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愁癒

 今日の授業もまた、実戦となっていた。
 一番平和だった頃は、ひと月に一回の実戦だったらしい。
 まったく、これでは青春を謳歌するどころか、やはりそのうち命を落とす確率の方が高いと思われる。
 何とか身の安全を確保する為にも、私は無能者である必要があるのだ。
 そう、成績が悪いのは、ひとえに成績優秀者とパーティを組む為。
「などと言い訳していても、魔力が無いってのは実際、無能者って事だよなぁ」
 さて、今日のミッションは、隣町までマジックアイテム運び、大量の現金を受け取り持ちかえる事。
 そしてこの任務についている生徒は、好成績を収めている部隊と、成績優秀者を含む部隊のメンバーだけだった。
 要するに、少数精鋭で任務を行う。
 他の生徒は、山に亜人種との話し合いに行く領主の護衛だ。
 正直そっちの方が安全だから、今日に限っては、この部隊である事が忌々しい。
 それでも私が、戦闘に参加しなければならないような状況にはなりにくいし、ならば荷台でじっとしているだけだから、そんなに危険でもないわけか。
「まっ、どうせ私は何もしないのだから、いいか」
 歌琥は、荷台の外側、後ろに乗っている。
 その横には孫感先輩。
 前には、ナンバーワン部隊のリーダー「|旺盛《おうせい》」先輩と「|露色《ろしょく》」先輩。
 後は別の馬車二台と、罵蝶や兎琴は単騎馬に乗って護衛していた。
 そしてもう一人、さっきから私の独り言にも全くツッコミを入れず、向かいでずっと、だまって座っている女の子がいた。
 旺盛先輩の部隊で、エースと言われる「|愁癒《しゅうゆ》」ちゃんだ。
 もちろん面識はないので、愁癒ちゃんなんて呼んだ事はないが、可愛い女の子なので、紹介の際はそう呼ばせてもらう。
 もう一度言うが、愁癒ちゃんは、ナンバーワン部隊のエースだ。
 頭脳明晰、一騎当千、容姿端麗、文武両道、才色兼備と、褒める言葉には困らない、全てにおいて完璧な女の子だ。
 おそらく全学年でも、トップクラスの魔法剣士。
 入学してまだ3カ月だが、告白して振られた人の数は二十人を超えているとか。
 ようするに、今や第四のアイドルである。
「暇だなぁ~今どのへんかなぁ」
 くっ!
 さっきから何か話のきっかけがつかめないかと、さりげに独り言を言っているのに、愁癒ちゃん全く反応ねぇ。
 モテる女はだから嫌なんだ。
 私のような底辺野郎とは、共に暇な時間をマッタリ過ごすのも嫌だというのか。
 だったらいいよ。
 こうなったら、その可愛い顔に穴が開くくらい見つめてやるぞ。
「・・・」
 ん~可愛い。
 私なんか顔以外全て駄目なのに、この子は全てがそろっているんだよなぁ。
 神よ、あなたは理不尽だけれど、今この子の顔を、これだけじっくり見つめる事ができる幸せ、こんな機会を与えて下さってありがとうございます。
 私はしばらく、愁癒ちゃんの顔を眺め続けた。
「ねぇ。何か用?そんなに見られてると、気になるんだけど?」
 なんと!
 愁癒ちゃんが、この私に話しかけてきた。
 しかも、気になるって!
 これはもしかして、恋の始まりだろうか?
「いや、気になると言われても、あなたとはまだ知り合ったばかりだし」
「何言ってるの?どうでもいいから、あっち向いててくれる?」
 ぐすん・・・
 ちょっとしたジョークなのに、ノリが悪いなぁ。
 でも、見るなと言われると見たくなるのが、人というもの。
 なんとか本人にばれないように、顔を見続ける事はできないだろうか?
 そう思って辺りを見回すと、ピカピカに磨かれた剣に、愁癒の顔が映っているのをみつけた。
 ふっふっふ、私の視線から逃れられると思うなよ。
 そんな事を考えながら、剣に映る愁癒を見ると、とても寂しそうな顔をしていた。
「えっ!?」
 私は振り向いて、愁癒の顔を直接見た。
 |睨《にら》む目が、とても冷たい。
 気のせいだったのかな?
