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アルケミスト、莉句遜

 楽浪城を攻略した日は、皆そこで一夜を明かした。
 そして次の日には、負傷者や魔力の低下が著しい者を残して、遼東城の攻略に向かった。
 領主が既にいなかった事もあり、遼東に到着してすぐ、あっさりとそのミッションはコンプリートできた。
 そこからしばらくは、遼東城をねぐらとして、最前線の軍隊のような生活を強いられていた。
 とは言っても、別に大した不便はない。
 学生百八十人程度で、城一つ占有しているのだから、むしろ生活は快適だった。
 高村産学園長が領主代理をしていて、我々はその側近気分を味わっていた。
 そんなある日、一頭の早馬が遼東にやってきていた。
 会議室には、学園長と各部隊のリーダーが集まっていた。
「という事は、我々にも、兆角討伐に参加せよという事か」
 早馬が洛陽からもたらしたものは、予想通りではあったが、やはり私には衝撃だった。
 学園長もその命令に、使いの者に対して、少し語気を強くして話していた。
 反乱が終結するまで、遼東城でマッタリ青春生活を期待していたのに、短い夢だった。
 私のような劣等生にも、ようやく好意を寄せてくれる女の子がでてきているのに、これでは私の春は、一体いつやってくるのやら。
 結局会議では、三日後遼東を発ち、冀州は|広宗《こうそう》へと向かう事が決定していた。
 私はそれを皆に報告する為、我が部隊が集まっている談話室へと赴いた。
 部屋に入ると、みんなは和気あいあいと話をしていた。
「これ、うちが食べて良い?」
「ちょっとまて、それって食べられるのか?」
「食べられるはずよ。食べたくはないけど」
「じゃあ食べてみてぇw」
「私は負けるのが嫌いだからな。みんなが食べるなら食べるぞ」
 入っていきなり、なんの話をしているのかと思えば、イナゴの佃煮がテーブルの真ん中に置いてあった。
「おっ、凰印、話はなんだった?」
 みんなが恐る恐るイナゴを口に運ぶ中、歌琥は食べずにこちらに話しかけてきた。
「おい、それより歌琥も食え。ああ、凰印も食べてみろ。意外と美味いぞ」
 愁癒は私と目が合うと、口に入れようとしていたイナゴをこちらに差し出してきた。
「ホント。美味しいわねぇ~w」
 兎琴は上品に、少しずつ口に運んでいた。
「イナゴなんかに負けるかぁー!」
 罵蝶はやけになって、次々と口の中に入れていった。
「栄養あるのよ。どうしてみんな食べないのよ」
 香那は、デザートでも食べるかのように、凄く嬉しそうにイナゴを食べていた。
 みんなそれぞれ性格が出るな。
 私は、そんな部隊のメンバーみんなが、なんだか愛おしく、好きなんだなと感じていた。
「私は遠慮しておくよ。で、会議の結果は、きっとみんなの予想通りだと思うぞ」
 私がそう言いながら席に座ると、みんな少し動きを止め、またすぐ今までの行動を再開していた。
 要するに、みんな本当は戦争は好きではないし、戦争に行くのは嫌なんだ。
 私も殺し合うのはゴメンだし、まして今度はわざわざ戦場に向かうのだ。
 まだ学生なのに戦争に参加させられて、嬉しいはずがない。
「よし、腕がなるぜ。槍もパワーアップして返ってきたし、今度は私が兆角の首をとってやる」
 だけど罵蝶の言う通り、どこかで「やってやる」って気持ちがあったり、勝てる作戦を思いついた時には、楽しいとさえ感じてしまうのだ。
 そして敵の大将を打ち取った時は、喜びの感情が溢れてくる。
「此処を発つのはいつに決まったんだ?」
 愁癒は、弱みを極力みせないように気丈に振る舞ってはいるが、自分の強さを、逆に煩わしく思っているように感じる。
 一番最初に会った時に見た、あの寂しそうな顔は、きっとそういう事なのだろう。
 もし自分が弱ければ、きっとこんな所で大量に人を殺すような任務につく事もなかった。
