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ダンジョンの中の町

来世でも、私はきっとあなたを選ぶ。
そんな話は夢物語だと思っていた。
しかし自分が実際に経験してしまうと、逆にそれが当たり前にも思えてくる。
ではもしも現世で、愛する者と結ばれないとしたらどうだろうか。
来世でも同じ人を想って一緒にはなれないのだろうか。
そう考えると、結婚できた人の幸せはより大きく感じられるね。
現世で結婚できなかった人は、来世でも想い人と結婚できない不幸を味わうのだから‥‥。

ダンジョン攻略は続いた。
話に聞いた通りとにかく面倒だ。
第一大陸や第二大陸で素材を集めたり、謎解きのようなものもあった。
どれも日本で暮らしていた頃にやったRPGにありがちなものばかりだったので、俺がいれば楽勝なんだけどね。
まあそれでもとにかく時間がかかる訳で、五十階層目くらいまでは一日十階層も進めなかった。
それでも一週間でようやく五十階層に到着した。
「此処からはなんだか雰囲気が違わねぇか?」
「そうですね。あくまで印象ですが、禍々しい感じがします。つまり此処から禍々しいモンスターが出てくるのではないでしょうか?」
ダンジョンはどういう訳か、ライトが無くても視界が確保される仕様になっていた。
それで今までは茶色いゴツゴツとした世界だったのだけれど、この階からは紫色のおどろおどろしい世界といった感じに変わっている。
おそらくこれまでとは違うと予想ができた。
思った通り最初に出現したモンスターは、再び見慣れたヤツだった。
えっ?
「今度は青いウサチャンかよ」
「でもきっと今までのモンスターよりも強いのだ。油断したら駄目なのだ」
その通りだ奇乃子。
このウサチャンは間違いなく魔王クラス。
それが束になってかかってくる訳だから油断はできない。
「しかしこの程度なら、まだまだ自分たちの敵ではありませんね。つまり問題はないでしょう!」
「孔聞くんの言う通りですね。わたくしたちから見れば、兎は所詮兎という事ではないでしょうか」
撫子の言う通り、襲い来る青いウサチャンも所詮はウサチャンだった。
まだまだこの程度じゃレベル上げにもならないか。
みんな強くなりすぎた。
全ては法螺貝野郎たちのおかげであり、レベル不相応な強力魔道具のおかげ。
ゲームの世界なら、強力な武器はレベルが高くならないと装備できなかったりする。
でも現実世界じゃ、相応に強くなるんだよね。
斬れない刀を持っているより、斬れる刀を持っている方が当然強いのだ。
武器が強さを押し上げ、気がつけばみんな武器にふさわしい使い手になっていた。
そんな中、魔道具に頼っていない撫子が強いのは凄いな。
いつも後衛でやってきたから、撫子の素質がずっと押し殺されて来たんだろう。
尤も司祭だったんだから、そりゃ支援役を任せられるか。
この子が男だったら、どんなに良かっただろうね。
奇乃子もそうだけれど、やはり女性の方が魔力的素質は高いんだよな。
基礎体力が男性の方が上だから、魔力的に同じであれば男性の方が強いんだけれどさ。
尤も奇乃子はドワーフだから、基礎体力も負けてないんだけどね。
まあ何にしても、撫子には何処かで良い装備を持たせて上げたい。
ダンジョン攻略が落ち着いたら、奇乃子に作らせるのが良いかもな。
なんて思っていた訳だけれど、その落ち着いた時間は一週間もしない間に訪れた。
禍々しい雰囲気のダンジョンは、特に面倒な事は何もなく、ただ強力なモンスターが現れるだけの簡単なものだった。
本来なら簡単じゃないんだけどさ。
強くなりすぎたうちのメンバーだと、簡単に進んで行けた訳だ。
すると気がつけば地下百階、そこはダンジョンの中にある村のような町のような場所だった。
「これは‥‥」
「村ってぇよりは、町だな」
「そうなのだ。小さな町なのだ」
土筆や奇乃子が言う通り、そこは小さな町といった感じの場所だった。
「ダンジョンの中に町があるの‥‥想像していなかったの‥‥」
「本当です。一体誰が住んでいるのでしょうか?」
狛里も想香も驚いていた。
しかし俺が驚いていたのはそこではなかった。
「この町、何処かで見た事がある気がするわねぇ~」
そう、天冉の言う通り、それが一番気になる所だった。
