★ 

インデックス

 ★
★ 

ネット小説

 ★

適当に書いた小説をアップしていきます♪

 RSS XML
ネトマガ
  • 玄関口
  • 占い診断
  • 萌え辞典
  • オタク遊戯
  • 情報基地
  • 随筆&詩
  • タイトル
  • 川柳ノ歌
--サイト運営者より告知--
2022年2月16日【水】14時07分52秒
syuka.com】では
サイト管理にcookieを使用しています。
2022年1月16日【日】18時18分34秒
【告知】10年くらい前に書いたリア充RPGをこちらにもアップしましたw
2021年12月27日【月】08時34分33秒
【告知】こちらに座右の銘とネタ座右の銘を移動してきました。
2020年5月14日【木】16時24分38秒
【告知】サイト運営継続の為、xcoinによる投げ銭をお願いします。
2017年2月25日【土】11時13分21秒
【(゚∀゚)】フリー写真館を狛犬画像室にリニューアルしました♪
2013年11月4日【月】19時44分48秒
【(*´∇`*)】川柳と短歌を始めました。
2013年11月4日【月】19時43分21秒
【(*´ω`*)】現在エッセイ&詩以外の更新は休止しています。
2013年1月7日【月】18時48分51秒
【(*´∇`*)】サイトをリニューアルしました。他も徐々に変更中です‥‥
--サイト運営者お勧めリンク--
【Amazon】日本人が知らない近現代史の虚妄 江崎道朗
【Amazon】ウルトラマンの伝言 日本人の守るべき神話 倉山満
【Amazon】嘘だらけの池田勇人 倉山満
【Amazon】無駄(規制)をやめたらいいことだらけ 令和の大減税と規制緩和 渡瀬裕哉
【Amazon】日本分断計画 中国共産党の仕掛ける保守分裂と選挙介入 上念司
【Amazon】緒方竹虎と日本のインテリジェンス 江崎道朗
【Amazon】救国のアーカイブ 公文書管理が日本を救う 倉山満
【Amazon】誰もが知りたいQアノンの正体 みんな大好き陰謀論 内藤陽介
【Amazon】米国共産党調書 外務省アメリカ局第一課作成 江崎道朗
【Amazon】教科書では絶対教えない 偉人たちの日本史 倉山満
【Amazon】世界はいつでも不安定 - 国際ニュースの正しい読み方 - 内藤陽介
【Amazon】史上最強の平民宰相 原敬という怪物の正体 倉山満
【Amazon】新装版 お役所仕事の大東亜戦争 (いまだに自立できない日本の病巣) 倉山満
【Amazon】ウッドロー・ウィルソン 全世界を不幸にした大悪魔 倉山満
【Amazon】税金下げろ、規制をなくせ 日本経済復活の処方箋 渡瀬裕哉
【Amazon】米中ソに翻弄されたアジア史 宮脇淳子 江崎道朗 福島香織
【Amazon】日本人に忘れられた ガダルカナル島の近現代史 内藤陽介
【Amazon】2020年大統領選挙後の世界と日本 “トランプ or バイデン" アメリカの選択 渡瀬裕哉
【Amazon】保守とネトウヨの近現代史 倉山満
【Amazon】中学歴史 令和元年度文部科学省検定不合格教科書 竹田恒泰
【Amazon】天皇の国史 竹田恒泰
【Amazon】ミトロヒン文書 KGB(ソ連)・工作の近現代史 山内 智恵子 江崎道朗
【Amazon】若者に伝えたい英雄たちの世界史 倉山満
【Amazon】経済で読み解く日本史6平成編 上念司
【Amazon】みんな大好き陰謀論 内藤陽介
【Amazon】インテリジェンスと保守自由主義 新型コロナに見る日本の動向 江崎道朗
【Amazon】検証 検察庁の近現代史 倉山満
【Amazon】桂太郎-日本政治史上、最高の総理大臣 倉山満
【Amazon】危うい国・日本 百田尚樹 江崎道朗
【Amazon】「新型コロナ恐慌」後の世界 渡邊哲也
【Amazon】日本外務省はソ連の対米工作を知っていた 江崎道朗
【Amazon】トップの教養 ビジネスエリートが使いこなす「武器としての知力」倉山満