 再び剣を見ても、寂しそうな愁癒の顔を映す事は無かった。

 無事「|遼東《りょうとう》」にある隣町へと到着した。
 荷物を下ろす間は、皆辺りを警戒する。
 遼東は治安が悪く、このところ何度も商人の荷馬車が襲われている。
 噂ではあるが、この遼東の領主の指示で、兵士が賊を装って襲っているなんて話もある。
 あくまで噂ではあるし、それがもし本当だとしても、第四のある町「|楽浪《らくろう》」は、なかなか取引をやめられる状況ではない。
 なんせ遼東を通らないと、他の町へ行く術が無いからだ。
 海上移動って手もあるが、異世界にあるような大きな輸送船は存在しない。
 よってコストがかかりすぎるので、今のところ遼東との取引を続けるしかないのだ。
 さて、無事荷物は領主指定の宝物庫へと運び入れられた。
 これで一応、契約は成立だ。
 後は金を貰って、とっとと帰るだけ。
 と言っても、きっと此処からが本番なんだろうけど。
 大量の荷物を奪うより、金や宝石を奪う方が楽だろうからね。
 少し待っていると、遼東の財務係の者が、袋を一つ持ってきた。
 それを、楽浪の流通係補佐が受け取る。
 そして|二三《にさん》言葉を交わした後、袋を持ってこちらへと向かってきた。
 その時、なんだろうか、私はその袋から、何か魔力が放出されているのを感じた。
 袋の中にマジックアイテム、又は魔力を持った宝石が入っているのだろうか。
 受け取るのは現金だけだと聞いていたが。
「すみません。その袋の中、確認させていただけませんか?」
 私は名前も知らない、楽浪の流通係補佐に声をかけた。
「何か?これは大切な預かり物である。簡単に学生に見せられる物ではない」
 そう言う流通係補佐は、少し動揺しているように見えた。
 私は、持っている魔力が少ない。
 だから、扱う魔力はいつも小さなものだ。
 故に、少ない魔力を効率よく使うのが得意であり、魔力操作が繊細で器用であると自負している。
 そうならなければ、第四に合格する事は出来なかっただろうから。
 そんな私だからこそ感じられるような微量な魔力が、確かに今も、袋の中から放出されているのが感じられた。
「失礼しました」
 私は気になっていたが、仕方なく袋の中を改めるのを諦めた。
 なんせ取引物を守る事だけが今日の任務で、それ以上は口出しできるものではない。
 たとえこの物流係補佐が、現金以外にもマジックアイテムや宝石を受け取っていて、それを懐に入れようとしていても、それを防ぐ事は任務ではないから。
 まっ、賄賂なんて思うのは、私の勝手な想像であるが。
 ただ、今回の場合は少しおかしい。
 賄賂であるならば、立場の弱い側から渡すはずだし、そうでないにしても、私は何か違和感を覚えていた。
 私は、放出される微量な魔力がどうなっているのか、千里眼を使って調べる事にした。
 千里眼は、異世界を見る事以外にも、魔力の状況や、魔法の性質、近くなら隠れた人や物の状況なども、把握する事ができる。
 ただしどれも、色々条件があるので、完璧にとはいかない事も多いが。
 見ると魔力は、細い一本の糸のように、何処かへ続いているようだった。
 異世界ではGPSや発信器という物があった。
 それは、所在地を特定させるものであるが、そういった魔法が、この世界に存在していてもおかしくはない。
「どうした?何かあったのか?」
 いつのまにか近くに来ていた歌琥が、耳元に話しかけてきた。
「あの金袋の中から、何やら魔力が放出されているんだ」
「ほう。マジックアイテムがあの中にねぇ。だからと言って、何か懸念する材料にはならないと思うが?」
 歌琥の言い分は当然の事。
 普通に考えれば問題はない。
 爆発系のマジックアイテムなら、私でなくても、皆が気づくほどの魔力を感じるだろうし、今回の場合はその物に危険はない。
 だが・・・
「ただ、その魔力が、糸のように何処かに続いているようなんだ」
 私の言葉を聞いて、歌琥は|顎《あご》に手をあてた。
 これは歌琥が考え事をする時の癖だ。
 まあ、特に歌琥の癖と言うより、皆がやる仕草でもあるわけだが。
「追跡魔法の一種かな?」
