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恵美の卒業

カモがネギを背負ってやってくる。
カモがわざわざ食べられに向こうからやってくるどころか、美味しく食べられるようにネギまで持ってきてくれる状況。
つまり幸運に幸運が重なったり、幸運がまとめて向こうからやってくるということわざだ。
案外幸運というのは重なったり続くもので。
上手く行っている時ってのはそんなもの。

ビームにドッジボール対決で勝利し、見事通行許可証を手に入れた俺たちは、次の日の朝砦を出発した。
それから間もなく、とうとう俺たちの眼前に奴が現れた。
百人ほどの部下を引き連れてね。
「勝って出て来たみたいだな。こりゃ助かったよ。十五人のスポーツ対戦なんて、面倒でやりたくなかったからな」
いかにもな悪人ヅラで、しかし危険に思わせるだけのオーラも纏っている。
「アレが郡だよ。ようやく向こうから現れてくれたわ。これでもう安心ね」
「ああ。顔も魔力も覚えたよ。逃げても見つける事は容易い」
「それじゃとりあえずお祝いなの‥‥。パーティーをするの‥‥」
「でも今さっき朝食は食べてきたばかりよねぇ~。どうしようかしらぁ~?」
既に俺たちは、アーニャンの仕事を終えたような気分になっていた。
実際この状況なら、そう言っても過言ではないからね。
「貴様ら?何を浮かれている?これだけのデンジャーに取り囲まれているんだぞ?恐怖に頭がおかしくなったのか?」
それもそうだな。
少しくらいは怖がる所かもしれない。
「たった百人程度で勝った気でいるし」
何故か恵美が一番強気なのもどうかと思う。
「普通なら恐怖するんじゃないかしら?僕一人ならもっと警戒していただろうし」
砦を出た所で分身と妖凛たちは全部回収したし、みたまは天冉の中へと戻っている。
現状こちらはたったの五人なんだよな。
アグネスくんは混乱するか。
だけれど、ちゃんと捕まえられるだけの戦力は持っているし、そこにアグネスくんがノコノコやって来てくれた訳だから‥‥。
現状カモがネギを背負ってやってきたとしか言えない。
きっとカードもいい感じに集めているだろうし、そちらも頂くつもりだから期待できるよね。
全員捕まえたら、かなりカードが揃うのではないだろうか。
とりあえずテリトリーⅡを展開しておこう。
俺はコッソリと異次元収納から宝石を取り出し、それを四方へと放っておいた。
「舐めてるのかお前ら?言っておくが俺は、戦闘力ならどんなデンジャーにも負けないと自負している」
ほう。
「それなら少しは楽しめるのかな」
「強い人なら私が遊んでみたいの‥‥」
勘違い野郎ってのはいるだろうけれど、実際に強い奴でないと簡単に最強なんて言えない。
この世界の最強レベルを測るのにはいい相手になりそうだ。
「ちょっとまって狛里。これは僕の仕事だから、郡の相手は僕がするね」
そう言ってアーニャンは、ニコッと笑ってポンと狛里の肩に手を乗せた。
「うん‥‥分かったの‥‥。メインディッシュは楊ちゃんに譲るの‥‥」
おお!
狛里がメインディッシュを譲るなんて。
今のは、『必殺!「桂太郎」の「ニコポン」』じゃないのか?
微妙に魔力を発していたし、アーニャンの能力に違いない!
狛里に対しても効果を発揮するなんて、アーニャンの能力は侮れないな。
「じゃあ俺たちは、とりあえず雑魚をアーニャンたちに近づけないようにするぞ」
そして俺は、一応恵美を守る。
「分かったし。私もだいぶ強くなって、もう雑魚相手だと負ける気がしないし」
「でも油断わぁ~禁物よぉ~」
そうそう。
自信を持つ事は良い事だけれど、冷静さは常に持っておかなければ足をすくわれかねない。
「分かったし」
素直にアドバイスを聞き入れられる辺り、恵美はもう大抵の場合大丈夫だろう。
「こいつら‥‥。大人しくカードを渡すどころか、初めから戦闘する気満々でいやがる。ならば力ずくで奪うまでだ!行くぞ!お前ら!」
アグネスくんがそう言うと、雑魚デンジャーが一斉に襲いかかってきた。
「笑みの推し活!だし!」
「雑魚キャラってぇ~セリフも無くて可哀想ねぇ~」
「天冉ちゃん、モブって言うの‥‥」
名前も台詞もないモブキャラ。
そんな者たちが強い訳がなかった。
それでも数は多いし、思いっきり手加減が必要なので、俺は妖凛と冥凛も分裂しておく事にした。
「お前たちもアーニャンたちに誰も近づけないように、モブ雑魚たちと遊んでやってくれ」
「コクコク」
「ん‥‥」
モブ雑魚とは言え、一応デンジャーだから微妙に強いんだよな。
さてこの戦闘のメインであるアーニャンとアグネスくんだが‥‥。
アーニャンはいつの間にか、巨大なハープを手に持っていた。
つかハープってただでさえ大きいのに、更に高さが三倍くらいあるぞ?
