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ミッション

 豊はいつものように、7時に起きた。
 どうも目覚めが悪い。
 それはそうだ。
 硬いフローリングで寝ていたわけだから。
 まさかミケネコと一緒に寝るわけにもいかない。
 ベッドを見ると、ミケネコが気持ち良さそうに眠っている。
 豊は沸き立つエナジーを抑えつつ、ミケネコを眺めた。
 それはもうとても可愛い顔だ。
 いや、豊はそんな事を考えているわけではない。
 この子が本当に猫なのか、一夜明けるとやはり信じられなくなっていた。
 昨日の事が夢のように感じた。
 だいたいタイムトラベルだとか、世界線の移動だとか、あるはずもないと思った。
 豊は、目の前にミケネコがいるにも関わらず、昨日の事は夢だと否定した。
「夢だったんだよ。この子はきっと家出少女かなんかだよ。」
 豊がそう言葉にした途端、ミケネコは猫の姿へと戻った。
 と言うか、小さくなって布団の中におさまって見えなくなった。
「え!やっぱり猫が人間になったんだーー!!」
 豊は絶叫した。
 すると再び、ミケネコは人間の姿へと変化した。
 当然、着ていた体操服は、再び脱げた状態になっていた。
 豊にはもちろん、やましい気持ちがわき上がってきていたが、特に布団をめくったりする事はなく、夢ではなかった現実を受け入れる事で精いっぱいだった。
 さて、豊は朝からドタバタしていた。
 再び服を着てもらったり、朝から探しに行こうとせがまれたり、学校につれて行けと言われたり、学校の支度をしたりで大忙しだ。
 助かったのは、ミケネコに一応、服を着るという概念やトイレなど、人間として生きる知識が少なからずあった事だ。
 話によれば、世界線を移動していた1年間、人間としての生活を教えられたり、人間世界での生活を見てきていたようだ。
 世界線の移動を始めた頃は、いったいどんな感じだったのか、想像すると恐ろしい、と豊は思った。
「じゃあ、僕は学校に行くから、僕が帰ってくるまで、大人しくしてるんだよ。ミケ・・・」
 部屋を出ようとした時、豊はなんとなく、ミケネコと呼ぶのをためらった。
 いつまでも、こんな名前じゃないような名前で呼ぶのも変だと思ったからだ。
「君はさ、僕になんて呼んで欲しい?」
 豊は少し照れながら尋ねた。
 どうやら改まって顔を見ると、やはりまだまだ恥ずかしい気持ちがあった。
 いや、顔を見ると、何度か見た裸を思い出してしまっていたのかもしれない。
 とにかくポリポリと頬の辺りをかく、ベタな照れ方をしていた。
 するとミケネコは元気よく言った。
「ネコ!なのさ!!」
 ミケネコの顔は、満面の笑みだった。
 それを見て、豊はもうどうでもいいやと思った。
 でもネコだと人間の名前とはいいづらいので、適当に「音子」という漢字を与えてやった。
 豊は、学校に来ていた。
 そこで豊には、やらなければならない重要なミッションがあった。
 まあ、こういう話の展開になれば困る事。
 それは、音子の着る物をなんとかしなければならないって事だ。
 一緒に人探しをするとなると、当然一緒に出歩く事になる。
 それがずっと体操服ってわけにもいかないし、最悪服は男性用で良いとしても、下着はそうはいかない。
 だからそれを買いに行かなければならないわけだが、男としては買いに行くのが恥ずかしい。
 そこで、誰かに買ってきてもらえるよう頼もうってわけだ。
 そう思っていたのだけれど、それもまた恥ずかしい行為である事に気がついた。
 頼む相手は決まっている。
 1年の時のクラスメイトで委員長だった、|風谷菜乃《カゼタニナノ》だ。
「委員長キャラキター!」と、とりあえず言っておこう。
 風谷菜乃とは、実はそれほど付き合いがあるわけではない。
 他にまともに喋った事のある、女子の友達がいないから、消去法で仕方なくそうなった。
 こんな時、毎日毎日勉強ばかりしていた自分が恨めしい、なんて豊が思ったかどうかは謎だが、とりあえず友達の大切さってのを感じていた。
 豊の仲の良い友達なんて、1年の時のクラスメイト、|佐藤三杯《サトウサンバイ》だけだ。
