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第十三話 加速する戦況

同盟を結ぶと、直ぐに紫苑軍は動き出した。
夜露死苦軍への大攻勢が始まった。
俺は紫苑軍と同盟を結んでいるので、夜露死苦軍を助ける事ができない。
この隙にジーク軍が紫苑軍を攻めるのかと思ったが、期待どおりは動いてくれないものだ。
逆に一番いやな動きをしてくる。
もちろん、相手のいやがる事をするのが勝利への鉄則。
囲碁や将棋なんかでも、相手がいやがる手こそが決めてとなるのだ。
今日も俺はグリード軍領域で、ジーク軍と抗戦していた。
 グリード「お前がいてくれて助かったよ」
紫苑軍と同盟を結んだ事で、俺はこうしてグリードの手助けができる状態だ。
しかし、この攻撃を産んだのも、また同盟を結んだ事が原因じゃないだろうか。
俺は少し後悔していたが、それを口にはださなかった。
それでも、ジーク軍の攻撃は全て退けていたし、我が軍の領域拡大も順調。
最低限の成果は上げていた。
 サイファ「今日もなんとか守れたな」
ジーク軍は引き上げていった。
ここ何日も同じ事を繰り返していた。
実に退屈でやる気を削がれる毎日。
それでも状況が、決して俺たちに不利には動いていない事が、わずかなやる気を絞り出していた。
そんな日常的な戦闘の後、ホッと一息ついた時、夜露死苦軍壊滅とモニタの上部に表示された。
 達也「なんで?やられるにしても早すぎるだろ?」
俺は全体マップを開いた。
元々夜露死苦軍の領域だった場所は、沢山の色の、光の点があった。
 達也「旗艦が落とされたのか」
本来は、拠点を全て押さえてから、旗艦を落とされ壊滅となるのだが、拠点はそのままに旗艦だけが落とされたようだ。
この場合、全ての拠点は、一度その拠点の最上位階級者が臨時の軍の大将となる。
そして直ぐに、元々の階級が大佐以下の者は、近くの臨時の軍に吸収される。
その流れのとおり、夜露死苦軍の領域だったいくつもの光の点は、その色をいくつかにまとめていった。
この後はいろいろな事が起こる。
大将がNPCの時は2種類。
解散して、一時的にその拠点が中立化する。
もうひとつは、友好関係の高い近くの軍に自動で投降する。
我が軍に沢山の投降軍が押し寄せた。
 達也「面倒な事になっちまったー!」
俺は声を上げて嘆いた。
今まで壁になってくれていた夜露死苦軍がいなくなることは、自軍領域をあけてグリードの手伝いばかりしていられない事になる。
俺はとりあえず、投降軍を全て受け入れる。
俺の領域はドンドン広がった。
 サイファ「やばい事になった。悪いけど一旦戻る」
 グリード「だな。こっちはなんとか頑張るよ」
俺はグリードに断って、自軍領域へと向かった。
で、NPCでは無い臨時軍はどうなるか。
そのまま軍を維持して、新たな軍にする事も可能だし、NPCのやったように投降や解散も可能。
そのプレイヤに全てゆだねられる。
さてどう動くか。
軍を維持しても無駄だから、おそらく解散か投降。
投降するなら、大きいところにいくだろう。
これでますますジーク軍がおおきくなるかな。
そんな事を考えながら、俺は自軍領へと急いだ。

結局、臨時軍の半分以上は、我が軍に投降してきた。
不戦協定を結んでいた友好国である事と、戦闘でも日頃から信頼関係を築いてきた事が良かった。
残りの一部はジーク軍や弱小軍に下り、残りは紫苑軍の一気の掃討戦に屈した。
これでもう、グリード軍領域へのジーク軍の侵攻を、共同戦線で守る事は不可能になった。
我が領域は、ジーク軍領域と隣接し、他を守りに行く余裕が無くなったからだ。
しかし、今回の事はマイナス面ばかりではない。
我が軍の事だけをみれば、大きなメリットがあった。
我が軍の領域は一気に倍、良い人材も増えた。
再編には苦労したが、特に速攻があるわけでもなく、とりあえず落ち着いた。
まあその辺は、ジーク軍も紫苑軍も時間がかかったのだろう。
その間侵攻してくる事は無かった。
数週間は、ジーク軍とグリード軍の小競り合い程度で、静かな日が続いた。
その間に以前研究を進めていた兵器がようやく完成した。
俺は信頼出来る仲間のみでそれをテストする事にした。
 真でれら「おお。すげえ。こんなの研究成功するのか?」
 今日子「これだとゲームバランス崩れない?」
 キャンサー「うむ。すげ!」
 スピードスター「♪」
 サイファ「でもこれ、作成成功率10%だし、金が馬鹿高いし、燃費悪いし、移動速度制限されるし、デメリット多すぎるけどね」
 LOVEキラ「それだけのデメリットを付けないとバランス保てない兵器って事でしょ。使いこなせれば最強だね」
 薔薇の貴公子「だな。俺なんかサイファ軍で良かった気がするよ」
 サイファ「いや、これでもまだまだ戦力負けてるよ。それにこれ、使いこなせるの俺の艦隊だけかもな」
そう。
ずっと研究してきた兵器は、それは一気に戦況を変えてしまいかねない強力なもの。
それだけに使用条件をクリアするのが大変だった。
それらを考えれば、100%使いこなせるのは自分だけだった。
 真でれら「でもこれなら、旗艦で前線に行く危険性も緩和されるし」
 サイファ「旗艦で前線に行かないといけないから、危険はあるけどな」
使えるのが自分だけと言うことは、旗艦自ら最前線に行かなくてはならないと言うことだ。
もちろん今までも最前線では戦ってきたが、それは補給活動中心でガチの戦闘はそうそうない。
しかし今回は、攻撃の為の最前線。
最前線の中の最前線に行く必要があった。
 LOVEキラ「それよりも、もうひとつの方はまだなのか?」
キラが言っているのは、今回完成した兵器と平行して開発していたもうひとつの兵器。
 サイファ「ああ、あっちのがゲームバランス崩れるだろ。そう簡単には無理だろな。むしろ完成すら危ぶまれるぞ(笑)」
 真でれら「だな。あっちは期待しないでおこう」
皆とのテストの後、俺は新兵器を搭載した新型艦船の製造に没頭した。
もちろん皆に手伝ってもらいながら。
それから2日後、新型艦船ができあがった。
俺は「補給くん3号」と名付けた。
【<┃】 【┃┃】 【┃>】
ドクダミ

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