「確かに見た事があります!」
「そうなの‥‥イスカンデルにあった北都村なの‥‥」
「まさしく北都村なんだよな‥‥」
イスカンデルにあった北都村は、少女隊の話から北都尚成だった俺がそのような町にした事が分かっている。
当然イスカンデルの北都村とこの場所には何の関係もない。
共通点はおそらく、『同じメタバース世界を参考に作られた』という事だ。
つまりこの場所を築いたのは、あの頃日本でまだ生きていた人だという事になる。
仮にそれがこの世界を創った神だとしたら、この世界はそんなに古い世界ではないという事になるだろう。
そうでなければ、俺と同じように転生者がこの場所を築いていったという事か。
どちらにしても、おそらくこの場所は特別な場所だと感じた。
「なんでぇ?知ってる場所なのか?」
「いや、似てるってだけで別の町だよ。とにかく町に入ってみよう」
町は地下九十九階から階段を下りて、直ぐに目の前に広がっている感じだった。
此処よりも更に先のダンジョンへ行くには、当然町に入るしか選択肢はない。
「なんだかダンジョンの中に町があるのは変な感じなのです」
「それに何故か明るいのだ。太陽も無いのに空が青いのだ」
本当に。
周りがゴツゴツとした岩に囲まれている事を除けば、太陽が雲に隠れているだけの外の世界と変わらない。
ちなみにウインバリアでも、太陽は太陽だからね。
だけど地球にある太陽とは当然同じではない。
あくまで言葉だったり名前だったりが同じだけだ。
まあ元日本人が創った世界だから、想像力もその範囲内で収まるよね。
さて町に入ると、やはり懐かしい感じがした。
北都村と同じようで、でも少し違う。
そりゃ作る側の記憶も完璧じゃないし、全く同じには作れないだろう。
小型獣人がいないのは、このウインバリアには存在し得ない種族なのかもしれない。
それでも道はある程度同じに思えた。
町の中では何人かに話しかけられた。
「おっ!珍しいな。ここまで来た冒険者は久しぶりだな」
「そう簡単に来られる場所じゃないし。でも此処から先に行くのはおそらく無理だろうけどさ」
話しかけて来た者が言うには、此処に冒険者が来るのは久しぶりらしい。
そして先に進むのは無理との事だ。
尤も無理ではなく極度に難しいという意味で言っているのだろうけれどね。
「俺たちは久しぶりの冒険者なのだ?」
「先に行くのは無理ってどういう事なんでぇ?」
「そのままの意味だよ。この先に進むには、この町のマスターと戦って勝つ必要がある。でもそいつがかなり強くてね。多くの冒険者が此処で足止めを食っているんだよ。いや、この町ができてからは全ての冒険者がこれ以上進めていないんだ。つまり無理という事だ」
なるほどねぇ。
地下百階層のボスって訳か。
それがモンスターではなく人って話。
でもそういう事なら、俺たちが先に進めない可能性は限りなくゼロだろう。
「話を聞かせてくれてありがとうねぇ~」
俺たちは特にその者たちの言葉を気にする事はなく、町の奥へと入っていった。
町には美味しそうな物を売っている店もあったので、買って食べながら町を奥へと進む。
すると徐々に俺の知らない景色へと変わっていった。
俺よりも長くあのメタバースをしていた人が此処を作ったのだろうか。
それともこの先はオリジナルなのか。
北都尚成の頃の事は、北都尚成となった少女隊に多少は聞いて知っている。
だけれど聞く必要もあまり感じないし、その答えは今の俺には分からない。
尤もそれが分かった所で、この世界を創った者が何時まで生きていたかが想像できるだけだ。
正直どうでも良い事だった。
町には当然ギルドも何もない。
ただ人々の生活があるだけ。
此処まで俺たちよりも先に来ている冒険者は、ただ日々をレベル上げに費やしているのだろうか。
そしておそらく、第五大陸から此処に来ている者もいる。
第五大陸の住人なら、魔法で第五大陸とは行き来できるはずだ。
そしてこの先のダンジョンでは、更に強いモンスターがいて狩り場となっているのかもしれない。
そんな事を考えていたら、目の前にセーブポイントが現れた。
「この町もセーブポイントがあるのねぇ~」
「そうみてぇだな」
「冒険者は外の町と此処を自由に行き来して生活しているのだ」
