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転校生

 日曜日は結局、豊たちは椎名たちと別れた後、部屋へと帰った。
 豊が音子に聞いたところ、となりにいた男性が、やはり探していた男性であった。
 しかし、別れる時もまだ、近い未来に世界線が消失してしまう気配、すなわちもうすぐ死ぬという予感は無くならなかった。
 要するに、会っただけでは死を回避できなかったって事だ。
 寿命って奴かもしれない。
 それなら、豊にはどうする事もできない。
 それに今日からまた学校が始まるし、今日明日死ぬというわけでもないし、とりあえず、本来の目的に向けて頑張ろうって事になった。
 音子には、豊が学校に行っている間、ストリートビューでさつき町の着地点と出発点を探してもらう。
 見つかれば、とにかくベクトルの先、特に東京都内を探すよう、豊は音子に指示していた。
 学校にくれば、豊は今までと変わらない。
 朝のホームルームが始まる前も、机に向かって予習をしていた。
 教室に入ってきた椎名と目があったが、特に何かを話す事もなかった。
 さて、ホームルームの時間だが、先生がこない。
 チャイムが鳴って、既に1分が過ぎている。
 担任の佐々木先生は時間にしっかりしているから、こんな事は珍しい。
 と言うか、このクラスになって1カ月になるが初めての事だ。
 だからと言って、豊には特に思うところはなく、こないならこないで、ただただ予習を続けるだけだった。
 ほどなくして、先生はやってきた。
 誰か女生徒と一緒だ。
 豊は顔を上げた。
「あっ!」
 豊は、椎名と一緒に声を上げていた。
 先生が連れていた女生徒を見て驚いたからだ。
 驚く理由は簡単だ。
 その女性はまさしく、音子だったからだ。
 豊が椎名を見ると目があった。
 椎名は笑顔を作った。
 豊は椎名から目をそらせて、再び、先生と一緒に来た女生徒を見た。
「どうして?」という気持ちで頭がこんがらがっていた。
 そんな中、先生が話し始める。
「えー。転校生です。川上さん、自己紹介してください。」
 豊には、まだ状況が受け入れられない。
 音子が、転校生としてクラスメイトになるなんて、そんな事絶対にあり得ない、そう思っているから。
 転校生が自己紹介を始める。
「えっと・・・川上ぃ・・・|幸恵《ユキエ》ぇ・・・です・・・」
 とても緊張しているようで、声量もなく、うつむいていてよく聞き取れない。
 でも、わずかに聞こえてくるその声は、音子にそっくりだった。
 その喋りを聞いて、豊は頭の中の整理がついた。
 (別人だ。音子じゃない。)
 豊は確信していた。
 豊がそう思えたのには、色々と理由がある。
 今目の前にいる子は、明らかに音子とテンションが違う事。
 音子が転校してくるはずが無い事。
 そしてなにより、音子がこの世界線にくる前の話を思い出していた。
 自分にそっくりな人に会って、色々と話しを聞いたって事を。
 豊の考えたとおり、この転校生「川上幸恵」は、音子ではない。
 だが、もしも豊が不思議を受け入れられる、夢のある人間だったら、この転校生は音子だったかもしれない。
 これはもしもの話だが、現実世界とはそういうものである事を、一応お伝えしておく。
 幸恵の席は、豊の隣になっていた。
 勉強のできる豊の隣が良いと、佐々木先生が考えたのか、それとも偶々なのか、とにかく常時なら喜ぶべき展開である。
 しかし豊は、素直に喜べなかった。
 昨日椎名と会っていたから。
 きっと、何か言ってくるに違いない。
 もしかしたらみんなに「あの二人付き合ってるんだよw」なんて話を広げるかもしれない。
