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第六話 岡崎まこと

カワイイ女の子との出会いは、人生最大の幸福だ。
誰かがそんな事を言っていた。
それがもし本当だったら、俺は最大の幸福を沢山経験している事になる。
教師という職業は、それはもう沢山の人との出会いがある。
歳の差というものがあるし、多くの女生徒をカワイイと思えた。
全てを覚えてはいないが、100人や200人ではない。
おそらくは1000回以上の人生最大の幸福を感じたに違いない。
先に述べた言葉が、俺の価値観から来る言葉なら・・・

今日も俺は、早めの登校をし、教室でおにぎりを食っていた。
既にその光景は当たり前となっていて、特にこちらに驚きの視線を向ける者はいない。
元々大した事をしているわけではないしな。
それに最近では、俺の行動を真似て、パンやサンドイッチを食べる者もいた。
今日は吉田君も、共におにぎりをほおばっていた。
軽くどうでもいいテレビの話をしていたら、きららが教室に入ってきた。
きららはすぐに俺の方に視線を向けると、チョコチョコとよってきた。
 きらら「おはよー」
直ぐ側まで来たきららは、足をそろえてやや前屈みで俺の顔をのぞき込んできた。
少し顔が近い事に照れたが、極力平静を装って
 達也「うっす!」
と、敬礼した。
前の席に座って、半分こちらを向いていた吉田君も、
 吉田「おはよー」
と挨拶していた。
きららはもう一度吉田君にも挨拶をした後、再びこちらの顔をのぞき込んできた。
 きらら「ねね。同好会に入るにはどうしたらいいんだろう?」
俺は少し意外だった。
部活紹介を見た時は、俺も勢いで入ろうとは言ったし、楽しそうとか言ってはいたけど、入るとはっきり聞いたわけではなかった。
それに高鳥姉妹は中学時代、ゲーム部には所属していなかった。
何度か冗談っぽく誘った事もあったような気がするが、別の部に入っているからと断られていた。
だからゲーム同好会には入らないのだろうと思っていたが、冷静に考えれば、部活紹介の時のきららを思い出せば、入るのは当然のようにも思えてきた。
 吉田「高鳥さん、どこか同好会に入るんだ?」
吉田君が興味ありげに、椅子に後ろ向きに座って、体を完全にこちらに向けた。
 きらら「うん。達也とゲーム同好会に入るんだぁ」
 吉田「へぇ~」
ああ、そういや俺も入るんだったな。
俺は少し笑顔になって、吉田君も誘ってみた。
 達也「吉田君も入る?」
 吉田「う~ん。ゲーム同好会って、何するんだろう?テレビゲームをみんなでするとか?」
吉田君は考えて、活動内容によっては入ろうかといった感じの返事をかえしてきた。
 きらら「そういえば、なんだろ?紹介では、ゲームをつくったりもするとかっていってたよね?」
 達也「ああきっと・・・」
俺はそこまで言って言葉を止めた。
危ない危ない。
義経だった俺しかしらない事を喋ろうとしてしまった。
俺はすぐに、昨日の紹介から得られた情報から、予想できる範囲内での事を話した。
 達也「テレビゲームに限らず、いろいろなゲームを作るんじゃないかな?それをみんなでプレイして遊ぶ。そんな風にうけとったけど。俺は」
高鳥姉妹と話す時の俺は危ない。
あまりに普通に話してしまって、つい義経の記憶からの事を話しそうになる。
特に最近は、どれがどっちの記憶だったのか、だんだんあやふやになっている部分もあるから、きっと喋ってしまっている部分もありそうだった。
でもまあ、そんなあやふやな部分は、喋っても問題無いものが多いので、俺もますます普通に喋ってしまっていた。
吉田君も興味をもったのか、とりあえず入ってみる事にしたようだった。
俺達は、放課後一緒に入会届けを出しに行く約束をした。