 戦いの中に生きる虚しさを感じていたと、私は思っている。
「三日後だ。他にもいくつかの学園が参加するらしい」
「何故学生が参加させられるんだ?火神様の正規軍はそんなに弱いのか?」
 歌琥はきっと、正直どうでも良いと思っているし、戦えば勝てると思っている。
 まだまだ自分の能力の全てを見せてはいないし、そう思うのは当然だろう。
 でも、仲間を危険にさらしたくないとも考える奴だ。
「少なくとも、歌琥ほど強い人は少ないんじゃないかなぁ~w」
 相変わらず、兎琴は何を考えているかわからないが、強い人か。
 軍の人たちは強いと思っていたけれど、意外に私の考えていたほどではなかった。
 学園と楽浪&遼東軍の戦いでは、正規軍三千五百人に対して、学園生徒五百人で勝ってしまったのだからな。
「うちは行きたくないなぁ~よわっちいし、足手まといだよ・・・」
「え~香那ちゃん強いじゃん~w」
「うん、あれだけの結界を展開できる人、初めて見たよ」
「五人も蘇生したしな。俺が勝てないかもしれないと思ったのは、香那が初めてだよ」
「わ、私は、誰が相手でも負けないがな」
「えー!意味がわからないよ」
 香那はみんなの言葉に、頭が混乱して目を回しているようだった。
 愁癒と歌琥は、ガブリエルが降臨していた香那を、別人格か何かだと思ったようだ。
 要するに、大天使ガブリエルが降臨していたなんて事は、誰も知らないってわけだ。
 どうやら本人にも記憶がないし、何故か私は誰にも喋る気にはなれなかった。
 その後も、私たち六人の会話は続いた。
 話の内容は、いつの間にかどうでも良い話に変わっていた。
 それでもみんなは、夜遅くまで同じ時を過ごした。
 それは何か、別れを惜しむかのように。
 もしかしたらみんな、気が付いていたのかもしれない。
 この六人が集まって、一つの部屋で話す事が、この日が最後である事を。

 次の日、学園長から、部隊再編の発表があった。
 先日の戦いで、生徒数は五百人ほどから、今は百八十人ほどに減っていた。
 戦いの後に、適当に部隊の再編が行われてはいたが、足りなくなった部隊を合わせるだけだったりしたため、能力を考えられたものではなかった。
 更に小規模の部隊では、今後の大規模になるであろう戦闘では、機能しないだろうって事だった。
 当然と言えば当然の再編だけれど、せっかく第十八部隊の人たちとは、本当の仲間になれる気がしていたのだから、私は残念でならなかった。
 救いは、大きく分けた部隊の副隊長が、孫感先輩だった事と、香那と罵蝶が同じグループであった事だった。
 私は、第三部隊、第三十グループリーダーになった。
 第三部隊は、第二十一グループから第三十グループを合わせた部隊だ。
 基本的には守り担当の部隊で、部隊内でグループ番号が一番大きなグループだけは、状況判断により、単独行動が許される事になっていた。
 歌琥と兎琴は、第二部隊の第二十グループで、当然歌琥がリーダーだ。
 愁癒は第一部隊第十グループのリーダー。
 総大将は高村産学園長で、副将は跳雲となっていた。
 どうして第一の学生である跳雲が、ずっと此処に残っているのか不思議だったが、伝え聞く話しによると、先日正式に、転校が認められたらしい。
 わざわざこんな第四にとも思わなくなかったが、第一もこの戦いには参加するし、こちらとしては心強いから、否定する理由は何もなかった。
 再編の発表があった後、まずは第三部隊で集まっていた。
 第三部隊の隊長は、三年生の「放心《ほうしん》」先輩だ。
 多少の武力ももっている、なかなかの魔術師であると聞いている。
「えー・・・俺の部隊では~・・・守りが基本です・・・第一部隊と第二部隊が~・・・攻撃に専念できるよう・・・みなさん努めてください」
 放心先輩の喋りを聞いていると、なんだかすごく頼りなさそうだ。
 だけど、先日の戦いで生きぬいて、尚且つ隊長に任じられる人だ。