 豊はそうなる前に、椎名とコンタクトをとって、下手な事を言わないようにお願いしておく必要がった。
 ホームルームが終わると、豊は早速ミッションを開始するべく、席を立とうとした。
 だが、いきなりミッションは|頓挫《トンザ》する事になった。
「あのぉ~・・・よろしくぅ・・・です・・・」
 いきなり豊に、幸恵が話しかけていた。
 といっても、転校生が隣の席の人に挨拶するなんて、有って当然のシーンである。
 ここは普通に挨拶を返し、ミッションを続行しようと豊は試みた。
「あ、うん。よろしく。」
 豊はそう挨拶すると、再び立ちあがろうとした。
 するとまた、幸恵が豊に話しかけた。
「あのぉ・・・お名前はぁ?・・・あ、私幸恵ですぅ・・・」
 どういうわけだろうか、幸恵は向こう側の席の人に話かけるそぶりもなく、どうやら豊にロックオンしているようだった。
 豊は特に不細工ではないし、普通に生きていれば普通に出会いがあって、普通に結婚もできるだろう。
 それでも、いきなり転校生のターゲットにされるほど、イケメンでもない。
 視力が少し悪くてメガネをかけているから、多少知的な青年に見えるかもしれないが、いきなり興味をもたれる要素は何一つなかった。
 それでも豊に話しかけているわけで、豊はそれにこたえなければならなかった。
「あ、僕は山下豊・・・です・・・」
 二人の間には、誰も入ってこられないような空気が流れていた。
 豊にはどうして良いか分からなかった。
 ただ、黙って見合ってうつむいていた。
 (誰か、助けてー!)
 豊は心の中で叫んだ。
 すると、いつの間にか近くに来ていた椎名が、豊の背中を軽くたたいて言った。
「彼女さん、転校生だったのねw」
 クラスがざわついた。
 そしてすぐに幸恵を見て「ニャー!」と挨拶した。
 色々と状況がややこしくなってきた。
 豊は再び(誰か、助けてー!)と心の中で叫んだ。
 その時、椎名の「ニャー!」に、クラスの男子の何人かは萌えていた。
 豊の心の叫びに、ピンチを救ってくれたのは、授業開始のチャイムだった。
「じゃね!」と言って去ってゆく椎名さんが、豊には悪魔に見えた。
 1時間目の授業中は、次の休み時間、どうするべきか考えるだけでいっぱいいっぱいだ。
 いきなり「彼女じゃねぇー!」なんて否定するのもおかしな話だし、それに否定するのもおしい。
 そう、音子とは違って、となりの幸恵は確実に人間なのだから。
 顔は超可愛くて好みだし、問題なんてない。
 このどさくさにまぎれて彼女にする事が可能なら、それはそれでおいしい。
 豊はそんな事を考えていると、今度は少し離れた席で勉強している椎名さまが、天使に見えてきた。
 その流れで、隣の席の幸恵を見た。
「ゲロッ!」
 豊は思わず奇声をもらした。
 クラスメイトの何人かが豊を見た。
 豊は挙動不審になりかけたが、平静を装って軽く咳払いをした。
 すると豊を見ていたクラスメイトは、すぐに興味を失って、心は授業に戻っていった。
 豊はホッと胸をなでおろした。
 さて、豊がこんな奇声を発してしまったのには、もちろん理由があった。
 隣で授業を受けている幸恵が、教科書を立てて前から見えないようにして、何やらカードを並べていたからだ。
 よく見るとそれはタロットカードだった。
 そして幸恵は、呪文を唱えるように、何やらぶつぶつと言っている。
 豊は少し涙目になった。
 (イタイ子だったのか・・・それになんかぶつぶつ言っててこわいよ・・・)
 豊は当然、占いなんて全く信じていない。
 そんなものを信じる人、当然やる人も、洗脳されたヤバイ人だと思っている。
 (もしかして、僕はそんなヤバイ人に目をつけられたのか?)