【Amazon】天皇がいるから日本は一番幸せな国なのです・倉山満
【Amazon】日韓基本条約 (シリーズ韓国現代史1953-1965) ・内藤陽介
【Amazon】メディアが絶対に知らない2020年の米国と日本 (PHP新書)・渡瀬裕哉
【Amazon】なぜ、成熟した民主主義は分断を生み出すのか ~アメリカから世界に拡散する格差と分断の構図・渡瀬裕哉
【Amazon】天皇家 百五十年の戦い・江崎道朗
【Amazon】ウエストファリア体制・倉山満
【Amazon】アウシュヴィッツの手紙 改訂増補版・内藤陽介
ねずさんの日本の心で読み解く「百人一首」:千年の時を超えて明かされる真実
たった1つの図でわかる!図解経済学入門
大間違いのアメリカ合衆国
政治経済雑記はこちら♪
【Kindle】電子書籍販売★秋華★

アルケミスト、莉句遜

 楽浪城を攻略した日は、皆そこで一夜を明かした。
 そして次の日には、負傷者や魔力の低下が著しい者を残して、遼東城の攻略に向かった。
 領主が既にいなかった事もあり、遼東に到着してすぐ、あっさりとそのミッションはコンプリートできた。
 そこからしばらくは、遼東城をねぐらとして、最前線の軍隊のような生活を強いられていた。
 とは言っても、別に大した不便はない。
 学生百八十人程度で、城一つ占有しているのだから、むしろ生活は快適だった。
 高村産学園長が領主代理をしていて、我々はその側近気分を味わっていた。
 そんなある日、一頭の早馬が遼東にやってきていた。
 会議室には、学園長と各部隊のリーダーが集まっていた。
「という事は、我々にも、兆角討伐に参加せよという事か」
 早馬が洛陽からもたらしたものは、予想通りではあったが、やはり私には衝撃だった。
 学園長もその命令に、使いの者に対して、少し語気を強くして話していた。
 反乱が終結するまで、遼東城でマッタリ青春生活を期待していたのに、短い夢だった。
 私のような劣等生にも、ようやく好意を寄せてくれる女の子がでてきているのに、これでは私の春は、一体いつやってくるのやら。
 結局会議では、三日後遼東を発ち、冀州は|広宗《こうそう》へと向かう事が決定していた。
 私はそれを皆に報告する為、我が部隊が集まっている談話室へと赴いた。
 部屋に入ると、みんなは和気あいあいと話をしていた。
「これ、うちが食べて良い?」
「ちょっとまて、それって食べられるのか?」
「食べられるはずよ。食べたくはないけど」
「じゃあ食べてみてぇw」
「私は負けるのが嫌いだからな。みんなが食べるなら食べるぞ」
 入っていきなり、なんの話をしているのかと思えば、イナゴの佃煮がテーブルの真ん中に置いてあった。
「おっ、凰印、話はなんだった?」
 みんなが恐る恐るイナゴを口に運ぶ中、歌琥は食べずにこちらに話しかけてきた。
「おい、それより歌琥も食え。ああ、凰印も食べてみろ。意外と美味いぞ」
 愁癒は私と目が合うと、口に入れようとしていたイナゴをこちらに差し出してきた。
「ホント。美味しいわねぇ~w」
 兎琴は上品に、少しずつ口に運んでいた。
「イナゴなんかに負けるかぁー!」
 罵蝶はやけになって、次々と口の中に入れていった。
「栄養あるのよ。どうしてみんな食べないのよ」
 香那は、デザートでも食べるかのように、凄く嬉しそうにイナゴを食べていた。
 みんなそれぞれ性格が出るな。
 私は、そんな部隊のメンバーみんなが、なんだか愛おしく、好きなんだなと感じていた。
「私は遠慮しておくよ。で、会議の結果は、きっとみんなの予想通りだと思うぞ」
 私がそう言いながら席に座ると、みんな少し動きを止め、またすぐ今までの行動を再開していた。
 要するに、みんな本当は戦争は好きではないし、戦争に行くのは嫌なんだ。
 私も殺し合うのはゴメンだし、まして今度はわざわざ戦場に向かうのだ。
 まだ学生なのに戦争に参加させられて、嬉しいはずがない。
「よし、腕がなるぜ。槍もパワーアップして返ってきたし、今度は私が兆角の首をとってやる」
