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13話 続く誤算!魔王イベント始まる?

ステータスの種集めはとにかく疲れた。
だから俺は1週間ほどゆっくりと休んでいた。
それでようやく疲れもとれてきたように思えたので、俺は最後に勇者の強さを確認しておこうと思った。
アマテラスに今いる場所を聞き、俺は勇者を見に行った。
会う事はしない。
ただどれくらい強くなったか見る為だ。
あれだけのステータスの種を食べたんだ。
成長分を考えれば、おそらく大魔王クラスに近い強さになっていると考えられる。
それにあれだけの装備補正を加えれば、神クラスに近い強さになっていても不思議ではない。
1年近く冒険者もしてきているし、仲間もいる。
アマテラスがいなくても、他のパーティーメンバーで協力すれば、十分ルシフェル皇帝を倒せるくらいにはなっているだろう。
俺は勇者を見るのが楽しみだった。
いよいよミカエル王都で勇者をとらえた。
強い魔力を発している者が集まっている。
しかし、どうも違和感を覚えた。
最も強い魔力を発しているアマテラスがいて、他にそのレベルに達している者がいないのだ。
俺は千里眼を使って見てみた。
確かにアベルはいる。
しかし強さはせいぜい魔王クラスで、思った以上に低かった。
あれだけの装備が有ったとしても、ルシフェル皇帝には勝てないかもしれない。
「どうしてこうなった?」
俺はすぐに気が付いた。
他のパーティーメンバーが思った以上に強くなっていたのだ。
これはおそらく、種の半分くらいはパーティーメンバーが食べたのではないだろうか。
俺は勇者へステータスの種を渡した。
食べたら強くなれるという事も伝えた。
でも、全部勇者一人で食べるよう伝える事を忘れてしまっていたようだ。
いや、予言者が勇者に与えたものなんだから一人で食えよ!
そう思ったが時既に遅しだ。
これは再び種集めをしないと駄目だろう。
正直もう良いかという気持ちもある。
せっかく取れた疲れが、再び俺を襲ってきた。
「そうは言ってもまだ魔王イベントが始まるまでには1ヶ月以上ある。やれる事はやっておくか‥‥」
俺はそう思ってイースランドへと瞬間移動しようと思った。
しかしその前に、俺は町の違和感に気が付いた。
何やら町の者たちが騒いでいる。
俺は建物の屋根の上から辺りを見渡した。
探索魔法にも引っかかっているが、どうやらミカエル王国軍が出陣しようとしているようだった。
「何かあったのかね‥‥」
俺は姿を消したまま、王宮へと向かった。
王宮では兵たちに向けてミカエル王が演説をしていた。
「人間と思われていたルシフェル皇帝は、実は魔人だった!我々は騙されていたのだ。各王たちとの話し合いの末、四王国でルシフェル帝国に対抗する事に決めた。各国既に出陣の準備は整った。これより帝都に向けて進攻を開始する!」
なんて事だろうか。
どうやら皇帝が魔人である事がバレてしまったようだ。
しかし本来魔王討伐イベントは、後1ヶ月以上先ではなかったのか。
これは少し予定と違う。
予定が狂う何か要因があったとすれば‥‥
「俺が魔人である事を知って、妖精王たちに話したからか‥‥」
妖精王にしてもセバスチャンにしても、無暗にそれを他人に話す事はしない。
しかし対魔王の為の準備をするとなれば、最低限は話す必要が出てくる。
そうなれば秘密が漏れる可能性は高くなってゆく。
誰が漏らしたとかそういうのは問題ではない。
俺の行動が魔王討伐イベントの発生を早めてしまったという事だ。
そしてそれは今、始まっているという事実があるだけだ。
これで勇者も帝都に向かう事になるのだろう。
そして俺も、これから情報を集めて対応する必要がある。
無事魔王が討伐できるように、影から支援するのだ。
最悪俺自身で倒す事になるかもしれないが、出来る限りそれは避ける。
目立ちたくないから‥‥
いや、本心はそれじゃない。
俺のやった事でこの世界の未来を左右してしまう責任から逃れたいのだ。
自らの手で人を殺したくないのだ。
この先この世界で生きていくなら、当然人を殺さなければならない状況にもぶち当たると思う。
でも、できる事なら殺したくない。
魔王が現れるのなら、それはそれで倒す必要があるのも分かっている。
かといって、魔王が本当に悪だとも限らない。
戦争なんてものは、お互いに言い分があるものだ。
相手の気持ちを悟ったら、俺にはそれでも立ち向かえる自信がなかった。
「とにかく、各王様の気持ちはだいたい想像できる。でも皇帝がどのように考えているのかは分からないし、角無しのガブリエルは本当に皇帝を叩くつもりなのかも疑問だ」
俺はこの2点を確かめる為、まずは帝都に行く事にした。