 そんな事を考えて、豊は少しビビっていた。
 それでも、となりで行われている儀式が気になって、授業の事は忘れて、チラチラとそちらを見ていた。
 すると、その流れの中で、何故か椎名と目が合った。
 椎名の顔は笑顔だった。
 豊は首を振って、椎名に対して必死に否定した。
 椎名はそれを見て、笑顔で頷いた。
 (全然通じてないよ・・・)
 豊の感じたとおり、椎名には全く気持ちは伝わっていなかった。
 椎名にはただ、豊が恋する一人の少年に見えていた。
 そんな中、どうやら幸恵の儀式は完了したようだ。
 呪文のような言葉も聞こえてこなくなり、カードを動かす事もなくなっていた。
 ただ、1枚のカードを見つめていた。
 豊は占いを信じないが、流石に結果だけは気になった。
 少し、幸恵の顔を見つめていた。
 椎名の笑顔にも気がつかないくらい、見つめ続けた。
 すると幸恵の目から涙が流れた。
 それを見て、豊は思った。
 結果が悪かったのだろうと。
「そのままじゃねーかよ!」と、私は豊にツッコミを入れたかった。
 それにしても、結果が悪いだけで泣くなんて事があるのだろうか。
 普通に考えて、そんな事が有る筈が無い。
 豊は幸恵の涙を見て、ただ純粋に理由が気になっていた。
 1時間目の終わりも、2時間目の終わりも、そして放課後までずっと、幸恵は豊に話しかけた。
 話しかける内容は、特にたわいのない、生産性のかけらもない話だった。
 その内容のない会話を続ける事が、椎名にはますます誤解を深める結果となった。
 椎名はちょくちょく豊の席の近くにきて、二人をひやかす。
 それで幸恵が否定するものだと豊は思っていたのだが、否定するそぶりもない。
 気がついたら、椎名が「ニャー!」と言うと、幸恵もまた「にゃあぁ。」と返すようになっていた。
 今日は椎名に、昨日の男性の事を聞く予定もあったが、豊の頭の中には、そんな事はもうどっかにすっ飛んでいた。
 1時間目の授業中の涙の理由も、幸恵に聞くことはできなかった。
 最後のホームルームが終わり、豊はこの後どうなるのだろうかと心配していたが、先生への最後の挨拶が終わると、幸恵はすぐに教室を出て行った。
 此処までずっと、しつこいくらいに話しかけてきたわけだから、豊は凄く違和感を覚えた。
 椎名にもそれは不自然だったようで、豊の所へ来て声をかけた。
「あれ?彼女はどうしたの?彼氏おいて帰っちゃったの?」
 その言葉に、教室の男子からは、軽い嫌味やホッとする言葉が聞こえてきたが、当然の台詞が聞こえてきた事に、豊はホッとした。
 でも、椎名の言葉は捨て置けない。
「いや、ちょっと色々、渡辺さんとは話しないとな・・・」
 豊は、もうどうしていいか分からなかった。
 椎名に何処まで話せばいいのか、音子の事をどう説明するのか。
 世の中同じ顔が3人はいると言われているが、似ているなんてものではない。
 持ってる雰囲気は違うが、容姿は完全に一致すると言っていい。
 でも、一緒にいた男性についても話をしなければならないし、豊はとりあえず話をしようと決意した。
「話?あ、そうそう、昨日はお兄ちゃんとデートだったんだぁ~まさかあんなところで知り合いに会うとは思わなかったよ。」
 椎名は、こう言おうと決めていたのか、さりげなく昨日一緒にいたのが彼氏ではなく、兄である事を豊に伝えた。
 豊としては、彼氏だろうと兄だろうとどうでも良かったわけだが、上手い具合に話ができる状況に、ラッキーだと思った。
 このチャンスは逃せない。
「へぇ~お兄さんだったんだ。仲良さそうだね。よくデートするの?」
 椎名が返答しようとするのを抑えて、豊は一気に質問まで喋った。
「仲は、悪くないけど・・・」
 そこまで言った椎名は、少し寂しそうな顔をした。
 どういうわけだろうか。
 もうすぐ死ぬ事は、椎名には分からないはずだ。
 それなのにこの寂しそうな顔。
 この、椎名に寂しそうな顔をさせる原因が、おそらく死への要因ではないかと、豊は漠然と思った。