 だけど罵蝶の言う通り、どこかで「やってやる」って気持ちがあったり、勝てる作戦を思いついた時には、楽しいとさえ感じてしまうのだ。
 そして敵の大将を打ち取った時は、喜びの感情が溢れてくる。
「此処を発つのはいつに決まったんだ?」
 愁癒は、弱みを極力みせないように気丈に振る舞ってはいるが、自分の強さを、逆に煩わしく思っているように感じる。
 一番最初に会った時に見た、あの寂しそうな顔は、きっとそういう事なのだろう。
 もし自分が弱ければ、きっとこんな所で大量に人を殺すような任務につく事もなかった。
 戦いの中に生きる虚しさを感じていたと、私は思っている。
「三日後だ。他にもいくつかの学園が参加するらしい」
「何故学生が参加させられるんだ?火神様の正規軍はそんなに弱いのか?」
 歌琥はきっと、正直どうでも良いと思っているし、戦えば勝てると思っている。
 まだまだ自分の能力の全てを見せてはいないし、そう思うのは当然だろう。
 でも、仲間を危険にさらしたくないとも考える奴だ。
「少なくとも、歌琥ほど強い人は少ないんじゃないかなぁ~w」
 相変わらず、兎琴は何を考えているかわからないが、強い人か。
 軍の人たちは強いと思っていたけれど、意外に私の考えていたほどではなかった。
 学園と楽浪&遼東軍の戦いでは、正規軍三千五百人に対して、学園生徒五百人で勝ってしまったのだからな。
「うちは行きたくないなぁ~よわっちいし、足手まといだよ・・・」
「え~香那ちゃん強いじゃん~w」
「うん、あれだけの結界を展開できる人、初めて見たよ」
「五人も蘇生したしな。俺が勝てないかもしれないと思ったのは、香那が初めてだよ」
「わ、私は、誰が相手でも負けないがな」
「えー!意味がわからないよ」
 香那はみんなの言葉に、頭が混乱して目を回しているようだった。
 愁癒と歌琥は、ガブリエルが降臨していた香那を、別人格か何かだと思ったようだ。
 要するに、大天使ガブリエルが降臨していたなんて事は、誰も知らないってわけだ。
 どうやら本人にも記憶がないし、何故か私は誰にも喋る気にはなれなかった。
 その後も、私たち六人の会話は続いた。
 話の内容は、いつの間にかどうでも良い話に変わっていた。
 それでもみんなは、夜遅くまで同じ時を過ごした。
 それは何か、別れを惜しむかのように。
 もしかしたらみんな、気が付いていたのかもしれない。
 この六人が集まって、一つの部屋で話す事が、この日が最後である事を。

 次の日、学園長から、部隊再編の発表があった。
 先日の戦いで、生徒数は五百人ほどから、今は百八十人ほどに減っていた。
 戦いの後に、適当に部隊の再編が行われてはいたが、足りなくなった部隊を合わせるだけだったりしたため、能力を考えられたものではなかった。
 更に小規模の部隊では、今後の大規模になるであろう戦闘では、機能しないだろうって事だった。
 当然と言えば当然の再編だけれど、せっかく第十八部隊の人たちとは、本当の仲間になれる気がしていたのだから、私は残念でならなかった。
 救いは、大きく分けた部隊の副隊長が、孫感先輩だった事と、香那と罵蝶が同じグループであった事だった。
 私は、第三部隊、第三十グループリーダーになった。
 第三部隊は、第二十一グループから第三十グループを合わせた部隊だ。
 基本的には守り担当の部隊で、部隊内でグループ番号が一番大きなグループだけは、状況判断により、単独行動が許される事になっていた。
 歌琥と兎琴は、第二部隊の第二十グループで、当然歌琥がリーダーだ。
 愁癒は第一部隊第十グループのリーダー。
 総大将は高村産学園長で、副将は跳雲となっていた。
 どうして第一の学生である跳雲が、ずっと此処に残っているのか不思議だったが、伝え聞く話しによると、先日正式に、転校が認められたらしい。
 わざわざこんな第四にとも思わなくなかったが、第一もこの戦いには参加するし、こちらとしては心強いから、否定する理由は何もなかった。
 再編の発表があった後、まずは第三部隊で集まっていた。
