、もしかしたら別の世界に別の自分を生み出す事になるのかもしれないな。
そんな考えが正しいかどうかは分からないけれど、おそらくここにいる深雪は、きっとみゆきの忘れた記憶なのだと俺は感じていた。
多くの記憶が残っていないってのは、少しの記憶があるって事でもある。
みゆきから抜け落ちた魂の欠片か‥‥。
「御伽策也の記憶はあるんだよ。少しだけね。でもその記憶と今のあなたは似ても似つかないよー?どうして?」
「そりゃ今の姿は、異世界の策也、此花策也だからな」
「んー‥‥!そういう事か!此花策也。あなたは私の理想なんだー‥‥」
そう言って深雪は少し照れていた。
おお!
可愛さが身にしみるぜ。
「えっと‥‥、それはどういう事だ?」
「わたしの夫だった人は御伽策也で、北都尚成で間違いないけど、それはこの世界に存在するもの。でもわたしの中に少しだけある御伽策也の記憶から、その策也がわたしの前に現れたと考えたら、きっとあなたのような人なんじゃないかと思ったのよ」
今の俺の姿は、みゆきの書いた小説の中の俺だもんな。
「この姿がみゆきの理想なのか。女みたいな容姿が好みだなんて、聞いた事はないけどな」
「見た目は正直あまり気にしてないの。ただ、女性みたいな容姿なら、浮気はできないかなって‥‥」
あっ‥‥、そういう事か。
今の俺はみゆきの書いた小説世界での俺。
浮気ができない理想の俺なんだ。
中身は元のままだから、容姿だけだけどね。
つか、アレ?
何かスルーしてしまったような。
「そうだ!北都尚成が『夫だった』ってどういう事だ?!」
「ん?そのままの意味だよ。別れたんだ。この世界の夫であったあの人は、わたしの好きな策也じゃなかったんだよ。だからと言って別れるつもりもなかったんだけど、欲しいって人がいたから上げたんだー」
なんか俺が物みたいに扱われているな。
つか。
「上げたって?どういう事なんだ?」
「香ちゃんがね。尚成を好きだって言うし、尚成も香ちゃんと一緒になりたいって言うから、だったらもういいかなって」
なんかショック!
この世界の俺は、そんなにアッサリとみゆきを捨て、みゆきには捨てられたのかよ。
「多分だけど、この世界の尚成は‥‥策也じゃないよ。だって、私が好きになった策也とは、似ても似つかない気がするから」
うおー!
なんかこれ、今俺が告白されているみたいで嬉しいぞ!
あれ?また何かスルーしたような‥‥。
「香ちゃん?」
「うん。香ちゃん。たぶん策也の同僚の子だったと思うけど」
やはり黒川の言う香は、冴羽香で間違いはなさそうだな。
そしてその香は、この世界で俺をモデルに作られた北都尚成と一緒になって暮らしていると。
黒川は、俺たちが香の元へ行くと、その生活を壊してしまうと考えているのだろうか。
いやでも、黒川は俺が転生前の俺、御伽策也だとは知らないはずだ。
「それで深雪は、どうして俺たちを助けようとしたんだ?」
「助けたんだよ?」
いや、別にあのまま戦っても勝てたんだけどね。
「そうか。で、どうして助けたんだ?」
「それはね。わたしも下層世界に来て分かったんだけど、この世界はちょっとおかしいんだよ。ゲームだった頃の世界に似ている所もあるんだけど、全ては天界と呼ばれる第六大陸の為にある世界っていうか。ただ繰り返されるだけの世界っていうか。そんな世界をもしかしたら、あなたたちなら変えられるんじゃないかと思ってね。ん~‥‥。上手く説明できないけれど、とにかく助けようって思えるの」
十分分かったよ。
深雪も気持ちはみんなと同じって事だ。
ゲームのようなおかしな世界。
第五大陸の人たちだけが上級国民のような世界。
そしておそらくそれ以上の天界。
全ては繰り返しがあるだけの世界。
世界の覇者であっても、俺のような神であっても、その世界の全ての人が幸せに暮らせるようになんてできない。
結局一部の者は完璧な幸せを得られているかもしれないけれど、多くは不満を抱えながら生きてゆく。
そういう意味では、この世界もまた同じだ。
だけれど、幸せも不幸もこの世界では与えられたモノ。
それぞれが自由の先に手に入れたものではない。
自分で選べない世界は、やはりおかしいと感じるんだよな。
努力が必ず報われる訳ではないけれど、自由な世界の方が健全ではある。
ただそういう世界の方が納得できるってだけだけれどさ。
「香は、天界で尚成と暮らしているんだな?」
「うん。そうなんだけど‥‥。何がどうおかしいのか分からないけど、なんとなく香ちゃんも今のままだとダメだと思うんだよなー。世界を変えれば香ちゃんも変わるかなー?」
「それって、香を助けたいって事なのか?」
「助けたいっていうか、そう想うっていうか‥‥。よくわかんないけど、本当に今のままでいいのかなって」
なんとなくだけど、深雪は香を想っているんだな。
ん?香を想う?