これでどうやって戦うというのか。
何でも三倍あれば強いって訳ではないと思うのだけれど。
そう思っていたのだけれど、アーニャンはショートソードを振るが如くにハープを振り回した。
「ちょっ!」
「これじゃぁ~私たちが止めるまでもないわねぇ~」
「誰も近づけないし」
四メートルの剣を振り回しているような感じだからな。
アグネスくんも近づけなくて逃げるだけになっていた。
「俺たちはモブ雑魚を全員捕まえてしまおう」
「分かったの‥‥。虫かごを用意してほしいの‥‥」
俺は狛里の言葉に、魔力ドレインの檻の魔法を発動した。
すぐに百人収容可能な檻が現れる。
魔力ドレインの檻は、中にいる者の魔力や念力を奪い閉じ込める為の物だ。
俺のように妖精魔術が使えたり、アメーバ人間でも無ければ抜け出す事はほぼ不可能な檻となっている。
しかも中にいる人間の念力を吸い続けるので、生きた人を閉じ込めている限り永続されるものだ。
尤も、あくまでも『抜け出しはほぼ不可能』なだけで、狛里を閉じ込めておく事は無理だろうけれどね。
そんな解説を頭の中でしている間にも、檻にはどんどんモブ雑魚たちが入れられていった。
とは言えやはりモブ雑魚の中にもネームドキャラが紛れ込んでいたりするもので。
恵美が一人の男との対戦に苦戦させられていた。
「落札が効かないし」
ふむ‥‥。
恵美はどうやら『戦い』という広い条件で落札を発動しているようだな。
元々は割と限定する必要があった訳だけれど、この所の成長でかなり条件を緩くしても発動が可能になっていた。
実際今も発動している。
なのに相手には全く行動の制限が感じられない。
俺は既に落札の能力をコピーしていて、自分でも使えるようになっている。
だから一応弱点は把握している訳だけれど‥‥。
効かない場合は二つの理由が考えられるな。
一つは相手が『人間《ヒューマン》では無い』場合。
これは意識の統一が不可能な種族に対して通用しないって話で、知能の高いドラゴンなんかだと効果は発揮されると思われる。
今回の場合相手は人であるから、この理由ではないだろう。
となるともう一つの理由、今回の場合で言えば『相手は戦っているという意識が無い』って事だ。
表情を見る限り、何も考えていないか。
或いはそもそも意識が無いか。
ただ黙々と恵美への攻撃を続け、恵美はそれに対して防戦一方という感じ。
何かに操られているみたいだな。
『操られている』か‥‥。
そう言えば原作だと、自らをコントロールして強くなる使い手もいたよな。
おそらくそれに似た使い手なのかもしれない。
となるとかなり戦闘特化しているし、まともに戦っても恵美には勝てないだろう。
「恵美ちん頑張っているわねぇ~」
「死んだ魚の目をした相手なの‥‥。気持ち悪いの‥‥」
「コクコク」
「あれ?」
気がつけば、戦っているのは恵美とアーニャンだけになっていた。
他にいたモブ雑魚の敵は、全て檻の中。
「恵美ちんの卒業試験には丁度いい相手よねぇ~」
「あの人を倒せれば強いの‥‥。自分の身は自分で守れるの‥‥」
確かに、戦闘力だけなら人間レベルの域を超えている敵に見える。
おそらく能力で他の全てを遮断し、戦闘特化しているのだろう。
アグネスくんとは違った強さではあるけれど、例えるならゲームのCPU最強ボスと言った所か。
「しかし、恵美には荷が重いのではないか?防戦一方で反撃の糸口が掴めない。いずれ体力が尽きて負けそうだ」
「そうねぇ~。色々な能力を持っていてもぉ~、隙がないと活かす事もできないわねぇ~」
「大丈夫なの‥‥。さっきよりも恵美ちゃんの動きに余裕があるの‥‥」
「ほう‥‥」
余裕ねぇ。
相手に疲れている気配はないし、余裕が出てきているとしたら慣れて来たのか。
或いはこの戦いの中で、恵美は成長しているのかもしれない。
集中している。
いつもの軽口は封印し、表情は真剣でいて楽しそうだ。
言われてみれば確かに、相手の隙も見えてくる。
それはまだ恵美にとっては小さすぎるものだけれど、恵美が人間の最高レベルに達する事ができれば、この隙は活かせるのではないだろうか。
そんな事を考えている間にも、恵美の動きは洗練されてゆく。
もう距離を取って読書モードにすれば、魔法で叩けるかもしれない。
「ドンドンかずみ!ドンかずみー!」
いきなり何を?
