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25話 ミッションコンプリート

最初はやっちまった感のあったオーガ王国創り。
しかし始めてから3ヶ月が過ぎ、何とか形になった今ではホッとしている。
オークの説得も大変だったが、ゴブリンを説得した時同様、少し脅しも入れてなんとか納得してもらった。
そしてオーガにもゴブリンにもオークにも、教えられる事はとりあえず教えた。
今では皆結構穏やかになり、オーガの町に行ったり農作業をするのが楽しいという者も多くなっていた。
後は妖精王国の時のように、問題が出たらその都度対処していくだけだった。
不満を持つ気性の荒い者もまだまだいたが、今は各種族の王の力によって、抑えてもらっていた。
俺はオーガの王ガザと、オークの王ブリュン、そしてゴブリンの王ゴンザレスに、それぞれ魔法通信用耳飾りを渡しておいた。
問題があれば直ぐに連絡ができるようにね。
教育係をしていた妖精たちは元の生活に戻ってもらい、知里ちゃんのマイヒメも帰した。
俺もツクヨミを残してこの地を去る事にした。
後は自力で頑張ってもらう。
ずっと助けていても成長はしない。
何かあったら三種族助け合って解決してほしいのだ。
自ら考えて生み出したものには誇りも持てるだろう。
満足感も得られるだろう。
そうして自らの力で楽園をつかみ取って欲しいと思った。

しかし元のパーティーに戻ったはいいけど、完全に手詰まりだった。
大陸の東にある町は全て回った。
情報収集もしている。
しかしそれだけでは三龍の居場所を特定するに至らない。
更なる情報を求めるも、それ以上内陸へと進む事が出来なかった。
大陸の中心からやや東に大きな山がある。
更にその南北にも山があり、この辺りを国境に、先は別の国になっているのだ。
こちら側の国はアルファ王国で、国境の向こうはベータ王国とガンマ王国である。
この三国は今一触即発の状況らしく、国境が封鎖されているのだ。
三国の争いに三龍のクエストともなれば、何か関係してそうだと思わなくもないが、正直このクエストにも飽きていた。
そこで俺は裏技を使う事にした。
スーパーシティは既にそういった諸々のクエストを達成した者だけが訪れる地だ。
あくまでゲームプレイヤーの話だが、そういった者が最後に訪れる町なのだから、ゲームだったらNPCが知っていてもおかしくはない。
俺は砂の分身を置いてスーパーシティを訪れた。
まずはギルドに向かった。
情報が集まるなら当然この場所だ。
俺は久しぶりにギルドに入ると、酒場のカウンター席に座って聞き耳を立てた。
当然魔法を使って|地獄耳《デビルイヤー》だ。
三龍の話をしている者はいない。
当然と言えば当然か。
この世界は、まだ三龍クエストがクリアされていない世界なのだ。
一応受付でも聞いてみたが、情報は全くなかった。
完全に今行ける範囲での情報収集は終わっているはずだ。
まだどこかに見落としている場所があるのだろうか。
そこでふと気が付いた。
正しくクエストをクリアしていない個所が一ヵ所ある。
オーガ討伐クエストだ。
オーガを倒さないと駄目だったと考えれば、その答えはオーガか、或いはオーガの城か。
当然だがガザには三龍の事は聞いている。
そもそも倒すはずだったオーガがやられる前に何かを教えるというのも変な話だ。
俺はオーガが元々住んでいたリオの村近くの城へと行ってみた。
千里眼を使って何かを探しつつも、俺自身も中を歩いて調べてみた。
何もない。
オーガは何も関係がなかったのだろうか。
俺は最奥の宝物庫に到着した。
「あれ?もしかして宝の中に何かあったのかもしれない」
俺は一応確認する為にオーガ王国へと瞬間移動した。
ガザに許可をもらい、俺は城の宝物庫の中へと入った。
さて、何か情報となる物はあるのだろうか。
探し出すといきなりそれらしき物が目に入った。
「‥‥これ三龍の魔石じゃねー!?」
今までの時間は一体なんだったのだろうか。
魔石が必要と分かった時、何故三龍を倒す事だと思ったのだろうか。
あらかじめマジックソードRPGのクエストを知っていたからだろうか。
何にしても、俺は勘違いをしていたようだ。
直ぐに知里ちゃんにその事を伝えた。
「ガザ、この魔石3つ、貰ってもいいか?」
「もちろんだ。これだけの事をしてもらったのだから、いくらでも願いがあれば聞く。この世界を征服する為に力を貸せと言われても大丈夫だぞ」
「いや、それはしないから」
オーガだからこういう発想になるのかな。
いや、こういうのが差別に繋がるのだ。
これはガザだからガザの考えとしての発言であって、決してオーガだからではない。
人間だってこういう発想をするヤツはいるのだ。
「ありがとう。では貰って行くぞ。問題があればいつでも連絡をくれ」
俺はそう言って瞬間移動で仲間たちの所へと戻った。
さてしかし、砂の分身と入れ替わる前に思った。
今更この魔石を出すのもなんだか気が引ける。
『持ってました』じゃ大ひんしゅくだ。
俺は姿を消したまま、町中を歩いている時にシュラトの腰についたアイテムバッグに三龍の魔石をコッソリ入れた。
「ん?」
俺はわざと、何か違和感を覚えるように入れたので、当然シュラトは何かに気が付いた。
「どうかしたのか?」
ガゼルがシュラトに聞いた。
「いや、今誰かにアイテムバッグから何か盗まれたような気がしたんだ」
「スリかもしれない。調べてみたらどうだ?!」
俺は少し語気を強めて確認するように言った。
「ああ。そうだな」
シュラトはアイテムバッグを開けてみた。
するとそこには、三龍の魔石が入っていた。
「なんだこれは?」
「大きな魔石なのだー!もしかして三龍の魔石だったりして!」
アマテラスの言葉に、それぞれに驚き反応を示した。
それをバッグに入れた者を探す者、その魔石を確認しようとするもの、シュラトが持っていた事を疑う者などそれぞれだ。
流石に疑われては可愛そうなので、俺はフォローを入れた。
「さっき怪しいヤツを見たぞ。顔を隠していてシュラトの近くを通り過ぎていった」
「探しますかリーダー?」
俺の言葉に冒険者の一人がそんな事を言い出しやがりましたが、ガゼルがそれを制した。
「いや、今から探しても見つからないだろう。それよりもそれが三龍の魔石かどうか、リオの村に戻って確かめよう」
ガゼルの言葉に皆が頷いた。
こうしてなんとか、無駄に過ごした3ヶ月は報われたのだった。

