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2017年2月25日【土】11時13分21秒
【(゚∀゚)】フリー写真館を狛犬画像室にリニューアルしました♪
2013年11月4日【月】19時44分48秒
【(*´∇`*)】川柳と短歌を始めました。
2013年11月4日【月】19時43分21秒
【(*´ω`*)】現在エッセイ&詩以外の更新は休止しています。
2013年1月7日【月】18時48分51秒
【(*´∇`*)】サイトをリニューアルしました。他も徐々に変更中です‥‥
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秋華エントランス

 この日、学校から帰ってくると、豊は明子から、手術の日時が決まった事を告げられた。
 来週、6月17日の日曜日に手術が行われる。
 16日に迎えの車が来るとの事。
 豊はショックだった。
 何故こんなに早く、手術をしなければならないのか。
 最近は記憶も安定してるし、学校でもちゃんとやっているはずなのに。
 テストは来週、順次返ってくると思うが、きっとそれなりの点数は取れているはずだ。
 テストの結果を見ずに、どうして手術を決めるのか。
 そしてその手術は、幸恵を死へと向かわせるものであるはずだ。
 此処で豊に、ある疑問が浮かんだ。
 音子が最初にジャンプした時、未来の幸恵に会っており、そこで幸恵から色々と話を聞いている。
 幸恵がその時の人だという保障はないが、こんなに似ている人がもう一人いるとも思えないし、名前も幸恵で一緒だ。
 だとしたら、こんなに早く、幸恵が死ぬ事はあり得ない。
 そして、実はもう一つおかしいと感じていた事があった。
 ベクトルラインが、思ったよりも早く東京に到着しそうな事だった。
 豊はすぐに部屋に音子を連れて行き、テーブルに地図を広げた。
「この町にいた人は、10人か11人前の人だったんだよね?」
「そうなのさ。たぶんそんなもんなのさ。」
 豊は、人数と距離のバランスが少しおかしい事に気が付いていた。
 だけどそれは、飛んでいる時間にも差があり、この後は詰まっているのだろうと判断していた。
 だけど普通に考えたら、このままいくと、ラインが東京湾へと抜けそうな勢いだった。
「じゃあココの前にはどれくらい?」
「いっぱいなのさ。幸恵も入れて10人以上はいるはずなのさ。」
 もしこの音子の言葉が正しければ、同じ時間を飛んだとして、ほぼ中間地点になるはずだ。
 だけど、東京都心を事故現場とするならば、明らかにバランスが悪い。
「音子、世界線の移動中、その世界の中で、大きく移動した事はあるか?」
 豊は勝手に、世界線の移動は、休憩と飛躍を繰り返してやってきたと思いこんでいた。
 でも、生活に必要な知識は覚えていたりするし、それなりの時間、人間世界で生活した事になる。
 前半は人間の姿で、後半は猫の姿が多かった事を考えると、ますます前半の飛躍は、休みが多かったのではないだろうか。
 そして人間としての生活が長ければ、飛躍を休んでる時間が長ければ、地図上で大きく移動する事も十分にあり得る。
「自動車にも乗ったし、電車にも乗ったさ。」
 音子は、電車も自動車も、初めて乗る時から問題無く乗っていた。
 大きく移動があって当然じゃないか。
 そして、まだ11カ月余裕があると考えていたが、それにも疑問がわいてきた。
 その時間軸での滞在が長ければ、その分時間は戻される。
 過去へ行くという事は、昇りのエスカレーターを、逆行して降りていくようなものだ。
 たとえば1日過去へ飛んで、その世界で1日過ごせば、結局出発点へと戻ってくる。
 豊は漠然と、1年より少ないとは思っていたが、半年くらいはあるものだと軽く考えていた。
 もっとしっかり、まずは日にちを特定するべきだった。
 音子の1年ってのを、そのまま信じたのが失敗だった。
 でもまだ、終わったわけではない。
「音子が事故にあったのは、いつ頃だ?寒かった?暑かった?」
 豊はその答えをなんとなく予想していた。
 きっと、今くらいの気候だろうと。
 予想は的中した。
「う~ん。今くらいだったさ。もう少し暑かったかもしれないのさ。」
 音子の言葉、これで豊はほぼ確信した。
 場所は東京都心ではなく、これから幸恵が向かう先、すなわち、手術が行われる場所に近い事を。
 豊は部屋に音子を残し、明子の部屋のドアをノックした。
「すみません。教えてください。手術は何処でやるんでしょう。」
 豊がそう言うと同時に、明子が部屋から出てきた。
 その顔には涙のあとが残っていた。
「もう、これ以上頑張っても、きっと無理よ。」
 明子は実は、幸恵を助ける為に、全てを暴露する事も考えていた。
 そうすれば、もしかしたら手術を回避する事ができるかもしれない。
 だけど、できない理由があった。
 それは愛する人を裏切る行為に相違なかったから。
 結局明子からは、病院の場所は聞き出せなかった。