 第三部隊の隊長は、三年生の「放心《ほうしん》」先輩だ。
 多少の武力ももっている、なかなかの魔術師であると聞いている。
「えー・・・俺の部隊では~・・・守りが基本です・・・第一部隊と第二部隊が~・・・攻撃に専念できるよう・・・みなさん努めてください」
 放心先輩の喋りを聞いていると、なんだかすごく頼りなさそうだ。
 だけど、先日の戦いで生きぬいて、尚且つ隊長に任じられる人だ。
 少なくとも守りに関しては、かなりの使い手に違いない。
 魔力も、隣にいる孫感先輩より大きく感じられるので、それなりに期待しておこう。
 まあ期待しすぎても、裏切られた時ショックが大きくなるから、過剰な期待はするつもりはないが。
 部隊全体による顔合わせと、任務の確認、配置の決定等は、約三十分で終了した。
 続いて、各グループに分かれ、談話室で集まっていた。
「私は凰印。この部隊・・・じゃなくてグループのリーダーをする事になりました。みなさんよろしくお願いします」
 今回のグループリーダーは、一部、高村産学園長から直接任じられている。
 私もその中の一人だ。
 先日の戦いで、それなりに活躍したのが評価されたようだ。
 一応二人のボスを、愁癒と、歌琥と、そして私で倒したのだからね。
 本来なら、各部隊の隊長にされても不思議ではないかもしれないが、やはり三年生からみれば、下級生に指揮されるのは受け入れ難いだろう。
 その辺りを考慮して、それぞれがそれぞれに、自由に動ける権限を持たされたグループのリーダーに決められていた。
 だから当然、我がグループの面々は全て一年生で、それなりの使い手が集まっているようだった。
「私は罵蝶。槍を使う武士だ。近接戦闘なら、誰にも負けない武力を持っている。よろしく頼む」
 罵蝶がそう言うと、みんなは大きな拍手を送った。
 流石に罵蝶の無双ぶりは、先日の戦いで、皆が周知するところとなっていた。
 だからみんな喜んでいた。
 だけど、罵蝶が我がグループにいるのは、少し不思議だった。
 何故なら、我々部隊の任務は、他の部隊も含めて、守備担当なのだから。
 基本的には、魔法によるシールドができる者が集められている。
 これは私の勝手な想像ではあるが、一つには、香那の護衛が理由かもしれない。
 これだけの白魔術師はなかなかおらず、ある意味この学園一守らなければならない人物と言えるだろう。
 それ以外にも、我がグループが単独行動をする際、盾役が必要になるかもしれない。
 その辺り、学園長が考えてくれているのかもしれない。
 もしくは、跳雲がそう進言した事も考えられるが。
 まあ理由はどうあれ、私にとっては喜ばしい限りだった。
「うちは香那。白魔術師だよ。時々意識を失っちゃうよ。その時は助けてください」
 香那の自己紹介に、みんな少し笑っていた。
 ウケを狙って言ったわけではないので、どうしてウケているのは分からず、香那は少しオロオロしていた。
 香那は、大天使ガブリエルの事を知らない。
 いや、白魔術を使っているのだから知ってはいるが、自分の体に降臨している間の記憶は無いようだ。
 理由は分からないが、ガブリエルもどうやら、私以外には話していないようだし。
 なんにしても、香那と同じグループであるのは心強い。
 いざとなったら、またガブリエルに手を貸してもらおう。
 さて次は、今まで別の部隊だったが、クラスが同じだった「祭縁《さいえん》」だった。
 政治や歴史の授業に真面目に出る人は少ないが、祭縁は私の知る限り、いつも共に教室にいた女の子だ。
 物腰が柔らかく優雅で可憐、一見するとお姫様のようで、芯の強い人って感じだと思う。
 タイプとしては兎琴に似ているかもしれないが、兎琴程の怖さは感じられない。
「私は、祭縁と申します。水の精霊魔術が得意です」
 教室で見た時は「ちょっと綺麗な子」程度にしか思わなかったが、此処で見る祭縁は、なんだか惹かれるものがあった。
 そうか、制服のせいかもしれない、と私は思った。