 少なくとも守りに関しては、かなりの使い手に違いない。
 魔力も、隣にいる孫感先輩より大きく感じられるので、それなりに期待しておこう。
 まあ期待しすぎても、裏切られた時ショックが大きくなるから、過剰な期待はするつもりはないが。
 部隊全体による顔合わせと、任務の確認、配置の決定等は、約三十分で終了した。
 続いて、各グループに分かれ、談話室で集まっていた。
「私は凰印。この部隊・・・じゃなくてグループのリーダーをする事になりました。みなさんよろしくお願いします」
 今回のグループリーダーは、一部、高村産学園長から直接任じられている。
 私もその中の一人だ。
 先日の戦いで、それなりに活躍したのが評価されたようだ。
 一応二人のボスを、愁癒と、歌琥と、そして私で倒したのだからね。
 本来なら、各部隊の隊長にされても不思議ではないかもしれないが、やはり三年生からみれば、下級生に指揮されるのは受け入れ難いだろう。
 その辺りを考慮して、それぞれがそれぞれに、自由に動ける権限を持たされたグループのリーダーに決められていた。
 だから当然、我がグループの面々は全て一年生で、それなりの使い手が集まっているようだった。
「私は罵蝶。槍を使う武士だ。近接戦闘なら、誰にも負けない武力を持っている。よろしく頼む」
 罵蝶がそう言うと、みんなは大きな拍手を送った。
 流石に罵蝶の無双ぶりは、先日の戦いで、皆が周知するところとなっていた。
 だからみんな喜んでいた。
 だけど、罵蝶が我がグループにいるのは、少し不思議だった。
 何故なら、我々部隊の任務は、他の部隊も含めて、守備担当なのだから。
 基本的には、魔法によるシールドができる者が集められている。
 これは私の勝手な想像ではあるが、一つには、香那の護衛が理由かもしれない。
 これだけの白魔術師はなかなかおらず、ある意味この学園一守らなければならない人物と言えるだろう。
 それ以外にも、我がグループが単独行動をする際、盾役が必要になるかもしれない。
 その辺り、学園長が考えてくれているのかもしれない。
 もしくは、跳雲がそう進言した事も考えられるが。
 まあ理由はどうあれ、私にとっては喜ばしい限りだった。
「うちは香那。白魔術師だよ。時々意識を失っちゃうよ。その時は助けてください」
 香那の自己紹介に、みんな少し笑っていた。
 ウケを狙って言ったわけではないので、どうしてウケているのは分からず、香那は少しオロオロしていた。
 香那は、大天使ガブリエルの事を知らない。
 いや、白魔術を使っているのだから知ってはいるが、自分の体に降臨している間の記憶は無いようだ。
 理由は分からないが、ガブリエルもどうやら、私以外には話していないようだし。
 なんにしても、香那と同じグループであるのは心強い。
 いざとなったら、またガブリエルに手を貸してもらおう。
 さて次は、今まで別の部隊だったが、クラスが同じだった「祭縁《さいえん》」だった。
 政治や歴史の授業に真面目に出る人は少ないが、祭縁は私の知る限り、いつも共に教室にいた女の子だ。
 物腰が柔らかく優雅で可憐、一見するとお姫様のようで、芯の強い人って感じだと思う。
 タイプとしては兎琴に似ているかもしれないが、兎琴程の怖さは感じられない。
「私は、祭縁と申します。水の精霊魔術が得意です」
 教室で見た時は「ちょっと綺麗な子」程度にしか思わなかったが、此処で見る祭縁は、なんだか惹かれるものがあった。
 そうか、制服のせいかもしれない、と私は思った。
 反乱軍との戦いに際して、第四では、私が異世界で見た「学ラン」と「セーラー服」が、制服として採用されていた。
 学ランに関しては、特に思うところはないのだが、セーラー服には、何やら言い表せない魅力を感じていた。
 特に、戦いの時などにチラチラ見える下着からは、視線をそらす事が難しい。
 見ていると、なんとも言えない高揚感に襲われる。