「弱い人達にとっては、レベル上げに最適なのでしょうね。わたくしたちが此処で生活する意味は無さそうですが」
「素材集めにも良さそうです。つまり素材を集めに来ている冒険者もいるのでしょう」
そういう事だな。
レベル上げの冒険者が集めた素材を買い取って、第五大陸に持って行く奴もいるんだろう。
ギルドは無い訳だし、この町なら何でも自由にできそうだ。
町としてはかなり面白い場所かもしれない。
ただ、それなりに広い空間にある町だけれど、やはり此処はダンジョンの中。
なんというか、外の爽やかさは無いんだよな。
ずっと此処で暮らすのは遠慮したい。
「とりあえずみんなぁ~、この場所を記録しておきましょう~」
天冉がそう言うと、みんなはセーブポイントの石に触れていった。
順番にみんなの姿が消えてゆく。
そして俺もそれに続いた。
一度地上に戻った俺たちは、直ぐにダンジョン内の町へと戻ってきた。
「これで全員此処へは自由に来られるのだ」
とは言え、再び此処へ来る事はあるのだろうかねぇ。
地下五十階から此処までは、ダンジョンから出る必要がなかった。
この先もそうなら、もしかしたらもう二度と此処へは戻って来ないかもしれない。
そんな事を思いながら、俺たちは更に町の奥へと進んでいった。
進む先に神殿のような教会のような建物が見えた。
おそらくそこから再びダンジョンに潜るのだろう。
しかしその前には柵があり、俺たちがそこへ行くのを拒んでいるかのように見えた。
「入れないみたいなのです」
「どうするの?‥‥壊すの?‥‥」
「さっき町の人が言っていたのだ。この町のマスターを倒す必要があるのだ」
「それで、そのマスターってのがあいつか?」
土筆は道の左側を見ていた。
その視線の先には、いかにも主人公といった感じの男の姿があった。
間違いないだろう。
この町に入ってから、その男が飛び抜けて強く感じる。
特別な雰囲気も持っている。
神の使いなのか?
いやそうではないな。
でも明らかに他とは違う雰囲気を持った男だった。
その男はゆっくりと近づいてくる。
そして少し離れた所から声を上げた。
「お前たちか!?久しぶりに此処へやってきた冒険者ってのは?」
そう言いながらも徐々に近づいてきて、まもなく普通に話せる所までやってきた。
「そうねぇ~。第五大陸に行く為にぃ~、現在ダンジョン攻略中よぉ~」
「ふむ。そこそこやりそうではあるな。まあ此処まで来られるんだから、それなりには戦えるんだろう。だけど残念だが、これより先には行けない」
「行けねぇ?でもさっき町で聞いた話だと、この町のマスターを倒せば行けるって聞いたぜ?」
「そうだな。だから行けないと言った。俺がこの町のマスターであり、お前たちが全員で束になってかかってきても負けないからな」
はいはい、強そうな悪役がよく言う台詞だな。
まあ実際はその通りな場合もあるけれど、この面子にそれはないわ。
「全員でだと?俺一人で十分だぜ?」
いや土筆よ。
流石に強くはなっているけれどさ。
この男は少しレベルが違うぞ?
なんだろうなぁ。
見えている魔力はそれほど大きくはない。
でも無敵の主人公臭がするんだよ。
俺や狛里に勝てるとは思えないけれど、この世界ではきっとチートレベル。
アルカディアに転生した頃の俺のように‥‥。
「あっ‥‥」
「策也ちゃん‥‥どうかしたの?‥‥」
「いや、別に何でもない」
「そうなの‥‥」
何でもないって事はないんだけどさ。
おそらくこいつは転生者だ。
元日本人で、死んでこの世界にやってきた。
この町にメタバース世界の雰囲気があるのは、おそらくこの男が此処に来てから町を作ったからだろう。
どうしてこんな所に町を作ったのかは分からないけれど、此処で冒険者を止めているってのは、理由もそういう事なんだろうな。
そうするとこいつは神に味方しているようにも感じる。
普通に考えれば第五大陸への移民を防ぐ為だとは思うけれど、神の討伐を阻止しようとしていると思ってしまうのは何故なんだろうか。
「俺と一人で戦うってのか?良いぞ?但し、負けたら全員『強制ログアウト』だ」
「何だそれは?」
「人生もう一度やり直してもらうって事だよ」
「構わねぇよ」
おいおい土筆よ。
勝手にそんな事了解しないでくれ。
あの人も言っていただろ?