「ドンドンかずみ!ドンかずみー!」
これは‥‥。
推し活モードで『恵美』ではなく『かずみ』を応援しているのか?
そして次の瞬間、恵美は勝負に出た。
一旦距離を取る。
ここで読書モードに変更か?!
そう思った瞬間、恵美はそのまま剣を抜いて突進していった。
「えっ?!」
剣はクエストで手に入れた勇者の剣。
今、恵美は本当に勇者かずみになったようだった。
一瞬で敵を倒していた。
首と胴体が完全に切り離されている。
完璧な勝利だった。
つか、殺しちゃってるけど。
「ああー!やってしまったし!完全にかずみになりきってしまったし!どうしよう策也!」
「いやいや、恵美。強かったな。まさか推し活モードだけで倒すとは思っていなかったぞ」
本当に驚きだ。
おそらく魔法を使えばもう少し早くに勝てた可能性もあった。
それをあえて推し活モードだけで倒すとか。
物理戦闘では人のレベルを超える相手に対し、物理戦闘だけで勝ったのだから凄い事だよ。
首チョンパされたモブ雑魚くんは、妖凛と冥凛がすぐに蘇生していた。
それを見て、恵美も安心したようだった。
つか少しくらいは驚けよ。
いや、もしかしたらかずみの魔法の中に蘇生も実はあるのかもしれない。
「推し活モードだけで戦ったのは、強くなる為だし」
「どういう事だ?」
「読書モードは、慣れるまでは威力も増していたんだけれど、基本的に威力はずっとほとんど変わっていなかったし。だけど推し活モードは、鍛えれば鍛えただけ強くなったし。だから私の本当の力は、きっとこっちにあると思っていたんだし」
「なるほど。そういう事か」
読書モードは、かずみの力を借りる為のもので、魔法は全てかずみの力に依存しているんだ。
だから最初から強い魔法を放つ事ができたけれど、当然成長はない。
全くなかった訳ではないけれどね。
一方推し活モードは、恵美オリジナルの能力。
恵美が鍛えれば鍛えるほどその効果も強くなるんだ。
ならば強くなる為にはどちらを鍛えるのか。
自ずと答えは決まっている。
それに元々読書モードは、推し活モードの休憩の為にあるんだよな。
ここまでは恵美よりもかずみの方が強かったから、メインがどちらか分からなくなっていたけれど‥‥。
今、恵美はかずみを超えたという事だ。
「恵美、卒業だ。もう俺が教える事は何もない。今日で家庭教師も終わりだな」
「えー?まだ全然だし」
恵美は少し照れくさそうに、しかし受け入れたくないといった感じで否定してきた。
「いや、ここからはもう何も教えられない。というか、教える必要もないんだよ。今のまま上を目指せば、恵美は自らの力で更に上に行けるからさ」
つか最初から教えられる事なんて何もなかったんだよ。
俺はこの世界の初心者なんだし。
「そうそう~。正直な所~、私よりも強くなる可能性も感じるのよねぇ~」
えっ?マジか天冉?
