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第十二話 意外な同盟

俺は自分の領域になんとか生還していた。
昨日の大戦で、俺が生還できた事は奇跡に近い。
もう戦う術の無い俺の艦隊の前に、ジーク艦隊が現れたのだから、助かったのは偶然だ。
もう諦めていた。
ジークからの通信を何気なくひらいた。
ジークは一言、「グッバイ!(笑)」と、それだけ言ってきた。
俺は何も返事しなかった。
その後、何故かジーク軍が一瞬にして壊滅状態になっていた。
俺はその隙に右に進路をとって逃げた。
後方で見える戦闘には、紫苑軍の四天王が勢揃いしていて、俺の必殺技を使った攻撃をしていた。
ジークの旗艦はなんとか逃げたようだが、紫苑軍のほぼ完璧な勝利だった。
昨日の連合軍対ジーク軍の戦いで、最後に勝利を収めたのは、終わってみれば紫苑軍だったということだ。

俺は我が軍の主要なプレイヤを集めて会議をしていた。
必殺技が紫苑軍にばれてしまった以上、自分だけで密かに隠しておいても仕方がない。
皆に方法を説明し、対応策も教えた。
 真でれら「こんなのあるんだったら、早く教えてくれよ」
 サイファ「ジークをやるときまで、ばれないように隠してたんだよ、みんな使うと直ぐばれるだろ?」
 LOVEキラ「まあな。でもこれで、ばれたからもう使えないかもな」
まあそういう事だ。
紫苑軍があれだけおおっぴらに使ったんだ。
皆が使うか、それともクライアントの方で修正が入るか。
なんにしても、使える戦術のひとつ程度になる事だろう。
そして、我々の軍が今後ジーク軍とやり合うためには、新たな何かを必要とする事になったわけだ。
だから、この日から俺は研究に力を入れた。

