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第二話 100万円を拾う

俺はニートだ!
だから、今日が何月何日で、何曜日かもわからない。
まあ、毎日が日曜日ってやつ?
いやー愉快愉快。
 みかん「なー。日記になんか書いてよー。でないと私のエナジーたまらないんだけどさ。」
寝ればこの小さな魔女ッ子も、夢だったって感じでいなくなるかと思いきや、ちゃっかし机の上にいた。
まあ、この魔女ッ子は嫌いではないし、別にいても差し支えない。
少し、エロビデオを鑑賞する時に恥ずかしいような気がするだけだ。
食費も俺の飯の1/10000程度を与えてやるだけで事足りる。
問題は、このノートに日記を書くって事だ。
俺はノートを見つめる。
ただのノートだ。
とても何らかの力が備わっているとは思えない。
しかし昨日の事が夢でないなら、このノートは結構凄いノートだ。
ドリムノートやデスノートには負けるけど、ある意味俺好みかも。
 宗司「なあ、これに100万円拾ったって書いたら、俺は拾うんだよな?」
 みかん「うん。拾うよ。」
 宗司「だったら俺、簡単に金持ちになるんじゃね?」
多少何か試練があったとしても、おそらくできない事なんて要求してこないでしょ?
 みかん「簡単かどうかは、書き方によるのさ。たとえばページの最初に書いても、それは自力で探すしかなくなる。」
 宗司「ああ、それは昨日のでわかるよ。」
 みかん「もし、最後に書いたら、詳細が事細かに書かれて、最後にそれが達成される。でも、沢山の事をしなければならないかもしれない。」
なるほど。
 宗司「だったら、真ん中くらいに書けば、要求も少なく、やることも、ある程度具体的にわかって良いって事かな?」
 みかん「まあ、書いてみたらわかるけど、書いた事の後に行動が書かれる事もあるのさ。」
ふむ。
とにかく使って試せって事か。
面倒くさいけど、面白そうではあるし、まあ、使ってやるか。
 宗司「よし、それならちょっと書いてみよう。」
 みかん「いやっほ~い!!」
みかんが机の上で踊っている。
くっ!ちょっと可愛い。
俺はなんとなくノートに書いた。
ページの真ん中に、「100万円拾った」と・・・
少しすると、ページに文字が書かれてゆく。
これを見るのは二度目だけど、昨日見た時より不思議な感じだ。
昨日は半分寝ていたような気分だったからな。
今日はさっき起きて、朝昼兼用の飯を食ったばかり。
どうやら書き終わったようだ。
読んでみる。
「俺は散歩に出た。昨日行った公園に行きたくなったからだ。天気はとても良い。緑の葉っぱが必至に光合成しているようだ。」
・・・
なんだこれは?
無駄な事がやたらと書いてあるように見えるけど?
ああ、空白を無理矢理埋めているのか。
再び続きを読む。
「すれ違う犬、昨日見た犬。ああ犬。くーん!」
て、ホントに無駄だな。
「もうすぐ公園だ。見えてきた。公園だ。公園についたんだ!俺はやったぞ!!冒険は終わった。その時!!!!ダダダン!!」
・・・
もうやめようかな。
「昨日のベンチの上に、鞄が置いてあるのに気がつく。俺は走ってかけより、鞄をつかみ、懐に抱き寄せる。辺りを見回し、誰もいない事を確認。中身を確認した。」
おお、これが100万円か?
「猫だ・・・猫が入っていた・・・」
おいおい、なんだよ。
サクッとゲットさせてくれ。
「ん?鞄の底、猫の下に敷き詰められた紙、万札じゃね?俺は紙を全て鞄から出す。もちろん猫はそのままだ。」
ああ、面倒くせー!
「札の数は丁度100枚。100万円拾ったようだ。」
おおすげえ!!
「しかし俺は、こんなお金を今までに持った事がない。怖くなった。つーか、拾ったら警察に届けないと。」
なんだ?続き?
しかも警察に届けるだぁ?
俺はなんてチキンなんだ。
持っていくんじゃない!!
「鞄にお金を戻すと、俺は交番を目指す。交番の前まできた。俺の認識では、交番は怖い所だ。チキンな俺は、交番の前に鞄を置くと、家まで走って逃げ帰った。」
・・・
これじゃあ、結局100万円はもらえないじゃん。
 宗司「おい、これ行動しても、何も意味無いような気がするんだけど?」
 みかん「書いた事は実現するのだ。」
 宗司「でも、無駄足じゃん?疲れるだけじゃん?」
 みかん「私にエナジーが入ればそれでいいのさ。」
・・・
寝よう。
俺は横になった。
 みかん「ああ、そう言わずにさ、行こうよ公園。私いきたいなぁ。」
みかんが近くにきて、目をウルウルさせている。
くっ!なんだか昨日の公園に行きたくなってきた。
つーか、一応100万円拾うんだよな。
その後うまくやれば、貰えるなんて事も。
てか、ちゃんと交番に届ければ20%まで要求できるとか聞いた事あるぞ?