 追跡魔法は、自分の知る人物の居場所や、特定の物を探す時に使う魔法だ。
 一方的に魔力を発して探すわけで、色々と条件が厳しく、簡単に扱える魔法ではない。
 しかし探し物が、特定の魔力を常に発していたら、追跡は容易にできるだろう。
「そうだとするなら、帰りに襲われる確率は、限りなく百パーセントだな」
「うむ。珍形先輩に話しておこう。凰印は愁癒に、警戒するよう伝えておいてくれ」
 歌琥くん、あなたは無茶を言う。
 愁癒が私を見る目は、氷よりも冷たいのだよ。
 さて、私と愁癒は、荷物の無くなった荷台に乗り込んだ。
 帰りは、金袋を持っているのが流通係補佐であるから、そちらの護衛についた方が良い気もするが、荷馬車に金品が有るように装う為に、行きと同じポジションなんだそうだ。
 バカな作戦だとは思うが、私は愁癒や歌琥など、強い人の|傍《そば》にいられるわけだから、別に反対はしないけどね。
 間もなくして、荷馬車は走りだす。
 そしてすぐに街をでる。
 愁癒に話す口実はあるが、さてどう話をきりだすか。
 行きは荷物がいっぱいで、二人きりなのを意識せずに済んだが、このガランとした荷台に二人だと、どうもテンションが違ってくる。
 多少の下心も|湧《わ》こうというもの。
 そんな事を考えていると、愁癒がいきなり私に話しかけてきた。
「ねぇ。さっき、金袋の中を改めようとしたでしょ。どうして?」
 なんと、話さなければならない話題を、愁癒から振ってきてくれた。
 これはもしかして、愛の以心伝心だろうか?
「ふっ、あれか。少し袋の中から、魔力が放出されているのを感じてね」
 決まったな。
 これからのテーマは、ダンディで行こう。
「みたいね。マジックアイテムでももらったのかしら?」
 なんと!
 愁癒はあの魔力を感じとっていたのか。
 流石にナンバーワン部隊のエースだ。
 でもなんだか悔しいな。
 あの魔力を感じとれるのは、自分だけだと思っていたのに。
 だけど流石にあの魔力が、どういう|類《たぐい》のものかは分からないだろう。
 私は少し、偉ぶる風を装ってこたえた。
「魔力は、細い糸のようになって、何処かに続いていた。すなわち、金袋の在りかを追跡する為の物だよ。故に、帰りに我々が襲われる可能性は百パーセントだ」
 すると愁癒は驚いたようで、それが顔に表れていた。
 よし、これで私の事を、少しは見なおしたであろう。
「それ、本当なの?それが本当なら、どの馬車に金が積み込まれているか、賊にはすぐに分かるって事なんじゃないの!?」
「まあ、そういう事になるね・・・」
 襲ってくるって事だけ分かっていれば良いと思っていたけれど、よく考えたら、こうやってダミーの荷馬車を走らせても、金の在りかは先頭の馬車だと特定されてしまうわけか。
 私と愁癒はすぐに立ち上がった。
 私は、荷馬車の後ろから顔を出した。
「歌琥、賊はきっと、前の馬車をピンポイントで狙ってくる」
 私がこう伝えると同時に、前では愁癒が、旺盛先輩に
「|幼臭《ようしゅう》さんの乗る馬車に寄せてください。もうすぐ賊がきます」
 と、伝えていた。
 ふむ、あの流通係補佐の名前は「幼臭」というのですな。
 今日だけは覚えておこう。
「前方、賊を発見!臨戦態勢をとれ!」
 旺盛先輩の声が聞こえた。
 良いタイミングだったな。
 ただ、金の中にマジックアイテムを入れていた事を考えると、この賊は遼東領主の回し者であるのだろう。
 正規の軍人を使っているって話もあるから、果たして我々で対応できるのかね。
 第四のエリートが集められているとはいえ、こちらはまだ子供だ。
 まっ、今日はライトの魔法も必要無いし、できる限りサポートするか。
 死にたくはないからね。
 そんな事を考えていると、愁癒が荷台の屋根へと上った。
 その華麗な身のこなしからは、うわさ通りの身体能力である事がわかる。
 愁癒と共にいれば守ってもらえると思っていたが、期待しても良いかもしれない。
 いや、それは無理か。
 このまま馬車を走らせた状態で、この敵を相手に戦い続けるのは無理だ。
 何処か戦いやすいところに馬車を止めて、迎え撃つなり、逃げられる状況を整えるなりした方がいい。