更に1ヶ月後、馬車も使ってようやく俺達はリオの町へと戻ってきた。
普通の冒険者というのは、よくもまあこんなかったるい旅を続けているものだ。
飛翔魔法が使えるようになれば、この距離なら1日もかからないだろう。
スピードを出せるようになればおおよそ4時間だ。
それでも結構時間はかかる。
それがもしもゲームだったとしたら、ゲームをする者はいなくなるかもしれない。
だから瞬間移動という魔法が存在する事になるのだろうね。
ゲームによっては、町に転送魔法や転移魔法の装置が置かれていたりするものもあるけれど、そんなゲームはしたくないなと思った。
転送装置は、魔法陣を囲うように3つある。
それぞれに手に入れた魔石をはめ込んでみた。
特に何か反応があるわけではなかった。
「何も起こらないな」
ガゼルの言う通り何も起こってはいない。
しかし今、転送装置が元の姿を取り戻したように感じた。
そう、確かこちらに来る時に見た転送装置にも、このように魔石がはまっていたわけで、その状態と今の状態は全く同じだと思った。
「後は魔法陣に入り、3ヶ所同時に魔力を込めれば転送されると思う」
「来る時は、外から別の人が魔力を込めていたよね」
知里ちゃんの言う通り、それで『送る人がいないと使えない』のではと思ったんだよな。
「ああ。送り手がいないと無理なのかとも思ったけれど、内側からでも魔力は注げるよな」
「ただし3人必要という事か」
ガゼルの言う通り、3人必要な転送装置という事だね。
「じゃああたしはこのままこっちで冒険を続けるよ!」
アマテラスはまだまだ元気だった。
これだけ色々と振り回されても、何時も楽しそうだった。
冒険も旅も好きなんだろうと思った。
「分かった。何かあったらすぐに助けにいくから、その時は連絡よこせよ」
そうは言ったものの、アマテラスはもう新米冒険者じゃない。
経験豊富で今や神クラスになっている。
俺の与えた魔力が大きいのはそうだけど、無くてももう一流だ。
「いえっさー!じゃあね!」
アマテラスはそう言うと、外へ飛び出してそのまま飛翔して飛んでいった。
「流石にSSランクだな。そしてこのミッションで間違いなくSSSになるだろう」
ガゼルがどういう報告をするのか分からないが、俺のランクは上がらないよう願うばかりだった。
「ではヒカゲパーティーと俺は一旦戻る。報告もあるからな。他は引き続きこの地に残り、転送装置を守っていてくれ」
「了解した」
ありゃりゃ。
レッドギルドの冒険者さんは大変ですな。
多分職員冒険者か。
そして転送先であった海沿いの場所とこのリオの村を掌握して、いよいよこちらの大陸に進出という事になるのだろう。
レッドギルドというか、ルシフェル皇帝の初仕事か。
俺と知里ちゃん、ヒカゲは魔法陣に入った。
「ヒカゲはこの冒険どうだった?」
「やりたかった戦闘も飽きるほどできたし、大満足よ。三龍を探した3ヶ月は本当に楽しかったわ」
ヒカゲがそう言うのなら、俺が見過ごしたチョンボも良かったと思えるか。
こうしてトータル4ヶ月にも及ぶ新大陸ミッションは終わるのだった。
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ドクダミ

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