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第十話 上位争い

ゲームが始まってから既に2ヶ月が経過していた。
最初こそ大きな戦いがあったものの、その後韓国も大規模に攻めてくる事はなかった。
韓国は中国に何度も攻められ、このままではマズイと守りを固めたようなのだ。
小競り合いをする国は多々あるものの、上位の国は変わっていない。
美菜斗の話によると、現状はアメリカがトップ、差が無くオーストラリアが続いているらしい。
オーストラリアはそんなに人口の多い国ではないし、有力視もされてはいなかったが、地球戦では地理的有利が大きい。
続いて中国だが、こちらもインドと差はなく、しかも直接小競り合いをしているようだった。
次にロシアで、その次が日本という事だった。

ジーク「このままだと俺たちは6番目だ。つまり宇宙に上がった時に独占できるエリアは第6エリアしかない可能性がある。」

ジークの言う第6エリアとは、宇宙マップを大きく分けた時の特定のエリアの事だ。
宇宙は立方体マップになっており、上部を中心としたエリアが第1エリア、手前を中心としたエリアが第2エリア、左側が第3エリア、右側が第4エリア、向こう側が第5エリアで、下側が第6エリアとなっている。
それぞれのエリアはデブリ帯で仕切られていて、中央エリアで交わる。
つまり最終的にはそれぞれのエリアを制した国同士が中央で争う事になる可能性もある。
エリアは広さに差があり、第1エリアを9とするなら、第2が6、第3が4、第4も4、第5が2、第6が1となる。
それ以外に中央エリアもあるが、こちらの広さは1だ。
ただし中央エリアには地球と月があるので、生産性は3番目に高い。
おそらくだが、第1エリアを制した国が優勝する可能性が一番高いのではないだろうか。
そしてトップで宇宙に上がった国はまず月を攻略し、次いで第1エリアに向かうものと思われる。
もしも我々がこのままの順位で宇宙に出たなら、第1エリアから第5エリアまで既に攻略が始まっていて、楽にエリアを手に入れようと思うなら、選択肢は第6エリアとなる。
しかし第6エリアの生産性は第1エリアの1割強であり、とてもじゃないが太刀打ちできない。
だから何としても宇宙に上がる順位は4番目以上でありたいわけだ。

サイファ「上位のどこかを攻めて引きずり下ろすしかないよな」
ビューティフルベル「アメリカは遠くて手が出せないのが歯がゆいわ」
グリード「オーストラリアは遠いし、インドは同盟しているから除外するとして、中国かロシアだな」
サイファ「中国をインドと共に共襲するのはアリだが、正直中国を最初から本格的に敵に回すのは良くない気がする」
美菜斗「だったらロシアしかありませんね」

珍しく美菜斗が全体チャットに参加してきた。

ジーク「珍しいな美菜斗。しかしロシアはこの所おとなしい。攻めるならほぼ全軍でいかないと太刀打ちできないぞ。」
美菜斗「そうですね。だったらこういうのはどうでしょうか。美菜斗師団が責任をもって日本を守りますから、他の人全員で攻めるというのは?」

確かにそれは良い作戦かもしれない。
戦力としては当然ジーク元帥軍が最も強いわけだが、数で言えば美菜斗師団が圧倒している。
士官(少尉以上)は元帥が自由に師団部隊編成を行う事ができるのだが、それ以下はプレイヤーの自由だ。
初心者やライトユーザーなんかは、どこの師団でも選ぶ事ができる。
美菜斗師団は割と自由の利く師団だし、美菜斗の名はあらゆるゲーム界で浸透し有名なのもあって、とにかく低階級のプレイヤーが多いのだ。
つまり量産型での物量作戦で、割と楽に守れる可能性がある。
もちろん量産型での物量作戦は、地球戦、或いは序盤でだけ使える作戦だし、宇宙で本格的に戦うようになれば使えないだろうが、現状美菜斗師団は守り最強と言える。
しかし問題は、ジークが美菜斗をどこまで信用できるかだ。
とは言えこのままだとまずいのも確かで、ジークはこの作戦に乗るしかないだろうな。