確かに、恵美は今人間のレベルを超えてきた。
これはありえない早さで成長していると言える。
でもまさか‥‥ね‥‥。
あくまで一霊四魂を使わなかったらって所だとは思うけれどさ。
「うー‥‥。でも全然まだまだ追いつけてないし‥‥」
「私たちと比べると駄目なの‥‥。私たちは‥‥ち、チート?なの‥‥」
「チート?」
「人間じゃないって事さ‥‥」
あ、これは言っちゃいけない本当の事だった。
「そうなんだし。私は人間だから比べるものじゃないって事だし‥‥」
納得してくれてるよ。
でもまだ気持ちは付いていかないか。
「まあ、何か疑問があるなら何時でも相談にはのるさ。あくまで家庭教師の契約を終わらせるだけだよ」
「もう友達なの‥‥」
狛里の言う通りだ。
ただ金のやり取りが不要になっただけ‥‥。
「あ、うん。分かったし」
二ヶ月にも満たない短い期間だったけれど、恵美が成長しすぎなんだよな。
俺も少し家庭教師という立場を名残惜しく感じた。
そしていつかは終わりがくる。
その時の為に、これからは別の‥‥。
俺たちがそんな話をして物思いにふけっていたら、少し離れた所で爆発音がした。
そう言えばまだアーニャンが戦っていたな。
まあ楽勝だろうと思っていたので放置していたけれど、さてどうなっているのやら。
戦いは相変わらず。
アーニャンが弦のボロボロになったハープを振り回し、アグネスくんが攻めあぐねている様子は変わらなかった。
ボロボロになったハープ?
そうではないか。
弦はしっかりと付いたままだけれど、それ以外に糸の破片のようなものを撒き散らして戦っている感じだ。
それには魔力が感じられるし、これはただ戦っているだけではなさそうだな。
「くそっ!みんな捕まったのか?バンスルーの奴、何をしている」
バンスルーの名前が出てきた。
もしかしたら一緒にやってくる予定だったのかもしれない。
しかし今頃奴はゴルゴたちと戦っているか、或いはもうやられているのだろうな。
アグネスくんの行動が少し変わった。
どうやら一旦逃げて体制を立て直そうと考えているようだ。
でもおそらく、アーニャンはそうはさせない。
逃げようとした時が終わりの時になるんだろうね。
「プリット!」
アグネスくんは、少し距離を取った所でファイルを出してきた。
そこには当然一瞬の隙が生まれる。
アーニャンはそれに合わせて魔法を発動した。
「今だよ!『ハープの魅了』」
アーニャンがそう言いながらハープを奏でると、今まで辺りに撒き散らされてきた『弦の欠片』が、一気にアグネスくんへと収束していった。
そしてそれらは、瞬時にアグネスくんの行動を制限する。
繭に閉じ込められるように、顔だけを出したアグネスくんの姿がそこにはあった。
‥‥、魅了って言うより、完全に糸による拘束。
蜘蛛の糸のようなものによって物理的に捕らえられていた。
「なんだと!?」
「もう逃げる事はできないわよ。キミは僕の魅力に捕まったんだから」
だから、魅力関係ねぇー。
でも本人がそれで納得しているのなら、それで力を発揮するんだけどさ。
或いは何か魅力が影響する所があるのかもしれないけれど。
何にしても、アーニャンはアッサリとアグネスくんを捕らえる事に成功したのだった。

戦いの後、俺たちは捕らえた奴らの持つカードを回収していった。
皆、アーニャンの脅しに屈して素直にカードを差し出してくれた。
「僕はね、相手の心臓を抜き取る事で、なんでも言う事を聞く奴隷にする事ができるの。抵抗して奴隷になるのか、素直にファイルを出してカードを取られるか。選ばせてあげるわよ」
そう言われたら、流石にカードを出すしか無い訳で。
尤もそこまでしなくても、適当に痛めつけて『他力本願』を使えば、カードを出させる事はできたんだけれどさ。
アーニャンの能力『卒業』や『他力本願』については前作を見てねw
ちなみに他力本願の発動条件は、力の差が少ない場合には多少痛めつけておく必要があるとの事。
条件なく他人をコントロールするのは難しいのです。
「で、結局カードが全部揃ってしまったな」
「こいつらから奪えば、ほとんど揃うとは思っていたのよ」
「私たちがグレートアイランド、クリア第一号パーティーだし」
「思ったよりも簡単だったわねぇ~」
「もうゲームは終わりなの‥‥。ちょっと寂しいの‥‥」
確かにゲームとしてはあっけない終わり方だったな。
だけれど、一応の目的は全て達成できた訳だし。
もうこの世界にいる必要はないだろう。
何処からともなく、俺たちパーティーに声が届けられた。