 反乱軍との戦いに際して、第四では、私が異世界で見た「学ラン」と「セーラー服」が、制服として採用されていた。
 学ランに関しては、特に思うところはないのだが、セーラー服には、何やら言い表せない魅力を感じていた。
 特に、戦いの時などにチラチラ見える下着からは、視線をそらす事が難しい。
 見ていると、なんとも言えない高揚感に襲われる。
 別に裸を見ているわけではないのに、何故こんな気分になるのだろうか。
 考えてもわからないが、とにかく私は、自分に対してグッジョブと言いたい気分だった。
 ただ、祭縁の着るセーラー服は、白いラインに白いリボンだ。
 今までの第十八部隊の面々は、赤いラインで赤いタイだった。
 白いリボンを見ながら、それがなんとなく、少し寂しく感じられた。
 次に自己紹介したのは、私の知らない人だった。
「流喜《りゅうき》です。僕も水の精霊魔術師です。よろしくです」
 流喜の事は、正直全く知らない。
 だけどやはりと言うか、水の精霊魔術師か。
 見事に守り重視のメンバーが揃えられている。
 となると、最後のこの女の子も、同じような感じだろうか。
 私は最後の一人、到底高等部の学生とは思えない、子供っぽい容姿の女の子に視線を送った。
 それに気づき、立ちあがった女の子は、香那よりも小さかった。
 しかし、そのあふれ出る魔力は、私が知る中でもかなり強力なものだった。
 この魔力の強さからして、もしかして、この子が学年二位の魔力の持ち主か。
「莉句遜《りくそん》だから。アルケミストだから」
 凄い使い手に見えたから、どんな人物かと興味がわいたが、喋り方は期待通り、子供っぽい喋り方だった。
 だから一瞬聞き流しそうになっていたが、私は莉句遜の自己紹介に驚いた。
「えっ!アルケミスト!」
 私と同じように、他のみんなも驚いていた。
 アルケミストとは、ざっくり言えば、二つの事ができる者の事である。
 一つは、アイテムに魔法効果を付与する事。
 マジックアイテムの製造は、鍛冶職人によるアイテムその物の製造と、アルケミストの魔法効果付与によって完成する。
 その両方をできるのが、ブラックスミスだ。
 私なんかは、低レベルのブラックスミスと言えるかもしれない。
 これにもう一つの能力を持った者こそが、アルケミストである。
 いやむしろ、もう一つの能力こそがアルケミストの本分。
 それは、魔宝石を作れるって事だ。
 魔宝石を作れる人物は、もしかしたらこの世に存在しないのではないかと言われている。
 それくらい難しい能力なのだ。
 ちなみに、私の作っている魔力球は、魔宝石とは全く違う。
 魔宝石は、生きた宝石と言われ、人間のように魔力を消費しても回復し、永久に魔力を生みだし続ける宝石の事だ。
 一方私の作った魔力球は、魔力をためてあるだけで使えば無くなるし、少しずつ漏れていくから、数年で魔力は尽きてしまう。
 愁癒が作った魔力球は、それに爆炎の魔法効果が付与されていたから、愁癒もまた、ブラックスミスの能力を持っていると言えるだろう。
 そして今莉句遜は、自分の事をアルケミストと言った。
 それは言ってみれば、私から見れば上位職の使い手という事だった。
 私が尊敬のまなざし、或いは驚きのまなざしで莉句遜を見つめていると、莉句遜は
「冗談だから」
 と、私を見てニヤリと笑った。
 私はその言葉を聞いて、一気に気が抜けた。
 正直テーブルに体を乗り出す勢いだったが、椅子の背に体を預け、肩をおとした。
 みんなも一気に気が抜けたようで、やれやれといった感じだった。
 だけど、莉句遜がニコニコしながら私を見つめていたので、莉句遜がアルケミストだという話が、もしかしたら本当なのかもしれないと、わずかに期待していた。
 自己紹介が終わり、反乱軍討伐時の任務の確認や、配置の決定を伝えた後、みんなは談話室を出ていった。
 私は少しの間、椅子に座って一人残っていた。
 莉句遜がアルケミストだと言った時、私はなんだか嬉しかった。
 でも、だからと言って、私はいったい何を期待していたのだろう。