俺は想香を振り返った。
想香は少し複雑な表情をしていた。
「策也タマ。僕がいるのは、きっとそういう事だったのかもしれないのです」
「そうか‥‥」
想香が今ここにいるのは、きっと必然だったんだな。
香を助ける為にやってきた、みゆきの意思。
でも想香の表情は、それだけではないと思えた。
どこか寂しそうだから、俺は手を伸ばして想香の頭に乗せていた。
そんな顔をされると、ついつい頭をポンポンとしたくなる。
「あっ、えっとこいつは想香だ。みゆきの半身であり本人の記憶も持っている、ある意味本人であるとも言える」
「えっ?みゆき?そうなの?私の半身って事なの?」
「半身か‥‥」
どう説明していいか難しいな。
「みゆきってのは異世界にいる俺の妻、みゆき本人でさ‥‥」
「異世界にいる?」
「それで僕はそのみゆきさんの半身なのです。そして深雪さん、あなたはきっと‥‥、みゆきさんの一部なんじゃないでしょうか?」
ああ、そうだ。
それが一番しっくりくるっていうか。
想香は、みゆきの想い、みゆきの色々な心、みゆきの理想、そして俺がみゆきを思い出せなかった辛い時期の記憶を持っている、陰のみゆきと言ってもいいだろう。
深雪は、アルカディアにいるみゆきと根本的には同じだけれど、その魂の欠片を持った者なんだ。
「そう言われると、なんとなくそんな気がしてきたよー。でもどうしてわたしは、一部だけこの世界にいるのかなー?」
なんとなく想像できてしまっている。
それはきっと‥‥。
「きっとこの世界を創った神様の仕業ねぇ~。みゆきちんをこの世界に連れてこないと、この世界が成り立たなかったんだと思うわぁ~」
突然天冉が口を挟んできた。
でもそれは、俺がなんとなく想像したのと同じだった。
天冉は、娘のみたまが十年以上依代としていた人物。
何か聞いていてもおかしくはないだろう。
それもあって、俺には説得力があるように思えた。
「どういう事かなー?この世界を創った神様って何?」
「多分この世界を作ったのが、神様となった香ちんだからよぉ~。香ちんは、この世界で尚成ちんとずっと一緒に暮らしたいと思っていた。でも、心は自分に向いていないのよねぇ~?」
天冉はそう言って俺を見てきた。
「お、おう。当然だ」
俺はみゆきを愛しているからな。
「そうすると、どうしても偽物の尚成ちんを創る必要があったのよぉ~。だけど創った尚成ちんは、それだけじゃ尚成ちんとは言えない。だから策也ちんを知るみゆきちん本人を連れてくるしかなかったのよぉ~」
「みゆきさんという策也タマをよく知る人物がいる事で、策也タマが北都尚成としてこの世界に存在するのです」
この世界に、誰も策也という俺の事を知る者がいなければ、俺はこの世界には存在していない事になるからな。
いや、香がいるなら、或いは黒川がいるのなら存在はするのだろう。
でもそれは一面だけの俺であり、ほとんど俺じゃない。
みゆきがいれば、ほぼ完璧な俺が完成すると言う訳か。
「だけど深雪は、そのみゆきさんの一部なのよね?記憶もほとんど残っていない。結局その北都尚成って人は、策也とはほとんど別人じゃないの?」
「楊ちんの言う通りぃ~、おそらくそうだと思うわぁ~。だから深雪ちんは別れて、その不毛な今を変えたいと思ったのよねぇ~?」
「そうかもしれないよー。でも香ちゃんが神って何?だったら今のわたしってなんなんだろう?みゆきさんの一部かもしれないけれど、ほとんどはそうではないんだよね?」
確かに深雪の言う通りだ。
この人はみゆきの、魂の一部を持っているかもしれない。
記憶も少しある。
でも殆どは別人なんだ。
それでも俺はみゆきにしか思えない。
いや、間違いなくみゆきだ。
「僕が策也タマと一緒にこの世界に来たのは、みゆきさんに行くように言われたからなのです。だからたぶん、深雪さんはみゆきさんの魂の一部を持っていて、僕はそれを回収する事が役割だったのだと今なら思えるのです」
そういう事か。
「えっ?それってどういう事なのー?」
「僕と融合して、こことは異世界のアルカディアに一緒に行くのです。そしてそこで、今度はみゆきさんと一緒になる事になるのでしょう」
「えっ?それって‥‥」
ちょっと待て。
それはつまり、深雪と想香がみゆきと一緒になるって事か。
そしたら想香の心はどうなるんだ?