 でも、プライベートに踏み込むには、それ相応の関係がないと駄目だと、豊は考えていた。
 それには、やはり自分も、色々と話す必要があると思った。
「この後、用事ある?なければちょっとだけ付き合ってよ。」
 豊はそこまで言うと「付き合ってよ」と言った自分に、少し照れていた。
 別に深い意味はないが、豊は意識してしまった。
「うん、良いよ。」
 椎名の返事は、少し嬉しそうだった。
 そんな椎名に、あなたは少し萌えた。
「勝手に決め付けるんじゃねーよ!」って言葉が、何処からともなく、私は聞こえた。
  
 豊は椎名と、桜花町のファストフード店で話をする事にした。
 何から話せばいいのか考えたが、椎名の事はなんとなく信用できると思えたので、思いつくままに話す事にした。
 ちなみに信用できると思えた理由の一番は、世間一般的にみて可愛かったからである。
「可愛いは正義」は、裏付けあってのものだから、豊には当然の判断材料になり得た。
「えっと、最初に言っておきたいのは、川上さんと、昨日のミケ・・・音子とは、別人なんだよね・・・」
 それを聞いた椎名はビックリしたが、すぐに嘘だと判断し、豊の言葉を聞き入れなかった。
「うっそだぁw世の中似てる人はいるけど、あそこまで似てるなんてあり得ないよ。」
 豊も、確かに椎名の言うとおりあり得ないと思ってはいる。
 でも、現実にいるわけだから、信じないわけにもいかない。
 と言っても、実際に二人がならんでいるところを見たわけではないし、音子が知らんぷりをして、学校に来た可能性がゼロではない。
 豊は違うと確信はしているが、話していると不安にも思えてきた。
「もしかして双子とか?」
 この椎名の考えも、似ているレベルならあり得るだろう。
 一卵性双生児なら、かなり似ていて間違える事もあると思う。
 私も双子芸能人は、見分けられなかったりする。
 でも、そんなレベルではない事は、豊も椎名も理解していた。
「いや、双子でもない。僕も今日初めて川上さんに会って、凄く驚いてるんだよ。」
「でもさ、川上さん、彼女?って聞いても否定しなかったし、ニャー!って言ったらにゃあぁって言ってたよ。」
 それは豊にも不思議だった。
 すぐに否定するものだと考えていたのに否定しないし、それどころか椎名のテンションについてきていた。
 そしてどういう訳か、豊に|執拗《シツヨウ》に話しかけていた。
 豊にとっても、此処までしつこいと、正直ウザイと思える。
 怪しい占いもしているし、見た目だけは好みでも、流石に受け入れられる人ではない。
 だけど、音子に似ていて、音子の話を聞いていたから、嫌な感じはしなかった。
 むしろ、何か助けを求めてきているとも、豊は感じていた。
 音子の話が本当なら、川上さんは1年後死ぬのか、それともそれに近い何かがあるはずだ。
 流石にそんな人を、この程度の事でないがしろにはできなかった。
「僕も不思議なんだ。」
 豊は、此処にきてまた、核心を話す事に|躊躇《チュウチョ》した。
 音子が、別の世界線の未来から来た事を。
 でも、やはり話さない事には、話が進まない。
 豊はそう思い、決断した。
「渡辺さん、今から僕の話す事、最後まで聞いてくれるかな?」
 豊は必要以上に真剣な顔を作って、椎名を見つめた。
 その真剣さに、椎名は何かを感じたのか、少し照れて「うん」とこたえた。
 ぶっちゃけ、いきなり告白とかあり得ないが、豊の真剣さは、そう勘違いされてもおかしくないくらい不自然だった。
 不自然な真剣さなのに、何故そう思うのか。
 それは、普通ではないからである。
 告白とは、なんでもない事を話すのとはわけが違う。
 告白する時、何故か敬語になってしまったりするのは、つまりそういう事だ。
 だからどういう話し方でも、いつもと違えば、相手は構えるのである。
 豊はゆっくりと話し始めた。
「音子は、今は人間の姿をしているけど、実は、未来から来た猫なんだ。」
「はい、ありがとう。」