 私は馬車の前方へと移動した。
「旺盛先輩、どこか戦いやすい所で馬車を止めて戦うべきです」
「いや、このまま突っ切った方が良いだろう。愁癒がいる。なんとかするさ」
 話をしている間にも、賊からの魔法攻撃が始まっていた。
 私が乗っている荷馬車の屋根には愁癒が乗って、魔法の盾を展開しながら、賊への攻撃もしている。
 歌琥も前方に移動してきて賊への攻撃をしているし、後ろには孫感先輩もいるから、この荷馬車だけなら、走りながらの戦闘も可能かもしれない。
 だけど、賊のターゲットは、前を走る馬車だ。
 せっかくこの荷馬車に、金を積んでいるかの如く装っていたけれど、やっぱり賊にはバレバレのようだし、どうしたものか。
 そうこうしている間にも、賊は先頭の馬車への攻撃を強めていた。
 前の馬車に乗る珍形先輩が奮闘しているが、そんなにはもたないだろう。
 敵はただの賊ではない。
 黄色いマスクで顔を隠している事からしても「大尉」とか「軍曹」なんて呼び合う言葉が聞こえてくる事からしても、おそらくは遼東の兵士だ。
 そして兵士の多くは、何処かの魔法学園卒業生だ。
 第四の生徒は実戦馴れしているとは言え、本来なら敵う相手ではないはずだ。
 ざっと見たところ、潜在魔力だけなら愁癒や歌琥の方が上だが、人数も違いすぎる。
 我々が走る先に、大きな岩山が見えた。
 この賊を相手に有利に戦うには、その岩山を利用して戦うしかないと思えた。
「旺盛先輩、一旦あの岩・・・」
 私がそこまで話した時、前方を走っていた馬車の車輪が、敵の攻撃をうけて破壊された。
 車輪を失った馬車は、目の前で横転した。
 すぐにこちらの荷馬車も追い付き、旺盛先輩はそこで止めた。
 兎琴、罵蝶、愁癒が前に出て、尚も続く賊の攻撃を防ぐ。
「大丈夫ですか?」
 私は、倒れた馬車のドアを開けて、中に声をかけた。
「ああ、流石にこれはヤバイな」
 珍形先輩の言う通り、これは確かに色々な意味でヤバイ。
 珍形先輩の下敷きになっていた、幼臭とか言うおっさんが
「何がヤバイだ。さっさとわしの上からどけ!」
 と、偉そうに言ってきた。
 なんだか、こんな人を守らなければならない事が、腹立たしく感じられる。
「申し訳ありません」
 珍形先輩は、狭い馬車の中でなんとか立ちあがって、幼臭に手を差し伸べた。
 そうこうしている間にも、賊はこちらへの攻撃を続けていた。
 罵蝶は無双しているが、一人で全てを抑えられるわけではない。
 兎琴と愁癒は、こちらへの接近をかろうじて防いでいる程度。
 孫感先輩は魔法を止めてはいるが、数に勝る賊の攻撃は、徐々にその防衛網を削ってくる。
 旺盛先輩も、愁癒の加勢に入った。
 露色先輩と歌琥は、協力して大きな魔法攻撃を放とうとしていた。
「歌琥の魔法に呼応して、あの岩山の影まで行きましょう」
 倒れた馬車から出てきた珍形先輩にそう言うと
「そうだな。幼臭さん、合図したら、あそこまで全力で走ります。金袋は僕が持ちますから」
 珍形先輩は幼臭にそう言って手を差し出した。
 しかし、幼臭は嫌な顔をして
「いや、金は私が持つ」
 と言って、金袋を離そうとはしなかった。
 全く、逃げ遅れて死んでも知らないよ。
 と言うか、幼臭を守る事は今回の任務ではないし、金さえ守れればいいんだけどね。
 歌琥と露色先輩が協力して、強力な攻撃魔法を放った。
 それに合わせて、罵蝶、兎琴、旺盛先輩、愁癒が散開する。
「今だ!」
 珍形先輩の合図に、私と珍形先輩、そして幼臭は岩山に向けて走り出す。
 旺盛部隊の、|漢伏《かんふく》、|漢注《かんちゅう》、|減性《げんせい》は、もう一台の馬車と、荷馬車、そして馬車に繋がれていた馬に乗り、岩山へ向けて走らせた。
 私はすぐに荷馬車に飛び乗る。
 そして珍形先輩に手を差し伸べた。
 しかし珍形先輩は、幼臭を先にやろうとして、なかなか荷馬車に乗らない。
 私なら命の方が大切だから、幼臭なんて捨て置くけどねぇ。
 流石に珍形先輩だと言いたいところだけれど、此処でそれは命取りになりかねない。
「早く乗ってください!」
 ようやく幼臭の手が、私の手をつかんだ。
 私は思いっきり引っ張って、幼臭を荷台に引きずり込む。