 尊敬できる使い手と一緒のグループで、嬉しいと思ったのか。
 それとも、魔宝石を作ってもらいたかったのか。
 魔宝石を作れるなら、ドンドン作ってドンドン売れば、容易く大金を簡単に手に入れることができるだろう。
 |錬金術師(アルケミスト)と呼ばれる|所以《ゆえん》だ。
 いや、別に身内でもないのだから、それでは金持ちが近くにいるだけで、私が何か得をするわけではない。
 だったらなんだろうか。
 私は答えが出ないまま、椅子から立ち上がり部屋を出た。
 部屋を出てからすぐ、目の前には莉句遜が立っていた。
「遅いだから!」
 一瞬何を言っているのか分からなかった。
「えっ?何?待っていたの?」
 頭では理解していなかったが、発した言葉は、言っている意味をしっかり理解していた。
「そうだから!だからついてこい!」
 何やらいきなりついてこいとか、正直この子の言動にはついて行けない。
 私は少し唖然としていた。
「ああもう。時間は少ないのだから、ちゃっちゃと歩くのだから!」
 莉句遜はそう言って私の腕をつかみ、引っ張っていこうとしていた。
 でも、こんな小さな子に引っ張られても、大した力はない。
 私はその場につっ立っていた。
 莉句遜は顔を真っ赤にして、必死に前に進もうとしていた。
 その姿を見て、私はなんだか面白く感じ、そして莉句遜が可愛いと思った。
 だけどいつまでも動かないのも可哀相になってきて、私は一歩踏み出そうとした。
 その時だった。
「ああもう!本気だから!」
 莉句遜は一気に魔力を高めた。
 引っ張るパワーが一気に増して、私は莉句遜に引きずられるように動き出した。
「いてっ!待て莉句遜!歩く!歩くから!」
「うおおおお!フリーダムだから!」
 莉句遜は、全く聞いていなかった。
 それに、言っている意味も分からなかった。
 結局私は目的地につくまで、莉句遜に引きずられるように歩みを続けるしかなかった。

 莉句遜につれてこられた場所は、遼東にある鍛冶場だった。
 どうやら誰もいないようで、鍛冶場とは思えない静けさだった。
「誰もいないようだけど?」
 私がそう尋ねると、莉句遜は
「莉句遜が借り切っただから」
 と言って、何やら作業台に並べ始めた。
 遼東の鍛冶場は、楽浪の学園の鍛冶場より、設備は整っていない。
 長年楽浪の流通を仕切り、仲介でお金を稼いでいた町だから、鍛冶場はあまり必要がなかったのだろう。
 最低限の物しか置いていないようだった。
 私がそんな事を考えながら鍛冶場内を見ていると、莉句遜がいきなり振り返った。
 そして言った。
「よし!アレを出すだから!」
 莉句遜は手を私の方に差し出していた。
 一体なんだろうか。
 私はポケットから、さっき香那から貰った飴玉を置いてみた。
「ん~正解?」
 私がそう尋ねると、莉句遜は「むきぃー!」とか言いながら飴玉を口に入れ、ボリボリと噛んで食べていた。
 どうやら飴玉は、間違いだったらしい。
 莉句遜は飴玉を食べ終えると、再び手を差し出してきた。
「魔法反射の盾だから!」
 なるほど。
 どうやら莉句遜の要求は、私の魔法反射の盾のようだ。
 別に見せるのは構わないが、一体どういう事だろうか。
「早くぅ~早くぅ~」
 私が考えている間に、莉句遜はもう待ちきれないといった感じだった。
「仕方ないなぁ~」
 私は、異次元アクセスの魔法を使い、一枚だけ魔法反射の盾を取りだし、莉句遜に渡した。
「魔界か」
 莉句遜は一言そう言って、私から魔法反射の盾を受け取ると、作業台の上に乗せて、しばらく眺めていた。
 莉句遜の発した言葉は、私が魔界とアクセスしている事を指摘した言葉であるが、特に意味もないのだろうと、この時は結論付けた。
 なんて思っていたらいきなり、莉句遜はハンマーを振り上げて、私が止める間もなく振り下ろした。
 魔法反射の盾は一瞬のうちに粉々に砕けた。
「ちょっ!おまっ!」
 流石の私も、怒らずにはいられなかった。
 道具に頼るしかない私にとっては、とても大切なものなのだから。
 だけど怒りを言葉にする前に、莉句遜は再び手を差し出してきた。