 真剣に聞いていた椎名の心は、一気にしらけてしまった。
 要するに、真面目な顔をして冗談を言われたと判断した。
 それに、もしかしたら告白されるのではと、椎名は期待していたのかもしれない。
 だから気が抜けたのだろう。
 だいたい昨日今日話しただけで、いきなり告白もないと思うが、男女の恋愛、会話とはそんなものである。
 とにかく、豊の言葉は、100%冗談であると一掃されてしまった。
 しかし豊は、これもアリなのではと思った。
 本当の事を言えば誠意は示せるし、冗談だと思われるなら、その方が都合が良い。
 豊は、今度は軽い感じで、さも冗談であるかのように、本当の事を話した。
「いや、まあ聞いてくれ。音子が未来から来たのは先週の木曜日、僕が学校に向かっている時だった。気持ちいい青空に、僕は空を見上げた。すると空に、なんと空飛ぶ猫がいるではないか。僕は目を疑った。」
 豊がそこまで話すと、椎名は「本当なの?」と、先ほどとは打って変わって、真剣な面持ちで尋ねてきた。
 人間とは不思議なものである。
 真剣に言えば嘘だと理解し、軽薄に話せば本当だと思う。
 でもこれは、豊の不思議の中では不思議ではない。
 きっとこれは、心理学的に説明できるはずだと思っていたから。
 まあそんな事はどうでもいい。
 とにかく今、椎名は本当なのかと尋ねてきていた。
 それに対して豊は返答を求められている。
 椎名の目が真剣だ。
 さて、どうしたものか。
 豊は少し考えた。
 だが、此処で否定する選択肢は、豊には存在しなかった。
 さっきまで、話す事は既に決めていたのだから。
「うん、本当。証拠は見せられるかどうかわからないけど、音子に会えば、もしかしたら見せられるかもしれない。」
 豊の言葉に、椎名は、先週の金曜日の事を思い出していた。
 実は豊と菜乃のやりとを、椎名は少し見ていたからだ。
 そう、あのパンティーとかブラジャーとか言っていた会話だ。
 その中で「親戚の子が来ていて、着る物が無くて困っている」と言っていた。
 着る物が無くて困るなら、本人が買いに行けば済む事。
 でも、それが無理な場合。
 ようするに1着も着る物が無かったって事だ。
 椎名はそこまで考えて、声を上げた。
「えー!!」
 豊は、一体何に驚いているのかわからなかった。
 だけど、この不思議な出来事を共有できる人が、豊にできつつあった。
 豊は結局、音子との出会いから、音子から色々説明された事までを、椎名に話した。
 そして決め手とばかりに、意気揚々と携帯電話に撮影された、音子の裸の写真も見せた。
 田舎道にポツンと座る姿は、無理やり撮ったわけでもなく、椎名が見ても不自然な写真だった。
 そう、本当に猫のようだった。
 ただ、その写真は削除するべきだと椎名は豊に要求したが、豊はこれは削除してはいけない気がして、結局消さずに残した。
 豊と椎名は、その日はそこで別れて、後日、音子を含めて会う事を約束した。
  
 豊が家に帰ると、待ってましたとばかりに、音子が豊に抱きついた。
 豊は、もしかして何か情報が見つかったのかと思ったが、聞いても音子は、話をはぐらかすばかりだった。
「どうしたの音子。何か見つかったの?」
「ん~なんの事なのさ。豊が帰ってくるのが遅くて、私は寂しかったのさ。」
 豊は、音子にそんな事を言われて、少し嬉しい気持ちにもなったが、様子がおかしいので素直には喜べない。
 豊は音子の言動をよく観察してみた。
 すると、どうも音子がこの世界に来た理由、人探しに関する話しになると、話をそらす。
 そして豊を、ある特定方向には行かせないようにしているようだった。
 豊に考えられる事は、一つであった。
「もしかして、パソコン壊しちゃったとか?」
 豊がそう言うと、音子は明らかに動揺した。
「ドッキーン!なんの事なのさ。今日はパソコン触ってないのさ。」
 自分で自分の動揺を「ドッキーン!」とか言って表現する人はなかなか貴重だ。
 動揺を装う為に冗談でやる人は多いが、素でやっても意味がない。
