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第十四話 ジークの策

俺は、今日ネット購入したPCを、持ってるPC横に新たに設置していた。
PCを購入した理由は、軍が大きくなりすぎて、プレイヤ同士のチャット通信が傍受されやすくなったので、ゲーム内通信では無く、外部のチャットを使う為。
ちなみに暗号化とか騙しとかは、NPCへの命令の時にしか使わない。
混乱を呼ぶからね。
で、外部のチャットの利用だが、軍が大きくなったジーク軍とか紫苑軍では、既にやっているって話だ。
はっきりとした情報が無いのは、おそらくは腹心の部下とだけ使っているのだろう。
もしチャットをやっているサイトがばれたら、作戦が筒抜けになる。
俺も、リアル友達と古くからの信頼できる者だけにサイトを公開。
パスワードも設置して万全をきした。
今や我が軍は、ジーク軍、紫苑軍に次ぐ、第三勢力。
と言っても2勢力には大きく引き離されてはいるし、すぐ下にはグリード軍などいくつかまだ存在すから、その座はまだまだ危うい。
まあとにかく全てが整い、俺は少し画面の全体マップを眺めていた。
そうしたら、リアル商品を買った時にもらえる何かが届いたと、メッセージが表示された。
「PC購入ありがとうございます。イベントが発生しました。PCショップでエディソンとの出会い」
と、表示されていた。
 達也「なんだろ?まあどうせ大したもんじゃないだろうけど」
俺がそう思うのには理由がある。
今まで貰った物や起こるイベントは、少し前なら使えるものだったが、ココまでの勢力になってしまっては大したことないものばかりだったから。
俺は適当にチェックした。
ん?
手に入れたのは、NPCのメカニックで研究者のエディソン。
よくみるとレベルは尋常じゃないくらい高い。
俺はドキドキしながら、直ぐに第13コロニーに配属した。
淡い期待を込めて。

しばらくして、ジーク軍がグリード軍への全面攻撃を開始した。
このところ沈黙していたが、とうとう大規模な動きだ。
最初に動けば負けると言われていたが、それでも尚動いてくるって事は、それなりの準備があるのだろう。
俺はどうするか迷っていた。
そんな中、紫苑さんからの通信が入った。
珍しい。
俺は回線を開いた。
 紫苑「チャンス!ジーク殺!」
うむ。
おそらくはジーク軍を攻めるチャンスだから共に攻めようといっているのだろう。
俺は一応確認する。
 サイファ「一緒に攻めようと?」
 紫苑「(^0^)/」
どうやらそうらしい。
俺は申し出を了承した。
早速友軍を招集する。
と言っても、紫苑軍と同盟しているわけで、敵はジーク軍だけなわけだから、皆最前線に集まっていた。
 サイファ「今から紫苑軍と協力して、ジーク軍を攻撃する。グリード軍への援護にもなるから、俺は了承した」
 LOVEキラ「おお。紫苑と一緒ってのが微妙だけど、大会戦になりそうだな」
 真でれら「ココが勝負かもな。ジークがグリードんとことったら、かなりやばいもんな」
 キャンサー「うむ」
 今日子「でも紫苑軍が本気で行くかどうか」
 サイファ「せっかくジークがつくってくれた隙だ。逃さないでしょ」
 今日子「ジークがこんな隙、罠でなくてつくると思う?」
確かに。
俺は考えた。
俺がジークの立場だったらどうしただろう。
今大艦隊でグリード領域に入っている。
残りはどれくらい残す?
どう守る?
旗艦は?