 三杯に頼んでとか、一瞬思わなくも無かったが、逆に喜んで買いに行きそうだったので、頼むのはやめていた。
 一応気になっていると思うので説明しておくと、この佐藤三杯って名前はギャグだ。
 親がこの世に送り出した、一世一代のギャグだ。
 佐藤家に三男として生まれた三杯には、親ももう、正直名前をつけるのが面倒になっていた。
 そんな時、母親がコーヒーに、砂糖を三杯入れているのを見て、父親がひらめいたとの事だ。
 おかげで誰とでも仲良くなれるバカに育ちましたとさ。
 良かった良かった。
 おっと話がそれてしまったが、豊は意を決して、風谷菜乃に話しかけた。
「あ、委員長!じゃなくて、風谷さん、ちょっとお願いが・・・」
 豊を見る風谷さんは、ちょっと気が強そうだけど美形で「ツンデレキャラきたー!」と言っても過言ではない感じの女の子だった。
「あ、山下じゃん。どうしたの?」
 菜乃の表情は、豊と話す前と後で、全く変化がなかった。
 どうやら特に感情を表に出すタイプではなく、豊に特に興味もないといった感じだ。
 要するに、友達だとも思われていないくらいの間柄に見えた。
 まっ、そんな人に頼みごとをするわけで、しかもその頼みごとが頼みごとだけに、豊の緊張は増しに増していた。
「え、え、えと、パンティーと、ぶ、ぶ、ブラジャーを・・・」
「山下って、そんな奴だったんだ・・・」
 豊の言葉に、菜乃はそれはそれはもう、冷たく凍るような眼で豊を見た。
 (ヤバイ・・・)
 豊がそう思って冷や汗を流していると、菜乃は自分のスカートを、ゆっくりとまくりあげ始めた。
 呆れられたか、それとも軽蔑されたと思っていた豊にとって、その行動はあまりに意外だった。
 心の中で葛藤が始まる。
 相手が見せようとしているのだから、このまま見ていようと言う悪魔の言葉と、勘違いなのだから訂正してやめさせるべきだと言う天使の言葉が、脳内で争っていた。
 勝負はあっさりついた。
 豊には、それを見ているだけの欲望も度胸もなかった。
「いや、そうじゃなくて、違うんだよ!」
 豊は凄く顔を真っ赤にしていた。
 その中に、否定した事への後悔というものは一切なかった。
「いや、冗談だから。」
 菜乃はどうやら、豊をからかっていただけのようだった。
「で、パンティーとブラジャーがどうしたの?」
 菜乃は特に、恥ずかしいとか動揺は微塵もなく、あっさりと言ってのけた。
 それでようやく落ち着いてきたのか、豊はギリギリ話す事ができた。
「えっと、親戚の子が家に来てるんだけど、着る物がなくて困ってて、ちょっと出かけられないから、買ってきてほしいんだけど。」
 豊は何とか伝えきる事ができてホッとした。
 しかし、菜乃の言葉に再び動揺せざるを得なくなった。
「着る物無いのに、どうやって山下んとこに来たんだ?」
 豊は必死に言い訳を考えた。
 何か、これは納得と思える設定はないものだろうかと。
 だが、答えを出す前に、菜乃が謝ってきた。
「悪い悪い。そんな事を私が聞くものでも無かったな。で、買ってきてやるが、サイズは?」
 とりあえず助かったと思った豊だったが、よく考えればサイズなんて知らない。
 豊は、菜乃の胸をマジマジと見つめた。
 そして今度は後ろに回り、お尻のあたりをじっくり見て・・・
「風谷さんより、胸は大きめ、お尻は小さめかな?」
 そう言うと、菜乃は「じゃあな!」と一言残して、その場を去って行った。
 豊のミッションは、失敗に終わった。
  
 ミッションに失敗した豊だったが、このままのうのうと帰るわけにはいかなかった。
 明日は土曜日で、できれば今日中に買って帰り、明日から、音子の命の恩人を探し始めたかったからだ。
 豊の次の選択肢は、最終手段である、三杯に頼む事だった。
 あいつならきっと、嬉しい口実ができたとか言って、喜んで買いに行くに違いない。
 豊はそう思って、三杯のクラスである3組へと足を運んだ。
 三杯はすぐに見つかった。
 というか、とにかく五月蠅いところに行けば会える。
「三杯!」
 豊は教室の外から三杯を呼んだ。
 別のクラスって、入るのって少しためらうよね?