「カードのコンプリートおめでとうございます。後はそのカードを持って、最初の町に来てください。ゲーム運営者がそちらでお待ちしております」
ゲームのクリアは、どうやらカードを最初の町まで持ち帰る事で達成されるようだな。
「あのー‥‥。僕は警察からの任務を受けて、手配犯を捕まえる為にやってきたんだけど。捕まえたこいつらを連れ帰るのに運営には協力してもらいたいのよね」
「了解致しました。既に捕まえてあるというなら、現実世界の然るべき所に引き渡しさせていただきます」
プレイヤーは現実世界に戻ったら、ゲームを始めた場所へと飛ばされる。
そしたら逃げられてしまうからね。
ゲーム世界とは関係が無い事とはいえ、現実世界の法を守る義務は運営にはあるか。
という訳で俺たちは、捕らえた百人ほどの罪人を連れて、最初の町へと戻るのだった。

その後は特に何事もなく、町に戻れば既に警察の人たちが手配犯の身柄を引き受ける為に集まってきていた。
その人たちにアグネスくんたちを引き渡し、そしてゲームのクリア手続きに入る。
「ゲームクリアの報酬は、どれでも一枚好きなカードという事になります。当然この世界にいるのと同様に使用は可能です。好きなカードをお選びください。ただし持っている枚数以上は選べません」
言われていた通りの報酬だな。
ナンバーの小さいカードは大体が一枚だから、同じカードは選べない。
「それとグレートアイランドクリアの証明カードがプレゼントされます。これは一つ星デンジャー証としての機能を備えており、プロデンジャーの証明にもなります」
「おお!凄いし!」
なるほどね。
このグレートアイランドは、別のデンジャー試験みたいなものになっていたのか。
「それではカードをお選びください」
さてどれを選ぼうか。
正直どれも俺にとっては魅力がない。
だったら‥‥。
「私はこれにするの‥‥」
狛里が選んだのは、ナンバー十五のアイテムカード『食事の夢』だった。
アイテムの形は指輪で、これを付けて『食事の夢』と唱えると、一日一回何かしらの食事を提供してくれる。
おそらくグレートアイランドが存在し続ける限り、ずっとその効果は続くだろう。
狛里らしいチョイスだな。
「じゃあ私はこれにしようかしらぁ~」
天冉が選んだのはナンバー三のアイテムカード、『盗賊の財宝』ね。
分かりやすくていいだろう。
正直この世界でも生活で金に困る事はなくなっている。
でもあって困るものでも無いしね。
「それじゃ私はこれにするし」
恵美が選んだのはナンバー壱の魔法カード、『ドラゴンカード』だ。
他のあらゆるカードに変える事ができる訳で、いざって時に必要に応じて使えるのは便利と言える。
但し元の世界で同じように使えるのかどうかは分からない。
何かしら効果はあるのだろうけれどね。
尤も他のカードには魅力を感じなかったからコレにしたのだろう。
恵美はそもそも金持ちだし、かずみの魔法があるから大抵の事はできてしまう。
ならば未知の可能性もあって『一番』のカードを選ぶのは必然か。
「僕は最後で良いわよ。策也どうぞ」
アーニャンが先に選ぶように言ってきた。
とは言え特に欲しいカードもないんだよな。
ならば‥‥。
俺はトビウサギのカードを手に取った。
元の世界に戻るカード。
これを元の世界で発動したらどうなるんだろうね。
迂闊に試せないけれど、もしかしたら‥‥。
「じゃあ僕はこれにするわ」
アーニャンはナンバー五の『通行証』を手に取った。
全く意味が無いように見えるカードだ。
だけれどデンジャーの作ったゲームのクリア報酬。
元の世界でも何かに使える可能性は感じられた。
「かしこまりました。それでは貴方がたのクリアを確定し、一度現実世界へと戻っていただきます。そうすると同じゲームソフトでこの世界に帰ってくる事はできません。再びこのグレートアイランドの世界へお越しになる際は、新しいゲームソフトをご用意ください」
まあもう二度と来るつもりはないけれどね。
「それじゃあな、アーニャン」
「うん、ありがとう。お陰で楽にアグネスくんを捕らえる事ができたよ。僕一人だったら難しかったわ」
「それじゃぁ~、現実世界でねぇ~」
「バイバイなの‥‥」
「楽しかったし!策也、連れてきてくれてありがとうだし!」
「では皆様、また何処かで‥‥」
運営者の声を最後に、俺たちは元の世界へと戻るのだった。
【<┃】 【┃┃】 【┃Ξ】
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