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2020年5月14日【木】16時24分38秒
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2017年2月25日【土】11時13分21秒
【(゚∀゚)】フリー写真館を狛犬画像室にリニューアルしました♪
2013年11月4日【月】19時44分48秒
【(*´∇`*)】川柳と短歌を始めました。
2013年11月4日【月】19時43分21秒
【(*´ω`*)】現在エッセイ&詩以外の更新は休止しています。
2013年1月7日【月】18時48分51秒
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二度目の登校、おかしな愛美

 四月九日の月曜日、俺たちは気分を新たに、萌芽高校を目指して出発していた。
 今日は実に順調で、此処まで大きなトラブルはない。
 愛美を迎えに行くと、愛美は既に家の前で待っていた。
 何故か弟の雄太が、愛美の隣にパンツ一丁で立っていたが、問題はそれだけだった。
 俺は、すぐに雄太を家の中にリリースすると、愛美と手を繋いで夢見駅へと向かった。
 今日からは、学校の購買部も学食も機能しているはずで、特に何も買う必要はない。
 家を出る時間も、入学式の日より三十分近く遅いので、朝食も食べてきている。
 それなりのお金も持ってきているので、何かあっても対応できるだろう。
 俺は、繋ぐ手を大きく振って、駅までの道のりを歩いていった。
 夢見駅につくまで、会話も無かったが、トラブルも無かった。
 会話があまり無いのはいつもの事だが、トラブルが無い事は珍しい。
 お互い、無言のコミュニケーションをしていた事が良かったのかもしれない。
 俺は無言で、歩く愛美の笑顔を見ていた。
 そんな俺に気がついて、愛美は終始笑顔だった。
 たったそれだけのコミュニケーションが、愛美の他への行動を抑えていたのだろうか。
 なんにしても、普通にしている愛美との登校は、普通に青春といった感じだった。
 電車の中でも、俺たちは無言で、そしてトラブルも無かった。
 ここまで来ると、どういうわけか、俺は不安になってきた。
 トラブルが無い事は喜ぶべき事だと思うが、反面萌える事もない。
 ただ、普通に可愛い彼女と登校しているだけだ。
 いや、普通じゃない気がする。
 そうだ、俺たちは此処まで、一言も言葉をかわしていない。
 普通の恋人同士の登校なら、多少なりとも会話があるだろう。
 俺たちも、先日までは当然そうだった。
 確かに会話は少ないが、全く喋らないなんて事は無かったはずだ。
 俺は疑問に思い、愛美に尋ねた。
「愛美、今日はなんだか、いつもよりも大人しいね」
 すると愛美は、少し苦笑いのような笑顔を浮かべるだけだった。
 やはり、これは何かある。
 俺は、精一杯の優しい笑顔を作って、愛美に言った。
「もし何かあったら、俺には言っていいんだよ。大丈夫。俺はどんな時も、愛美の味方だからね」
 すると愛美は、一粒涙を流して、俺を見つめて言った。
「やっぱり、こんなの私じゃないよね。久弥くん、嫌だよね」
 正直、つつましい古き日本の女性ってのも、俺は悪くないと思っている。
 だけどそれは、本人がそう望み、無理が無い場合だ。
 トラブルが起こらず、ドジやボケも少ない今日の愛美は、確かにつつましい可愛い女性に見えなくはないが、これが決して本質ではない。
 それにやはり、萌えは捨てがたい。
 とにかく、理由をハッキリ聞かない事には。
 もし本人が望んでいるなら、協力もやぶさかではないから。
 まあおそらく、違うだろうけれど。
「俺は、愛美が愛美で、そうしたいってなら、否定しないし受け入れるよ。だけどきっと、愛美はそうじゃないよね。だって泣いてるし、今日の愛美はなんだか辛そうだから」
 俺がそう言うと、愛美は俺の胸に顔を埋めてきた。
 満員電車の中なので、最初からそれに近い状態ではあったが、俺は焦った。
 |心《しん》の|臓《ぞう》が、ドキドキと鳴いている。
 ぶっちゃけ、家族のような付き合いをしているから、これくらいどうって事も無いのだが、状況が俺を盛り上げていた。
 だが、俺の臨戦態勢も、すぐに解除される事になる。
 愛美がマシンガントークを始めたから。
「あのね、入学式の日にね、担任の田中先生からね、うちに電話があったみたいなの。それでね、ホームルーム中にお弁当食べていた事をね、お母さんに言ったらしいの。でね、お母さんにね、どうしてそんな事したの?って聞かれて、朝ごはんだから食べたのっていったら、それはちゃんと食べないといけないよねって、お母さんも納得したの。でもね、先生にとってはね、それは面白くない行為だから、やめて欲しいとか言うの。更にね、あなたの娘さんは、ちょっと頭が弱いところがあるから、そのあたり治さないといけないとか言われたらしいの。でね、お母さんもそんな事知ってるから、治せるもんなら治しているわよって言い返したらしいの。そしたらね、治す良い方法があるからって言われたみたいなの。でね、その方法がね、とにかく喋るなって事だったの‥‥」
 なるほど、確かに愛美は、喋った時にこそ、色々とドジをかます。
 現に、今喋りまくってる間、隣の人の足を踏んでいた事にも気がつかなかったもんな。
 隣の人、ちょっと怒って愛美の事睨んでいるし。
 俺は軽く、その人に頭を下げた。
 それにしても、担任の田中だったか、よくあれだけの時間に、愛美の本質を見抜いたな。
 喋らなければ、八割がた問題を抑え込む事ができる事、どうして分かった?
 俺ですら、言われて納得した感じなのに。
 流石に先生といったところか。
 いやしかし、中学時代の先生には、何も分からなかった気がする。
 俺はなんとなく、昨日有沢が言っていた「萌芽だよな」という一言を思い出していた。
 この後結局、愛美はいつもの愛美に戻っていた。
 それでも、初日よりは順調に学校についた。
 電車のドアに挟まれ、通学路で二回転びそうになり、街路樹にぶつかりそうになっただけで済んだ。
 その全てにおいて、俺が助けたり、未然に防いだわけだけれど。
 つか俺がいなかった時、愛美はどうやって生きてきたのだろうか。
 まあ一人だったら、そうそうドジもしないのかな。
 誰とも喋る事がないから。
 だけどそれって、どうなんだろうか。
 一人っきりで、問題無く過ごす毎日と、ドジやボケがあっても、誰かと一緒に過ごす日々。
 どちらがいいのか分からないが、少なくとも、愛美は俺と一緒の方がいい。
 いや違うな。
 俺は、愛美と一緒がいい。
 今はまだ、ムカつく事も多いけれど、それでもこれだけ、愛美が好きだから。
 そんな事を考え、ニヤニヤしながら、俺は愛美と共に教室に入った。
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