 その後幸恵にも尋ねたが、場所は知らされていなかった。
 豊は自室に戻って考えていた。
 自分は、どっちを救いたいが為に、こんなに必死になっているのだろうかと。
 幸恵を救いたいのか、それとも音子の命の恩人を助けたいのか。
 答えは簡単で、両方助けたい。
 手術の日時だけは、既に分かっている。
 豊がやらなければならないのは、来週の週末までに、明子から手術をする病院を聞きだし、事故現場を特定する事。
 そこから命の恩人を探しだし、会う事。
 そして、手術を中止させる事。
 豊には正直、自分にそれができるのか疑問を感じていた。
 そして、自分がそれをやって良いのかも。
 だけど音子を見ていたら、それはそんなに難しい事ではなく、絶対にやるべき事であると思えた。
 ベクトルラインからの場所の特定は、やはり思ったとおり、東京湾についたところで行き詰った。
 音子の話によれば、車でこの場所に移動してきてから、世界線を飛んだとの事だった。
 車に乗っていた時間の記憶はあやふやで、1時間から3時間くらいだったらしい。
 音子の事だから、きっと車の中ではしゃいでいたか、それとも眠っていたのだろうと豊は判断した。
 今できる事は、明子から場所を聞き出す事と、幸恵に、手術を受けないように説得するだけになっていた。
 豊は、毎日のように明子に手術の場所を尋ねた。
 だけど明子は「ごめんなさい」と、言うだけだった。
 幸恵には「手術には行かない方が良い」と言ったが「行かないと、音子ちゃんがこの世界にこれないんじゃないのかなぁ」と言われ、行く事を止めるられなかった。
 音子の話によると、未来で幸恵に会うのは、何処かのホテルの一室だったらしい。
 要するに、幸恵が何処かに出かけている時に会うって事。
 その可能性として見えているのは、手術の前日しかなかった。
 もし手術に行かないと言ったら、未来で音子と会わなくなる可能性が高い。
 そうなると、音子は今此処にいないだろう。
 だからせめて幸恵には「手術から逃げて」と言うしかなかった。
 すると幸恵は「のぞみちゃんにも同じ事いわれたぁ」と、笑顔をつくるだけだった。
 豊は(のぞみちゃんも、この手術が危険だって事、聞かされてるんだな)と、なんとなく思った。
 そして豊は、幸恵は逃げる気は無いのだと確信していた。
 結局何の進展も無いまま、時間だけが過ぎていった。
 気が付けばもう15日、幸恵は明日出発し、明後日には手術を受ける事になる。
 それだけではない。
 命の恩人も見つけられず、豊は追い詰められていた。
 そんな平日最後の日、今日は幸恵が学校に行く事になった。
 最後の思い出作りのようで、豊は悲しくて嫌だったが、幸恵は凄く楽しそうにしていたので、何とか涙をこらえて共に登校した。
 学校での幸恵は自然だった。
 と言うか、正に音子そのものだった。
 毎日音子から学校での事を聞いていたからか、友達関係はもちろん、あらゆる事に問題がなかった。
 椎名ですら、最初は音子だと思っていた。
 豊も時々錯覚するほどだった。
 でも、何故だか豊には違うと感じられた。
 結局、豊と椎名以外で、音子が幸恵に変わっていた事に気づく者はなかった。
 いや、椎名には幸恵であると教えたわけだし、豊は最初から知っていたわけだから、誰も気がついた者はいなかったと言えるだろう。
 学校から帰宅すると、今までとは逆に、音子が幸恵を迎え入れた。
 豊は音子を見て安心した。
 音子と幸恵の違いが分かる事に安心した。
 夕飯までは、いつものように音子と幸恵は、リビングで話をしていた。
 豊はどうする事もできず、トレーニングルームで汗を流した。
 本当は、少しでも事故現場を探す時間に充てたかったが、音子が「大丈夫なのさ。今は幸恵と話しするのさ」と言って、豊の誘いを断っていた。
 実は音子も、この時もう、色々と理解し始めていた。
 幸恵の存在。
 そして幸恵との関係を。
  
 夕食を終えると、豊と音子は結局、何処を探して良いのかわからず、ボーっとテレビを眺めていた。
 もう後残す手段は、明日迎えに来る車の後をつけるか、幸恵が到着してから、場所を連絡してもらうしかない。
 そこから事故現場を探しだし、命の恩人を見つけられるかどうかは疑問だが、もうそれしかなかった。
 その頃、幸恵の部屋にはのぞみが訪れていた。
 いつもと同じように、タロットカードを並べていた。
「どう?」
 のぞみが幸恵に尋ねる。
 それに幸恵は笑顔でこたえた。
 のぞみは幸恵の笑顔を見て、良い結果が出たのだと判断した。
「死ぬ確率がゼロになったの!良かった!」
 だけど幸恵は、笑顔のまま首を横に振った。
「えっ?じゃあどういう事?」
 のぞみは一転不安顔になり、再度尋ねた。
 すると幸恵は、タロットカードを一枚眺めてから、のぞみの目をみてこたえた。
「どうやら、占い、わからなくなったみたいなのさ。続けてやっても、結果はバラバラなのぉ。」
 それでも幸恵には、悲観するところは見られなかった。