『生殺与奪の権を他人に握らせるな』って。
「そんなことぉ~、了解できる訳ないじゃない~。土筆ちん、話を勝手に進めないでくれるかしらぁ~?」
天冉の視線がかなり怖かった。
見えないんだけどさ。
「お、おう。そうだったな。このパーティーのリーダーはあんただった」
リーダーなのか?
まあ実質そうだけどさ。
「あなたはさっき全員で束になってもって言っていたわよねぇ~」
「そ、そうだな」
この男もちょっと天冉の視線にはビビっているな。
「だったらそうさせてもらうわぁ~。それで勝てばダンジョンの先に進ませてもらえるのよねぇ~?」
「そ、そうだが、流石に壱対八はやはりきつい。こちらもあと七人メンバーを揃えさせてもらう。八対八のバトルロイヤルでどうだ?」
天冉はいつも通り俺の方を見た。
問題はないだろう。
俺は黙って頷いた。
少なくとも俺たち異世界転生組の四人は、負ける要素がない。
そしておそらく撫子も、準備ができればなんとかなる可能性がある。
「それで良いわよぉ~」
「では何時にするかな。メンバーも集める必要があるから、こちらとしては一週間後‥‥」
「三日後で良いわねぇ~」
「‥‥」
相手に準備させる時間を与えないか。
でも天冉にそう言われたら、相手ものむしかあるまいて。
「‥‥分かった‥‥」
こちらとしては正直今から始めても良い訳で。
でも流石に相手の都合もあるからな。
突然三日後にテストしてもらえると考えたらありがたいか。
それにそれなら、こちらはこちらで準備もできる。
そんな訳で俺たちは、町のマスターとの対決を三日後に決めてから、準備を始める事にした。
「この町には美味しいものが多いのです!狛里さん食べに行きましょう!」
「うん‥‥美味しいものは逃せないの‥‥」
「流石にダンジョン攻略に疲れたからな。休養も必要だな」
「自分も休養が必要と考えます。つまり美味しいものを食べに行きましょう」
「俺も行くのだ!偶にはいいのだ!」
「それではわたくしも‥‥」
準備を始めようかと思ったら、いきなりこれかよ。
俺は奇乃子と撫子の前に立ちはだかった。
「お前らは準備だ。マスターとの戦いには勝てると思うけれど、できれば俺たち抜きで勝ってもらいたいからな」
「準備なのだ?」
「わたくしに何かする事でもあるのでしょうか?」
二人を止めていると、先を行く土筆が振り返って声を掛けてくる。
「どうしたんだ?お前たちは行かねぇのか?」
「ああ。この二人には準備があるからな」
「そうか。じゃあ行くもんだけで行くぞ!」
土筆はそう言ってみんなを引き連れていった。
「私も行くわねぇ~」
「ああ」
天冉もそう言って後について行った。
「どうして俺たちだけなのだ?俺は負ける気がしないのだ」
「わたくしも正直負ける気がしません。何を準備するのでしょうか?」
確かに魔力だけを見れば勝てそうに思うよな。
だけどきっとマスターは転生者であり、力を隠している。
おそらく俺たちの力がなければ、今のままでは勝てないだろう。
何かした所で勝てるかは分からないけれどね。
それでも勝てば強くなれるチャンスでもある訳で、できれば四人で勝ってもらいたい。
ならば‥‥。
「あいつはおそらく今のお前らよりも強いぞ?だから奇乃子には三日後までに撫子の武器を作ってもらいたいんだ」
「そんなに強そうには見えなかったのだ」
「そうですね。わたくしにも孔聞くんよりも弱そうに見えました」
撫子の中では、孔聞の評価は低そうだな。
魔力を抑えているであろうマスターと比べられるくらいだから。
「でもアレはおそらく力を隠しているよ。天冉や想香よりも弱いと思うけれど、それに近い力を持っている可能性がある」
「そんなに強かったら逆に勝てないのだ」
「そこで新しい武器だ。撫子はレベルこそ一番下だけれど、最も大きな力を発揮できる可能性がある。俺や狛里の魔力を拝借できるからな。ならばその撫子をより強くしておけば、勝てる可能性が高まるだろ?」
尤も、そうでなくても武器は必要だと考えていた訳だけれどね。
それに奇乃子だって、黙って負けるような奴じゃないよな?
