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エルドラールへ

これは、神となった此花策也が、神の仕事に奔走する物語である。

ウインバリアでの仕事を終え、アルカディアに戻ってきてから、既に一年近くの時が流れていた。
それはつまり、みゆきが天界に行ってもう会えなくなってから、それだけの月日が経過したって事だ。
流石の俺でも、『ずっとみゆきの事を考えている』なんて時期は終わっていた。
「今日は何処に行くんだ?何かワクワクするような新しい事はないのか?」
キラキラした目でそう言うのは、俺の叔母である上杉賢神である。
みゆきがいなくなって傷心している俺に対してだって、なんの遠慮も気遣いもしないでこうやって話しかけてくるヤツ。
まあそれでこそ賢神って気もするけれど、少しくらいは遠慮してほしいと思った事もあったよな。
ただ今は、それが少しうれしくも感じてくる訳で。
「思い出したんだけどさ、暗黒界の深淵の闇の中って、まだ入った事がなかったよな。だから今日はそれを調べてみようと思うんだ」
俺がそう言うと、俺の中にいる妖凛が少し震えていた。
妖凛というのは、今は俺と一緒になっている邪神ニョグタの魂を持つ可愛いアメーバ人間だ。
同じく冥凛って子も俺と同化していて、二人は俺の中にいる別意識って感じだね。
尤も分裂して単独行動も可能なので、別人が俺の中にいるって理解で良いと思う。
それで初めて暗黒界に行った時、妖凛が危険だというから入るのをやめた深淵の闇。
でも今なら一寸神もあるし、調べる事はできると思う。
妖凛曰く、どうやらその時の闇は地獄に繋がっていたらしい。
そこに行けば帰ってくる事もできない、皆が知る地獄のような場所だ。
でもなんだろうか。
今の俺ならなんとなく、その闇に入っても地獄には通じていない気がするんだよな。
そう思うのだから、きっと大丈夫だろう。
俺には未来を感じられる能力があるからね。
「あたしはあまり行きたくないのだ。凄く嫌な予感しかしないのだ」
「七魅、大丈夫だって。俺には全く嫌な予感はない。それに何かあっても俺が助けてやるから」
七魅は少し臆病だけれど、これでもドラゴンの王であるリンドヴルムなのだ。
当然メチャメチャ強い。
ウインバリアに行った時に仲間になった『奇乃子』と似ていて、共通点が割とあるように思う。
世界ってのは創造神が作る訳だけれど、『全てを決める』なんて事は流石に不可能だ。
そこで自動的に決められるものも多く、それが割と似たものになる傾向がある。
だからもしかしたら奇乃子は、七魅と同じような製作過程で生まれた住人なのではないかと思ったりもしたものだ。
別世界の住人だから、それを調べる術は今はないんだけれどね。
「分かったのだ。策也がいると安心なのだ」
それにしてもこいつ、本当に俺の事を信頼しすぎだよな。
どうしてここまで人を信頼できるのだろうか。
まあ俺、神だけどさ。
「なら早く行こうぞ!私は早く戦いたいのじゃ!」
相変わらずの戦闘バカだな。
こう言うだけあって、当然賢神も強い。
純粋な人間だった頃は、人類最強と云われていた。
そしてアスモデウスを喰らった今は、その頃よりも更に強くなっている。
七魅と共に、この世界『アルカディア』では、十本の指に入る戦士と言えるだろう。
「へいへい。じゃあ行くぞ」
俺は転移魔法を発動し、二人を連れてすぐに暗黒界へと移動した。
暗黒界へは転移魔法ですぐに来られるし、帰りも今では自力で帰る事ができるようになっている。
ウインバリアにあったセーブポイントの仕組みを応用し、アルカディアと別世界でなければどこでも瞬時に移動する事が可能になっていた。
セーブポイントを作っておく必要はあるけれどね。
つまり自宅にセーブポイントを作っておけば、異世界でない限りはすぐに家に帰れるって訳だ。
「ではここからが本番だ。危険が無いと決まった訳じゃないから、離れておいてくれ。確認前に入ったりはするなよ?」
「ハハハハ!分かっておるわ。私は入ったりしないぞ?ワクワク」
いや賢神。
今にも飛び込みそうに思うのは俺だけじゃないだろ。
恐ろしいヤツだな。
これで今まで生きて来られたのだから、それはそれで不思議だ。
尤も、今は不老不死だから、死のうと思ってもそう簡単には死ねないんだけれどね。
俺は二人が離れているのを確認してから、深淵の闇を目の前に作った。
「ふむ‥‥」
「どうなんだ?飛び込んでも大丈夫か?」
「焦らないでくれよ」
あの時と違って、やはり嫌な感じはしないな。
俺の中の妖凛も、そして冥凛も問題が無いと言っている。
むしろ何処か懐かしさを感じているようだ。
これならおそらく大丈夫だろう。
俺は一応、|灰闇《かいあん》の一寸神を召喚して先に闇の中へと入れた。
一寸神の目や意識は、常に俺と共有が可能だ。
俺は中の様子を窺った。
ここは‥‥、バグ世界?