 別に裸を見ているわけではないのに、何故こんな気分になるのだろうか。
 考えてもわからないが、とにかく私は、自分に対してグッジョブと言いたい気分だった。
 ただ、祭縁の着るセーラー服は、白いラインに白いリボンだ。
 今までの第十八部隊の面々は、赤いラインで赤いタイだった。
 白いリボンを見ながら、それがなんとなく、少し寂しく感じられた。
 次に自己紹介したのは、私の知らない人だった。
「流喜《りゅうき》です。僕も水の精霊魔術師です。よろしくです」
 流喜の事は、正直全く知らない。
 だけどやはりと言うか、水の精霊魔術師か。
 見事に守り重視のメンバーが揃えられている。
 となると、最後のこの女の子も、同じような感じだろうか。
 私は最後の一人、到底高等部の学生とは思えない、子供っぽい容姿の女の子に視線を送った。
 それに気づき、立ちあがった女の子は、香那よりも小さかった。
 しかし、そのあふれ出る魔力は、私が知る中でもかなり強力なものだった。
 この魔力の強さからして、もしかして、この子が学年二位の魔力の持ち主か。
「莉句遜《りくそん》だから。アルケミストだから」
 凄い使い手に見えたから、どんな人物かと興味がわいたが、喋り方は期待通り、子供っぽい喋り方だった。
 だから一瞬聞き流しそうになっていたが、私は莉句遜の自己紹介に驚いた。
「えっ!アルケミスト!」
 私と同じように、他のみんなも驚いていた。
 アルケミストとは、ざっくり言えば、二つの事ができる者の事である。
 一つは、アイテムに魔法効果を付与する事。
 マジックアイテムの製造は、鍛冶職人によるアイテムその物の製造と、アルケミストの魔法効果付与によって完成する。
 その両方をできるのが、ブラックスミスだ。
 私なんかは、低レベルのブラックスミスと言えるかもしれない。
 これにもう一つの能力を持った者こそが、アルケミストである。
 いやむしろ、もう一つの能力こそがアルケミストの本分。
 それは、魔宝石を作れるって事だ。
 魔宝石を作れる人物は、もしかしたらこの世に存在しないのではないかと言われている。
 それくらい難しい能力なのだ。
 ちなみに、私の作っている魔力球は、魔宝石とは全く違う。
 魔宝石は、生きた宝石と言われ、人間のように魔力を消費しても回復し、永久に魔力を生みだし続ける宝石の事だ。
 一方私の作った魔力球は、魔力をためてあるだけで使えば無くなるし、少しずつ漏れていくから、数年で魔力は尽きてしまう。
 愁癒が作った魔力球は、それに爆炎の魔法効果が付与されていたから、愁癒もまた、ブラックスミスの能力を持っていると言えるだろう。
 そして今莉句遜は、自分の事をアルケミストと言った。
 それは言ってみれば、私から見れば上位職の使い手という事だった。
 私が尊敬のまなざし、或いは驚きのまなざしで莉句遜を見つめていると、莉句遜は
「冗談だから」
 と、私を見てニヤリと笑った。
 私はその言葉を聞いて、一気に気が抜けた。
 正直テーブルに体を乗り出す勢いだったが、椅子の背に体を預け、肩をおとした。
 みんなも一気に気が抜けたようで、やれやれといった感じだった。
 だけど、莉句遜がニコニコしながら私を見つめていたので、莉句遜がアルケミストだという話が、もしかしたら本当なのかもしれないと、わずかに期待していた。
 自己紹介が終わり、反乱軍討伐時の任務の確認や、配置の決定を伝えた後、みんなは談話室を出ていった。
 私は少しの間、椅子に座って一人残っていた。
 莉句遜がアルケミストだと言った時、私はなんだか嬉しかった。
 でも、だからと言って、私はいったい何を期待していたのだろう。
 尊敬できる使い手と一緒のグループで、嬉しいと思ったのか。
 それとも、魔宝石を作ってもらいたかったのか。
 魔宝石を作れるなら、ドンドン作ってドンドン売れば、容易く大金を簡単に手に入れることができるだろう。
 |錬金術師(アルケミスト)と呼ばれる|所以《ゆえん》だ。