「分かったのだ。でも作るのは撫子の武器だけじゃないのだ。俺ももっと強くなるのだ!」
そうだろうそうだろう。
こいつは常に上を目指して行ける奴なのだ。
「奇乃子さんが男でしたら‥‥。いえ、なんでもありません」
「ん?俺は男なのだ。だから問題ないのだ!」
いやいや、そう言われても完全に女だし。
それにこの文脈だとそれはそれで困るんじゃないのか?
どうしてそこまで男になりたいのかねぇ。
でもこうやって口に出して言っていれば、本当に男になれる可能性は感じるよなぁ。
此処はそんな事が起こり得なかった元の世界とは違うのだから。
何にしても俺たちは、一度地上へと戻って、撫子の武器作りを行うのだった。

三日が過ぎた。
奇乃子は撫子用の武器を完成させ、自らの装備もパワーアップさせていた。
反物から変わった使用中の衣装を改造し、対人戦において面白い効果を付与している。
それが役立つ相手かどうかは分からないけれど、特に物理攻撃を主とする者が相手なら効果を発揮するだろう。
撫子の為に作ったのは、結局拳攻撃を活かす為のナックルだった。
今回のアイデアは、共に魔力に対する吸引力と反発力を利用した感じだ。
まさかそんな事ができるとはねぇ。
これも魂を込められる奇乃子だからこその魔道具なのかもしれない。
尤も能力の解析はほぼできているので、俺もおそらくできるようにはなると思うけれどね。
さて町のマスターとの戦いは、用意されたフィールドで戦う事となった。
どうやらダンジョン内の町の近くだけれど、よくわからない場所だな。
どういう訳か俺の中の妖凛はフラフラと俺から離れて行っていた。
どことなく暗黒界と雰囲気が似ている場所なので、懐かしくなったのかもね。
「戦いは八対八のバトルロイヤルだ。全員が負けを認める、或いは死亡判定が出て戦線を離脱したら負けとなる。そちらが負けたら全員がレベル1となって初めの村から人生やりなおしてもらうぞ」
「それでこちらが勝てばダンジョンの先に進める訳ねぇ~。でも正直リスクの方が大きいように感じるわねぇ~」
「嫌ならこれ以上は進めないだけだ」
確かにこの戦いはバランスの取れたものではない。
リスクの方があまりにも大きすぎる。
でも俺は神だし、負ける要素はないはず。
こいつが転生者だと油断はできないけれどね。
「そういえばまだ名前を聞いていなかったな。俺の名前は|黒川完《くろかわたもつ》だ。お前たち、名前はなんという?」
黒川完だと?
ん~‥‥、何処かで聞いた事がある名前だな。
おそらく生前、かなり近くにいたような‥‥。
みゆきが亡くなった事で、生前の人に関する記憶ってのがあまりハッキリとはしていないんだよね。
もちろん覚えてはいるんだけれど、イスカンデルで北都尚成として活動していた辺りは全て抜け落ちている訳だし。
辛かった頃の記憶ってのは忘れるようにもできている。
ただ、この名前はそれ以前に知っていた気がするんだよな。
「自分はこのプレイヤーズギルド『闇に昇る太陽』のマスター、堀田孔聞です。つまりこのパーティーを率いているのは自分って事になりますね」
「ほう‥‥。その割に一番弱そうだな」
「なっ‥‥」
本当の事を言われてしまったな。
そして黒川は、それを見抜けるだけの目を持っている。
やはりチート転生者の可能性が高そうだ。
「わたくしは大和撫子と申します。対戦よろしくお願いしますね。ちなみにわたくしは、うちのギルマスよりも強いですよ?」
「ふむ。そんな気はするが、魔力では一番下っ端に感じるな」
「なっ‥‥」
又も本当の事を言われてしまったな。
でも撫子を侮っていると、やられるのはそっちかもしれないぞ。
「俺は秋葉原土筆だ」
「俺は秋葉原奇乃子なのだ!」
「兄妹‥‥、ではなさそうだな」
「同じ孤児院で育っただけだ。名字も院長のを貰っただけでね」
「なるほど」
そうだったのか。