見覚えがある世界だった。
真っ暗だけれど見通せて、入った瞬間に天地が逆転する場所。
面白いな。
イスカンデルから帰った後も、闇の家へは行けるようになったままだった。
アルカディアからでも、ウインバリアのここにまた来られるのだとしたら、異世界から行く深淵の闇の中は、もしかしたら何処にも属さない、或いは中間地点って事になるのかもしれない。
そしてその場所は、この能力があればやり方次第では行く事ができる。
なんの証明もできないけれど、俺は何故かそう断言できるのではと思えた。
灰闇の一寸神である俺は、バグ世界に深淵の闇を作りだし、その中へと飛び込んだ。
すると予想通り、暗黒界の元の場所へと戻ってきた。
「ははは、コレは面白い」
「どうなんだ?飛び込んで大丈夫なのか?」
「あたしは怖いのだ。飛び込みたくないのだ」
バグ世界に行けるって事は、もしかしたらいつかまた、奇乃子たちに会えるかもしれない。
黒川もバグ世界を見ているし、転生者ならバグ世界に行く方法をいつか見つけるだろう。
安全が確認できた俺は、賢神に許可を出した。
「入っても大丈夫だよ。中はウインバリアのバグ世界と繋がっているみたいだ。何も問題はない」
「おおっ!そうか!」
「へぇ~、バグ世界と繋がっているのねぇ~」
「策也ちゃん‥‥、私達を置いていくなんてひどいの‥‥」
「別に置いて行った訳じゃないよ。今日は賢神たちと遊んでいただけで」
いつの間にか、という表現は少し違うけれど、どうやら天冉と狛里は俺の視界を勝手にリンクして、面白そうだと思ったからか瞬間移動してきたようだ。
天冉と狛里は俺の女手であり、おそらく次の仕事でも一緒に異世界へ行く事になる。
だからお互いがいる場所へは、お互いをセーブポイントとする事で、自在に行けるようにしてあった。
「君たちも来たのか!だったら共に行こうではないか!ハハハハハ!」
特に何が面白い訳でもないのによく笑うよ。
お笑いキャラが定着してしまったからな。
「分かったの‥‥」
「それじゃぁ~お先にぃ~」
そう言って天冉が闇へと飛び込み、賢神と狛里が後へと続いた。
「あたしはなんだか怖いのだ。やっぱり嫌な予感がするのだ」
ただ一人、七魅はまだ怖がっていた。
しゃーねーなぁ。
「手を出せ。手を繋いで一緒に入ってやるよ」
「な、なんだかそれは照れくさいのだ。でもお願いするのだ」
七魅は中学生女子かと思うほど照れていた。
小さかった頃は、多分こんなんじゃなかったのにな。
成長してから少し変わってきたか。
でもこんな風にされると、俺も少し照れてしまうぜ。
そんな訳で二人して、付き合い始めたばかりのカップルのように手を繋ぎ、闇の穴へと飛び込むのだった。

飛び込んだ先、すぐに天地が入れ替わる。
俺はすぐに体を反転させて、バグ世界に降り立った。
確かにバグ世界なんだよな。
ふと横を見ると、頭を下にして立っている七魅がいた。
「ひどいのだ。あたしもちゃんと回転させてほしいのだ」
「いやこれくらい、お前なら楽勝だろう?」
「目をつぶっていたから気づかなかったのだ」
全く。
神と呼ばれるほどのドラゴンが、この程度の場所に恐れるとか‥‥。
「ん?どうした七魅?」
俺は少し七魅の異変に気がついた。
なんというか、少し存在が希薄になっているような。
「やっぱりこの世界はヤバいのだ。あたしにはきついのだ」
どうなっている?
