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第二十話 久しぶりの帰宅

次の日の朝には、早速、新未来日記に、「春野あやめは未来日記の管理者では無かった。」と書いておいた。
夕方には、春野邸からの中継は無くなっていた。
しかし、俺は気になる事がある。
テレビに出ていた時のあの仕草。
あれはどう考えても、魔女ッ子に対するものだ。
あんな事をわざわざする人はいない。
俺の予想では、誰かに、ああするように頼まれて、それをそのまま実行したって事だろう。
あやめさんの会社は、未来日記によって、大きな利益を上げた事を否定していなかった。
あのサイトが有名になる前から知っていたって事は、誰かに教えて貰った可能性が高い。
それがカズオ本人で、儲けさせる見返りに、カズオの計画に協力する。
そんな風に考える事は、ありえないだろうか?
いや、それはなんだか違う気がする。
あのあやめさんって人は、テレビで見る限り、そんな事をするような感じがしない。
金持ちは、更なる金を求めるものだと、俺は思っていた。
そう考えれば、あり得るのだけれど。
とにかく、カズオとなんらかのつながりは有りそうだ。
明日の日記には、「未来日記管理者は、春野あやめの知り合いである。」と書くとしよう。

そして次の日、朝一番のニュース、俺は映し出される映像を見て、恐怖した。
まずは、今日の2時頃に書かれた、未来日記。
「本日、春野あやめは、命を落とす事になる。」
そう書かれていた。
そして、今テレビのニュースでは、炎が既に沈下して、骨組みが一部だけ残っている春野邸が映っていた。
放火と断定して調査しているとか、死体がみつかったとか、そんな事をアナウンサーが言っている。
俺達も、きっと見つかったらこうなるんだ。
ニュースを一緒にみていた華ちゃんと未来ちゃんも、顔が少し青くなっているように見えた。
もう、もたもたしていられない。
次は俺達か。
それとも、河崎家へ何かしらのアクションがあるかもしれない。
待っているだけではダメだ。
俺は携帯電話を手に取った。
 みかん「どこにかけるのさ?」
 宗司「もう、ゆっくりはしていられない。俺らからも動かないと。」
俺は姫に電話した。
 姫「もしもし。」
すぐにでてくれた。
 宗司「今、大丈夫か?」
 姫「起きたばかりよ。」
 宗司「そっか。ニュースは見たか?」
 姫「だから起きたばかりよ。」
向こうで、テレビを付ける音がした。
 姫「何これ?あやめさんが・・・」
 宗司「俺は、ある理由で、この犯人を捜したいと思っている。だから、少し協力してもらいたい。」
 姫「もしかして、知り合いだったとか?」
 宗司「まあ、そんなところだ。だから、あやめさんと親しかった人を調べてほしいんだ。」
俺は、あやめさんの交友関係を、姫の力で調べてもらう事にした。
正確には、金の力って事になるのだろうか。
 姫「かまわないけど、ホントに今どこにいるの?華は?」
 宗司「ああ大丈夫だ。場所は言えない。ああ~後、なんの事だかわからないと思うけど、とにかく河崎邸も狙われるかもしれないから、十分注意してほしい。」
 姫「なんだかわからないけど・・・とにかく分かったわ。」
 宗司「ありがとう。」
華は狙われている。
河崎邸でかくまってる可能性も考えられるから、今回のような放火や、それ以上で攻撃される可能性もある。
最後に少し、華ちゃんに電話を替わって、電話を切った。
さて、俺は一度、実家に帰る必要があるな。
ほんの数ヶ月前まで、死にたいと思っていた俺は、ある物を作っていた。
死ぬための道具。
結局怖くて使えなかったけど、まさか本当に使う事になるとはね。
苦笑いがもれた。

久しぶりの実家だ。
姫に確認したところによると、俺に関する事を漏らしたりするような事は、無かったらしい。
だから、おそらく俺が実家に戻る事に危険は無いはずだ。
有るとするなら、親からの嫌み攻撃。
俺は一人、苦笑いしながら鍵を開けて、久しぶりの我が家の門をくぐった。
 宗司「ただいまー!」
いつもどおりの帰宅。
大丈夫、完璧に普通だ。
・・・
誰もいなかった。
テーブルには、一枚の手紙。
「しばらく旅行に行ってくるから、帰ってきても何もないよ。ははははは!」
ま、まあ、これくらいの方が、良いよな?
 みかん「完璧に捨てられてるのさ。」
俺はトボトボと自室に入った。
懐かしく感じる。
死ぬ事だけを考えていた部屋。
ココから出て、今は生きる事だけを考えている。
人間変われば変わるものだ。
未来ちゃんだけではないんだ。
俺は押入をあけて、天井の板を外した。
ひとつのナップサック。
この中に、死ぬために作った・・・爆弾がある。
テストしたわけではないから、爆発するかどうかはわからない。
ネットサイトで調べたとおり作っただけだ。
俺はナップサックを背負った。
少し重い。
俺は部屋をそのままに、家を出た。
後で、鍵を閉めたかどうか不安になったが、今更戻る気にはなれなかった。
双葉家に戻ると、丁度姫から電話がかかってきた。
 宗司「はい。」
 姫「調べて欲しい事、一応調べたよ。仲が良かった人だよね。それがあまりいなかったみたい。」
 宗司「そうなのか?美人だし、友達とか多そうだけど。」
 姫「金持ちって、本当にお金抜きで仲良くなれる人って、少ないんだよ。」
これが、金持ちの辛い部分なのだろうか?
寄ってくる人は、みんな金目当て。
友達も、もしかしたら、金の切れ目が縁の切れ目みたいな感覚だったんだろうか。
華ちゃんも、ココに来てから、誰かに連絡してる事は全くない。
未来ちゃんは、結構友達にメールしてるようだけど。
学校ずっと休んでるから、友達も心配してくれているんだ。
 宗司「で、何人かはいたんだよな?」
 姫「うん。なんか婚約してるとか言ってた人が一人。」
これだ。
俺は思った。
なんとなくだけど、あやめさんは、金の為に頑張る人には見えなかった。
それなのに、これだけ会社を大きくして、金持ちになったのは、きっとその人がそうしろって言ったから。
 姫「えっとね。現総理の桜井豊の孫、桜井海里って人。美奈斗さんのお兄さんだね。」
 宗司「えっ!その人、パーティには来てたか?」
 姫「うん。美奈斗さんと一緒にいたよ。」
間違いない。
絶対この人だ。
俺は確信した。
電話を切ると、荷物は一旦おいて、ネットカフェに向かう。
新未来日記に、「未来日記管理者は、桜井海里。そろそろ終わりにしましょう。」そう書いた。
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