 いや、別に身内でもないのだから、それでは金持ちが近くにいるだけで、私が何か得をするわけではない。
 だったらなんだろうか。
 私は答えが出ないまま、椅子から立ち上がり部屋を出た。
 部屋を出てからすぐ、目の前には莉句遜が立っていた。
「遅いだから!」
 一瞬何を言っているのか分からなかった。
「えっ?何?待っていたの?」
 頭では理解していなかったが、発した言葉は、言っている意味をしっかり理解していた。
「そうだから!だからついてこい!」
 何やらいきなりついてこいとか、正直この子の言動にはついて行けない。
 私は少し唖然としていた。
「ああもう。時間は少ないのだから、ちゃっちゃと歩くのだから!」
 莉句遜はそう言って私の腕をつかみ、引っ張っていこうとしていた。
 でも、こんな小さな子に引っ張られても、大した力はない。
 私はその場につっ立っていた。
 莉句遜は顔を真っ赤にして、必死に前に進もうとしていた。
 その姿を見て、私はなんだか面白く感じ、そして莉句遜が可愛いと思った。
 だけどいつまでも動かないのも可哀相になってきて、私は一歩踏み出そうとした。
 その時だった。
「ああもう!本気だから!」
 莉句遜は一気に魔力を高めた。
 引っ張るパワーが一気に増して、私は莉句遜に引きずられるように動き出した。
「いてっ!待て莉句遜!歩く!歩くから!」
「うおおおお!フリーダムだから!」
 莉句遜は、全く聞いていなかった。
 それに、言っている意味も分からなかった。
 結局私は目的地につくまで、莉句遜に引きずられるように歩みを続けるしかなかった。

 莉句遜につれてこられた場所は、遼東にある鍛冶場だった。
 どうやら誰もいないようで、鍛冶場とは思えない静けさだった。
「誰もいないようだけど?」
 私がそう尋ねると、莉句遜は
「莉句遜が借り切っただから」
 と言って、何やら作業台に並べ始めた。
 遼東の鍛冶場は、楽浪の学園の鍛冶場より、設備は整っていない。
 長年楽浪の流通を仕切り、仲介でお金を稼いでいた町だから、鍛冶場はあまり必要がなかったのだろう。
 最低限の物しか置いていないようだった。
 私がそんな事を考えながら鍛冶場内を見ていると、莉句遜がいきなり振り返った。
 そして言った。
「よし!アレを出すだから!」
 莉句遜は手を私の方に差し出していた。
 一体なんだろうか。
 私はポケットから、さっき香那から貰った飴玉を置いてみた。
「ん~正解?」
 私がそう尋ねると、莉句遜は「むきぃー!」とか言いながら飴玉を口に入れ、ボリボリと噛んで食べていた。
 どうやら飴玉は、間違いだったらしい。
 莉句遜は飴玉を食べ終えると、再び手を差し出してきた。
「魔法反射の盾だから!」
 なるほど。
 どうやら莉句遜の要求は、私の魔法反射の盾のようだ。
 別に見せるのは構わないが、一体どういう事だろうか。
「早くぅ~早くぅ~」
 私が考えている間に、莉句遜はもう待ちきれないといった感じだった。
「仕方ないなぁ~」
 私は、異次元アクセスの魔法を使い、一枚だけ魔法反射の盾を取りだし、莉句遜に渡した。
「魔界か」
 莉句遜は一言そう言って、私から魔法反射の盾を受け取ると、作業台の上に乗せて、しばらく眺めていた。
 莉句遜の発した言葉は、私が魔界とアクセスしている事を指摘した言葉であるが、特に意味もないのだろうと、この時は結論付けた。
 なんて思っていたらいきなり、莉句遜はハンマーを振り上げて、私が止める間もなく振り下ろした。
 魔法反射の盾は一瞬のうちに粉々に砕けた。
「ちょっ!おまっ!」
 流石の私も、怒らずにはいられなかった。
 道具に頼るしかない私にとっては、とても大切なものなのだから。
 だけど怒りを言葉にする前に、莉句遜は再び手を差し出してきた。
「後三枚あるのだろ?全部出すだから」
 莉句遜のその言動に、私は少し冷静さを取り戻していた。
