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第四十三話 日米決戦

天照皇大神の高天原から出撃した俺達は、直ぐに要塞内に入って戦闘エリアまで移動した。
そこで見たものは、ちょっと苦笑いしてしまうものだった。

カッチ「あの友軍機の戦い方、誰かに似てないか?」
月読命「韓国のキングに似てるかもな(汗)」
爽真「あっちも名前は違いますが間違いなく関羽ですよ。どう見ても。もしかして‥‥」

間違いなかった。
ジークの秘策というか、やけに余裕があった理由が分かった。
今の日本は、ただの日本軍ではない。
日中韓同盟軍なのだ。

カッチ「こりゃなんとかなりそうだな。アマテラスはそのままアメリカの本拠地、月に向かってくれ」
天照皇大神「がってん・・・って一人でぇ?」
カッチ「先に沖田艦長とか、このみや直幸くんなんかも向かっているよ」
天照皇大神「そうなのぉ。分かったぁ」
月読命「しばしの別れ寂しいのぉ~」
カッチ「いや、今一緒にいるんだろ?更にしゃこたんもw」
月読命「これはどういう事だ!?説明を求める!」
カッチ「そんなに喜ぶなよwあー裏山!」

しゃこたんを月読命の家に向かわせたのは、俺の提案からだ。
まさか冗談が本当になるとは思わなかった。
以前話していた夢のコラボレーション、天照皇大神としゃこたんの共闘の話をチサトにしたら、『見てみたいよぉ~』とか言い出して、連絡とってなんとかしてしまったってわけだ。
全くチサトは恐ろしい人だ。

カッチ「おっ!アレはスーパーマンじゃね?」
ドリーム「私がやるよー!」
カズミン「俺だよ!」
アライヴ「いいや俺が!」
爽真「僕がやります!」
呼んだでござるか?「呼んだでござるか?」

流石にこれだけのメンバー相手だと、世界チャンプと言えども辛いだろうな。
でも、こちらもそれほど戦力を集中させる余裕はない。
アメリカにはかなりの使い手が沢山いる。
eスポーツの盛んな国だからな。

カッチ「おいおい、他にも強いのがゴロゴロいるんだから、ちゃんと考えてくれよー」
月読命「スーパーマンは俺一人で十分だから、皆は他に行くよろし!」
カッチ「おっ!いよいよ本気でやる気になったか?」
月読命「最後くらいはな」

ゲーム開始時、人型乗りの中で最も階級の高かった月読命。
確かに前作での成績が影響した所もなかったとは言えない。
なんせ『絆Ⅱ』の第1回大会で優秀だった大将が、今回のゲームの初期階級で5人も大将に選ばれている。
でも月読命は実質大将だったとは言え、前作では大将ではなかったのだ。
唯一大将ではなかったのに選ばれ、唯一人型乗りで選ばれているのだから、相当成績が良かったと言える。
ただゲームを楽しみたいという方が強くて、あまり本気にはなれない性格なのだろう。
せっかくやる気になったのだから、此処くらいは月読命に戦わせてあげたかった。

カッチ「月読命が戦いたいそうなんで、みんなは他をよろしく!」
ドリーム「負けたら私がやるからね!」
カズミン「了解!」
アライヴ「ま、いっか」
爽真「月読命さんなら仕方ないっす」
呼んだでござるか?「呼ばれなかったでござる」

アメリカのナンバーワンプレイヤースーパーマンは確かに強かった。
カナダのナイアガラの滝と同じか、それ以上にも感じた。
でもそれに月読命は負けていなかった。
正直半信半疑ではあったけれど、やはり月読命は強かった。
たぶん俺が目指した一生くんよりも強い。
もしかしたら俺が一生くんをライバル視していた事で、月読命は本気になれなかったのかもしれない。
まあ本当はただ単に気分屋なだけかもしれないけどね。

さて戦況は日本が優勢のようだ。
侵入してきた敵人型は、徐々に数を減らしている。
もうすぐビューティフルベル師団が月へと攻撃を開始する頃だ。
そしてその強さに、アメリカ軍は撤退して救援に向かう事になる。
間もなくモニター左上に交戦中のメッセージが表示された。

ジーク「作戦はここまで順調にきている。もう間もなくアメリカ軍が撤退を開始するだろう。そしたらそれに合わせて追撃する!全員準備してくれ!」

俺達は強い。
個々の能力では負けない。
チームとしての絆も強くなった。
戦術も覚えた。
後は戦略さえ間違えなければ、俺達は勝って当然なのだ。
そして今、勝つための戦略通りにきている。

