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第十七話 絶望と希望

一夜明けて、姫にはもう、魔女ッ子に関する記憶は残っていないだろう。
それにしても、昨日は驚きだった。
カズオの最有力候補が、財界のトップと、政界トップの孫なんだから。
どちらがカズオでも、なんとなく納得がいく。
いや、しかし待てよ?
そんな権力者が、更に上が欲しいか?
いや、前総理を殺した事から、美奈斗さんは凄く怪しい。
自分のおじいさんを総理にする為だと考えれば、動機は十分。
しかし、そんな事の為に殺人するか?
桜井豊なら、どうせ待っていれば、いずれは総理になっただろう。
わからねぇ。
一応、それ以外にも声をかけてきた人を、覚えている限り聞いておいが、どれもピンとこない。
豊内自動車の社長の息子、豊内孝。
衆議院議員で、与党自々党の山下辰巳。
ベンチャー企業ネットバリューサイトの副社長 野呂誠。
どれもナンパ目的に見える。
しかし、この5人の中の関係者を含めれば、おそらくカズオが存在するような気がする。
とりあえず俺は、いつもの日課を実行する事にする。
昨日は夜も遅かったから、自分の未来日記は更新していない。
未来日記に繋いだ。
「逃げる事ができたか。しかし、もうまもなく、魔女を持つお前を消せる。」
未来日記の最後に、そう書かれていた。
俺は震えた。
心臓がドキドキした。
どこまでばれているんだろう。
不安だ。
こんな事を面と向かって言われたら、それがかりに確信を持たずに言われた事だとしても、俺の動揺から、俺が魔女を持つものだとばれるだろう。
ネットでよかった。
俺はブラウザをとじた。
昨日の参加者は、1000人ほどだと聞いていた。
その参加者の関係者に、俺が存在する事は、最低限ばれただろう。
きっとこの後、ひとりずつ探りを入れるに違いない。
そして、いずればれる。
それはそう遠くないだろう。
何故なら、カズオ自らそれぞれの家を訪れれば、会えない俺達は必ず拒絶しあう。
それが起こった場所にこそ、俺がいるのだから。
実家に戻るか?
いや、華ちゃんと未来ちゃんがいる限り、それはできない。
なるべく時間切れ勝利が良かったが、もうこれで完全に不可能になったな。
それは、俺がカズオを殺さなければならないという事でもある。
俺が先に見つけて、警察になんとかしてもらう手も、先に見つける事もさることながら、警察にどうこうできるカズオではないだろう。
俺は平静ではいられなかった。
今日の夜の日記に、俺は一か八かで、カズオだと怪しまれる人物の名前を書いた。
昨日聞いた5人に、後5人、俺が動機をでっち上げることができそうな人物の名前を。
こんな事を書いたら、関係無い人にも迷惑がかかるが、俺は怖くて焦っていた。
しかし次の日、これがきっかけで急展開する事となる。

翌日、夜のニュース番組では、俺が名前を記した人物の何人かがテレビ出演してた。
新未来日記に名前が出た事を聞かれている。
俺のサイト、新未来日記も、かなりの影響力を持っている事がわかる。
正直、関係ない人も呼ばれている訳で罪悪感も有るが、命に関わる事なので仕方がない。
そして夜には、ネットバリューサイトの社長春野あやめが、色々な人から責められていた。
 テレビの人A「最近、子会社のネットバリューサイト証券が、未来日記の予告どおりに株取引を行い、かなりの利益をだしている件が怪しまれていますが。」
 あやめ「私は、あのサイトを前から見ていましたから、参考にしていた事は否定しません。」
 テレビの人A「では、あなたが未来日記管理者では無いと?」
 あやめ「当たり前です。」
少し怒っているようだ。
しかし未来日記を参考にして、株取引で儲けたとなると、怪しまれるのも無理はない。
今から俺がテレビ局に行って、拒絶反応がでるかどうか試せれば、この人がカズオなのかどうかがわかる。
いくか?
ダメだ。
あまりにも危険すぎる。
それに、俺はこの人がカズオだとは思えない。
何故なら、そんなあからさまに、証拠になりそうな事をするのかって事。
そしてもうひとつ、パーティの出席者名簿には、名前が無かった事。
俺が怪しいと思って書いたのは、副社長の方だ。
もしかしたら、会場には来ていたかもしれないが。
俺は立ち上がり、姫の部屋へと向かった。
部屋の前につくと、俺は一息ついてから軽くドアをノックした。
 姫「はい。どうぞ。」
俺は姫の部屋に入った。
 宗司「ちょっとだけ聞きたい事があるんだけど、いいかな?」
 姫「いいよ。座ったら?」
 宗司「いや、すぐだから。」
姫は暇をもてあましていたのか、少し残念そうだった。
 姫「で、なにかな?」
 宗司「パーティに、春野あやめさんて、来てたかな?」
 姫「ああ、あの奇麗な人・・・もしかして・・・」
 宗司「いや、今テレビに出てたから、ちょっと気になっただけで・・・」
俺は何いいわけしているんだろう?
 姫「来てたと思うけど。チラッと見た気がしたから。」
えっ?
来ていた?
名簿にないのに?
いや、用心して書いてなかったのか?
 姫「どうかしたの?」
 宗司「いや、ありがとう。じゃあ戻るよ。おやすみ。」
 姫「おやすみ。」
俺は姫の部屋を出た。
もし、あのあやめさんが、不用意に動いてしまっていたなら、これはかなり可能性がある。
しかし、俺は前に否定していたはずだ。
株取引はフェイクだと。
俺は、ずっとテレビをみていた。 
今度は違うテレビ局に呼ばれていた。
 宗司「やっぱり違う気がするんだけど。」
 みかん「まあ、魔女ッ子は見えないし、わからないのさ。」
 宗司「みかんだけがテレビ局に行っても、意味ないよな。」
 みかん「見えないから、なんとも言えないのさ。」
・・・
それ使えないか?
見えないんだから、あやめさんの自宅に忍び込んで、魔女ッ子と話すところを見れれば。
まあ、独り言に見えるんだけど。
 みかん「おお!それなら調べられるのさ。」
 宗司「よし、それでい・・・」
俺はそれでいこうと言おうとした。
でも、それは必要無かった。
テレビに出ているあやめさん。
何も無い、肩の辺りに話しかけるそぶり。
そして、丁度俺がみかんをなでるような感じで、その辺りを指が行き来していた。
 みかん「間違いないのさ。」
 宗司「だな。」
間違いない。
春野あやめが、カズオだ。
俺は確信した。
 宗司「まさかカズオが女性だったとはな。」
俺は一縷の望みを警察にたくし、新未来日記に、「未来日記管理者は、春野あやめ。」と書いて、俺は眠りについた。
【<┃】 【┃┃】 【┃>】
ドクダミ

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