 別になんの問題もないはずだが、教室も暗く感じたりw
 それはそれとして、豊の言葉に、三杯は意気揚々と教室の出口へと歩いてきた。
「よ!豊、どうした?昼休みまで待てなくて、ボクちんに会いに来ちゃったのかな?w」
 いつも豊は思うのだが、どうしてこんなに軽い奴と、友達をしているのだろうかと。
 でも、理由は簡単である。
 友達が少ない豊が仲良くできるのは、誰とでも仲良くできる三杯だけだったし、以前バカとは書いたが、実は勉強はかなりできたりする。
 1年の時のクラスでは、いつもテストの点数では1,2を争っていたから、お互いライバル意識から、友達になったという感じだ。
「よ!別に三杯の顔は見たくなかったが、ちょっと頼みがあってね。」
 豊のつれない返事にわざと残念そうな顔を浮かべた三杯だったが、すぐに頼み事が気になった。
「俺に頼みごと?珍しいな。豊は人にあんまり頼み事しないし、まして俺になんてwようやく俺を頼ってくれる気になったか。」
 三杯は嬉しそうだった。
 意外に三杯は、人の為に何かをするってのは、嫌いではないようだ。
 三杯の表情を見て、豊は安心したのか、ストレートに要求を述べた。
「まあね。それで、パンティーとブラジャーを買ってきて欲しいのだが、買ってきてくれるか?」
 豊の言葉に、三杯は冷たい視線を向けていた。
 流石に三杯でもそれは無理だったか。
 豊は急に恥ずかしくなってきた。
 だが次の瞬間ニヤリと笑うと、豊の肩をポンポンと叩いてこういった。
「目覚めたか。」
 三杯の勘違いに、豊は思いっきり否定のツッコミを入れようかと思ったが、こんな事は日常茶飯事、ただのレクリエーションだ。
 此処は肯定するところだと判断し「ああ、共に肩身の狭い人生を送ろうぜ。」と、豊は三杯と肩を組んだ。
「そして二人、魅惑の世界へと歩いて行った」なんてナレーションを心の中で思い浮かべながら、廊下を少し歩いた。
 それで気が済んだようで、三杯は組んでいた、肩に回した手を解いて、豊を見た。
「オッケーw俺に任せておきな。なんだか分からないけど、親友のピンチ、助けてやるぜw」
 三杯はそういって、親指を立てた。
 豊もそれにこたえ、親指を立てた。
 傍からは、親友同士のサムズアップも、何やら怪しい動作に見えていた。
 さて、放課後になった。
「あれ?音子が学校に来たり、転校生としてやってくるなんてベタな展開を期待していたんだけど」
 なんて言いたい方もいらっしゃると思われますが、全く何事もなく放課後になってしまって申し訳ない。
 この世界は最も常識的な世界ですので、期待を裏切る事も多々あると思いますがご了承ください。
 さてもう一度、仕切り直して、放課後。
 豊は、三杯と共に、学校から一番近い町に出ていた。
 方向的には、豊の家と逆方向で、多くの人はこちらの町にある駅を利用して通学している。
 昨日帰り道にあんな事があったのに、目撃者がいなかったのはその為だ。
 いや、実はいたかもしれないが、豊は全く周りが見えていなかったので、その辺りどうなのかは、今後の話の展開次第。
 それが、豊の世界である所以で、豊が、当然目撃者がいたと思えば、誰か出てくる可能性はあるし、気にもとめなければ、目撃者はいなかった事になるだろう。
 逆に言えば、目撃者がいたとして、その人が誰かに話をしたりして豊かに影響がなければ、それは見た人がいなかったのと同じ事と、この世界では処理される。
 シュレーディンガーの猫のバランスで、この世の中パラドックスがあふれているのだ。
 そして、こちら側の町には、人があふれていた。
 この辺りにある唯一の町で、田舎の人達が集まってくる。
 と言っても、見ると半分は学生のようだ。
 豊の通う「私立桜花高校」は、生徒数が少なく、同じ学校の制服はあまり見られない。
 見かけるのは、町の反対側に位置する「桜花大学付属高等学校」の制服ばかり。
 大学は東京の都心にあり、此処で高校生活を終えた生徒のほとんどが、東京の大学に行く事になっている高校だ。
 町の名前から同じような名前の高校ではあるが、全く関係はなかった。
 豊は、三杯について歩いていた。
 一件それらしい下着を売っている店を見かけたが、三杯は見向きもせず通りすぎた。
 買う店は、三杯に任せている。
 なんせそんな店は全く知らないし、買った事もないのだから、豊には口出す余地は無い。
 しばらくついて歩くと、駅の近くにある、この町唯一のデパートの前に来ていた。
 すると三杯は立ち止り、キョロキョロと挙動不審になった。
 豊は(なんだ?何かする気か?まさか誰かがつけている下着を、譲ってもらおうなんて考えてるんじゃないだろうな?)なんて思った。
 まあ、真剣にそう思ったわけではなく、心の中のちょっとしたジョークだ。
 豊がそんな事を考えている間に、三杯が何かを見つけた。
 どうやら誰かと、待ち合わせしていたようだ。
 向こうから、やや小走りで走ってくるのは、豊たちよりも少し年下に見える、可愛らしい女の子だった。
 (なにー!三杯にこんな可愛らしい、かの、いや、友達がいたのか?!世の中狂っている!)