カッチ「敵が引き始めたぞ!一応戻ってくる可能性もあるから、俺達は確実に撤退を確認してから追撃する」
月読命「まだクシちゃん来てないしな」
カッチ「分かってたか」
月読命「クシちゃんだけまだカッチ旅団所属に残ってるしw」
カッチ「やっぱ月読命は強かったな」
月読命「もう駄目。眠くて死にそうだから、後は頼む‥‥」
カッチ「ま、楽しもうや」
クシナダヒメ「ひぃー!きましたよー!一人で寂しいし、見捨てないでくださーい!(泣)」
カッチ「来た来た!(笑)」
月読命「ではそろそろカッチ旅団の方々は、山田のお餅に乗り込みましょう!」
ドリーム「行きますか!」
カズミン「了解!」
アライヴ「最後の戦いだな」
じぇにぃ「まだぁ~モンゴルとの戦いもあるよぉ~」
紫苑「だな」
呼んだでござるか?「呼んだでござるか?」
ニムエ「はぃ」
爽真「ジークさんまで出撃とか、完全に総力戦ですね」

総力戦とは、『全ての力を出し合う戦い』と思っている人も多いかもしれない。
でも本当は、敵を無力化する戦いの事である。
今日、アメリカを倒し切るのだ。
俺達は山田のお餅に乗り込み、アメリカの本拠地、月へと向かった。

2時間後、月に到着した時に俺達を驚かせたのは、天照皇大神としゃこたんの艦船ぶん殴り攻撃だった。

カッチ「やっぱり完全にチートじゃねぇかよ!(苦笑)」
月読命「俺は横でプレイしている二人のモニター見てるから、知ってたけどね‥‥(汗)」

前に見てみたいと言っていた、天照皇大神が艦船を操りぶん殴るタイミングで、しゃこたんがバリアを張るという攻撃。
天照皇大神だけだと、あまり多様する事はできなかったし、相手が艦船となれば受けるダメージもそれなりにあった。
でもそのタイミングでバリアを張るわけで、艦船へのダメージが最少で済む。
千本ノックが、十万本ノックくらいできるようになるわけだ。

月読命「じゃあクシちゃん、あの戦場の手前まで運んでおくれ」
クシナダヒメ「それって主戦場の中心じゃないですかー!」
カッチ「アメリカ軍はインド軍のようなAIは使っていないから大丈夫でしょ」
クシナダヒメ「適当な事言わないでくださいー!でもアメリカ軍の方が数が多いじゃないですかー!」
月読命「そうだね。たった6倍くらいだよ」
クシナダヒメ「たったとか言わないでくださいー(泣)」

そんな事を言いながらも、クシナダヒメは戦場のど真ん中へと突き進んだ。

ドリーム「さあやるよ!」
カズミン「今度はスーパーマンは俺がやる!」
アライヴ「俺達にやらせて欲しいなぁ」
トイキ「そうなのさ」

俺はチャットを全士官チャットに切り替えた。

カッチ「さあパーティーの始まりだ。勝つための算段は十分にしてある。みんな思う存分楽しんでくれたまへ~」

別に俺が元帥でもなんでもないんだけど、なんとなく言いたかった。
何故なら、今猛烈に楽しんでいるから。
するとみんなも士官チャットに切り替え、次々に返事が返ってきた。

月読命「偉そうだな!」
爽真「了解っす!」
じぇにぃ「やるよぉ~」
光合成「先生はこんな時、ずる休みしている生徒を叱るべきなのだろうか」

そういえば本当は今、学生は授業を受けている時間だ。
労働者は労働に励んでいるに違いない。
今日本軍で戦っているメンバーは、ニートか主婦かガチ勢か、とにかくかなり数は少ないのだ。
一方アメリカは深夜。
普段なら眠っている時間とは言え、ゲームに参加できる人数は圧倒的に多い。
そもそも参加人数でもアメリカには負けている。
数では勝負にならない。
しかし俺達は個々の力で一枚上回っている。
更に単なる烏合の衆ではなく、しっかりとした戦術を持って戦っている。
不思議なのだが、インド戦でAIの動きを観察してからか、いや既にそれ以前から、俺はかなりプレイヤーの動きが見えるようになっていた。
味方の動きも含めてだ。
だからと言ってそれに合わせて動いて戦えるかと言えば難しく、ソロプレイならおそらく一生くんどころか、幼子先輩にすら勝てないかもしれない。
一生くんレベルに言わせれば、このゲームの世界戦では、遠い国とのバトルで若干のタイムラグを感じるそうな。
だから一部のプレイヤーからは苦情もあるという。
攻撃が当たったと思っても、次の瞬間かわされている、なんて事にもなるらしい。
まあカズミンやドリームに言わせれば、それも含めてのバトルだそうな。
戦いにそれを利用するのがプロ。
俺にはそこまでは無理だ。
でも陽菜と一緒にスサノオに乗って、みんなをサポートする事はできる。
美鈴のように指示を出すのは無理かもしれないけれど、今の俺は俺のやり方でこのフィールドを支配しているのだ。

