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15話 魔王イベント終了 そして‥‥

荒野にて、魔王を先頭に多くの悪魔が飛んでくる姿を勇者たちはとらえた。
「なんて数だ‥‥」
勇者よ、ビビるんじゃねぇぞ!
確かにあの数をこの少数で相手するとしたなら、いくら強くなった勇者でもやられる可能性は十分にある。
ガブリエル防衛部隊は全滅してもおかしくない。
ただ、俺の7体のゴーレム総出で力を貸すのだ。
なんとか雑魚は俺が処理する。
戦いが始まれば他には目も向けられないだろう。
本体が軽く魔法を使っても良いかもしれない。
暗くて色々見えづらいしね。
「勇者とはどいつだ?俺が直々に相手をしてやろう!」
ゼウスには散々『勇者がくれば魔王を倒してくれる』なんて吹き込んでおいた。
そのおかげでどうやら魔王の方から勇者の相手をしてくれるみたいだ。
「俺が勇者アベル!魔王よ!倒させてもらう!」
勇者は魔法による足場を移動して空に上がった。
良い感じだ。
敵の数が多いから、勇者パーティーは勇者と魔王の戦いに参加するどころでない。
アマテラスにも、勇者を支援するのではなく、雑魚悪魔を倒してくれと通信魔法で言っておいた。
概ね問題はなかった。
「ゼウスとやらはどいつだ?このルシフェルが相手いたす!」
「なかなか強そうだな。相手にとって不足なし!」
こちらもいい具合に組み合わせ成功。
ルシフェルは飛翔できるようで、空でゼウスと向かいあった。
後はいいタイミングで倒してくれれば‥‥
そう思ったが、ルシフェル皇帝の方が一枚も二枚も力が上だ。
戦闘開始早々、一気に片が付きそうな状況だった。
あまりに早くにゼウスをやっつけてしまうと、魔王たちに勝った時の喜びとかありがたみが薄れてしまう。
せめて勝利した時、雑魚はある程度減らして起きたい。
ほら、アッサリ魔王とゼウスがやられたら、残った大量の悪魔はどうなる。
襲ってくるなり逃げるなりすると思うが、余韻に浸る時間がなくなる。
できれば雑魚は片づけ、ゼウス、魔王の順番で倒したい。
俺は急いで悪魔たちを蹴散らした。
もちろん砂のゴーレムでね。
アマテラスにも本気を出してもらった。
即行雑魚処理なのだ。
そんな中、勇者と魔王が戦うエリアへ飛び込む者の姿があった。
「魔王様、味方します!」
それはガブリエル王だった。
「ちょっ!」
ここへ来て魔王に味方するとか、何かあるかも知れないとは思っていたけど、聞いてないよ!
ガブリエルの姿が闇の魔力に包まれる。
そして次の瞬間に、その姿はまさしく悪魔のモノとなっていた。
一気に魔力も高くなり、魔王並の強さになっていた。
「しかも強くなってるし!」
勇者に二人相手は無理だ。
そう思った時、アマテラスが飛翔してガブリエルの前に出た。
「魔王が現れる時、魔人は闇に落ちると悪魔になる。妖精界ではそんな言い伝えがあるんだよー!」
説明ありがとう。
知らなかった。
つかなんで知ってる?
そんな設定もあるのね。
もしもルシフェル皇帝に正義の為の戦いを勧めていなければ、もしかしたら真の魔王はルシフェルだったのかもしれないな。
頭がこんがらがる。
しかしとにかく今だ。
魔王は勇者が、ガブリエルはアマテラスが、ゼウスはルシフェル皇帝が相手を続けていた。
魔王と勇者は互角に見える。
ただ底力は勇者の方が上だし、最後は倒してくれるだろう。
ガブリエルはアマテラスに魔力では劣るが、悪魔になった今、割といい勝負になっている。
そしてゼウスは、今ルシフェルに倒された。
「よし!」
タイミング的には割と良い方か。
さてルシフェル皇帝はこの後どうする?
ガブリエルが悪魔化していなければ、勇者と共に魔王と戦ってくれても良かったかもしれない。
しかしガブリエルがいる今、まずはそちらという気もする。
ルシフェルは魔王へと向かった。
この流れだと、早急にガブリエルを倒してしまう必要があるな。
雑魚処理は目途がついたし、砂のゴーレムたちはアマテラスに加勢するか‥‥
しかしその必要はなかった。
勇者パーティーの面々がアマテラスに加勢に入った。
「アマちゃん助けてやるぜ!」
「私たちも勇者パーティーなのよ!」
「頑張る!」
槍のジョニー、魔法使いミリア、そして獣人ネネがガブリエルに攻撃を仕掛けた。
アッサリとガブリエルを打ち取った。
最後を決めたのはネネだった。
後は魔王だけだ。
そう思った瞬間に、魔王を倒したのはルシフェルだった。
「あ、勇者の予言が‥‥」
その時、魔王が落とした魔王の魔石を掴んだのは勇者アベルだった。
「勇者アベルが魔王の魔石を手に入れたぞ!」
砂の俺が声を上げた。
皆から歓声があがった。
余韻に一刻も早く浸れるように、他の砂ゴーレムはその間も雑魚の掃討を必至に続けていた。
雑魚が片付いた後、俺は砂の俺を残して早々に他のゴーレムの姿を消した。