想像はできていたけれどね。
「次は?」
「私は萬屋狛里なの‥‥」
「僕は兎束想香なのです!」
「この中ではお前たちが一番やりそうだな」
「もちろんなの‥‥」
「そうでもないのです。でもそうかもしれないのです」
想香はともかく、狛里の強さをある程度見抜いているとしたらやはり侮れないかもな。
それを知った上での余裕だとしたら、この黒川はかなり強い。
やはり転生者の可能性が高いか。
転生者は強い想いを持っているから、その分魔力も強くなるんだよな。
例えば俺の場合は、みゆきを失った喪失感や後悔が大きかった。
忘れてはいたけれど、それ故にチート賢者になれたのだろう。
みゆきの作った世界の既定路線とも言える訳だけれど、何も無ければ俺は何処かで死んでいたはずなのだ。
「私わぁ~、新巻鮭天冉よぉ~」
「俺は此花策也だ」
「女はなかなか侮れない目をしている‥‥なっ!って、策也だとぉ?俺の嫌いな奴の名前と同じじゃないか!」
「えっ?そんな事を言われても‥‥」
俺の名前を聞いて、黒川は人も殺せそうな目で睨んできた。
いやいや、名前が同じくらいでそんなに殺気だたなくても。
策也なんて名前、多くはないけれどいるだろ?
あれ?黒川完って‥‥。
知っている名前だ。
働いていた会社の同僚にそんな名前の奴がいたわ。
俺が死ぬ頃には既に会社を辞めていたけれど、確か同僚の女の子にフラれたのがきっかけだったか。
いやその辺りの理由でクビになったような記憶もある。
詳しい事は社長も話さなかったから知らないけれど、おそらくこの男は転生後のあいつだ。
俺は何故か確信が持てた。
しかしあいつ、死んでたんだ。
というか、嫌われていたとはショックだよ。
俺は男には嫌われないキャラだと思っていたんだけどなぁ。
あ、でも場合によっては嫌われた事もあったな。
幼馴染が可愛い女の子ばかりで、そういった子たちと仲良くしているとやっかむ奴がいたように思う。
尤も黒川が俺を嫌っていた理由はそうではないはずだけれどね。
幼馴染が同僚にいた事はない訳だし。
「それじゃ始めるぞ!こちらの残り七人は紹介は無しだ。どうせお前たちは負ける。知る必要もないだろう」
別に勝っても知る必要がないと思うよ。
しかしこの黒川が新たな神候補って可能性はないのだろうか。
強さで言えばおそらくは最右翼。
「何時でもかかってきていいぜ?」
「自分たちは負けませんから。つまり勝ちます」
「弱い奴ほどよく吠えるわ!今俺は気分が悪い!直ぐに皆殺しにしてやる!」
黒川、お前が一番よく吠えているよ。
つかそこまで俺の事を嫌っているって、マジで悲しくなってきたわ。
一体何故なんだろうなぁ。
などと考えていたら、いきなり黒川が襲いかかってきた。
「何時でもかかってきていいって言ったよなぁ!」
「おまっ!よくある決め口上だろうがぁ!」
黒川の最初の一撃は、何処からともなく取り出した剣によるものだった。
それを土筆がマーストンファーでガードする。
いきなり発動か?
「バリアソードだぜ!」
「ふっ!この程度の早さで俺を捕らえる事はできんよ」
ほう、バリアソードが効かないか。
流石に強いな。
でも、せいぜい天冉と互角か。
それも一霊四魂抜きの天冉くらいに感じる。
「それじゃぁ~、私たちは雑魚の七人を止めるからぁ~、黒川ちんは四人でなんとか倒してねぇ~」
「これ結構きついぜ?」
四人だけで黒川の相手をするのは、戦いの前から予定してた事だ。
相手の強さによっては別の選択肢もあったけれど、天冉は四人で黒川を倒せると判断したようだった。
「雑魚だと?!」
「俺たち七人を四人で対応できると思っている辺りおめでたい奴らだぜ!」
などと雑魚がほざいています。
何にしても、こうして黒川たちとの戦いが始まったのである。
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