「もっと優しく乗せんか!」
 おっさんが何か言っているが、今はそんな事に構ってはいられない。
「珍形先輩!」
 私が再び手を差し伸べた時、賊からの巨大な魔法が、こちらに向かってきていた。
 それに気がついた珍形先輩は、魔法の盾を展開した。
 走り続ける荷馬車は、そのまま珍形先輩を置いて走り続けた。
 賊の魔法が、珍形先輩の魔法の盾に行く手を阻まれる。
 だが、長くはもたなかった。
 数秒でシールドは消失した。
 大きな爆発が起こった。
「うああぁぁ!」
 珍形先輩はそのまま、爆発に呑み込まれた。
「珍形先輩!」
「珍形さん!」
 私の叫びと共に、別の馬車に飛び乗っていた孫感先輩の、悲痛な叫び声が聞こえてきた。
「くそっ!」
 あの爆発では、おそらく助からないだろう。
 私にもっと力があれば。
 そうは思っても、今はそんな事を考えている余裕はない。
 この状況を何とか打開しなければならない。
 他のメンバーは、なんとか岩山の後ろへと退避する事ができた。
 この岩山をぶっ壊せるほどの術者が敵にいたらどうにもならないが、とりあえず攻撃は止まった。
 これで、回り込んでくる敵にのみ気をつければ良い。
「珍形さん・・・」
 孫感先輩は、崩れるように座り込むと、顔を手で覆って泣いていた。
 これ以上の犠牲は出してはいけない。
「幼臭さん、その袋の中、確認させてください!」
 金を置いていけば、おそらく皆助かるだろう。
 私としては、何とか珍形先輩を回収し、金なんてどうでも良いから逃げ帰りたい。
 でも、珍形先輩が命がけで守ったものだ。
 なんとか、一番良い方法で、任務だけは遂行しなければならないと思った。
「だから、この中は見せられんと言っておろうが!」
 こんな命の危険な状況で、人が既に一人死んでいる状況で、このおっさんは、一体何を考えているのか。
 中にある、魔力を発しているアイテムを取りださないと、逃げられないのに。
 私が解せない気持ちに憤っていると、愁癒がいきなり声をあげた。
「幼臭さん!あなたは、助かりたくないのですか?!」
 愁癒は怒っていた。
「その中には、我々を追跡する為のマジックアイテムが入っているのです。それをハッキリ言わない凰印もどうかと思いますが。とにかく、それを何とかしないと我々は逃げられないと言っているのです!」
 それを大っぴらに言ってしまうと、遼東との関係がね。
 でも今は、そんな事言っている場合ではなかったな。
 私がバカだったと言う事か。
「そ、そんな物が、入っているわけないだろうが!」
 それでも幼臭は、認めなかった。
 そういう事か。
 このおっさんもグルだったって事か。
「失礼しますぅw」
 いつの間にか、幼臭の後ろに兎琴が立っていた。
 そして一撃、幼臭の首元へと打撃と電撃を喰らわせた。
 すると幼臭は、気を失って、その場に倒れた。
「さっ、金袋の中を改めましょうw」
 皆が目をまるくして唖然としている中、兎琴は涼しい顔で言った。
 兎琴ちゃん、怖い。
 でも、生き残る為だ。
 私はすぐに幼臭の抱えていた金袋を取り上げると、中を改めた。
 中には現金コインと同じくらい、沢山の宝石が入っていた。
 本来なら全部の宝石を取り上げてしまいたいが、時間も無いしそうは言っていられない。
 私は魔力を発している物だけを探した。
 すぐにそれは見つかった。
「これか・・・」
 取り上げて見ると、ブローチに宝石がついていた。
 私はそれを歌琥に投げた。
 それを受け取った歌琥は、皆を見回してから言った。
「誰かに、コレとダミーの金袋を持って、敵を引きつけてもらう」
 まっ、普通に考えればそういう作戦にはなるが、あまり気乗りがしないな。
 そのポジションはかなり危険だし、誰か一人を犠牲にするような作戦だ。
 それでもこの作戦でいくなら、迷わず罵蝶にやってもらいたいところだ。
 罵蝶ならそう簡単にやられはしない。
 が、罵蝶は今も接近する敵を近づけないように奮闘中だ。
 となると、旺盛先輩か・・・
 歌琥も同意見だろうが、流石に旺盛先輩には頼めないか。
 しばらく口をつぐんでいると、旺盛先輩がいきなり口走った。