 宗司「ああ!わかった。わかったから。」
 みかん「わーい!」
むむむ、なんて可愛いのだ。
反則ですな。
俺は起きあがると、みかんを肩に乗せて家を出た。
飛べるから、肩に乗せなくても良いような気もするけど、なんかこの方が、俺がかっこよく見えない?
 宗司「ああー天気いいなぁー」
いい季候だ。
春か秋か。
ああ、あそこの葉っぱが必至に光合成してるから、今は春から夏に向かってるところか。
 犬「くーん!」
・・・昨日の犬だな。
尻尾振ってやがるよ。
犬だからな。
 宗司「バイバイ犬!」
俺は犬とすれ違う。
さて、もうすぐ公園だ。
見えてきた。
ふふふ、もうすぐ公園だぜ!
 宗司「よっしゃー公園だぁ!!」
・・・って、なんで俺はこんなに喜んでいるんだ?
って
 宗司「うわ!マジでベンチの上に鞄が置いてあるよ!」
 みかん「ココまで順調だね。」
 宗司「そんな落ち着いてる場合かよ!」
俺は慌ててベンチに駆け寄り、鞄を胸元に抱き寄せた。
周りを警戒したが、誰もいない。
 鞄「ニャーニャー!」
 宗司「にゃーにゃーだと?ああ、そういや猫が入ってるんだっけ?」
俺は鞄を開けた。
猫がいた。
ちょっとむかつく顔してやがるな。
まあいい。
金金っと。
 宗司「おおおおお!!!マジで一万円だぁ!!!!」
っとっとっと。
やばいやばい興奮してきた。
ん?
俺はココで、数を数える事になっているはずだ。
そして鞄に入っているのは、合計100万円である事を知るんだ。
 宗司「みかんよ。ココで俺が100万円数えなかったらどうなるんだ?」
もし、後の事が無効になるなら、俺は100万円ゲットのチャンスを得る事になる。
 みかん「それ以降は無効だね。でもそれをすると、それ相応の試練が来るか、結局はメリット無しの状況になるはずだよ。」
うーむ試練か。
しかし100万円だぜ?
多少の試練は受けて立とうじゃないか。
 宗司「俺はこれを持って帰る!」
 みかん「たぶん無駄に終わると思うのさ。」
 宗司「俺は永遠のチャレンジャーなのだ!」
 みかん「ニートなのにチャレンジャーね。」
 宗司「うおーー!!!!!」
俺は家に向かって走り出した。
 誰か女「きゃあ!!」
・・・
 宗司「いててて・・・」
いきなり誰かにぶつかった。
誰だよ全く。
俺は、いつの間にかとじていた目を開ける。
ん?この光景は・・・白だ・・・
 誰か女「何処見てますの?」
おっと、素晴らしい物が見えていたから、つい見とれてしまった。
俺はその白いものから視線をあげた。
んー、時給1200円くらいかな。
少しきつそうな目してるけど、概ね可愛い女の子に見える。
頭も良さそうだし、覚えるのも早そうだ。
 宗司「仕事覚えたら、時給1250円にするよ。」
 誰か女「はあ?何言ってますの?」
女はそう言うと、自力で立ち上がって、スカートについた砂をはらった。
残念。
俺も立ち上がった。
すると女は、俺の抱えている鞄を見た。
 宗司「しまっ・・・」
俺は言いかけて、鞄を後ろに回す。
 誰か女「ああ、その鞄、届けてくださったの?」
 宗司「いえ、猫なんて入ってませんよ。」
 鞄「ニャーニャー」
鳴くんじゃありませんとの事よ。
 誰か女「ありがとうございます。忘れ物を届けてくださって。」
 宗司「いえいえ、そういう訳では。」
 みかん「もう無駄だって。」
 宗司「うるさい!」
 誰か女「お、お礼を言っているのに、五月蠅いってどういう事ですの?!」
ココで逃げるか?
 みかん「逃げたら犯罪だよ。」
 宗司「くっ!」
俺は諦めた。
 宗司「いえいえ、さっきから猫が五月蠅いなぁって。はい、鞄、お返しします。」
 誰か女「ええ、ありがとう。」
女は差し出した鞄を受け取ると、少し重そうに顔をゆがめて一瞥をくれた後、何事も無かったかのように、鞄を持って去っていった。
結局無駄骨かい。
 みかん「そうでもないよ。服、胸の辺り見てみるのさ。」
 宗司「ん?」
服に、なんか臭い物が、うんこが、ついていた。
無駄骨ってか、踏んだり蹴ったり?
 みかん「そのノートは、善意には易しく、悪意に厳しいのさ。」
・・・そういう事は、早く言って・・・
 みかん「素直に交番に届ければ良かったのに・・・」
俺はトボトボと我が家に向かった。
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