「後三枚あるのだろ?全部出すだから」
 莉句遜のその言動に、私は少し冷静さを取り戻していた。
 私の魔法反射の盾を、全て壊すつもりのようで、それにどんな意味があるのだろうかと思ったからだ。
「その前に、壊す事にどんな意味があるんだ?」
 きっと意味があるのだろうから、最悪壊されるのは構わない。
 だけどその前に、理由を聞いておきたかった。
「莉句遜はな、アルケミストだと言っただから」
 莉句遜はそう言って、ニヤリと笑った。
 要するに、談話室で冗談だと言っていたのは、冗談だったって事か。
 しかし、それだけでは全く理由になっていない。
 それでも、なんとなく私は、莉句遜は信じられそうな気がして、残りの三枚を取りだし、莉句遜に渡した。
 莉句遜は三枚を作業台に並べて、それを眺めながら、何やらブツブツ言っていた。
「全部同じ大きさではないだから。だからバランスが悪かっただから。それに作り方が雑だから。後数回で壊れていただから」
 莉句遜の言う通り、四枚の小さな魔法反射の盾は、同じ形状ではない。
 罵蝶が切った時、まっすぐ綺麗に二等分されていたわけではないから。
 そのバランスによって、操作が阻害され、スムーズさを欠いている事もその通りだ。
 だから私は、魔法反射の盾よりも、コントロールシールドの方を多用しているのだから。
 やはり莉句遜は、本当にアルケミストかもしれない。
 そう思った時、再び莉句遜は、魔法反射の盾をハンマーで次々と砕いていった。
「ちょっ!」
 私はただ、唖然と見守るしかなかった。
 これがあったから、戦争でも敵の魔法に、恐怖せずに戦えていたのに。
 私は一瞬、どうして良いか分からなくなっていた。
「安心するだから。お前にはもっと良い物をくれてやるだから」
 莉句遜はそう言うと、異次元アクセスの魔法で、目の前の空間に亀裂を生じさせ、そこから何やら取りだしていた。
 そしてそれを、私に差し出してきた。
 見るとそれは、少し小さめのハート型の盾が四つと、大きなルビーが四つついているカチューシャだった。
 私はそれを受け取ると、その重さに落としそうになった。
「重!」
 私は必死にそれを、後ろのテーブルに乗せた。
「これってもしかして・・・」
 よく見なくても分かった。
 盾とカチューシャからあふれ出る魔力から、これが魔法反射の盾と、それをコントロールするものである事が。
「そのブローチ、もういらないだから。莉句遜にくれだから」
 莉句遜はそう言うと、勝手に私の胸からブローチを外し、自分の胸につけた。
 私が「何をするんだ?」と思って見ていると
「何をぼさっとしている。早くカチューシャをつけて試してみるだから」
 と、莉句遜は笑顔で言った。
 私は莉句遜に言われるままに、テーブルに置いてあるカチューシャを手に取って、それを頭にはめてみた。
 すると凄い魔力が、頭の上に感じられた。
 そして同時に、四つの盾が浮き上がった。
「凄い。何だこれ?こんな魔力、感じた事がない」
 正確には魔宝石からって事だが、そんな事は言わなくても、莉句遜には分かっていた。
「まあな。でもまだ、ダイヤモンドでは作れないだから」
 莉句遜のその言葉で、私は全て理解し確信した。
 莉句遜は、かなりハイレベルのアルケミストである事を。
 ダイヤモンドでは作れないと言うのは、ダイヤモンド以外の宝石なら、何でも魔宝石にできると言っているのと同じ事だ。
 カチューシャについている宝石はルビーで、盾にはそれ以外にサファイアがついているわけで、これ以上の硬度の宝石は、ダイヤモンドしか存在しない。
 硬度の高い宝石ほど、魔宝石にするのは難しいと言われている。
 秘められた魔力を、コントロールしきれないから。
 でも莉句遜は、ルビーやサファイアならできるんだ。
 それはもう、ほとんどマスタークラスと言っていい。
 こんなアルケミストが、同じ学園にいた事に、私はとにかく嬉しかった。
 そして言っていた。
「教えてくれ!」
 そうなのだ。
 私は、教えてほしかったのだ。