「ちょっと待ってよー!それだとわたしって、この世界からいなくなるの?それにわたし、策也の記憶もそんなに無いし、今の策也を好きになれるのかも分からないよー!」
懸念はそこかよ!
つか心の心配は想香だけじゃない。
この深雪も、殆どはきっと別人なんだ。
「魂の一部を持っているって言ったな?」
「はい。おそらくそうなのです。僕には分かるのです」
「それだけ取り出す事はできないのか?」
「策也タマの|人形《ゴーレム》は、策也タマの分割された魂によって生きていました。その魂が失くなったら‥‥」
ゴーレムは死ぬ。
「でも、深雪には深雪の気持ちがあるよな?無理にはできないんじゃないのか?」
俺は深雪を手のひらで指し示して想香に訴えた。
「そうですね。でもきっと、深雪さんならそれを望む事になると思うのです。僕がそうであるように」
「えっ?‥‥」
そうなのか。
想香は‥‥。
「みゆきとそんなに一緒になりたかったのか?」
「ズコットなー!違うのです!策也タマは鈍感なのです」
ああ、そういう事ね。
「だけどさ、この世界の深雪にも、やはり意思があるから、無理にはできないよな。あくまで本人が本当に望んだらという事でさ‥‥」
「分かったよー!とにかくこの話は一旦保留ねー!」
深雪はそう言ったけど、その表情を見ると、勘違い男の俺としてはもう答えが決まっているように見えた。
やっぱりこの子はみゆきなんだな。
「話は終わったのだ?」
「俺たちには全然分かんねぇ話だからな。その辺の話はそっちでやってもらって、この後どうすんのかって話だ」
「あの黒川って男は、先に天界に行ったんですよね。何をするつもりかは知りませんが、とりあえず早く追って天誅を食らわせるべきだと自分は思います」
「大丈夫だよー!黒川さんは天界には行けなかったはず。天界に行くには、邪神三強の意識を別に向ける必要があるんだよ。でも直ぐにわたしたちがいなくなっちゃったから、きっとボコボコにされて教会送りになっていると思うよ」
なるほど。
俺たちが瞬時に逃げたのには、そんな効果もあったのか。
「でもまあ、黒川がどうでも、俺たちが次にやるべきは天界に行く事だと思う。今日は仕切り直しって事で、また明日、最強ダンジョンに行こう」
「本当にあの邪神三強を倒せちゃったりするの?」
やべぇ。
深雪のきょとんとした顔が十五度傾けられているとか、破壊力マックス過ぎやろー!
「大丈夫なの‥‥。私が遊んであげるの‥‥」
「そうそう。狛里もいるしな。心配なら、一度俺たちの本当の魔力を見てみるか?」
そう言いながら、俺は狛里に魔力開放を促そうとした。
でも直ぐに思いとどまった。
流石に狛里が全魔力を開放したら、広範囲に強者の存在を知らせてしまう事になるだろう。
それは世界の為にもあまりよろしくはない。
「そうだねー!強さは確認しておきたいよ」
「だったら想香。魔力を開放して見せてやってくれ」
「分かったのです」
想香はそう言って立ち上がり、魔力を開放してみせた。
だいたいあの邪神たちと同等。
アーニャンの倍くらいの魔力が広がった。
「凄い。わたしと同じくらいの魔力だよ」
深雪の方がアーニャンよりも上なのか。
それはやはり、みゆきの魂の欠片が深雪の中にあるからだよな。
単独で転生者を上回るなんて、普通なかなか考えられないから。
「という訳だ。俺たちはこれ以上の魔力を持っているし、想香だってこの倍は強いと考えてもらっていいぞ」
「ほへぇー!わたし、なんだか余計な事しちゃったかもだね」
「いや。黒川が天界に行けなかったのなら、それはそれで良い選択だったかもしれないしな。そんな訳で、明日もう一度、最強ダンジョン攻略に向かう事にしよう」
こうして次の日、改めて最強ダンジョンに行く事が決まった。
しかしこの日の夜、予定を変更せざるを得ない方向へとシナリオは進んでゆく‥‥。
素直に行かないのが物語だからね。
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