考えても、どう考えてもわからない。
でもただひとつわかっていること。
今やらなければ、ジークが宇宙制覇する可能性が大きく上がると言うことだ。
それに紫苑さんとも出撃の約束をした。
 サイファ「ココはモモさんと星さんにまかせます」
 スーパーモモ「は~いw」
 スピードスター「♪」
 サイファ「後はみんなついてきて。本気で行く!」
誰も反対はしなかった。

どうやら紫苑さんも、旗艦自ら出撃しているようだった。
本気が伝わってくる。
俺も本気で出撃させて良かったと思った。
 サイファ「紫苑さん、では、連携する時は連絡ください」
 紫苑「(^0^)」
・・・
俺はマップ最下方から、紫苑軍はマップ中心から、それぞれジーク軍領内に入っていった。
敵艦隊は見あたらない。
俺達は、拠点からだけの攻撃に少しダメージを食らうものの、順調に拠点を落としていった。
 LOVEキラ「順調だな」
 真でれら「完全に自軍領域あけてやがるよ」
 サイファ「でも、グリード領域にジーク本人は入ってないそうだから、どこかに隠れてもしれないし、気を付けないと」
 薔薇の貴公子「どこかで見たことある戦略だな(笑)」
 サイファ「ああ、あのアニメだろ?補給線をのばして、疲弊したところを一気にたたくって」
 薔薇の貴公子「だな。このゲームではあんな戦い無理だけど」
今話してる戦略。
まあ、補給しづらい自軍領域に敵を誘い込み、補給線がのびたところでそれを絶つ。
補給物資が届かなくなり、前線の艦隊が疲弊したところで一気に攻撃し、一網打尽。
そんな作戦なわけだが、このゲームでしっかりと補給線を確保しなくてはならないような、何日も続くような戦いは存在しない。
そらそうだ。
ゲームをしている人は、リアルな生活も存在するのだ。
長くても金曜の夜から日曜の夜までの戦いくらい?
いや、それでも寝なくてはならないので、艦隊を入れ替えるから、そんな戦い方は存在しないのだ。
その代わり補給船の役割が重要になってくるわけだけど。
 達也「それにしても、何か気になるな」
俺はグリードさんに、戦場の状況を確認した。
 サイファ「グリードさん、そっちどうですか?」
 グリード「結構きついな。本気みたいだ」
 サイファ「そうですか。こっちはジークの艦隊が全くいなくてとまどってるよ」
 グリード「罠か?」
 サイファ「わからない」
そうなのだ。
わからないのだ。
ジークが何をやっている?
ホントに領域を無視してグリード軍壊滅を狙ってる?
 サイファ「そっちから撤退するジーク軍は?」
 グリード「とりあえずいないかな。ほとんど全艦隊集合してるんじゃね?」
だったらグリード軍を助けに?
いやもし伏兵がいて、こっちの本拠地つかれたら、戻れない。
艦隊を散開させて、一気に拠点をとりに行くか?
前と同じように、それを狙って各個撃破されたらやばいだろう。
タイミングを狙って補給線を絶ちにくる?
いや、数時間の戦いなら補給線無しでもやれるのだ。
同じ考えがグルグルと巡る中、ただ地道に拠点を落としてゆく時間が過ぎた。
紫苑軍も同じようだ。
ただただ、拠点を落としているようだ。
グリード軍は、その領域の半分を失っていた。
 今日子「私、明日朝早いから、そろそろ撤退して寝るね」
気がついたら、0時だった。
 キャンサー「俺も」
ココで2人いなくなるのはきついが、こればかりは仕方がない。
 サイファ「おつかれ!」
 LOVEキラ「おっつ」
 真でれら「おやすみー」
 薔薇の貴公子「おつかれん」
それぞれ挨拶をかえした。
さて、戦力が減って、どうするべきか。
俺は紫苑さんにどうするか聞く。
 紫苑「まだまだー」
どうやら紫苑さんはまだまだ頑張るみたいだ。
それならこちらだけ撤退するわけにもいかない。
俺達はただ単調な侵攻を続けていた。
かなり眠くなってきた。
時計は3時を回っていた。
グリード軍との大会戦は、まだ続いているのか?
紫苑軍は・・・
そういえば両者とも、通信チェックを1時間以上していない。
どうなっているのだろう。
俺は眠い目をこすった。
ん?
俺は少し眠っていたのか?