 要するに、音子はパソコンを壊してしまったって事だ。
「なにー!」
 豊は冷静に音子の事を分析していたが、パソコンが壊れた事を確信すると、それはもう困ったとしか言いようがなかった。
 今やパソコン無しで生活するなんて、豊には考えられない。
 勉強の調べ物も、全てパソコンでやっている。
 インターネットが普及して、インターネットに依存して、インターネットに命をかける、豊は今時の若者そのものだった。
 いや、命をかけるってのは言いすぎでした。
 そこまでではありません。
 でも、パソコンが壊れては、人探しが困難になる事は確実だった。
「あ、悪かったのだ。壊すつもりはなかったのだ。」
 豊がパソコンに触ると、音子は|隠蔽《インペイ》を諦めて、素直に謝った。
 豊は、別に音子を責めるつもりはなかった。
 もともと、バカな音子にパソコンで探すように指示したのは、自分なのである。
 それに、何もしないで部屋で待つのは、きっと寂しいだろうと豊は考えていたので、音子に対して少しの罪悪感もあった。
「想定内」そう思って、豊はパソコンを立ち上げてみた。
 パソコンは、問題なく立ちあがった。
「なんだ、壊れてないじゃん。」
 豊がそう言った瞬間、画面に猫の画像が無数に表示され始めた。
「猫の写真を見つけたから、他にもあるかなって思って、猫の写真を探していただけなのさ。そしたら突然こんな事になったのさ。」
 この症状は、明らかにウイルスである。
 どうやら猫の画像を探しているうちに、ヤバイサイトにアクセスしてしまったのだろう。
 そんなに悪質なウイルスではなさそうだが、駆除しない限り、まともにパソコンを使う事はできない。
 豊は、ウイルス対策ソフトを、インストールしていなかった。
 理由は、特に変なサイトを見る事もないし、今まで長くパソコンを使っているが、ウイルスに侵された事が無かったから。
 音子に使わせる前に、ウイルス対策ソフトを入れておけば良かったと思ったが、今更である。
 それに、音子が猫の画像を見ていたってところに、豊は心が、なんとも言えない気持ちになっていた。
 人間だって、男なら可愛い女の子の写真を見て嬉しいし、女もきっと格好良い男の写真を見て喜んでいるのだろう。
 猫だって、同じなんだと思うと、豊は嬉しくて暖かい気持ちになった。
 しかし、このままパソコンを使えないままにしておくわけにはいかない。
 人探しには欠かせないアイテムだ。
 かといって、修理に出すにしても、先立つものがない。
 なんせ今月は、女性用の服や下着やらを沢山買ったから。
 流石に親にお金を要求するのも嫌だし、豊は明日、とりあえず三杯に相談してみる事に決めた。
 その後豊は、今日の事を音子に話した。
 昨日会った、探していた男性と一緒にいた椎名に、音子の事を話した事を。
 そしてその男性が、椎名の兄である事を。
 豊は、音子の事はなるべく隠しておかなければならないと思っていた。
 未来からタイムトラベルしてきたとか、世界線を超えて来たとか、そんな話は普通ではないし、隠しておくのは当たり前の事だ。
 いや、少なくとも豊の中では、隠しておくのが当たり前の事。
 それをしなかった事が、豊にとっては音子に対しての罪悪感となっていたが、音子はそんな事全く気にしていなかった。
「話しちゃってごめんね。」
「謝る意味がわからないのさ。音子は猫だし、世界線を飛んできた事は事実なのさ。」
 音子の言葉に豊はハッとした。
 自分がどうしてあやまったのか、一瞬理解できなかった。
 豊は考えた。
 もちろん、こんな話が広まれば、音子の身の安全が損なわれる可能性がある。
 だから自分は話さなかったのだろうか。
 ただの思いこみ、概念、固定観念に自分がとらわれている事を、豊はなんとなく自覚した。
 豊は、音子との出会いで、何かが変わり始めていた。
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