「これは凰印、お前が持って敵を引きつけろ」
「えっ?」
 いきなり何を言い出すんだこの先輩は。
 皆、この命令がまともではない事を理解しているだろう。
 ハッキリ言って、任務の為に死ねと言っているようなものだ。
 だけど、この部隊のリーダーは旺盛先輩で、我々の部隊のリーダーがやられてしまった今、旺盛先輩の作戦に従うのは当然だ。
 それに、私一人で逃げるなら、ある意味楽かもしれない。
 最悪このブローチは、捨ててしまえば良いわけだし。
 よし、とにかく一刻も早く行動しないと全滅もあり得るし、此処は従おう。
「わかりました。歌琥、ブローチとダミーを!」
「おい!これは一番危険な役回りだ。やはり罵蝶にやってもらった方が」
 歌琥の言う事はもっともだが、私も偶には危険なポジションを担当しないとね。
 おそらく死んでしまっている珍形先輩に申し訳がない。
 私は、歌琥が差し出すブローチとダミー袋を、笑顔で受け取った。
「では、その馬をかります」
 そう言って私は、一頭の馬にまたがった。
 すると愁癒が、こちらに走ってきたかと思うと、私の後ろへと馬に飛び乗った。
「私も行きます!一人だと怪しまれます」
 愁癒の言動は確かにその通りではあるが、私は、少し嬉しかった。
 これで助かったと思ったからではない。
 明らかに私を、気づかってくれているのが分かったから。
 旺盛先輩は、少し驚き、そして悔しそうな顔をしていた。
 この人がリーダーで、よくもまあナンバーワン部隊になったものだ。
 それでも、旺盛先輩から発せられた作戦は、悪いものではなかった。
「まず、北の森の方に、凰印と愁癒、そして南側へは馬車で珍形・・・の第十八部隊メンバーで出発。敵がどちらか、或いは両方の追撃を開始すると同時に、我が部隊メンバーは金を持って、荷馬車でまっすぐ楽浪をめざす」
 要するに、一応敵に作戦を看破されている事も想定して、おとりをもう一つ用意したってわけだ。
 そして旺盛先輩は、手柄と安全も確保か。
 でも、果たしてそう上手くいくかな。
 これだと戦力を分散しすぎだし、何かが引っかかるんだよなぁ。
「では、速やかに作戦を開始せよ!」
 旺盛先輩の合図に、私は北の森を目指して馬を走らせた。
 少し遅れて、馬車に乗り込んだ歌琥たちも、南へ出発した。
 まずは予想どおり、多くの賊がこちらについてくる。
 歌琥の馬車はもう視界に小さいが、どうやらあちらにもそこそこの賊がついて行ったようだ。
 敵も案外単純だったか。
 それとも・・・
 まっ、この後は他人を心配している余裕はない。
 とにかく生還する事だけを考えよう。
 後ろからは、既に賊からの攻撃が始まっていた。
 それを愁癒が、魔法の盾で防いでいる。
 もし一人だったら、私も今頃こんなに余裕はなく、必死になっていたのだろうな。
「ありがとう、愁癒」
 私はなんとなく言っていた。
「ふん!私は負けるのが嫌いだからね」
 言っている意味は分からなかったが、私はなんとなく、少し照れている愁癒の事が、好きになれそうだと感じていた。
 森に入る頃、賊の追撃の手は明らかに減っていた。
 どうやらこちらの作戦は、もうすでにばれてしまっているようだ。
 だけど、これだけの時間を稼げたのだから、旺盛先輩たちは、なんとか楽浪へ逃げ帰れたと信じたい。
「どうするの?そろそろ、そのブローチは捨てて、逃げ帰る事にするの?」
 愁癒の提案は、正に良いタイミングだろう。
 だけど私は、これを持ち帰りたいと思っていた。
 一つに、このアイテムが、遼東の謀略の証拠になり得る事。
 そして、この魔法を少し研究して、あるものを作りたかった。
 異世界には携帯電話なるものがあった。
 あれがこの世界にあれば、今回のようにバラバラになった時でも、連絡を取り合える。
 それは、ミッションをよりスムーズに、確実にコンプリートできるって事だ。
「いや、この数の追手なら、私と愁癒ならなんとかなる」
 愁癒は私の言葉に、笑顔になった。
「あなた、魔力は少ないし使えない奴かと思っていたけど、実は結構やりそうね」
「そんな事はないよ。ただ、自分が助かる算段だけは、しっかりしているだけさ」