我が軍と紫苑軍は、必殺技が広まるまでにこれを多用して、かなりの勢力拡大に成功していた。
まさかこれほど使い続けられるとは思っていなかったが、結局は落ち着くところに落ち着いた。
ジーク軍も七転八倒軍を正式に傘下におさめて、基盤を固めていった。
全体マップを見ると、かなりわかりやすい勢力図になっていた。
しかし、弱小軍が減ってくると、国盗りゲームは膠着状態に陥った。
小競り合いは毎日沢山みられたが、大きな会戦は滅多にない。
それは、大艦隊を率いて戦闘するには、あまりにも沢山の金と物資が必要となるからだ。
その後別の大勢力に侵攻されれば、どこまでやれるか疑問だ。
先に動いたら負ける。
そんな雰囲気があった。
更には大将自らが出陣してくる事も無くなった。
一発逆転のカードは、おそらくは大将の旗艦を破壊する事だけだ。
それを狙うプレイヤもおそらくいるだろう。
それでも、偶に中規模の会戦が、ジーク軍と紫苑軍によって行われる。
そして勝利する。
この2つの軍が2大勢力として君臨していた。
このままでは、この2大勢力がいずれ全ての領域を2分して、そしてどちらかが宇宙制覇を果たすだろう。
今ならまだ、対抗の手段はあるはずだ。
俺達は毎日会議を繰り返していたが、良い案は出なかった。
 グリード「少しずつ削られるな。このままだと俺らの軍も後数ヶ月かもな」
グリード軍の領域は、下にジーク、右に紫苑と、なんともきついところに位置していた。
前までなら小さな軍の領域が壁になっていたのだが、今ではもう存在しない。
 サイファ「なんとかしなければと思うんだけど、俺達が協力するにしても場所がはなれすぎてるし」
そうなのだ。
俺とグリードさん、それに夜露死苦さんが協力すれば、まだ2大勢力に十分対抗できる。
俺達は協力して対抗する手段を模索していた。
 グリード「紫苑軍を味方につける事はできないのか?」
俺はグリードの言葉にハッとした。
全く考えていなかった。
紫苑軍とは、常に敵対状態だった。
あの時は助けられたとはいえ、以前も以後も、時には正面から力をぶつけあい、時には策をめぐらせた相手だ。
 サイファ「全く考えてなかったけど、一旦どちらかについてどちらかをやるのは良いかもな」
 グリード「まあ、同盟にしても協定にしても、承諾してくれるかどうかはわからんけどな(笑)」
確かにグリードの言うとおりだ。
ジークさんは、軍に下るなら受け入れるかもしれないが、同盟は無理だろう。
もう一方の紫苑さんは、ほとんど喋った記憶がないから、どんな人かよくわからない。
 サイファ「グリードさんは、紫苑さんを知ってるの?」
 グリード「いや、全く!」
俺は考えた。
紫苑さんとたとえば同盟を結ぶとして。
同盟の条件は、おそらくジーク軍壊滅までとするのか。
で、同盟国は我が軍と紫苑軍、グリード軍に夜露死苦軍。
ん?
夜露死苦軍は、紫苑軍とは我が軍以上に険悪ではないだろうか。
グリード軍とも紫苑軍は敵対している。
冷静に考えて無理だろうとの結論に達する。
 サイファ「やっぱり無理っぽくない?(苦笑)」
 グリード「まあそうだろうな。でもダメ元で言ってみるしかないだろ」
グリードさんもこの同盟が現実的でないと思っているのだ。
それでも頼らざるを得ない。
俺達が追いつめられていることを改めて感じた。
とにかく、俺は紫苑さんへの通信を試みてみる事にした。
通信してみたが、なかなかつながらない。
俺は他の事をしながら、時々通信を試していた。
夜の8時頃になって、ようやく回線がつながった。
まあ、平日の昼間からゲームしてるのは、ニートと主婦くらいなもんだからな。
 サイファ「こんにちは。紫苑さん」
 紫苑「(^0^)/」
相変わらずよくわからない人だ。
偶に話しても話がかみ合わなかったり、こういった絵文字の多い人だ。
 サイファ「今日は話があるんですが」
 紫苑「ん」
 サイファ「単刀直入に言います。同盟を結びませんか?」
ダメもとだし、まともに話しそうにないし、とにかく言いたいことを言った。
すると思わぬ返事が返ってきた。
 紫苑「グッド!」
 サイファ「それはオッケーって事でしょうか?」
 紫苑「yes!」
 サイファ「そうですか。で、他にも同盟したい軍があるのですが」
 紫苑「No!」
どうやら我が軍だけならオッケーらしい。
 サイファ「では少し考えさせてもらっても良いですか?」
 紫苑「(^0^)」
いいらしい。
俺は一旦通信を切った。
直ぐにグリードさんに通信をつなぐ。
 グリード「同盟の話か?」
 サイファ「ええ。結論から言うと、我が軍だけならオッケーだって」
 グリード「そうか。今うちの領域欲しそうだもんな」
 サイファ「やっぱり俺達だけでなんとかするしかないかな」
 グリード「いや、そうともいえんぞ。紫苑軍と同盟結びなよ」
俺は直ぐには何を言っているか理解出来なかった。
 サイファ「俺達はメリットあるかもしれないけど、グリードさんにはデメリットでしょ?」
 グリード「確かに紫苑軍に対しては、今後よりきつい攻撃を受けるかもしれないけど、ジーク軍からの攻撃だったら手を貸してもらえるだろ?」
 サイファ「なるほど」
そうなのだ。
俺と紫苑軍が結べば、俺は紫苑軍の領域を安全に航行できる。
それはグリード領域まで楽に移動できると言うことだ。
 グリード「な。紫苑軍が大きくなったとは言っても、まだジーク軍とは力の差がある。紫苑軍ならなんとかなるけど、ジーク軍は単独ではもうおさえられない」
 サイファ「なるほど。しかし現状維持だけだとダメだろ?」
 グリード「サイファのところ、同盟結べば超安全になるだろ?半分は領域増やすために使うとして、半分はこっちに手をかしてよ」
守りだけでなく、領域拡大にも手をかせと言うことだ。
でもそれは可能だ。
グリードさんが言ったとおり、紫苑軍さえ攻撃してこなくなれば、我が領域はごく少数でも安全が確保できそうだ。
もちろんジーク軍が遠征して来る可能性も0ではないけど、メリットが少なくデメリットが大きい。
 サイファ「よし。それで行くか」
俺は直ぐに、紫苑軍との同盟を締結した。
条件は、ジーク軍壊滅まで、もしくは3ヶ月という条件で。
この3カ月の同盟が、終演へと一気に加速させるものとなった。
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