賢神には何も起こっていない。
当然狛里や天冉も問題はなかった。
しかし七魅だけが世界の影響を受けているようだった。
一体どうなっている?
俺は少し奇乃子の気配を感じた。
「奇乃子‥‥」
「これわぁ~、ドッペルゲンガー現象じゃないかしらぁ~?この世界にわぁ~、奇乃子ちんがいるわけだしぃ~」
ドッペルゲンガー現象か。
自分とそっくりな人と出会うと死ぬっていうアレだ。
同じ世界に三人はいると云われているけれど、実際にはそっくりな人に他ならない。
だから当然死んだりはしないのだ。
だけれど、世界は同じように作られるのだから、同じように作られた人ってのもおそらくいるだろう。
もしかしたら本当に、七魅と奇乃子は異世界の同一人物なのかもしれない。
色々と違う所も多いけれど、異世界間の事は俺にもよく分からんしな。
或いは全く関係がないかもしれないけれど、とりあえずは危険と判断し、俺はすぐに奇乃子を元の場所へと落とした。
「世界にはまだまだ分からない事が多いな」
「ハハハ!だから面白いんじゃないか!」
まあ賢神の言う通りではあるけれど、|危険《デンジャー》な事はなるべく避けたいよね。
危険と言えば狛里の魔力もますますヤバいことになっている。
イスカンデルの理が調整され、アルカディアに似たものになった。
だから狛里に魔力が集中するバグも解消されるものと思っていたのに、一向に変わらないんだよね。
むしろ前よりも加速している感じもする。
ここまで来てしまえばもうどうって事もないかもしれないけれど、強くなりすぎるのは不安もあるよな。
それに狛里自身が、これ以上強くなる事を望んでいない。
この辺り、そろそろなんとかしなければならない時期に来ているのかもな。
俺はなんとなくそう思った。

結局俺は、バグ世界にセーブポイントを設置して帰ってきた。
これでいつでもあそこには行ける。
おそらくだけれど、異世界に行っている時でもそれは可能だろう。
ならばアルカディアの誰かがあそこに行けるようになれば、異世界に出張している時でも会う事ができるようになる。
闇の家は入れるメンバーが決まっていてそれができなかったからね。
その辺り歯がゆかったけれど、このバグ世界なら上手く使えそうな気がした。
ちなみにセーブポイントを使って瞬間移動できるのは、俺以外だと狛里と天冉ね。
ウインバリアの理の中で、実際にセーブポイントへの瞬間移動魔法を使っていたからさ。
アルカディアでそれを使えるようになるには、並の努力では難しいのだろうな。
さて家に戻ると、リビングでみたまが待ち構えていた。
みたまは俺の転生前の娘の魂を持つ、この世界では一応七歳の養女という事になるのだろうか。
精神年齢は既に四十歳を超えているんだけれどね。
何にしても俺の大切な娘だ。
「お父さん。仕事みたいだよ」
「まだ一年も経ってないのに仕事か。思ったよりも早かったな。いや、ウインバリアでの仕事は半年くらいだったから、むしろ遅いくらいか」
神である俺にとって仕事というのは、異世界に行って悪い神様をやっつける事。
ただしやっつけるのは俺ではなくて、その世界の男性住人だ。
神を倒せば神になる訳で、神は神を倒す事ができない。
だから次期神のサポートを|主《おも》にやる訳。
「お父さんがこの世界にいる時間よりも、百年以上多く空けたらこの世界は滅んじゃうからね」
まあそういう事か。
半年出張したら半年以上はここにいる。
一年異世界に行けば、一年以上は休めるって訳だ。
結局やっている事にあまり変わりはないのだけれどさ。
「で、今回はどんな仕事なんだ?」
みたまは一応天界に行くべき神だ。
だけれど創造した世界がまだ本当の意味で完成していないから、この世界で生きている。
尤も、この世界で死んでいたら、それでも天界に行けていた可能性はあるのだけれど。
或いは一旦自分の創造した世界に行く事になったかもしれない。
神が天界に行く条件ってのは、色々とあるみたいだし。
そんな訳で天界から俺へのお達しは、どうやらみたまに行くみたいなのだ。
「今回もアマテラスちゃんなのか?」