和也「俺は今、この戦場でナンバーワンの気分だよ」
陽菜「完全にかっちゃんが支配しているよね」
和也「アメリカのプレイヤーも、まさか自分たちが思うように戦えないのが俺達にあるなんて、思ってもいないだろうな」
陽菜「これだけゴチャゴチャしている戦場では流れ弾も当たり前だし、私達に気づく人もいないみたいだよね」
和也「攻撃してくるヤツはいるけど、主に俺達の後ろの艦船狙いだからな」
陽菜「傍から見ると、ただ艦船を守っているだけの旅団長だもんね」

仮に俺達が落とされるような事になれば、おそらく日本は此処からかなり苦戦する事にはなるだろうな。
でも仮にそうなったとしても、俺達の勝ちはもう間違いないだろう。

和也「しかしアメリカはやっぱり強いな」
陽菜「スーパーマンはまだ落とせてないもんね」
和也「他にも強いのがゴロゴロいるし」
陽菜「でも日本も負けていない」
和也「おっ!直幸くんがスーパーマンにロックオンしたようだぞ」
陽菜「どうなるか見ものね」
和也「他は遠慮して直幸くんに任せるようだな。まっ、負けそうになったら俺がフォローするか」
陽菜「そういえば今日、直幸くんの6歳の誕生日だよ」
和也「6歳男児が世界チャンピオンに何処までやれるのか」
陽菜「カナダのナイアガラの滝を倒したのは、タイミングが良かったのもあるしね」
和也「今度は真っ向勝負だな」

直幸くんは結局スーパーマンを倒せなかった。
ただ力は完全に互角に見えた。
しばらく戦って、倒せないから面白くなかったのか、直ぐに別の敵に標的を変えて去っていった。
その後また、一生くんなり、ドリームなり、太郎くんなりが戦いを挑んでいたが、結局スーパーマンは誰にも倒す事ができなかった。

和也「誰にも倒せないみたいだな」
陽菜「そろそろ敵の数も減ってきたし、決着をつけてもいいかもね」
和也「みんなで倒すか」

俺がそう陽菜に話した時、月からアメリカの元帥『ドナルド』が人型に乗って現れた。

和也「ちょっ!元帥出陣してきたんだけどw」
陽菜「このままだと負けると思ったのかな。ドナルドはスーパーマンのライバルなんて言われているし、自らの力で戦況を打開しにきたのかも」
和也「もしもスーパーマン並みの強さを持っているなら、この状況を変えられると思っても不思議じゃない」
陽菜「でも、私たちはまだ日本のトッププレイヤーたちのサポートをしていない」
和也「さて、本気でこのフィールドを支配するか!」
陽菜「倒しちゃおう!」

カッチ「月読命!元帥のドナルドが出てきたぞ!」
月読命「えー‥‥戦うのしんどい~爽真きゅんよろしく」
爽真「スーパーマンのライバルって言われている人ですよね。でももう疲れてやれる気がしないですよ」
じぇにぃ「がんばれぇ~太郎~」
爽真「はい!リナさん!必ず倒して見せますよ!」
月読命「仕方ねぇなぁ~俺も少しは手を貸してやるか」
天照皇大神「流石久弥くん~やさしい~」

太郎くんは単純だった。
まあ本当はなんだかんだと倒したかったのだとは思うけどね。
スーパーマンのライバルと言われるだけあって、ドナルドは強かった。
しかし太郎くんと月読命、そして俺のサポートがあれば、倒せない相手ではなかった。
最後は逃げようとするドナルドを俺のフェンネルがとらえ、動きが一瞬止まった所を何処からともなく現れたえり先生がビームソードで斬りつけ、じぇにぃがライフルで打ち抜いて戦闘不能状態へとしていた。
後はとどめを刺せばこの日米決戦は俺達の勝利だ。
スーパーマンが助けに向かってくる中、突然現れた関羽のような戦い方をするプレイヤーがとどめを刺した。
いや間違いなく中身は中国の関羽なんだろうけどね。
美味しい所は中国に持っていかれましたとさ。
スピーカーから今まで聞こえていた戦闘音がピタリと止まり、部屋は静かになった。
モニター左上には『アメリカ滅亡』の文字が表示されていた。
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