 だけど莉句遜は首を横に振っていた。
「教える事は無理だから。だけど、お前ならきっと、分かると思うだから。魔宝石を、ハンマーでぶっ壊してみるだから」
 魔宝石を、ハンマーでぶっ壊すか。
 それで何が分かるのか分からなかったが、やってみようと思った。
 私は、予備に持っていたゴマ粒ほどの小さな魔宝石を、ハンマーで砕いてみた。
 だけど、特に何も分からなかった。
 ただ小さな爆発が起こり、破片で少し怪我をしただけだった。
 どういう事かと振り返ると、莉句遜は「続けるしかないだから」と言うだけだった。
 こんな事を続ける事に、何の意味があるのかと思わなくも無かったが、私は何故か、続けてみようと思っていた。
 その後私は、何時までも盾を浮遊させておくわけにもいかないので、魔界の住人との契約改定を行った。
 前の戦いの時、大量の貸しを作っておいたので、契約はスムーズに終わった。
「魔界より、天界の方が良いだから。そのカチューシャがあれば、それも可能だから、そのうち変更するだから」
 私の契約を見ていた莉句遜が、契約が終わった途端に、そんな事を言ってきた。
 先ほど莉句遜が「魔界か」と、呟いた意味が分かった。
 莉句遜の言う通り、魔界の住人との契約は、不安がいくつかある。
 契約者が誰かにやられてしまったり、盗まれる事もあるからだ。
 その点、天界の住人だと、盗みも殺しもしないから、超安全ってわけだ。
 ただし私の魔力では、今までは天界との契約は不可能だった。
 でもカチューシャがあれば、これからは可能だ。
 私は早急に、天界との契約をしておこうと思った。
 まあそれでも、カチューシャを失った時の事も考え、魔界との契約も、一応残しておくべきか。
 私がそんな事を考えている中、莉句遜は先ほど壊していた魔法反射の盾を、再構築して復活させていた。
 一枚の大きな魔法反射の盾として。
 アルケミストとは、こんな事もできるのかと、私は感心するしかなかった。
 莉句遜は、人間ではなくアイテムの治癒術師という事か。
「それはお前にやるが、これは莉句遜が貰うだから。数が多いと操作が面倒だから」
 少し顔を赤くしている莉句遜を見て、私にはとにかく感謝の気持ちしかなかった。
「ああ、ありがとう」
 交換という形にはなったが、どう考えても対等な取引ではない。
 私の方が圧倒的に得をしている。
 カチューシャには四つの大きなルビーの魔宝石がついていて、その合計魔力は五千ほどありそうだ。
 要するに、これをつけていれば、私も人並みの魔法使いになれるって事だ。
 それに四つの魔法反射の盾にも、ルビーやサファイアの魔宝石がついていて、更には通常の盾としても、最高クラスの強度がありそうだった。
 物理攻撃にも対応できるのは、凄くありがたい。
 私が戦闘をする際、どうしても物理攻撃の接近戦では、対応できる術が無かったから。
 都合の良い話だが、目の前の、子どものような莉句遜が、凄く可愛く見えてきた。
 気がつくと、何故か莉句遜を抱きしめていた。
 別に下心があったわけではない。
 ただ純粋に、可愛いぬいぐるみを抱きしめたいと思うのと同じように、目の前の子供を抱きしめていた。
「おい、いきなり何をするだから!」
 と、莉句遜はもがいていたが、すぐになされるがままになっていた。
 しばらくして正気を取り戻した私は、慌てて莉句遜から離れた。
 何故か凄くお互い照れてしまって、城に戻るまで、結局ほとんど話す事は無かった。
 ただ別れ際、私が
「ありがとうな。戦いの時はちゃんと守るから」
 と言うと、莉句遜は
「今日の事は絶対誰にも内緒だから」
 と、お互い言いたい事を言ってから別れた。
【<┃】 【┃┃】 【┃>】
Amazonリンク

仮想通貨お賽銭アドレス
サイト運営を応援し賽銭(投げ銭)を投げて下さる方は、投げ銭に関する注意事項を読んだ上、下記仮想通貨を投げ銭する事ができます。

◆xcoin◇エクスコイン◇イーサリアム◆

xcoin
Ver.5.00 CGIフリー配布サイト