俺はそこまで言ってから気がついた。
そうだよ。
アマテラスちゃんはみゆきの創造した神、或いは神役だったに過ぎない。
そして今は、もうみゆきと一緒になって天界に行っているのだ。
案内役はもうやっていないんだよな。
「私に来た連絡はおじいさんっぽい神様だったよ。とにかく|雲上界《うんじょうかい》に来てくれってさ」
雲上界ねぇ。
文字の通り、雲の上の世界。
「今度はどんな世界なんだろうなぁ。みたま、また家を長く空ける事になるけどよろしくな」
「えっ?あ、うん‥‥」
あれ?いつものように返してこないな。
いつものみたまなら、『私がいる事に感謝してよね!』とか、『メイドがやってくれるでしょ』とか、そんな憎まれ口を叩くんだけどなぁ。
まあいっか。
「じゃあ行ってくる」
「行ってらっしゃい」
俺は瞬間移動魔法で家の上空に出ると、一気に空へと上がった。
雲上界は決まった場所にある訳じゃない。
だから瞬間移動もできない。
必要な時に何処かに出現する、そういう場所だった。
それでも必要ならすぐに見つかる。
俺は雲の上に降り立った。
さて、誰もいないみたいだけど‥‥。
いや、一人気配を感じる。
アレ?なんだこの気配。
俺は知っているぞ。
「策也ー!」
「えっ?おっ?みゆき!」
どうしてみゆきがここにいるのか分からない。
だけれど、そんな事はどうでも良かった。
ちなみにみゆきは天界に住む俺の妻だ。
どうして天界に妻がいるのかとか、そういうのは過去の俺物語を見てくれ。
説明すると長くなるから。
俺たちは、次の瞬間には抱き合っていた。
「会いたかったよー」
「俺もだ‥‥」
あー、みゆきだ。
なんか足りないみゆきが充電されてゆく。
このまま明日までこうしていたいわ。
いやもう死んでもいいか。
そしたら天国に行けるかな。
日頃の行いは決して良いとは言えないし、もしかしたら行けないかもしれない。
だったら死ぬのはちょっと‥‥。
それにしても癒やされる。
ああこのまま‥‥。
俺たちは眠るように抱き合ったまま微動だにしなかった。

どれくらい時間が経っただろうか。
俺は結局眠っていたようだ。
意識が戻ってきた。
見るとみゆきは、今もグースカ寝ていた。
俺も寝ていたみたいだけどさ、流石に寝てて良い訳ないよな。
冷静に考えると、今までアマテラスちゃんがやっていた案内役を、みゆきが引き継いだという事だろう。
「おいみゆき、起きろ!」
「ん~‥‥。六華ちゃん、ゴキブリだけはペットにしないでね‥‥」
こりゃとんでもない夢を見ているな。
或いは俺が出張している間に、そんな事があったのだろうか。
六華ならあり得る。
ちなみに六華はうちの長女ね。
「みゆき!帰ってこい!俺に新しい仕事を伝えにきたんだろ?」
「ん~‥‥。あっ!策也だぁー。うん、新しい仕事だよー‥‥。今度はエルドラールへ行ってねぇー‥‥」
「エルドラールね。分かった。それで色々説明があるんだろ?」
それだけじゃよく分からんからな。
ちゃんと説明してもらわないと。
「あっ、もう時間ないやぁー‥‥」
‥‥。
「おい!ちゃんと説明してくれ!」
やることは大体決まっている。
悪い神を倒すのをサポートするのだ。
だけれど、どうして討たねばならないのかとか、いつ頃とか、どんな世界なのかとか、気をつける事とか。
できれば知っておきたい事は山程ある訳で。
「おーい!」
俺がみゆきの肩を掴んで揺らすと、ようやくみゆきは覚醒してきた。
「あー‥‥。よく寝た!」
「よく寝た!じゃねーよ!仕事の話をしにきたんじゃないのか?」
「あっ!そうだった!テヘペロ!」
‥‥。
可愛いから許す。
「それで仕事なんだよな」
「そうなんだけど、もう時間ないや」
「おいっ!」
「説明の為にかなり長い時間もらっておいたんだけど、もう帰る時間になっちゃったよ」
「延長だ、延長!」
「それ無理なんだよ。あと二十秒しかないよー!」
おいおい、俺はなんの為にここに来たんだよ。
‥‥。
みゆきとイチャイチャする為か。
ならいいか。
「詳しいことはみたまちゃんに聞いて。彼女が一番よく知ってるから」
なんだそれ?