瞬間移動魔法ですぐに帝都内に移動した俺は、姿を消したまま皇帝らしき人物の所へと近づいていった。
テレポートで城に入りとにかく近づく。
ルシフェル皇帝が何かしら対応を考えているのか、或いは悪事を企てているのか、皇帝がどういう人で何を考えているのかが知りたかった。
「各王たちが私を打ちに来るか‥‥」
「ああ。なんとか全ての人種が共生できる世界にしたかったが、今お前が魔人だとバレたのは痛いな」
「魔人も共に生きられる世界を夢見ていたのだがな」
ルシフェル皇帝と話しているのは、側近のルーブルだろうか。
話し方から見るに、部下というよりは同じ志を持った友人に見える。
そして話の内容から、既にこの皇帝が悪い人ではないように感じた。
確かに魔人である事を隠していたのはどうかと思う。
この大陸のルールを破っているわけだからね。
しかし目的を成す為にはそれも仕方がないし、その目的は決して悪いものではない。
転生前の世界でもそうだが、全ての人々がいがみ合わず共生できる世界というのは、理想として目指す人も多かった。
ただ、それを成すには焦ってはいけない。
無理に共生しようとしても、問題がある内はそこから逆に亀裂が生まれる。
理想を成すには現実を見なければならないのだ。
そういう意味で、この皇帝はミスをしたと言えるのだろう。
そうは言っても今回のこの流れは、おそらく俺が悪い。
それにどう見てもルシフェル皇帝が魔王とは思えないのだ。
イベントが始まるまでまだ1ヶ月以上あったわけだし、時期的にもおかしい。
「誰かに見られているな」
「うむ。わずかだが気配も感じる」
マジか?
俺は慌ててその場からテレポートで離脱した。
俺の透明化、そして気配を消す魔法でも、魔王クラスになると察知されるようだ。
悪意を持って近づけば完全にバレるだろう。
そして魔法を使わされたのは失敗かもしれない。
少なくとも魔力を感じ、その魔力から俺だという事がバレる可能性がある。
魔力には個性があり、それぞれ感じが違うのだ。
もしもこの二人が、どこかで私が魔法を使う所を見たら、あの時の気配は俺だったのではないかと勘づかれる危険性がある。
この一見で言える事は、もしも本当に自分があまり大ごとに関わりたくない、有名人になりたくないなら、やはり魔王を倒すのは俺であってはいけないし、戦闘のサポートもできないだろう。
ただ、俺のせいで状況がややこしくなった節があるわけで、流石に無視もできないと思った。
「さて、次はガブリエル王の真意を確かめに行くか」
俺は瞬間移動魔法でガブリエル王都へと移動した。
俺は空を移動し、直ぐにガブリエル王を見つけた。
姿は透明化したまま気配も消して、城内にテレポートする。
また気づかれる可能性はあるが、話を聞く為には仕方がない。
俺はガブリエル王と軍の隊長連中が集まる部屋へと入った。
「ミカエル王は既に出発したようですね」
「我々もそろそろ出発しましょう」
「そうだな」
これからルシフェル帝都に向けて出発するようだ。
「で、結局我々のターゲットはルシフェル皇帝でいいのでしょうか」
「どういう事だ?それ以外に何かあるのか?」
「俺達はそもそも今の人間中心の社会に嫌気がさしていた所だ。此処には俺のような角無しか、差別の対象とされる獣人しかいない。むしろ皇帝側についた方が良い気がする」
シュメールだ。
やはり魔人側につくという選択肢はありそうだ。
「ガブリエル王は共に出陣するとは言っておられたが、その言い方から察するに‥‥」
「ちょっと待て!」
部下の一人が話すのを制したのはガブリエル王だった。
やはりこのクラスになると俺の存在は察知されるか。
俺はテレポートで場外へと移動した。
そしてすぐに瞬間移動魔法で自宅へと戻ってきた。
雰囲気から察するに、十中八九ガブリエルは皇帝に味方するように思える。
その場合、他の王たちと協力するフリをして、そちら側を襲う可能性もありそうだ。
普通に事が進めば、全ての戦力が帝国領に集結するのは1ヶ月後くらいか。
それまでも多少戦闘が起こる可能性があるが、イベント開始時期と重なると言えばそうとも考えられなくない。
ただ、やはり違う気もする。
あの皇帝が突然悪意ある誰かに操られたりして魔王になる可能性あるが、どうもしっくりこない。
ガブリエル王が何らかの理由で魔王になる可能性だって考えられる。
なんにせよ、もしもルシフェル皇帝が魔王でなかったら、俺はとんでもないミスをしたことになる。
とにかく1ヶ月は戦闘を阻止したい。
正確には33日間。
「こうなったら各王国軍の侵攻を邪魔して、少しでも遅らせるか」
ベッドに横になって天井を眺めながら、俺は砂のゴーレムを5体作った。
夢、和己、知里、今日子、義経だ。
俺はこれらを瞬間移動魔法で移動しながら、各王都と帝都へ送った。
本体の俺は、部屋のベッドの上で対応に備えた。
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ドクダミ

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