ジーク「分かった。その作戦で行ってみよう。ほかの師団大将もそれでいいか?」
サイファ「まっ、やるしかないね」
ビューティフルベル「元帥に任せるわ」
紫陽花「了解」
月読命「いえすさー」
ジーク「では決行は明日の19時。この辺りの時間ならロシアモスクワは13時だ。勝てるだろ。」

こうしてロシアへの侵攻が決まった。

5師団が集まった攻撃はすさまじいものがあった。
しかしこの時間に攻めてくる事が分かっていたのか、ロシアも準備を怠ってはいない。

和也「億を超える人々が参加しているゲームだからな。どこからでも情報は洩れるよな」
陽菜「美菜斗さんは各国にゲーマーの友人がいるらしくて、上手く情報を得ているらしいわよ」
和也「こちらが情報を得られるという事は、相手もまた然りだな」

ロシアとの戦いは膠着状態が続いた。
このままでは埒があかない。
今日は平日だし、そんなに長く戦っているわけにもいかない。
或いはここで倒しておかないと、寝る時間になって日本に戻ったら、逆に攻撃されてしまう恐れもあるのではないだろうか。
美菜斗師団の守りがあるとは言え、ロシア相手だとやはり厳しいだろうし、なんとかこの状況を打開する手はないだろうか。
俺は戦いながらも、なんとなく戦況を観察していた。
すると何かが引っかかった。
ほとんどの戦闘でこちらが勝っているのに、次から次へと敵がわいてくるのだ。
これはまあ量産機は地球では無限に使用できてしまう仕様だから仕方がないと言えばそうなのだろうけれど、それでもプレイヤーの数には限りがあるのだから、本来はここまで続かない。
死んでしまったら改めて出撃も可能だけれど、戦闘にやられたからと言ってすぐに死ぬわけでもない。
戦闘不能になったら、3時間の放置時間を経て死亡となる。
とどめを刺してしまう事も出来なくはないけれど、あえて行うプレイヤーキルにはポイント的にデメリットもあるし、そんな事を地球戦ですれば相手を助ける事にもなる。
当然俺達はそこまでするわけもないのだが‥‥
なるほどそういう事か。
俺は思いついた作戦を部隊に伝えた。

カッチ「みんな、倒した敵は余裕があったら俺の旗艦ヤマトGの後方まで運んで来てくれないかな」
じぇにぃ「どうしたのぉ~そんな余裕、あまりないんだけどぉ~」
カッチ「これだけ次から次に敵が出てくるのは、戦闘不能機を回収されているからなんだ」
じぇにぃ「そりゃそうだよねぇ~カッチの思惑は分かったけど、この状況だとそれを阻止するのも難しい気がするよぉ~」
カッチ「確かに最初は大変だけど、何とか回収を抑える事ができたら、徐々に戦闘は楽になるはずだ」
光合成「やってみればいいのね」
カッチ「そういう事だな」
沖田艦長「了解した。全艦に通達しておく」
カッチ「できれば戦闘能力の高い人はなるべく戦闘で、戦闘に疲れた人や手が空いている人がやる方向にしておこう」
じぇにぃ「了解」

そして俺は、集められた行動不能になった人型を回収にくるヤツを全てたたく。
作戦はスタートした。

最初はかなり厳しかった。
なかなか戦闘不能機をこちらまで運ぶ事ができない。
しかし少しずつやっていれば、徐々に敵機の数が減っていくのが感じられた。
そうなれば後は楽勝だった。
ジーク元帥軍4人のトッププレイヤーと四天王が、敵の拠点を破壊しつくした。
ちなみに四天王というのは、元々ジーク元帥軍に所属していた、麒麟、群青、疾風、紅蓮の4人の事である。

ジーク「よしこれでロシアを逆転した。このあと確実に守れれば最低でも5番目はキープできる。おそらく俺達の戦場は第4エリアか、上手く行けば第3エリアもあり得るぞ。」
サイファ「確かに。上位陣が全て素直にエリアを分けるとも思えないしね」
グリード「おそらくインドは中国についていくだろ」

この勝利で、俺達の状況は一気に良くなっていった。
中国が、インドとの小競りに兵力を持っていかれ守りが薄くなる中、台湾の攻撃によってダメージを受けていた。
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ドクダミ

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