みたまが知ってるって。
「出発は‥‥一時間後。女手は狛里ちゃんと天冉ちゃんで話が通ってるから。じゃあ、またいつか。次の仕事の時に‥‥」
「おいっ!ちょっと待てって!」
俺がそう言い切る前に、みゆきの姿は消えていた。
そして雲上界は、ただの雲の上になっていた。
当然足場は失くなる訳で、自然落下が始まる。
みゆきと会えて良かった。
俺はただみゆきを思い出しながら、体を自由落下に任せて落ちていった。

地上に落ちた俺は、すぐに家に戻った。
出発は一時間後だからな。
ボヤボヤしている時間はない。
「みたまー!話を聞かせてくれ!」
「やっと帰ってきたよこの人」
「予定通りの時間だろ?」
「私が聞いていた時間よりも二時間遅いけど?」
おいおい。
みゆき大丈夫か?
つか上司の神様が気を利かせてくれたのだろうか。
「そっか悪い。でも出発までもう一時間もないんだ。今度の仕事の説明を頼む。みたまに聞いてくれって言われた」
「そうね。今回の仕事は、私の作った世界だから‥‥」
「そうか。みたまの‥‥。そうなのか」
みたまの世界か。
そこに俺が行くって事は、またおそらくそういう事なんだろうな。
この仕事で決まるのか。
もしかしたらまだ先になるのかは分からないけれど、おそらくこれはみたまが天界に行く為に必要な事。
寂しくなるな。
だけど一番寂しいのはみゆきだ。
ならばできる限り早く、みたまを天界にって考えもある。
でもそれはみたまが望む事なのだろうか。
「みたまは‥‥」
「あー‥‥。お父さんは仕事をちゃんとすればいいんだよ。そしたらいつかまた、天界でみんな集まれるんだから」
その通りだ。
それに仕事はちゃんとやらないとな。
「だったら早く説明だ」
「それなんだけどさ、私も一緒に行くから」
「えっ?いやいや無理だろ?さっきみゆきが言ってたけど、狛里と天冉が行く事に決まってるみたいだぞ」
だいたい一応みたまは神なのだ。
本物の神を女手にはできんだろ?