 私の魔法反射の盾を、全て壊すつもりのようで、それにどんな意味があるのだろうかと思ったからだ。
「その前に、壊す事にどんな意味があるんだ?」
 きっと意味があるのだろうから、最悪壊されるのは構わない。
 だけどその前に、理由を聞いておきたかった。
「莉句遜はな、アルケミストだと言っただから」
 莉句遜はそう言って、ニヤリと笑った。
 要するに、談話室で冗談だと言っていたのは、冗談だったって事か。
 しかし、それだけでは全く理由になっていない。
 それでも、なんとなく私は、莉句遜は信じられそうな気がして、残りの三枚を取りだし、莉句遜に渡した。
 莉句遜は三枚を作業台に並べて、それを眺めながら、何やらブツブツ言っていた。
「全部同じ大きさではないだから。だからバランスが悪かっただから。それに作り方が雑だから。後数回で壊れていただから」
 莉句遜の言う通り、四枚の小さな魔法反射の盾は、同じ形状ではない。
 罵蝶が切った時、まっすぐ綺麗に二等分されていたわけではないから。
 そのバランスによって、操作が阻害され、スムーズさを欠いている事もその通りだ。
 だから私は、魔法反射の盾よりも、コントロールシールドの方を多用しているのだから。
 やはり莉句遜は、本当にアルケミストかもしれない。
 そう思った時、再び莉句遜は、魔法反射の盾をハンマーで次々と砕いていった。
「ちょっ!」
 私はただ、唖然と見守るしかなかった。
 これがあったから、戦争でも敵の魔法に、恐怖せずに戦えていたのに。
 私は一瞬、どうして良いか分からなくなっていた。
「安心するだから。お前にはもっと良い物をくれてやるだから」
 莉句遜はそう言うと、異次元アクセスの魔法で、目の前の空間に亀裂を生じさせ、そこから何やら取りだしていた。
 そしてそれを、私に差し出してきた。
 見るとそれは、少し小さめのハート型の盾が四つと、大きなルビーが四つついているカチューシャだった。
 私はそれを受け取ると、その重さに落としそうになった。
「重!」
 私は必死にそれを、後ろのテーブルに乗せた。
「これってもしかして・・・」
 よく見なくても分かった。
 盾とカチューシャからあふれ出る魔力から、これが魔法反射の盾と、それをコントロールするものである事が。
「そのブローチ、もういらないだから。莉句遜にくれだから」
 莉句遜はそう言うと、勝手に私の胸からブローチを外し、自分の胸につけた。
 私が「何をするんだ?」と思って見ていると
「何をぼさっとしている。早くカチューシャをつけて試してみるだから」
 と、莉句遜は笑顔で言った。
 私は莉句遜に言われるままに、テーブルに置いてあるカチューシャを手に取って、それを頭にはめてみた。
 すると凄い魔力が、頭の上に感じられた。
 そして同時に、四つの盾が浮き上がった。
「凄い。何だこれ?こんな魔力、感じた事がない」
 正確には魔宝石からって事だが、そんな事は言わなくても、莉句遜には分かっていた。
「まあな。でもまだ、ダイヤモンドでは作れないだから」
 莉句遜のその言葉で、私は全て理解し確信した。
 莉句遜は、かなりハイレベルのアルケミストである事を。
 ダイヤモンドでは作れないと言うのは、ダイヤモンド以外の宝石なら、何でも魔宝石にできると言っているのと同じ事だ。
 カチューシャについている宝石はルビーで、盾にはそれ以外にサファイアがついているわけで、これ以上の硬度の宝石は、ダイヤモンドしか存在しない。
 硬度の高い宝石ほど、魔宝石にするのは難しいと言われている。
 秘められた魔力を、コントロールしきれないから。
 でも莉句遜は、ルビーやサファイアならできるんだ。
 それはもう、ほとんどマスタークラスと言っていい。
 こんなアルケミストが、同じ学園にいた事に、私はとにかく嬉しかった。
 そして言っていた。
「教えてくれ!」
 そうなのだ。
 私は、教えてほしかったのだ。