 と豊は心の中で思ったが、その真意はすぐに明らかになった。
「お兄ちゃん!」
「ん?お兄ちゃん?」
 その女の子は、三杯に向かって「お兄ちゃん」と言葉を発した。
 豊は、三杯に妹がいるなんて聞いた事がなかった。
 三男に生まれて、名前をつけるのも面倒くさいと思わせた奴だ。
 そんな三杯に、更に下がいると想像できなかった。
 しかし、考えれば簡単な話。
 要するに、女の子が欲しかったが、男が生まれてガッカリだったって事だろう。
 三杯は、ある意味いらない子だったわけだが、放置プレイで育てられたからか、大らかで誰とでも仲良くできる男に育っていた。
 それだけが救いと言ったところか。
 同じ時期に生まれた兄妹で、妹ばかり可愛がられていて、よくまあひねくれずに育ったものだ。
 この世界唯一の奇跡かもしれないと、私は思うのであった。
「こいつ、俺の妹ののぞみだ。こっちが俺の親友、山下豊ね。」
 三杯はそれぞれにそれぞれを、最低限の言葉で紹介した。
「あ、よろしく。豊です。」
 豊は少し照れていたが、三杯の妹に照れてなるものかと、気合で平静を装った。
 それに、昨日の出来事から、少し耐性がついていたようで、動揺が目に見える事はなかった。
「あ、はい、よろしくです。お兄ちゃんがいつもお世話になってます。」
 何やら少し動揺しているのぞみちゃんの上目づかいは、とても可愛かった。
 そして、素晴らしい妹だった。
 妹のかがみだった。
 どんな時も兄の事を考える妹、流石である。
「いや、もっぱら世話してるのは俺なんだけどね。」
 三杯の言葉ももっともだったが、なんだか悔しいので、豊は一応言い返す。
「世話させてやってるんだよ。」
 微妙な反論ではあったが、豊が納得していればそれで良い。
 世の中、本人が納得していれば、何も問題はないのだから。
 さて、紹介も済んで、いよいよ本題である。
 どうやら三杯から、既に話を聞いていたのぞみは、すぐに質問をしてきた。
「で、サイズはいくつなの?」
 豊はドキッとした。
 今日の午前中、この質問のこたえが原因で、ミッションを失敗している。
 豊は落ち着いて、辺りを見渡した。
 沢山の人が歩いている。
 菜乃の時には、菜乃を基準にしたのが失敗だった。
 今度は、別の人を対象に、サイズを伝える事にした。
「えっと。あの人と同じくらいのサイズ。」
 豊の視線の先には、とても美形の、とてもスタイルの良い女性が立っていた。
 そう、音子はとてもスタイルが良かった。
 今更ながらに思いだし、豊はそう思った。
「あれだと、C70くらいかな?」
 何故見ただけでそんな事が分かるのか、三杯の呟きが、妙に豊の頭の中に残った。
 下着の買い物というミッションは、なんの問題もなくコンプリートした。
 ついでに靴や、洋服も何着か購入してもらった。
 豊は無事、この日の目的を果たした。
 
  
 家に帰った豊は、早速ミッションで手に入れた戦利品を、音子に着るように渡した。
 少し手間取ってはいたが、なんとか身につける事に成功した。
 と言っても、手間取っているところを、豊が見ていたわけではない。
 見ていたのは私だ。
 いや、冗談だが、とにかくこれで、豊には色々とスタートラインに立った感じがしたようだ。
 人探しへの決意を新たにしたかのような、険しい顔つきをしていたから。
 あ、いや本当は、着替えを見たい欲求を抑えていただけなのは、此処だけの話。
 それにしても豊には、まだまだ音子の話を、信じられたとは言い難い。
 そんな信じがたい話に積極的に協力するのは、全て音子が可愛かったから。
 たとえ猫が音子になったのが高度なトリックであったとしても、騙されて居候されているだけだとしても、可愛い子と一緒に生活できて、それが人探しという些細な事で続けられるなら、それはそれで良いと思っていた。
 ただし、勉強の為に田舎に来たわけで、勉強しなくなっては親に申し訳がない。
 母親もそうだが、父親はほんとうの父親ではないから、特に父親にお金を出してもらっている事に罪悪感を感じる。
 だから、勉強だけはしっかりする事を、豊は固く決めていた。
 一応ハッキリ言っておくと、皆さんが期待しているような、二人の愛の話には、そう簡単にはならないって事ですよ。
 この日は、少し明日の事を話した後、見合って食事をしたが、なにやらむずがゆくて話は弾まず。
 その後は音子にテレビを見せて、豊は勉強。
 時々音子が豊に話しかけるが、照れと勉強でそっけない返事。
 そして風呂は、音子は豊が帰ってくる前に入ったと言っていたので、豊だけが入って、後は寝るだけ。
 こうして、音子と出会ってからの、普通ではない2日目が終わった。
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ドクダミ

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