通信が入っていた。
 グリード「俺達もうダメかも」
 LOVEキラ「まだやるのか?」
 グリード「最後だ。華麗に散るぜ!」
 LOVEキラ「おーい」
 グリード「寝てるのか?寝落ち?」
 真でれら「寝てるんじゃね?」
そんな通信が入っていた。
しまった。
俺はハッとした。
そして意識がはっきりとした。
慌ててマップを見た。
グリード軍領域は、既にジーク軍の色に塗られていた。
俺は尚も慌てて通信する。
 サイファ「すまん。一瞬寝てた」
 真でれら「ああ、そうみたいだな」
 LOVEキラ「まあ、数分だけどな」
俺は友達の言葉を聞いて、直ぐに回線をグリードに変更する。
しかし通信はつながらなかった。
グリード軍が壊滅している事を意味していた。
俺は更に、紫苑軍へと通信する。
 サイファ「紫苑さん、どうしてます?」
 紫苑「潮時」
おそらくこれは、撤退を意味しているのか。
それとも既に攻撃をやめて再編までしているのかもしれない。
 達也「やばいな」
俺は思った。
もし奪った領地を確保したいなら、防衛艦隊と物資の移動や、人員の配置をしなければならない。
このままもし退却するなら、拠点を奪うのに使った物資や、やられた艦船が無駄になる。
って、やられた艦船?
俺は改めて自軍艦隊を調べた。
拠点を攻撃し続けて、自軍艦隊はかなりやられていた。
 達也「もしかして、この状況を狙っていた?」
俺の予想はこうだ。
ジークは完全に領域を空けてグリード領域制圧に出る。
俺や紫苑軍は、その隙をついて攻める事になる。
しかし以前の連合軍との戦いの時に、分散した艦隊の各個撃破にジーク軍が成功しているため、俺達はそれを恐れ一気に攻める事はできない。
その時間にグリード軍をできるだけ攻撃。
できれば壊滅までもってゆく。
おそらく金とか物資が大量に必要だが、最近は会戦が少なかったから余裕ができたのだろう。
それを見事に成功させた後、ジーク領内に侵攻してきた、拠点との衝突でそれなりにダメージをくらっている俺達に全面攻撃。
追い返すだけでも、俺達はただダメージをくらって逃げた事になり、こちらは大きな損失。
逆にジーク軍は、とられた拠点をとりかえす手間はあるが、ほとんどリスク無しで取り返せる。
何故なら拠点の設定変更や人員の配置等、まだやっていないから。
紫苑軍はもしかしたら、既にうまくやっているかもしれない。
しかし俺は眠かったから頭が回らず、更には作戦に気がついていなかったから、ココまで何も出来ていなかった。
せめて少しでもなんとかするか。
俺は急いで起きてるプレイヤを確認する。
 サイファ「後方で動ける人、誰か起きてる?」
少し返事がなかったが、2人連絡が入った。
 スーパーモモ「もうすぐ寝ようかとおもってたいw」
 スピードスター「余裕♪」
俺は起きてるのが2人だと確認すると、それで出来る最前線を考えた。
そして直ぐに指示をだす。
 サイファ「移動要塞リングを最前線にする。モモさんと星さんはそちらに移動。できるだけ物資と人員をつれてください」
 スーパーモモ「しかたないなぁ~それ終わったら寝るからねw」
 サイファ「ごめん。よろしく!」
 スピードスター「♪」
せめて少しでも領域を広くしないと、今回の侵攻が損失だけになる。
俺はそれだけは避けるべく指示をした。
それになんと言ってもグリードさんがやられたのだ。
今後を考えると、絶対必要だと思われる。
俺は最前線で、ただただ駐留して敵が来ない事を祈っていた。
それでもおそらくは、ジーク軍がすぐに殺到する事だろう。
圧倒的な戦力で。
俺は全体マップを眺めた。
半分近くはジーク軍領、残りの2/3は紫苑軍領、残りの半分ちょいが我が領域。
 サイファ「もう勝ち目なんて0に近いかもだけど、少しでも勝てる可能性を増やす為に頑張るか」
 LOVEキラ「だな。俺達よくココまで頑張ってきたよな。うまくいけば10億が手に届く位置だぜ?」
 真でれら「まだあきらめんぞ。俺は」
 薔薇の貴公子「夢はみさせてもらったよ。金ほしかったな」
今までの事を振り返り、そして現状を見て、俺達はただ敵の大艦隊が来るのを待った。
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