 だけど莉句遜は首を横に振っていた。
「教える事は無理だから。だけど、お前ならきっと、分かると思うだから。魔宝石を、ハンマーでぶっ壊してみるだから」
 魔宝石を、ハンマーでぶっ壊すか。
 それで何が分かるのか分からなかったが、やってみようと思った。
 私は、予備に持っていたゴマ粒ほどの小さな魔宝石を、ハンマーで砕いてみた。
 だけど、特に何も分からなかった。
 ただ小さな爆発が起こり、破片で少し怪我をしただけだった。
 どういう事かと振り返ると、莉句遜は「続けるしかないだから」と言うだけだった。
 こんな事を続ける事に、何の意味があるのかと思わなくも無かったが、私は何故か、続けてみようと思っていた。
 その後私は、何時までも盾を浮遊させておくわけにもいかないので、魔界の住人との契約改定を行った。
 前の戦いの時、大量の貸しを作っておいたので、契約はスムーズに終わった。
「魔界より、天界の方が良いだから。そのカチューシャがあれば、それも可能だから、そのうち変更するだから」
 私の契約を見ていた莉句遜が、契約が終わった途端に、そんな事を言ってきた。
 先ほど莉句遜が「魔界か」と、呟いた意味が分かった。
 莉句遜の言う通り、魔界の住人との契約は、不安がいくつかある。
 契約者が誰かにやられてしまったり、盗まれる事もあるからだ。
 その点、天界の住人だと、盗みも殺しもしないから、超安全ってわけだ。
 ただし私の魔力では、今までは天界との契約は不可能だった。
 でもカチューシャがあれば、これからは可能だ。
 私は早急に、天界との契約をしておこうと思った。
 まあそれでも、カチューシャを失った時の事も考え、魔界との契約も、一応残しておくべきか。
 私がそんな事を考えている中、莉句遜は先ほど壊していた魔法反射の盾を、再構築して復活させていた。
 一枚の大きな魔法反射の盾として。
 アルケミストとは、こんな事もできるのかと、私は感心するしかなかった。
 莉句遜は、人間ではなくアイテムの治癒術師という事か。
「それはお前にやるが、これは莉句遜が貰うだから。数が多いと操作が面倒だから」
 少し顔を赤くしている莉句遜を見て、私にはとにかく感謝の気持ちしかなかった。
「ああ、ありがとう」
 交換という形にはなったが、どう考えても対等な取引ではない。
 私の方が圧倒的に得をしている。
 カチューシャには四つの大きなルビーの魔宝石がついていて、その合計魔力は五千ほどありそうだ。
 要するに、これをつけていれば、私も人並みの魔法使いになれるって事だ。
 それに四つの魔法反射の盾にも、ルビーやサファイアの魔宝石がついていて、更には通常の盾としても、最高クラスの強度がありそうだった。
 物理攻撃にも対応できるのは、凄くありがたい。
 私が戦闘をする際、どうしても物理攻撃の接近戦では、対応できる術が無かったから。
 都合の良い話だが、目の前の、子どものような莉句遜が、凄く可愛く見えてきた。
 気がつくと、何故か莉句遜を抱きしめていた。
 別に下心があったわけではない。
 ただ純粋に、可愛いぬいぐるみを抱きしめたいと思うのと同じように、目の前の子供を抱きしめていた。
「おい、いきなり何をするだから!」
 と、莉句遜はもがいていたが、すぐになされるがままになっていた。
 しばらくして正気を取り戻した私は、慌てて莉句遜から離れた。
 何故か凄くお互い照れてしまって、城に戻るまで、結局ほとんど話す事は無かった。
 ただ別れ際、私が
「ありがとうな。戦いの時はちゃんと守るから」
 と言うと、莉句遜は
「今日の事は絶対誰にも内緒だから」
 と、お互い言いたい事を言ってから別れた。
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ドクダミ

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