 本当にそうなんだ。
 私のように力の無い者は、そうしないと生きていける世界ではないからね。
 本当なら、珍形先輩も助けたかった。
 だけど私は、自分の命だけで手いっぱいだったんだ。
 罵蝶なんかは、自分以外にも沢山守る事ができる。
 きっと愁癒だってそうだろう。
 本当に悔しいよ。
 私も誰かを守れるようになりたい、そう思った。
「と言う事は、この状況を一人で乗り切る手立てもあったわけよね?」
 まあ、そういうわけだ。
 だが、私の能力の全てを話しているのは、歌琥だけだ。
 魔力の少ない私が生きぬくには、手の内は常に隠しておくに限るから。
 それでも、私を心配してついてきてくれた愁癒だ。
 私は少しだけなら、見せても良いと思った。
「まあね」
 私は魔力を高めた。
 すると私の目の前に空間のひずみが現れる。
「これは、異次元アクセスの魔法ね」
 そう、先日の賊退治の時、ゾンビを操っていたおっさんと同じ魔法だ。
 これは高度な魔法ではあるが、魔力はさほど必要としない。
 私はそこから、いくつかの魔力球を取りだした。
 私は魔力が少ないから、時間があれば魔力をためてあるのだ。
 もちろん、高価な宝石は使えないから、用途に応じて色々と工夫を凝らしている。
 これから使う物は、球状に薄く膨らませた鉄の中に、シェルを詰め込んであるものだ。
 それを後ろの愁癒に渡した。
「これを敵に向けて投げでくれないか?」
 異世界で言う、手榴弾のようなものだ。
 ただし、爆発の大きさは魔力に比例するから、今回用意したものは、手榴弾の比ではないくらいの、大きな爆発が起こるはずだ。
「あなたの魔力で、これだけの魔力をためるのは、いったい何カ月かかるのか」
 愁癒の言う通り、本来ならきっと、何カ月もかかるだけの魔力が、この魔力球の中にはおさめられている。
 だけど私は、魔力が他人より圧倒的に少ないが、それ故に回復力だけは人一倍早かった。
 だからこれを一つ作るのに、一日しかかからなかった。
 それでも一日かけて作ったもの。
 使うのももったいないけど、こんな時の為に用意したのだ。
「遠慮なく、投げつけてくれ」
 私の言葉に、愁癒は追撃してくる賊に、次々に魔力球を投げつけた。
 私は千里眼で後方を確認しつつ「|魔法の矢《マジックミサイル》」を放った。
 魔法の矢は、矢を模したものだから、本来大きさもそれくらいある。
 だけど私の魔力量では、それは魔力の無駄使いというもの。
 と言うか、通常の大きさだと、魔法の矢を放つ事もできない。
 だから私は訓練を重ねて、魔法の矢を針くらいの大きさまで小さくする事で、魔法の発動を可能にしていた。
 私の放った魔法の矢は、投げつけた魔力球に命中する。
 途端に大きな爆発が起きた。
 追手の何人かは、咄嗟に魔法の盾を展開したが、私の攻撃の良いところは、魔法の爆発だけではなく、飛び散る鉄の破片が存在する事だ。
 魔法耐性の高い人にも、物理攻撃でダメージを与えられる。
 当然圧縮された魔力の爆発も大きく、シールドなど簡単に打ち破った。
 馬に乗り走りさる後方の森が、大きく炎上した。
「これで、しばらく追ってこれないよね」
「凄いじゃん。あの魔力球を狙い撃てるなんて」
「まあこれくらいできないと、私なんて生きていけないって事ですよ」
 愁癒は、なんだか楽しそうだった。
「ところでさ、さっきの異次元アクセスの魔法が使えるなら、お金とか、そのブローチも、異次元に送っておけばいいんじゃないの?」
 愁癒の考えはもっともだ。
 だけどこの魔法は・・・
「異世界の住人との契約が必要な魔法だから、そう簡単にもいかないんだよね」
「要するに、決められたものしか、無理って事か」
「理解が早くて助かります」
 私と愁癒は、顔を見合わせて笑った。
 愁癒とは、なんとなくうまくやれそうな気がした。
 だけど、また次の実戦からは、別の部隊なんだよな。
 同じ部隊でやりたかったよ。
 そんな事を考えていた私だったが、楽浪に戻ってから、その望みが、悲劇の後に達成される事は、この時は思いもしなかった。

 私と愁癒は、後方の追手が無くなった事を確認してから、一旦先ほどの岩山付近に戻った。