放課後になり、俺と吉田君、そして高鳥姉妹は、コンピュータルームの隣りにある、第二コンピュータルームの前にいた。
廊下の掲示板に張られていた、同好会勧誘ポスターに、ココに来るように書かれていたからだ。
同好会だから部室も無く、ココを使わせてもらっているのだろう。
俺は早速扉をノックした。
するとすぐに中からガタガタと音がして、チリちゃんが扉を開けてでてきた。
 きらら「やっほ!チリチリ!」
 知里「あーきららちゃん。どうしたの?もしかして同好会に入ってくれるとか?」
知里ちゃんは、俺の記憶と全く変わったところがなかった。
まだ去年の今頃は、一緒にゲーム部やってたんだもんな。
俺は自然と笑顔になっていた。
 うらら「うん。面白そうだったからお世話になりま~す」
 達也「よろしく」
 吉田「あっ、俺も」
吉田君は少し照れてるようだった。
 知里「わぁ~うれしい~みんな入ってくれたら、部に昇格できるよぉ~」
相変わらずの甘ったるいしゃべり方だが、喜び一杯なのがわかった。
俺達は部屋の中に通された。
奥には2人の女生徒の姿が見えた。
1人は美鈴、いや、美鈴先輩、その前に立ってるのは、見たことの無い女生徒だった。
どうやら見たことの無い女生徒は、入会希望者のようで、今手続きが完了したところのようだ。
美鈴先輩は、チラッとこちらに目を向け、少し驚き、少し喜んでいるような表情になったが、直ぐに無表情になって、
 美鈴「こんにちは。入会希望者?」
と、俺達に声をかけてきた。
 達也「はい。よろしくお願いします」
俺はよく知った、しかし初対面な美鈴先輩に挨拶した。
その時、別の方向から視線を感じたので、そちらを見てみると、入会したばかりの女生徒が俺を見つめていた。
それも驚きの表情で。
 達也「えっと・・・」
その子が固まっているので少し返事をまっていると、その子は突然叫んだ。
 女子A「たっちゃん!!」
その声に、部屋にいたみんなが驚いた。
俺はなんとか肯定の返事をかえした。
 達也「うん・・・」
また少し止まる時間。
するときららが、ちょっと笑って言った。
 きらら「なんだか達也が最初に私の名前を叫んだ時みたい」
ああそうか。
この子はきっと俺の事をよく知っている子で、俺はこの子の記憶を無くしてるんだ。
俺は笑顔を作ると、ゆっくり話した。
 達也「こんにちは。お久しぶり。なんだよね?」
 女子A「うんうん。岡島まこと、まこだよ?覚えてない?」
期待と不安と喜びと、そんな感情が表情から読みとれた。
少し話す事をためらったが、話さないわけにもいかないので、俺は記憶喪失の事を話す事にした。
極力明るく。
 達也「俺さ。去年の夏に記憶喪失になってさ。それ以前の記憶がかなりないんだよね」
かなりどころではない。
本当は全く無い。
でも、全く無いとこうして生活できる事が説明できない。
だからまあ、部分的な記憶喪失だということになっている。
 まこと「え~うっそ!相変わらず冗談好きなんだね」
岡島さんは、俺の言うことを全く信じていないようだった。
いや、信じたくないのか。
なんとなくだけど、この岡島さんとはかなり仲が良かったか、それともつき合いがあったのか、とにかく近しい人だったのだろうと思った。
 まこと「ほら。だってゲーム同好会に入ろうとしてる事が、たっちゃんがたっちゃんである証拠だよ」
言ってやった、みたいな顔をしている岡島さん。
でもやはりどこか不安が見えた。
星崎もゲーム好きだったんだよな・・・
俺がどうこたえようか少し困っていると、きららが助け船をだしてくれた。
 きらら「本当みたいだよ。先生言ってたもん。でも全然そんな感じしないけどね」
きららは少し視線を右下にそらせて、淡々と言った。
 まこと「そ、そうなんだ・・・」
岡島さんは少し寂しそうに俯いた。
チラッと見える顔は泣き出しそうだった。
俺に同情してくれているのもあるだろうが、きっと忘れられたのが悲しいのだろうと思った。
だから俺は笑顔で言った。
 達也「えっと、俺君のことなんてよんでたのかな?」
俯いていた顔を上げて、岡島さんはこたえてくれた。
 まこと「まこちゃん・・・」
まこちゃんの目をしっかり見て俺は言った。
 達也「まこちゃん、昔の事、いろいろ教えてくれないかな?」
とにかく思い出したいと思った。
思い出すという表現は、どこか違う気もするけれど、おそらく仲良しだった関係には、なりたいと思った。
まこちゃんの話だと、俺達は幼なじみに近い関係だったらしい。
中学までは一緒で、高校に進学したときに別々の高校に行ったという事だった。
まこちゃんはその時に引っ越して、つき合いはそこで無くなったみたいだっだ。
その後もしばらく昔の話を聞いた後、美鈴先輩に促され、入会届を出した。
そしてみんなで、初の同好会活動としてテレビゲームをしたりして、時間は一瞬のうちに流れていった。
最後に活動を終える時、美鈴先輩が、顧問を見つけて部に昇格したいねと言っていた。
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