まだ完全体ではないとはいえ、みたまは俺よりも上位の神のはずだ。
「お父さん忘れてない?天冉ちゃんは?」
「天冉?」
ああそういう事か。
天冉はそもそもみたまの依代だ。
つまりみたまは天冉に憑依してエルドラールへ行くって事か。
「分かったみたいね」
「うむ。でも天冉には今、百万診が憑依してるんじゃね?」
「何言ってるの?香さんは天界に行ったんだよね?」
なるほど。
香が天界に行ったって事は、香が作り出した神役も香と一緒になっているって事か。
「それじゃあ、話は全てあとで天冉ちゃんにするとして、お父さん達は準備を急いで。やることあるんでしょ?」
「お、おう!あと五十分もねぇぞ!」
「早く早く!零時までに庭に集まってくれればいいから」
「分かった!」
つか急すぎるよな。
ちょっとみゆきに癒やされ過ぎたせいだけど。
『狛里、天冉。今すぐバグ世界に来てくれ』
『もう寝てたの‥‥』
『一体なんなのぉ~?』
そりゃもうお子様は寝ている時間だからな。
『仕事だ。異世界に行く事が決まった。準備にもう一時間もない。早くしてくれ』
『分かったの‥‥』
『そう。それなら仕方がないわねぇ~。すぐに行くわぁ~』
『頼む』
俺はそうテレパスで伝えた後、すぐにバグ世界へと瞬間移動した。
さてこれからやることは、ここに家を建てる。
そして異世界に持ち込みたい物を置いておくのだ。
前回行ったウインバリアでは、闇の家に行く事ができて助かった。
しかし今度も行けるかどうかは分からない。
おそらく行けるとは思うけれど、保険はかけておくべきだ。
もちろんこのバグ世界も行けるかどうかは分からないんだけどね。
最悪どちらかに行ければって事で準備はしておく。
俺はセーブポイントを包むように家を建て始めた。
するとすぐに狛里と天冉もやってくる。
「家を建ててアイテムを置いておくのねぇ~」
「その通りだ」
「特に持っていくものはないの‥‥」
狛里の場合は、適当に異世界でぶん殴るだけだもんな。
俺は一応仕事だから、向こうの世界に無いかもしれないものは持って行っておきたい。
魔石、宝石、ミスリル、アダマンタイト、オリハルコン。
|金《きん》もすぐに金にできる可能性があるし、テリトリー用の宝石も持っていきたい。
なんでもできちゃう謎のバットは闇の家に置いてあるから‥‥。
そうだ。
あいつらにも挨拶しておかないとな。
もしも闇の家に行けなかったら、百年会えない可能性だってある。
寂しがるだろう。
ちなみにあいつらってのは、少女隊と呼んでいる『二人で一人』のイスカンデルの神だ。
俺の半身、或いは分身的な存在で、今は俺の世界である闇の家のメイドをしてくれている。
ちゃんと話すと長くなるので、詳しくは今までの俺物語を見てくれ。
「天冉、ここの事は任せた。俺は闇の家に行ってくる」
「そうねぇ~。何も言わずにもう会えないとなったらぁ~、あの子たち何するか分からないわよねぇ~」
アレでも一応神だから、滅多なことはしないと思いたいけれど‥‥。
「そういう事だ」
俺は闇の家に通じる闇の穴を作り、そこに飛び込んだ。
直ぐに闇の家に移動する。
気配は無いな。
あいつら、こういう時に限っていないのか?
俺はリビングへと移動した。
するとすぐにあいつらの魔力が感じられる。
来たか。
つか、俺が来たのが分かったのだろうか。
「やっぱりご主人タマが来たのです」
「妃子はちゃんと感じたのね」
おいおい凄いな。
本来神は、その世界にいるのが仕事である。
そこにいるだけで一応世界は守られるからだ。
しかしいない時間の方が百年を上回ると世界は滅びる。
だから仕事の時以外は基本的には世界を離れない。
この闇の家は、そもそもイスカンデルの深淵の闇の中だ。
だから基本的にはイスカンデルに属するはずなのだけれど、どうやらこの闇の家は中間的場所になる可能性もあるんだよね。
つまり少女隊は、できれば一日十二時間以上は、ここにはいないほうが良いって事になる。
だけれど何時来ても少女隊はここにいる。
だから一度聞いてみた事があった。
『いつもここにいるみたいだけど、イスカンデルは大丈夫なのか?』
『大丈夫なのです。ずっといるわけじゃないのです』
『そうなのね。ご主人タマがくるのはなんとなく分かるのね。その時だけ来てるのね』
『それって。マジならおまえらすげぇな』
少女隊は北都尚成であり、ある意味俺と同一だからか。
こいつらは何故か俺の事がなんでも分かるんだよな。
それにテレパスは進化を遂げ、実は異世界間でもできそうな所まで来ている。
いや既にできていると言っていい。
魔力を限界までお互い高めれば、一応可能だから。
ただまだ実用的ではないってだけだ。
「それで今日はおまえたちに話があって来た。また仕事に行く事になった」
「そうなのね。でもどうせ会えるのはここだけだから関係ないのね」
「まあそうなんだけど、ここに来られるかどうかもまだ分からないからな。前回は来られたけど、次もそうとは限らない」
「それは困るのです。そんな事になったら菜乃たちは寂しくて死んじゃうのです!」
死んじゃうのか?