 そこで、珍形先輩の亡きがらを確認し、愁癒の魔法で火葬してから、楽浪へ帰宅の途についた。
 既に辺りは真っ暗な時間だ。
 疲れもピークに達しており、今すぐベットに入って眠りたい気分だった。
 それでも私たちは、学園の学園長室へと戻らなければならなかった。
 任務報告の為、珍形先輩の死の報告の為に。
 それに、きっと大丈夫だとは思うが、旺盛先輩たちのミッションコンプリートも確認しなければならない。
 報告は、|高村産《こうそんさん》学園長に行う。
 私は学園長室のドアを叩いた。
「珍形部隊、凰印戻りました」
「旺盛部隊、愁癒戻りました」
 すると内側からドアが開けられた。
 ドアを開けたのは、歌琥だった。
「凰印、無事だったか。良かった・・・」
 歌琥の安心しようは、少し大袈裟なくらいだった。
 普段なら、此処まで心配させてしまう事など、まずあり得ない。
 歌琥自身が、私を守ってくれているからだ。
 それでも、今日の歌琥の安心のしようには、違和感を覚えた。
 まさか、珍形先輩以外にも、誰かがやられたのだろうか。
「ああ。他の人達は無事か?」
 学園長室に入りながら、室内を見回すと、珍形先輩以外の皆の顔があった。
 私は一瞬ホッとしたが、その表情がすぐれない事に、そして旺盛部隊の面々がいない事に気がついた。
「俺達の部隊は、珍形先輩以外は無事だが、旺盛先輩の部隊は・・・」
「そうか・・・」
 今日の任務は失敗で、二つの部隊の半数を失ったって事か。
 私は、隣で涙を我慢している愁癒の肩を、いつの間にか抱いていた。
 その後しばらくは、誰も言葉を発しなかった。
 気がつくと、孫感先輩が泣いていた。
 皆ソファーに座り、ただ、学園長が来るのを待った。
 しばらくすると学園長がやってきて、皆は淡々と報告を行った。
 私と愁癒からの報告は、珍形先輩の亡きがらの確認と火葬を行った事。
 そして、遼東の謀略の証拠となり得る、ブローチの提出だ。
 歌琥たちは、旺盛部隊の壊滅の確認と、幼臭が行方不明である事の報告だった。
 全てを総合すると、遼東に賄賂で懐柔された幼臭に、みんなはめられたって事か。
「そうか。残念だ」
 学園長の言葉は、我々だけでなく、楽浪全ての住人の気持ちであるはずだ。
 学園が口出しできる事ではないが、今後遼東との間に、紛争が起こる事は明らかだった。
「では、みんな任務御苦労だった。部隊の欠員補充や再編については、後日発表する」
 そう言った高村産学園長の言葉で、皆は一人、また一人と部屋を出ていった。
 私は、最後まで部屋に残っていた。
 学園長にお願いがあったからだ。
「どうかしたか?今日は疲れただろう。早く部屋に戻って休みなさい」
 学園長の言う通り、確かに心身ともに疲れていた。
 だけど、今後の為にも、今できる事は今したかった。
「そのブローチ、私に貸してもらえませんか?」
「これをかね?復讐にでも使うつもりか?」
 学園長は、どうやら私が、このアイテムで敵をおびき出し、復讐するのではと思ったようだ。
 まあ、それも面白そうではあるが、私にそんな大それた事ができるわけもないし、もうこのブローチを追跡する事は無いだろう。
 別に金と一緒に有るわけではないからね。
「いえ、この魔力を研究して、マジックアイテムの開発をしようかと思いまして」
 これは、幼臭が、遼東が裏切った証拠になり得る品だけど、もうそんな事で訴える前に、遼東から何か動きがあるだろう。
 楽浪を攻めるにしても、又は他の行動だとしても。
 こちらの学生六人を殺して、金品を奪ったのだから。
「ふむ。分かった。それは君に預けよう。あっいや、好きに使ってくれ」
「ありがとうございます。きっと面白いものが作れると思いますよ」
 私は、今日の最後に笑顔を作って、学園長室を後にした。
 だけど心の中では、自分の不甲斐なさに、憤りと悲しみがあふれていた。
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ドクダミ

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