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第三十九話 力を合わせて

イギリスを倒した次の日の朝、俺は学校に向かう支度をしながら状況確認だけ行っていた。
既にロシアはインドにやられており、残る勢力はインド、アメリカ、モンゴル、そして我らが日本だけとなっていた。
中立化した有人要塞は、既に所有国が決まっていた。
その他にも、取ったり取られたりがあったが、概ねインド有利に進んでいるようだった。
簡単にまとめると、地球はモンゴル、月はアメリカ、アルテミス要塞は日本と変わらず。
第1エリアはほぼアメリカが領で、全宇宙の35%はアメリカが持っていると言って良い状況だ。
第2エリアはインド、第3エリアもインドが完全に掌握している。
第4エリアは日本で、残る第5第6は日本とインドで分け合っている状況だ。
インドが全宇宙の50%近くを既に手に入れている事になる。
更に現状戦力を考えれば、徐々にインドが勢力を拡大し、日本とアメリカは徐々に力が衰えていく事になるだろう。
一刻も早い対応をしないと、ドンドン勝機が無くなっていくのは明らかだ。
直ぐに何かしらの作戦行動が必要な状況だった。
ただ少し気になる事もあった。

和也「ロシアは思ったよりも粘ったな」

学校の授業、1時間目が終わった休み時間、俺達は保健室に集まっていた。

リナ「むしろぉ~早かったんじゃないのぉ~?」
和也「いや、もしもドリームやカズミンレベルがうじゃうじゃいるのだとしたら、もっと早くに落とされると思っていた。なのに俺達がイギリスに勝つよりもかなり遅かった」
太郎「確かにそうですね。つまり俺達よりも弱いって事になるのでしょうか」
えり「ロシアのほぼ全軍を相手にしていたインドと、イギリスの元帥軍だけを相手にしていた私たちでは比べられない」
和也「単純に6倍の敵を相手にしていたとしても、俺達師団じゃなく旅団だよ?6倍どころじゃないよね」
リナ「数字的にわぁ~私たちの方が能力が高いって事だねぇ~」
和也「だからさ、何か弱い所もあるって事なんじゃないだろうか」
太郎「たとえば、人型での戦闘は強いけど要塞攻略が下手とか?」
和也「そそ。個別能力は高くても戦術がなってないとか。その辺りで何かしら勝てる要素があると思うんだよね」
えり「それに妙だな。イギリスとロシアが滅亡して2師団余裕が出たのに、月やアルテミス要塞ではなく普通の要塞やコロニー攻略に向けている」
和也「時間をかけて確実に勝ちに行くって事なら分からなくはないけど、もうそんな事しなくても勝利は見えてるはずなんだよね。なのに攻撃の手を強めようとはしない」
リナ「もしかしてぇ~インドの元帥にぃ~勝負を挑もうとか考えてるぅ?」
和也「まあね。地球が取れれば勝機はあるけど、時間が足りないよね。だったらもうそれしかないと思う。だからその辺りえり先生、ジークと話しといてよ」

俺達には授業がある。
だからゆっくり他の面子と話をしている時間もない。
その点えり先生はずっと保健室だし既に准将になっている。
授業中はゲームに集中できるはずだし、将官チャットにも参加できる。

えり「私がか?どうなっても知らんぞ?」
和也「いやいや、どうもならないでしょ?先生なんだから頼むよ」
えり「うむ。善処はしてみる」

少し不安は残るものの、俺達は後の事はえり先生に託して教室に戻った。
不安だったので、やはり俺は授業中もスマホで状況を確認していた。

ジーク「あんたはカッチ旅団の人型乗りだな。」
光合成「そう。あやつが今授業中の為、考えを私が伝えるよう仰せつかった」
ジーク「話はなんだ?」
光合成「インドの元帥狙いで攻撃したいとか」
ジーク「ちょっと待て。」
光合成「うむ」

将官チャットでそこまで話した後、チャット画面はしばらく動かなかった。
すると将官チャットではなく、ジークからの直接メッセージが届いた。

ジーク「内密に事を進める為将官チャットでは否定しておくが、俺達もそれを考えていた。本日15~16時辺りに出兵する予定で準備しておく。いけるか?」

授業中だし、スマホでチャットは面倒なので、俺は「了解」とだけ返事を返した。
その後すぐに、将官チャットにジークの言葉が表示された。

ジーク「それは無理だ!今は戦力を温存し、来週頭に地球を攻める予定にしている。カッチ旅団は一応すぐに出兵できるように待機しておいてくれればいい。」
光合成「あー了解。伝えとく」

どうやらジークたち上層部でも、もう元帥との直接対決しか道はないと考えているようだ。
おそらくアメリカも同じような事は考えているだろう。
ただ今まだアメリアがインドに攻撃を仕掛けているという話はない。
アメリカは深夜の時間。
時間的に有利に戦いたいなら、もうすでに戦いが始まっていても良い時間だ。
しかしアメリカがインドの元帥狙いで侵攻しているという話はない。
つまり俺達の方がおそらく先にインドに挑む事になる。
アメリカを先に行かせる手もあったろうが、地球攻略という道も残すアメリカだから、攻めない可能性もある。
それにみんな自分たちの手で勝利したいのだろう。
俺も同じ気持ちだった。

先生「じゃあここ、柳生分かるか?」

先生が授業中俺を指名していたらしいが、その声は全く俺には届かなかった。
気が付いたら俺は、幼子先輩と廊下に立っていた。
これ幸いと授業が終わる前に俺達は保健室へと向かった。