結構楽勝だったが、それでもそれなりに魔王討伐は盛り上がった。
おそらくだが、国が動かなくても、勇者が現れなくても、この大陸の冒険者が力を合わせれば割となんとかなったかもしれない。
もちろんあらゆる町に被害は出ただろうが、人類全体で魔王を倒したって事で、今よりも盛り上がった可能性は高い。
それでも、なんとかルシフェル皇帝が魔王ではなく、人類側としてしっかりと戦ってくれるという事は伝わっただろう。
勇者アベルの存在も、人間族の希望の光になったはずだ。
俺から見れば、ルシフェルとアベルなら確実にルシフェルの方が強いと思うわけだが、世間としては割と対等に見られたようで、アベルの存在が魔人に対する恐怖というものを薄れさせた。
それでも魔人に対する恐怖や差別意識がいきなりなくなる訳もなく、ルシフェルは自ら皇帝の座を降りた。
そして新たな皇帝としてアベルが、ルシフェル皇帝の座についた。
ルシフェル皇帝は王のいなくなったガブリエル王国を引き継いだ。
つまり、ルシフェルガブリエル国王だ。
ややこしいが、これからはルシフェルがガブリエルなのである。
この面倒で分かりにくい状況になったのは、間違いなく俺の責任だろう。
もしもこちらの世界の出来事が、転生前の世界のゲームにも影響を与えたとするなら、ユーザーは皆この展開に疑問を訴えているに違いない。
勇者パーティーは解散となり、ジョニーは帝国軍大将に就任、ミリアはアベルと結婚し、ネネはアベルの傍で側近兼護衛役となった。
アマテラスは任務を終えたので、好きにさせる。
今度は一人で冒険の旅に出るそうだ。
ルシフェル帝国でルシフェルの側近だったルーブルはルシフェルについていき、今後はガブリエル王国で王の側近となる。
結果論だが、この結果は悪くなかったように思う。
何もしなければ、今後もまだ魔人への差別は残り、産まれてくる魔人は全て角を折られる事になっていただろう。
しかしアベルが皇帝となったこの世界では、そのルールは廃止される事になった。
人族は皆、人間も魔人も、エルフもドワーフも、そして獣人も対等という事になったのだ。
ガブリエル王も、今後は魔人である事を隠す必要がない。
他の隠れ魔人もそうだ。
もちろん差別が急になくなるわけではないから、まだまだ生きづらい所はあるだろう。
でも個人的なものは、個人の力できっと変えていけるはずだ。

魔王討伐から1ヶ月、俺は十分に休養をとった。
これからこの世界がどうなるかは分からない。
でもそれが普通なのだ。
「そして俺はようやく本格的にこの世界を楽しめる、はず‥‥」
魔王討伐イベントは、サービスイベントとして企画されたものだったという事を思い出していた。
そんなイベントで、俺はおそらく全悪魔の9割を倒してしまった。
結果、大幅にステータスが上がってしまった。
討伐ボーナスは、ステータスの割合アップか何かだったのだろう。
「明らかに俺のステが上がっている‥‥」
普通に経験値を稼いだ所で、俺が強くなる事なんてもうあり得ないと思っていた。
もしも強くなるとしたら、それは割合によるステータスアップしか考えられない。
ますますチートな能力になったので、自分にかけた常態魔法をかけ直したりもした。
思考も14まで増やせてしまった。
そんなにあって何に使うというのだ。
まあでも今回、8つじゃ足りないと感じるところもあったし、またゴーレムを増やそうか。
必要になればきっとそうする。
「さて、新たな冒険の旅に出るか」
俺がそういうと、自室のドアをノックする音が聞こえた。
「どうぞ!」
ドアを開けたのはセバスチャンだった。
「どうかしたのか?」
「ああ。魔王城から、他の大陸に行く事ができる魔法転送装置が発見されたらしいぞ」
そういえば、マップがアップデートされてからずいぶん経っていたなぁ。
新マップが来ても不思議ではない。
「そっか。じゃあ次の冒険はその大陸だな」
俺は瞬間移動魔法で魔王城へと移動するのだった。
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