 それどころか、とてもスッキリした表情をしていた。
「きっと、大丈夫だよぉ。だから、ついてこなくていいからねぇ。」
 そう言って幸恵は、のぞみの頭をなでた。
 のぞみはただ、幸恵の幸せな未来を願うだけだった。
  
 時間は夜の22時になろうとしていた。
 豊と音子は、まだボーっとテレビを見ていた。
 豊は、明日の学校は休む事に決めている。
 車の後をつけなければならないと判断していたからだ。
 でも心の中では、もう無理かもしれないと弱気になっていた。
 音子を見ると、こんな追い詰められた状況でも、テレビを見て楽しそうだった。
 (本当に他人任せだな。やる気ねぇだろw)
 豊は苦笑いした。
 テレビでは、ドラマがクライマックスを迎えていたが、豊はちゃんと観ていなかったから、特に面白いものではなかった。
 そんなドラマも間もなくエンディングとなった。
 スタッフロールが流れ始める。
「今日は早く寝ようか。」
 豊はリモコンを探した。
 すると音子が、いきなり声を上げた。
「ははは~福田明子だって、同じ名前なのさ。」
 その言葉に、豊はハッとテレビの画面を見た。
 俳優のキャスト名のことろには「福田明子」の名前があった。
 豊は音子に尋ねた。
「明子さん、テレビに出てたの?」
 当然、出ているわけもない。
 音子は同じ名前だと言っていた。
 冷静に音子の言葉を聞いていたら分かる事だが、豊は何かが引っかかって、冷静さを欠いていた。
「出てないのさ。同じ名前だって言ったのさ。」
 音子の言葉に、豊は少し冷静になった。
 そこで考えた。
 何故自分は、こんなに焦っていたのだろうか。
 そうだ、何かがひっかかったんだ。
 今までの、明子さんとの会話を思い出した。
 そう言えば、明子さんの会話で、何度か何かに引っかかった事があった。
 豊はハッと気が付いた。
 思い出し考える中で、全てが豊の頭の中でつながった。
「ちょっと明子さんと話してくる!」
 豊は音子にそう言うと、急いで明子の部屋へと向かった。
 音子は笑顔で手を振っていた。
 明子の部屋のドアの前につくと、いつものようにドアをノックした。
 このところ、毎日のようにやっていた行為だ。
 当然中からは「ごめんなさい、もう放っておいて」と、いつもと同じような返事が返ってきた。
 でも今日は、別の話をしにきていた。
「今日は、ちょっと別の話をしたいんです。」
 しばらく無言の時間が続いた。
 豊はそのままドアの前で待った。
 するとゆっくりとドアが開いた。
「何?」
 そう言う明子の顔は、明らかに1週間前よりもやつれているように見えた。
 その顔を見て、豊は自分が此処に来た理由を忘れかけた。
 今この人に、聞いても良いのだろうかと。
 でも、聞かないといけない。
 豊はハッキリと言った。
「明子さん、あなたは幸恵さんの、お母さんなんじゃないですか?」
 明子の表情は、驚きの表情にかわった。
 そしてすぐに両手で口元を隠したかと思うと、涙が両目から流れ出ていた。
 そう、幸恵の母親の事を聞いた時「おそらく死んだ」と明子は言っていた。
 そして一度、幸恵の事を「幸恵お嬢様」ではなく「幸恵」と呼んでいた。
 記憶障害の原因が母なら、真っ先に忘れるのは、母の事なのではないかと豊は考えた。
 何度も忘れられるうちに、明子は母ではなく、お世話係として、別人になる事にしたのではないだろうか。
 名前が、芸能人の名前と同一である事から、これもきっと勢いで付けた偽名。
 名前を聞かれて、その時に見ていたテレビの中から、咄嗟に選んだものだろう。
 豊は、泣いている明子を見て、幸恵の母親であるのだと確信した。
「明子さん、手術の場所、教えてください。きっと大丈夫ですから。」
 豊は更に考えていた。
 父親は、明子が母親である事を知っていて、今も時々連絡をとっている。
 そして生活を支えている。
 明子さんは以前「愛する人を裏切れない」と言っていた。
 確かに浮気がばれる事はまずいだろうけど、明子が幸恵の父を、まだ愛しているのと同じように、幸恵の父もまた、明子を愛しているのではと。
 そんな人が、幸恵を殺そうなんて考えるはずがない。
 それに、手術日をわざわざ休みの日にしている事からも言える。
 殺すつもりなら、学校の事など配慮する必要がない。
 豊は、きっとどこか、ボタンの掛け違えがあったのだろうと思った。
 でも、明子の言葉は、豊の考えを揺るがすものだった。
「何処で手術するのか、聞かされてないのよ。」
 場所を聞かされていない。
 すなわち、何かを隠しているって事なのか。
 やっぱり、自分の考えは甘かったのか。
「そんな・・・」
 豊は絶望しかけた。
 でも、そんな訳は無いと、豊は自分に言い聞かせた。
「あっ!手術する病院。きっと横浜中央総合病院だわ。」
 明子の言葉に、豊にはわずかな光が見えた気がした。
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