それはまずいな。
つかこいつらうさぎかよ。
「死なれても困るんだけど、仕事だからどうしようもないんだよな」
仕事なんてしなければ良いだけなんだけれど、そうすると天界には行けないし、今回の仕事はみたまの為でもある。
やっぱやらない訳にもいかないんだよ。
「そういえばご主人タマは、保険にバグ世界にも家を建てているのです」
「お、おう。よく知ってるな」
「ご主人タマの事はなんでも分かるのね」
いや、ちょっと分かりすぎだろ。
まあ何も問題はないんだけどさ。
「妃子たちもその世界に行けるようにしておけば、会えなくなる可能性を減らせるのね」
「確かにそうだな」
「つまり、今から合体して能力をコピーするのです!」
「久しぶりの合体なのね!はぁ、はぁ、はぁ‥‥」
こいつ、息が荒いぞ。
なんか怖いんだけど。
とは言えこれは試してみる価値があるな。
こいつらに能力をコピーして、イスカンデルからバグ世界に行けるようなら、おそらく外の世界からでも移動できる可能性があるって事。
「分かった。合体だ!」
「きゃっほーい!ご主人タマと合体なのです!」
「それでは服を脱ぐのね!」
「いや、服は脱がなくても大丈夫だぞ!」
俺の言う事は聞かず、二人は服を脱いで飛びかかってきた。
全くしょうがないヤツらだ。
俺は二人を抱きとめ、そして合体した。
|恙無《つつがな》く能力はコピーされ、再び俺たちは分裂して元に戻った。
「よし、上手くいったな」
「もう終わりなのね」
「もっと合体していたかったのです」
「悪いが時間がないんだ。一度イスカンデルに戻って、能力が使えるか試してみてくれ」
「分かったのね」
「直ぐに行くのです」
二人は裸のまま戻ろうとしていた。
「服は着ろよ!」
「大丈夫なのね」
「部屋から来たから誰にも見られないのです」
いや、バグ世界には狛里と天冉がいるんだぞ?
女の子だから大丈夫か。
俺は少女隊を見送ってから、直ぐにバグ世界へと戻った。
すると間もなく少女隊もやってくる。
残念ながら服は着ていた。
おっと、残念なのは俺じゃないぞ。
おまえらだからな。
「これたのです!」
「当然なのね。妃子にできない事はないのね」
「良かった。ならここの管理もお前たちに任せるからな」
「本当なのね!」
「ご主人タマに頼られてしまったのです」
本当にこいつら、可愛いヤツらだ。
昔のように、絶対に面倒な事はやらないこいつらも可愛かったけどさ。
「家は完成してるの‥‥」
「必要そうな物も全部入れておいたわよぉ~」
「よし!後は最終チェックをして戻るぞ」
このあと俺は、俺の異次元収納にしまってある物を、バグ世界の家と闇の家に分けて置いていった。
これで俺の出張準備は終わった。
さていよいよ出発だ。

俺は狛里と天冉を引き連れ、庭へと戻った。
するとそこには魔法陣が描かれており、それを取り囲むように人が集まっていた。
「おまえら‥‥」
「見送りに来たわよ。私に会えなくて寂しくなるでしょ?」
「子供たちの事は任せるんだよ。金魚が責任を持って預かるんだよ」
「ハハハ!この賢神も一緒に行きたかったぞ!」
「あたしも行きたいのだ。でもあたしは行けないのだ」
リン、金魚、賢神、七魅。
他にも俺のメイド|人形《ゴーレム》たちみんなが声を掛けてくれた。
毎回出発の時はやはり少し寂しいよ。
でもここにいるほとんどは、仕事が終わればまた会えるメンバーだ。
不老不死な奴らばかりだからね。
「時間がないわよぉ~」
天冉に促され、俺たち三人は魔法陣の中に入った。
「じゃあ行ってくる!」
今回はどうやら魔法陣を使った転移のようだ。
イスカンデルへは、狛里の召喚によって呼び寄せられた。
ウインバリアへは魂の転移と転生という形で移動した。
今回は一番楽そうだな。
「行ってらっしゃい!」
みんなの声が聞こえた直後、俺たちはエルドラールへと旅立った。
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