2時間目の休み時間を知らせるチャイムが鳴る頃、俺は既にパソコンでログインし、旅団の士官メンバーだけにメッセージを送っていた。

カッチ「今日16時までに出撃する予定だ。戦いは明日朝まで続くかもしれない。或いはもっと続くかもしれない。行ける人はできるだけ早くサジタリアス要塞でログイン待機しておいてくれ」
沖田艦長「了解した」
町田中尉「チュー!」
いけぬま「はいq」
ぺ天使「わかったっす!」

返事はこれだけだったが、おそらく陽菜は大丈夫だし、月読命とアマテラスも間違いなく行ける。
ここに居る幼子先輩とえり先生と太郎くんも大丈夫だし、無理なのは直幸くんだけだろう。
子供に深夜ゲームをさせるわけにはいかない。
かなり戦力が落ちるがやるしかない。
本当はビューティフルベル師団とか紫陽花師団、サイファ師団が揃って行ければいいのだろうが、数で攻めればきっと元帥は逃げる。
索敵にも早くにつかまるだろうしね。
そうこうしている間に地球を落とされれば、もう完全に勝機は潰える。

和也「しかし、これしか手がないとは言え、よく考えると無謀だよな」
リナ「直幸くんがいないのわぁ~かなり戦力ダウンだねぇ~」
太郎「俺がなんとかしますから大丈夫っすよ!」

そういう太郎くんも、あまり自信はないようだった。
インドにつけ入る隙があるかもしれないとは思っている。
でもそれがなんなのか、今はまだ分からない。
それが見つけられなければ、俺達はきっと負ける。
まあその時は全力で逃げるだけだが、それで優勝はインドに決まりだろう。
或いはアメリカがなんとかするかもしれないが。

この後の授業も、俺は上の空だった。
昼休みに先生に呼び出され説教もされたが、無事15時には帰宅できた。

カッチ「みんな集まっているか?」
呼んだでござるか?「呼んだでござるか?」
月読命「呼んだでござるか?も来たか!」
ニムエ「わたしも‥‥」
カッチ「これは心強い!もう要塞を守っている意味はないしな。旗艦に乗れない人は別の艦船に乗ってくれ」
じぇにぃ「今帰ってきたぁ~」
爽真「僕も」
悪即斬「俺はまだ出先だが、とりあえず高天原に乗っておく!深夜の戦闘はやるぜ!」
天照皇大神「大集合だねぇ」
このみ「このみはまだ家じゃないですが、出発までにはスマホで準備して間に合わせるであります!」
町田中尉「チュー!」
俺「直幸は無理かもだけど、一応俺も乗っけてってくれ!」
いけぬま「楽しみですq」
ぺ天使「俺もっす!」
光合成「この後まだ仕事あるから、とりあえず高天原に乗っておく。沈められるなよ」
クシナダヒメ「セーフですか?!委員会ぶっちしてきましたよぉ!怒られたら先輩責任とってくださいね!」
月読命「大丈夫!俺様に任せておきたまへ」
カッチ「確かその委員会って、なんか怪しい雰囲気のヤツだよな」
クシナダヒメ「言わないでくださーい!(泣)」
沖田艦長「萌え萌え~!」
カッチ「沖田艦長!」

どうやら全員揃っているようだ。
後は出発を待つだけだが、ジークからは何も連絡は入ってこなかった。

和也「どうしたんだろう。ジークから何かしら連絡があると思っていたんだけど」
陽菜「ん~こっちから連絡してみたら?」
和也「そうだな」

陽菜とそんな会話をしていたら、ようやくメッセージが入ってきた。
しかしそれは、個人チャットでも将官チャットでもなく、旅団の士官チャットだった。

ドリーム「こんにちは。私も一緒させてもらうよ」
チサト「私も、ね」
カズミン「俺もね」
アライヴ「俺もいくぞ!和也くん!」
トイキ「よろしくなのさ」
ダイスケ「ゴッドブレスの名にかけて!」
サラ「ダイスケ暑苦しいよ」
今日子「私も参加させてもらうよ」
おとめ「よろしくねぇ~」
サウス「最後は俺かよ。説明するとだな。この戦いだけこっちで参加する事になった。よろしくな!」

おいおい、こりゃなんてメンバーだ。
ドリームは最初にジークに引き抜かれた日本軍4強の1人。
チサトはそのドリームと組んで名を馳せるドリームダストの片割れだ。
魔女と呼ばれる天才プレイヤーでもある。
カズミンは日本軍4強の1人でとにかく強い。
ドリームとは夫婦関係で、美鈴の弟だそうな。
アライヴは俺が勝ちたいと思った日本軍最高のプレイヤーで俺の従兄。
一生くんと呼んでいる。
その一生くんとコンビを組んで2人乗り機を操るのが、ゴッドブレスというゲームプロ集団のトイキ。
どうやら守りが得意。
ダイスケって人はよくは知らないが、そのゴッドブレスのリーダーとか。
サラはそのゴッドブレスで一番の使い手と言っていた。
おとめとサウスもゴッドブレスメンバーでかなりの使い手。
そして今日子は日本軍4強の1人。
今回は変形機がないのであまり活躍はしていないが、十分戦力になる人だ。

カッチ「みんなよろしく。積載量には余裕があるから、適当な艦船に乗ってくれ」

今回の話は一応量産機を操るメンバーには伝わっていない。
それぞれのリアル友達が乗ってはいるが、積載量の半分にもなかった。
だから10機増えた所でどうって事はない。

カッチ「ではみんな搭乗が完了したようなので、出撃する!」
沖田艦長「全艦船に通達する!カッチ旅団、発進!」

最後に俺は、艦船に乗れなかった曹長以下の仲間に要塞防衛を頼むメッセージを残し、第2エリアカペラ要塞へと出撃した。
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